【レポート】Roundtable discussion on “data-driven human-centric innovation”

Service Designについて学ぶ コラム

2014.12.26

こんにちは、サービスデザインチームのデザイナー 小山田です。

今回は、2014年11月5日に開催された、Vinay Venkatraman(ヴィネイ・ヴェンカトラマン)氏をお招きしたセッションの模様をレポートします。

このセッションは、「Roundtable discussion on “data-driven human-centric innovation”」と題されたもので、株式会社リ・パブリック様(http://re-public.jp/)が主催し、コンセント共催で開催しました。また、会場となった西麻布のco-lab(http://co-lab.jp/)はクリエイターのためのシェアード・コラボレーション・スタジオで、春蒔プロジェクト株式会社様からご提供いただきました。

会場は、西麻布co-lab地下1階のフレックススペース。

まずは、ヴェンカトラマン氏について、イベントの案内文から抜粋してご紹介いたします。

ヴェンカトラマン氏は、コペンハーゲンで今、最も注目を集めるデザイン教育機関 CIID(Copenhagen Institute of Interaction Design)のCo-founderであり、イノベーションプロバイダー Leapcraft(http://leapcraft.dk/)のCEO & founderです。また、デンマークのデザイン政策をリードするDDC(Danish Design Center)とともに、Big Dataをデザインの力で活かし、新たな産業に結びつける人材育成のための機関 Big Data Viz Academy(http://bigdataviz.dk/)を設立。ここで提供されているプログラムは、データサイエンスとデザインの両側面を学ぶことができる画期的なプログラムとして、世界中から注目を集めています。

「データサイエンスとデザインの両面を結びつける活動」と聞き、セッションでご紹介いただく内容も非常に難しいのではないか、と緊張して当日を迎えました。しかし、実際のヴェンカトラマン氏の語り口は柔らかく、参加者を交えてのディスカッションも、軽食とお酒をいただきながら行われとても和やかな雰囲気でした。

ときおりジョークを交えつつ、落ち着いた雰囲気でお話されるのが印象的だったヴェンカトラマン氏。

ダイジェストではありますが、以下に当日のセッション内容を、ヴェンカトラマン氏の印象的なジョークをお借りして、2部構成にてご報告します。

・Part1 – How we make the money
・Part2 – How we lose the money

 


Part 1 – How we make the money


ここでは、ヴェンカトラマン氏の自己紹介、“データ”についてのお考え、そして、ご自身が率いるLeapcraftの実際のプロジェクトの3つを中心にお話しいただきました。

氏は、もともとインダストリアルデザイナーとして、照明や家具などのプロダクトデザインを行っていたそうです。彼は、“データ”をベークライト(フェノール樹脂、いわゆるプラスチック)になぞらえ、現代のデザイナーにとっての“A new raw material for innovation”だと定義します。

Ericsson 1950s bakelite telephone.jpg

EricssonのDBH15。ベークライトの登場で、自由な造形が可能になった。

Ericsson 1950s bakelite telephone” by ChristosVOwn work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

その新しい素材である“データ”を使って、Leapcraftが手がけた事例はどんなものなのでしょうか。

 

■The Copenhagen Intelligent Traffic Solutions

その1つが、CITS(The Copenhagen Intelligent Traffic Solutions)と呼ばれる、自転車に乗る人の利便性向上のための都市の交通状況のビジュアライゼーションとシミュレーションです。
各種センサーを利用し、自動車、自転車、人の動きをデータとして取得します。それによって、クラウドベースのソフトウェアを通じ、交通状況のリアルタイムモニタリングを可能にしました。また、各種のパラメータ(交通量、天気、道路工事、特別な行事など)を変えることで、交通量変化による渋滞発生のシミュレーションも可能にしています。

CITS The Copenhagen Intelligent Traffic Solutions(http://leapcraft.dk/cits/

CITS project from Leapcraft on Vimeo.

 

■Preventive Medicine

もう1つは、コストが増大し続ける医療分野で、データを予防医療に活用したプロジェクトです。

医療費の増大が課題になっているのは日本も同じですね。

このプロジェクトは、医療機関を受診する方の性別や年齢のデータを使い、グラフにすることで、どの時間帯、時期に、どんな利用者が多いのかがわかるものです。たとえば、子どもの患者が多い時間帯や、休暇中は患者数が減ること、など(ちなみにクリスマスの前後は、全体的な患者数が減るそう)。
データを可視化することで、背景にあるストーリーを見出すことができ、それに対する対応も検討することができるんですね。

プレゼンテーションの合間には、会場からの質問に応じて活発なディスカッションが行われました。その中で、「さまざまなスキルやバックグランドをもつ人々を、いかにチームとしてうまく機能させるか?」というものがありました。氏の回答は……「共通言語がないので、エンジニアとエスノグラファーを1つの部屋に集めて、何かが起こるのを信じることにした」というもの。ジョークとして明るく仰っていましたが、異なる分野のプロフェッショナル同士の意志疎通には、たくさんの課題があるんだろうな、と思いました。

