【レポート】東京都立工芸高等学校様でのポートフォリオ講習会「ポートフォリオの役割と作り方」

コラム

2012.01.10

2011年12月21日(水)に、東京都立工芸高等学校様にてデザインを勉強している1年生・2年生を対象とした『ポートフォリオ講習会』が開催され、コンセント取締役の川崎紀弘が講師を務めました。

『ポートフォリオ講習会』は2009年より年1回行っているもので、今回で3年目を迎えます。
当日は、アートクラフト科・マシンクラフト科・インテリア科・グラフィックアーツ科・デザイン科の全学科から、合計約200名の生徒さんが参加。また保護者の方にも聴講いただきました。

進学や就職をひかえた生徒さんに、希望の学校や企業へ自己ピーアールするための大切なプレゼンツールとしてポートフォリオを活かそうと気づきを得てもらえるように、45分間の講義の中で、そもそもポートフォリオとは何か、どんな役割があるのか、実際に作るにあたっての大事なポイントを中心にお話ししました。

 

■ポートフォリオとは?

まずは「ポートフォリオ」という言葉の語源と、デザインを学んでいる学生にとってはどんな役割があるのかを説明しました。

「ポートフォリオ(portfolio)」には「紙ばさみ式の画集、書類入れ」といった意味がありますが、デザイナーを目指す学生にとっては「自分の作品を通して自分が何者であるかを見せる手段」です。

ではなぜ自分が何者であるかを見せる必要があるのか。
その必要性を理解するために、販促ツールも商品を見せる「ポートフォリオ」であるととらえ、いろいろなメーカーのパンフレットや広告の事例を見ていきました。

例えばあるメーカーの扇風機のパンフレットでは、商品+開発者の紹介・商品がもたらす価値・設計図という見せ方で、新商品のいい部分を紹介しています。また別のメーカーの新聞広告では、商品+イベントを代表するオブジェクトとのコラージュという見せ方で、クリスマスプレゼントという利用シーンを提案しています。
「商品を売る」という目的があって、買いたい・欲しいと思ってもらえるように、消費者の欲求をくすぐるような見せ方で商品の良さを訴求したり、商品を利用するシーンを提案したりと、見せ方を工夫しています。
商品を作るだけではなく、その商品の価値が伝わるように見せ方を考える必要があります。

学生の立場に戻って考えると、「進学・就職」という目的のために、希望の学校や企業を相手に、「自分」を売る、つまり
『「作ったもの」たちは必ず何らかの形で「編集」して「見せる」必要がある』
のです。

コンセントでも、入社を希望する学生やデザイナーにはポートフォリオを提出してもらっています。作品自体の質はもちろんですが、ポートフォリオが作品の良さを伝える見せ方になっているかという観点は、評価時の大事なポイントです。
実際にコンセントのデザイナーのポートフォリオを見てもらい、どんな見せ方をしているのかを紹介しました。

デザイナーを目指す学生にとってポートフォリオとは、
『私の「作ったものたち」を「私のスタイル」で編集して、
いつでもどこでも素早く「見てもらう」ための手段』
であると役割を確認し、「作ったもの」だけで終わらずに、「どう見せるか」を考えることの大切さを知っていただきました。

 

■作るときに大事なことは?

講義後半では、ポートフォリオを作るにあたって意識してほしい大事なポイントを、

1.素材を集める
2.構成を考える
3.見せ方を考える

という3つのステップに分けて紹介しました。

 

-ステップ1「素材を集める」においての大事なポイント

・作った物はとにかく保管しておく
・できれば、制作年月日等も記録
・イベントなどは絶対記録を残す

ポートフォリオを作ると決めてから素材を集め出すのではなく、普段からストックしていく癖をつけることが大切です。後のステップで「構成」する際の要素となったり、「構成」「見せ方」を考える際の発想の源になったりします。

 

-ステップ2「構成を考える」においての大事なポイント

・保管した物を分類、整頓する
・構成を考える=「編集」
・この「編集」こそが私のスタイル

作品のどこを見てほしいのかという視点で、集めた素材を整理して構成を考えていきます。
前半で紹介したコンセントのデザイナーのポートフォリオを台割に落としたものを見てもらい、例えば製品カテゴリーごとに分類したり、全体にストーリー性をもたせたり、という具体的な考え方を紹介しました。

 

-ステップ3「見せ方を考える」においての大事なポイント

・解説をどう入れるのか?
・レイアウトは?
・物自体の見せ方をどうするか?

ポートフォリオ全体の構成を考えたら、1ページ1ページの具体的な見せ方を考えます。
こちらも前出のデザイナーのポートフォリオを、今度は1ページごとどのように見せているのかを紹介。作品のデザインコンセプトや制作プロジェクトの進め方を解説にしていたり、見る人に興味をもってもらうために見出しを効果的に使用している事例。どこにどんな情報があるのか、規則的に情報を配置するレイアウト例や、作品の質感を伝えるために作品を撮影して配置するといった見せ方の例などを解説していきました。

 

「ぱっと見て目にとめてもらう」→「じっくり見てもらう」→「何をやったか理解してもらえる」というシナリオに合った見せ方を考えていくことが、進学や就職のための自己プレゼンツールとしてのポートフォリオに大切であることをお話ししました。

また、上級編として他の人やグループとコラボレーションするといった手法も実例を交えて紹介。せっかく他の学科で学ぶ生徒が身近にいるのだから、その環境を活かして一緒にポートフォリオを創作すれば、自分にない発想で見せ方が考えられるようになるかもしれません。

 

■講義を終えて

最後に、代表の生徒さんから講義を聴いた感想を発表してもらい、45分間の講習会を終えました。発表してくれた生徒さんは、大事なポイントをしっかりとおさえてくれていて、あまりの理解力の高さ・まとめ方の上手さに感動したほどです。
講義が終わった後に、ポートフォリオ制作の参考書籍や、講義の中で紹介したコンセントのデザイナーのポートフォリオを熱心に見る生徒さんの姿が印象的でした。

デザインを学び始めてまだ1、2年という段階では、「ものを作る」ことで精一杯で「作品の見せ方」を考えて実践するまではなかなか難しかったかもしれません。
でも「作って終わり」ではなく、作ったものの良さを伝えるために「見せ方を考える必要がある」ということを普段から意識できるかどうかは、デザイナーを目指す学生にとって将来のために大切なことだと伝えたいと、少し難しいテーマながらもあえて紹介しました。進学や就職という近い未来だけではなく、デザイナーとして仕事をしていく中でも大切にしていってほしいと思っています。