IA Cocktail Hour: IA Summit 2015 talk イベントレポート

  • コミュニケーションデザイン
  • 土屋綾子コンテンツストラテジスト


はじめまして。コンテントストラテジストの土屋です。5月21日(木)に行われた「IA Cocktail Hour: IA Summit 2015 talk」の内容をご報告します。

今回は昨年に引き続き「talk」と銘打ち、「IA Summit 2015」に参加してきたメンバーが、カンファレンスで挙がった内容から話題提供を行い、参加者と自由に議論を交わしていこうという目的のもと開催されました。

IA Summitへの参加メンバーということで主にお話されていたのは、インフォバーンの井登さん、フリーランスでIAをしている岩本さん、そしてコンセントの長谷川、坂田(所属は本イベント時のもの)、河内でした。コンセントの佐藤、関根もIA Summit参加者として話題提供をしました。

さてIA Summitはインフォメーションアーキテクト、UXデザイナー、コンテントストラテジストなどが集う情報アーキテクチャのカンファレンスです。2000年から始まり16回目を迎えた今年は、アメリカのミネアポリスにて3日間の日程で開催されました。


期間中には70ほどのセッションのほか、マラソンやカラオケなどのアクティビティも開催されたそうです。早朝マラソンではランの最中にもあちこちで参加者間での意見交換が行われていたとか(!)。

IA Cocktail Hourでは、参加者の印象に残ったセッションの内容が共有されました。IAに詳しいとは言えない私ですが、初参加しての内容をかいつまんでご紹介します。

Re-framing and Un-framing IA
情報アーキテクチャのオントロジーの再定義・再確認


今回3度目の参加をされた岩本さんは、今年はIAの定義を再確認するという内容のセッションが多くなった印象だと言います。クロージング・キーノートでBrenda Laurelは「Gaian-Centered design」と表現しており、「『Whole Earth Catalog』(※)的な着地になったのかなという印象」と岩本さんはおっしゃっていました。


Wikipedia: Whole Earth Catalog(全地球カタログ)


またテッド・ネルソンがスカイプで参加した初日のイブニング・キーノートも興味深かったとのこと。下記にYouTubeが上がっています。

New Fields and Feel Effects Q&A
http://www.iasummit.org/index.php/node/291

Content and Data
多チャンネル・多デバイスにおけるコンテンツとデータ


コンセントの長谷川からはMarsha Havertyのセッション「What We Mean by Meaning: New Structural Properties of IA」を紹介。


Marsha Havertyは、情報が人に受け取られると意味(meaning)が形成される、という考え方を出発点に、意味は言語的情報と感覚的な情報の2軸で受け止められると考え、物理学でいうところの位相空間にヒントを得て情報を解釈するモデルを作りました。

この話は、IAとは何か、何を伝えればいいのかを議論してきたIAサミットに一石投じた印象で、長年の参加者にとってもインパクトのあるセッションだったそうです。Webメディアに関わってきた私にとっても、日頃「どのように人に情報を届けるか」に執心こそすれ、そのメカニズムに関して概念的に考えたことがなかったので新鮮に感じました。情報が人に受け取られるまでを丁寧に紐解くことで、発信者としてもさまざまな着想が可能となるでしょう。

実際、IA Summitの会場でも、感覚的なもの、言語的なものに対する積極的なアプローチだとして高い評価を得て、あまりにも反響が大きかったため、期間中に再演されたほどだったとのこと。

ほかにも象徴的だったセッションとして長谷川からPaul Rissenによる「Designing Webs: Information Architecture as a Creative Practice」が挙げられていました。これはBBCオンラインニュースの情報整理担当者の話で、インターネットに存在する情報の関連自体をデザインしているという考え方が紹介されました。
Webサイトという限られた範囲のことではなく、Webの情報ネットワークのことを考えることで、実現されることの可能性の高さが示唆されています。

Dalia LevineとDuane Deglerによる「Structure and Metadata: Shortening the On-Ramp to Linked Data」では、人にわかるデータを、マシンにわかるデータにどうつなぐか?について、これをLinked Dataの概念として定義付けました。


今現場ですでに使っている分類体系を生かしつつ活用すること、そしてそれらのLinked DataをどのようにつないでいくかがIAの意識すべき点であるということです。

Shaping Organization
組織の再編と推進


坂田からは、職種としてのIAがどのようにキャリアを形成するのかといったことを含めいくつかのセッションが紹介されました。


Peter Merholzによる「Shaping Organizations to Deliver Great User Experiences」というセッションでは、組織設計や組織構築の担当者がよいUXのためにどういう組織の形があるかを考えた場合に3つのパターンが紹介されたとのこと。その3つとは、
  1. 1.専門チームからデザイナーがプロジェクトごとに派遣される。これは専門性の維持に有効。
  2. 2.プロジェクトチームにはじめからデザイナーが参加する。1と比べて専門性の維持が難しいのがデメリット。
  3. 3.カスタマージャーニーマップをベースに共創、責任感・主体性を養う

坂田も言っていたことですが、ひとくちに組織といっても複合的な事柄があるため、これが答えとは決められないでしょう。ただ、大きな分類としては上記のパターンが当てはまると言えそうです。

さらに坂田は、2013年のEuro IAの内容も引き合いに出していました。それは「Managing chaos」の著者であるLisa Welchmanによるもので、情報設計、情報整理がもたらす価値を再確認したときにそもそも組織が問題なのではないか、という疑問を起点として情報管理をいかにシステム化するかを考えたという話です。情報を整理・設計したところで平和はもたらされるだろうかという問いに対するキーワードは、「コントロールとマネジメントは異なる」「平和であることは、良い仕事ができること。そして事業が成長すること」そして「情報そのものにコンテキストは存在し、そのコンテキストは誰かの手によって与えられていることを忘れてはならない」といったものでした。

ではどんな組織図がありうるのか。鉄道会社が作った世界最初の組織図は、現在よく見るような、トップが最上位にいる形ではなかったそうです。IA視点の組織図、どんなものになるのでしょうか?


IA Summitの内容共有のあとには、IA Summit参加者とCocktail Hourに来てくださった方の間で意見交換が行われました。


今年も思考を刺激するトピックが登場したIA Summit。サイトではさっそく次回の開催情報が発表されていますね。興味をもった方はサイトをチェックしてみましょう。
http://www.iasummit.org/

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
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