UX DAYS TOKYO 2015 参加報告

コラム

2015.05.07

Service Design division の川原田です。

2015年4月17日〜19日の3日間に渡って、世界で活躍するUXのスペシャリストたちが集うカンファレンス及びワークショップ「UX DAYS TOKYO 2015」が開催され、参加してきました。

本イベントは Web Directions East LLC 主催で、17日は5名のスペシャリストが登壇して最先端の取り組みを紹介するカンファレンス、18日・19日はその5名が実際にUXの手法を参加者に直接指導するというワークショップ、という構成でした。
参加者のうち9割以上は日本人で、その多くはUXに関心のあるWebやアプリ開発に関わる業種の方だったようです。

(同じ業界の方が多数いたためか、開始前に関わらずすでに賑わっていました)

また、コンセントは本イベントにおけるゴールドスポンサーとして協賛しており、ランチタイムには Service Design division の担当役員でもあるサービスデザイナーの大崎が、直近のプロジェクトにて実施した「Concent Service Design Sprint」について紹介しました(※)。15分ほどの簡単な紹介でしたが、スライドの写真を撮る参加者の方も多く、注目度の高さを感じました。

※「Concent Service Design Sprint」とは
「Design Sprint」とは、Googleの投資部門Google Venturesがスタートアップ支援のために開発・実践している方法論で、ビジネス上の課題解決を目的に、5日間で顧客と一緒にデザインやプロトタイピング、アイデアのテストを行うというものです。この短期間でのフローをヒントに、調査・観察、仮説・方針設定、コンテンツ開発・企画、ラフプロトタイピング、ユーザーテストまでを短期間で集中的に実施するものを「Concent Service Design Sprint」とし、ここでは5名のメンバーにて6週間で行った例を紹介しました。

 

(大崎がランチタイムのプレゼンにて、「Concent Service Design Sprint」を紹介)

また、本イベント名にも掲げられている「UX」、すなわち「ユーザー体験」とは、個人的には、身の回りのあらゆるシーンにおいてユーザー自身が体験し、意識的・無意識的に関わらず感情を動かされるようなモノ・コトすべてを包括するような、広義の空間的な広がりのあるものと捉えています。

Webやスマートフォンの登場によって、人が生活する上でのUX、つまり先ほどの視点で言えば生活空間、あるいは生活環境に対して、ユーザーが表情を与え、その質を変化させてきたように、世の中のテクノロジーの加速度的な進化・発展は、それが倫理や道徳といった社会制度的な文脈に反することのない目的で用いられる限り、人間の文化的な活動領域を着実に拡張し、変革していくものと言えます。

そういった中でのUXを考えたとき、社会の変革に伴って我々はどのような観点をもって将来的な課題に取り組んでいくべきか、またはある種オルタナティブな設計思想が必要と言えるのか、UXに関わるスペシャリストとしての考えや姿勢を知りたいという想いが私自身の参加背景にありました。

前置きが長くなりましたが、以下、個人的な所感を交えて各セッションの要点をご紹介します。

 


■ MAGICAL UX AND THE INTERNET OF THINGS(インターネット・オブ・シングスと魔法のユーザー体験)/Josh Clark


著書『Tapworthy: Designing Great iPhone Apps』等で知られるUXデザイナーJosh Clark氏による、IoTの最新事例の紹介と、それが進む中でもつべきUX観点についての話でした。SF映画と合わせて実際に開発されているIoTの実例を示し、これまで映画の世界で魔法として描かれてきたようなことが、デジタルインタラクションやセンシング技術の発展によって現実のものとなりつつあることが紹介されました。

「世界は大きなキャンバス」であり、大きな可能性があるとする一方で、技術は人間性の延長として用いるべきもので、我々はもっと創造力を磨くべきだとJosh Clark氏は説きます。

また携帯電話の登場によって我々はデジタルの世界に閉じこもりがちになることで、現実の世界で起きていることの多くを見逃してしまっていることを危惧し、そういった視点からもIoTの活用によって物理的な世界との繋がりをつくっていくことが重要と述べていました。

 


■ Orchestrating Experience(エクスペリエンス<経験>を組織で共有する)/Chris Risdon


Adaptive PathのディレクターであるChris Risdon氏による、サービスエクスペリエンスについての話でした。顧客にとっての体験は一貫したものであるべきとし、正にサービスデザインの重要性が説かれました。

タッチポイントはオーケストラにおける音符であり、一連のストーリーとして組織全体でエクスペリエンスを共有し、ユーザー中心で設計がなされる必要があると提言していました。