 

■The Storytelling

また、これら事例の他にも、どのようにデータをイノベーションにつなげていくかをご紹介いただきました。なかでも、データとデザインの関係性についてのお考えが興味深かったです。

イノベーションのためには、両者は50:50の関係が望ましいものだそう。一方は、Data SkillすなわちAnalytics(分析)、もう一方はDesign SkillすなわちConcepts(コンセプト)。それらがうまく連携し、ストーリーを語れるようにすることが重要なのだと。
また、データをストーリーとして“Serving”する時のポイントとして、想像力の必要性を挙げていらっしゃったのも印象的でした。

データにストーリーを語らせる……。思わず会場の書棚の本を眺めてしまいました。

そこでのスライドにはこんな言葉が書かれていました。
Constraints + Ingenuity = Appropriate Solution (Problem Solving)
Constraints + Ingenuity + Imagination = Frugal Innovation (Value Creation)

制約に対して発明の才があれば、適切なソリューションが生まれるが、これは問題解決型。そこに想像力がプラスされると、イノベーションと価値がつくり出される。

「データは、多面的な真実を含んでいる」とヴェンカトラマン氏はおっしゃっていましたが、そこにデザイナーとして素敵にアイディアを飛躍させる価値や余地があるんだな、と感じました。

このスライドだけでもなんだか素敵なストーリーを予感します。

 


Part 2 – How we lose the money


さて、次のHow we lose the money。こちらは、ヴェンカトラマン氏が取り組んでいる研究グループ Frugal Digital(http://frugaldigital.org/)の活動の紹介でした。

 

■The Tinkering Ecosystem

はじめにスライドを中心に、インドなどでの“Tinkering Ecosystem”をご紹介いただきました。
Tinkering Ecosystemはさまざまな国で見られる現象で、スマートフォンやコンピューターなどのハイテク機器までも、露天商のような小規模な設備で、修理、改造を行っているというもの。これにより、大規模なインフラがなくても、モノの持続可能性を高めた社会を形づくっています。氏いわく、「インドではハードディスク・ドライブもキロ単位で買える」そう(!)。

ムンバイの路上で売られている携帯電話のパーツ。

photo by Meena Kadri

 

そのような環境を背景に、現地の人々を支援するため、低コストで実現できるプロダクトをつくるというのが、氏の取り組んでいる活動です。たとえば、教育関係者のための小型のプロジェクターや、医療関係者のための健康状態を測定するヘルスメーターなど。どちらも携帯電話や目覚まし時計など現地で手に入るものをベースにつくられているということでした。

人々が直面している困難と、周囲の環境の特徴を結び付けて価値を創り出す、素晴らしいプロジェクトだと感じました。目覚まし時計を利用したヘルスメーターの完成品もとても可愛らしくて、想像力とデザインの重要性を強く感じました。

このFrugalDigitalの活動については、氏がTEDで講演をされていますので、詳細についてご興味がある方はぜひご覧ください。

TED Talks ヴィネイ・ヴェンカトラマン:デジタル過疎地での「ハイテク・クラフト」

 


Extra – Concent’s Case


ヴェンカトラマン氏のスピーチの後には、セッションに参加された方による、データを活用した事例のプレゼンテーションが行われました。
コンセントからも、代表の長谷川による、データを活用したIA(インフォメーション・アーキテクチャ)の2つのケーススタディの発表がありました。

ケース1は、アルバイト情報を扱うWebサイトを、データを活用しつつユーザー中心に設計したプロジェクトです。
従来、そのようなWebサイトの情報は、時給や勤務地などのスペック的なもので構成されていました。しかし実際にユーザーへのインタビューを行うと、 “暇つぶし”としてアルバイトを探すといったユーザーの利用文脈がありました。
こうしたインタビューで得られた定性的なデータを分析、構造化し、Webサイトの情報設計に反映することで、ユーザー視点でのアルバイト探しを実現しています。

ユーザーの潜在的なニーズは“暇つぶし”(!)

ケース2は、オーディオ製品を扱うWebサイトで、インタビューなどで得た定性データを形態素解析と共起ネットワーク分析を使ってビジュアライズし、得られた結果からそれらを製品紹介の切り口として活用した事例です。
定性的な情報を分析、活用することで、ユーザーセンタードなアプローチが実現できるという事例でした。

***

ビッグデータと呼ばれる大量のデータだけではなく、定性的な調査で得られるデータもまたデータ。さまざまなアプローチで、ユーザーにとって新しい価値をつくろうという目的は共通しているんだな、と感じたセッションでした。

【小山田那由他プロフィール】
http://sustoco.concentinc.jp/from-editors/2012/11/nayuta-oyamada/