ワコールつどいプロジェクト Vol.1

Service Designについて学ぶ コラム

2016.02.09

※本記事はコンセントのサービスデザインチームによるブログ『Service Design Park』に、2016年2月8日に掲載された記事の転載です(転載元:http://sd-park.tumblr.com/post/138720557366/wacoal-vol1)。

こんにちは、サービスデザイナーの高石です。
今回は、株式会社ワコール様と一緒に取り組んでいる「ワコールつどいプロジェクト」についてご紹介します。

「ワコールつどいプロジェクト」は、ワコール様のコーポレートサイトを中心としたWebガバナンス強化プロジェクトが発端となりスタートしたものです。顧客の生活にきちんと寄り添い、下着の価値を届けるWeb施策を行うためには、顧客の利用文脈に寄り添ったWebガバナンスの策定が必要です。そうしたなかで、そもそも顧客が生活のなかでどのようなタイミングで下着に関わるのか、またその関わり方はどのようなものなのかをあらためて整理する必要があり、それらを洗い出す方法の1つとしてカスタマージャーニーマップ(以下、CJM)を作成することにしました。

一口に下着との関わりといっても、その関わり方には、「着用する/洗う」といった日常生活場面から、体型の変化や、妊娠等のライフステージの変化にともない「見直す/変える」といったことまで幅広いものが含まれます。

このCJMをきっかけに、「企業の手を離れ顧客のもとに届いた下着は、生活のなかで長時間かつ多様に女性の人生を支えているものだ」ということをあらためて認識することができました。ワコール様にも『「女性にとって下着とは何か」「広い意味で、世の女性が美しくあるために提供できること」を顧客とともに明らかにしていきたい』という思いがあり、「ワコールつどいプロジェクト」がスタートしました。

このプロジェクトは、エンドユーザーと事業者とでともに行うワークショップ群の総称で、顧客と「仲間」として関わり合う場を通じた、ワコールのあらたな価値創出をめざしています。 今回紹介するのは、そのなかでも2015年3月10日に開催した「『ココロにフィットする下着』デザインワークショップ」という初回ワークショップです。

ふだん選び、身に着けている「カラダを支えるため」の下着から離れ、自分の気持ちや価値観を下着のかたちに落とし込む、という手作りワークを行いました。

 

この取り組みのビジネス上の価値について、コンセント取締役/サービスデザイナーの大崎による説明を以下にご紹介します。

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この一連の取り組みは、企業と生活者が共に価値創造をする「共創マーケティング」に「ものづくり」のプロセスを取り込んだものと言えます。

共創マーケティングとは、一般的に企業と生活者がコミュニティを形成し、製品・サービスの問題点や新しい使い方などを共に考え創るしくみと言われます。生活者が自主的に意見を発したり、生活者同士で製品・サービスについて語り合えるプラットフォームをオンライン・オフライン上で設計することで、新しいアイデアや生活者の潜在ニーズや価値観を発見することができます。このように製品・サービス開発におけるマーケティングリサーチの機能を持ちながらも、同時に生活者とのエンゲージメントを強め、LTV(顧客生涯価値)を最大化することができるなど、企業にとってメリットの大きい手法として注目されています。

このワークショップは、このような共創マーケティングの文脈の中に「ものづくり」のメソッドを入れ込むことで、「共創」の側面をより強めた取り組みとして捉えることができます。

共創のしくみをマーケティングの側面から捉えると、生活者にいかに本音を語ってもらえるかが重要になります。製品やサービスに対して顕在化しているニーズではなく、それらに対して生活者が抱いている生の価値観をあぶり出すことが、製品・サービスを成功させる重要なポイントになります。例えばデプスインタビューでは、本音を語ってもらうための幾つもの話し方やメソッドがあり、エスノグラフィ調査では「観察」を通じて生活者自身が気づいていないニーズや価値観を抽出する手法が体系化されています。

しかし、デプスインタビューにせよ、エスノグラフィ調査にせよ、調査する側とされる側という壁が存在している以上、本音や価値観は出てきてもそれらに対して互いに確認し合ったり議論することはありません。あくまで分析の対象として存在しているだけです。