 


■ Rapid Design & Experimentation for User-Centered Products(動きの早い設計とユーザー中心の製品を生み出す検証とは)/Kate Rutter


Adaptive Pathでコンサルティングの部長を務め、Luxr.comの創設にも携わったKate Rutter氏による、Rapid UX手法の紹介でした。

近年UXの手法がよりスピーディになっているというトレンドとその有用性を示した上で、デザインのサイクルを早期に回すLean UXの手法として、実際にどう手を動かすべきか、ということを9つのツールとして具体的に紹介してくれました。これらのツールを柔軟に組み合わせることで、さまざまな手法に応用が可能であると言えます。

普段から使用しているツールとして馴染みのあるものが大半でしたが、一般向けにデザインの手法を説明する際などに大変有効であると感じました。

 


■ How To Listen(ユーザーの声に耳を傾ける)/Nate Bolt


FacebookとInstagramでUXデザイナーを務めたNate Bolt氏による、デザインリサーチについての講演でした。AirbnbやFacebook、Flickr等を例に、ユーザーにとってそれが本当に使いやすいものとなるためには、適切な場面で適切なリサーチが重要であることが説かれていました。

個人的には、デザイン会社として強みをもてるのは、ユーザー調査の結果からどういった立脚地で価値を抽出するか、そしてそれをどのように体系化・構造化するか、という点を重視することにあると捉えていましたが、近年リモートUXリサーチのツールが充実してきていることもあり、調査手法自体もやはりデザインの対象として当初から計画することが重要であることを再認識しました。

 


■ Connected UX(UXのデータを繋ぐために)/Aaron Walter


世界最大のメール配信サービス「MailChimp」のUXディレクターAaron Walter氏による講演でした。

特に興味深かったのは、ピラミッド図で「(上から)WISDOM-KNOWLEDGE-INFORMATION-DATA」という概念図を示したものでした。我々が活用し得る「叡智」は大量のデータをベースとして、情報、知識として精錬させていく先にあるものであると述べています。

また、日々の大量のメール処理のために「Evernote」を利用することでデータの集約化を図ったことを始めとして、データを繋ぐことで人を繋ぎ、チームメンバーにとってのユビキタス環境の実現によって領域の横断が容易になり、より快適な仕事環境が構築できることが紹介されました。

身の回りにデータが溢れ返る現代において、最適な形でそれらをピックアップし、正に「叡智」としてチームビルディングに活用した好例と言えるのではないでしょうか。

(予定されていたすべての講演を終えて、5名のスピーカーが集合)

 

各セッションについての要点は以上になります。
以下、全体を通しての所感です。

今回、本イベントの開催目的としては、UI設計におけるUXの重要性を伝えることが掲げられていましたが、実際にはやはりUIに限った話ではなく、発展するテクノロジーや氾濫するデータ、そしてそれらを包含する社会に対していかに人間中心という視座で向き合うか、という基本的な姿勢を示すものであったと感じました。

特に、個人的に最も印象的だったのはJosh氏が指摘していた点です。すなわち、「Webやアプリはデジタルの世界の話であり、スマートフォンやPCを使用しているのは現実の物理的な世界においては静的で閉塞的な状態に過ぎない」ということです。「歩きスマホ」という社会問題が生じるのは、このデジタル世界への静的な没入状態と、現実の社会において生活を営む動的な状態との次元の違いに摩擦が生じているためであると言えます。前半部で述べたような空間的なものとしてのUXとして考えるならば、すべては現実の物理的で流動的な環境にユーザーがいることを前提として、デザインされるべきです。その意味で、IoTの応用によってその摩擦を、Josh氏が示したように魔法のごとくビジブルな形へ昇華させることは、この問題を解決する糸口になりうるものと考えます。ないしはそれ以上に、新しい文化領域の発展を体現しうるツールと言えるかもしれません。無論、そこには技術を扱う人間自身がどのように振る舞うかという視点が軸としてあるべきでしょう。

全体のセッションを通じても、やはり根底にあるものとしてユーザー中心、もっと言えば「ユーザー」というある意味神格化されたモデルよりも、より根源的なものとしての「人間」がいることを再認識し、改めて人間中心設計という必然に帰着することを感じました。

 


【執筆者プロフィール】
川原田 大地|サストコ

【登壇者プロフィール】
大崎 優|サストコ

【関連リンク】
ニュース|「UX DAYS TOKYO」にゴールドスポンサーとして協賛
UX DAYS TOKYOオフィシャルサイト