このワークショップでは文字通り、生活者と企業が一緒になって実際に手を動かして「下着」をつくります。制作物という媒介を通して作り手の本音が出てきたり、媒介を通じてお互いに意見を交換することもできます。あえて「ココロのため」と、製品としての下着の「体を整える」という特性からずらしたことで、単なる色柄の好みの表現になることを防ぐと同時に、ワコール社員の方々にも一生活者としての視点にも立ち戻ってもらい、従来の調査とは違う切り口の「本音」を引き出すことができました。

ものづくりを通して参加者同士のつながりを強める作用もあります。言葉にしづらい身体の悩みや不安に対して「もの」を媒介することで抵抗なく言葉にすることができ、お互いに確認することができます。それによって個人で抱いていた不安や問題が実は思い込みであったり、あるいは企業にとって解決可能な問題であることがわかったりと、その場で解決がはかられることも多くあります。問題解決を通じて、生活者同士や生活者と企業間でのつながりを強固にできることも「ものづくり」ワークショップの強みであると言えます。

ワークショップ終了後に行った希望者対象の計測相談会では、「測っていこうよ、ちゃんと見てあげるから」「一度も測ったことがない? だめだよー!」といったフランクな感じで参加者同士で誘い合う場面がみられました。ほぼ全員計測を受けて帰られたのですが、ワークを通じてすっかり打ち解け、単なる「売る側—買う側」を超えた関係性ができたことが伺えました。

共創マーケティングでは、参加する生活者のモチベーションをいかにあげられるかというのも重要な観点ですが、今回のワークショップの参加者の感想をみても十分に手応えがありました。 「“もっと、自分らしい下着をつけよう。下着から自分の魅力を引き出すことができるんだ” と新しい発見があり、意識はとても変化したと思います」 「下着をきっかけに自分の内面や相手のことを知っていくのが楽しかったです」 「気づかなかったことに、手を動かすことで気づけるのはすごい」 「とても楽しかったです! ショーツについての話もしたかった!」

プレワーク的に行った下着や体についてのブレストでは、どのグループからもたくさんの意見が出され、とても初対面同士とは思えない盛り上がりを見せ、デリケートなテーマなだけに参加者が躊躇してしまうのでは?というこちらの懸念は良い意味で裏切られました。普段の生活の中では、同じ課題や悩みを持つ者同士で集まることも少ないようで、下着や体に関して「つどい」話し合うこと自体に大きな価値を感じていただけるようでした。

「ワコールつどいプロジェクト」は継続的に行われており、今後も下着や身体にまつわるさまざまなテーマを、生活者のセグメントに分けて開催していく予定です。次回以降の取り組みはこの場(『Service Design Park』)で継続的に公開していきます。

 


【「ワコールつどいプロジェクト」ワークショップ開催のお知らせ】

2016年2月23日に、女子大学生を対象としたワコール x コンセント共催のワークショップ「わたしの人生すごろく〈女性力アップ編〉を作ろう」をamuにて開催します。

就活のような自己分析や人生設計ではなく、若い女性がこれから先、それぞれの考える「ステキな大人の女性」になっていくためには何をするべきか。いまのキラキラ女子力にとどまらない「女性力」をつけていくための行動計画を、同じ年代の仲間や、人生の先輩たちといっしょに考えてみませんか。

開催概要は以下の「セミナー・イベント情報」ページをご参照ください。

Wacoal × Concent ワークショップ「わたしの人生すごろく〈女性力アップ編〉を作ろう」開催のお知らせ」|セミナー・イベント情報

 


【執筆者プロフィール】
高石 有美子(たかいし・ゆみこ)|株式会社コンセント サービスデザイナー

神奈川県出身。早稲田大学第一文学部(美術史学専修)卒業後、1998年にアレフ・ゼロ(現コンセント)にエディトリアルデザイナーとして入社。現在 Service Design Div.所属。豊富なデザイン経験と主婦・母としての視点を活かし、 一般顧客、とくに女性と企業をつなぐ共創プロジェクトへの参加も多い。小学生2児の母。