【レポート】株式会社リクルートジョブズ様「なるほどデザイン」研修

Communication Design について学ぶ コラム

2017.02.10

Service Design Div.の佐藤史です。

2016年7月11日に、株式会社リクルートジョブズ様(以下、リクルートジョブズ)の社内向けに開催したデザイン研修をご紹介します。講師は、コンセント社のアートディレクターで書籍『なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉』の著者である筒井美希です。

リクルートジョブズ様では、6月30日と7月1日にも、UXデザインを事業開発につなげる方法論である「サービスデザイン」に関する研修を実施しました(⇒ http://www.concentinc.jp/labs/2017/02/recruitjobs-ux-design-training/)。一方、本稿でご紹介する研修は「コミュニケーションデザイン」に関する内容です。端的に言うと、前者はサービスを開発するためのデザイン、後者は、そのサービスの価値を「どう伝えるか」のためのデザインです。

どんなに良いUXを提供できるサービスが存在していても、そのサービスの価値が、ターゲットとするユーザーに正しく伝わらなければサービスとして成立しません。正しく伝えるためにはコミュニケーション設計が必要です。
それは、Webサイトやデジタルアプリなどオンラインで宣伝することもあれば、紙のパンフレットやフライヤーを使って販促活動をすることもあります。さらには、顧客とのリアルな場でのタッチポイントがある場合は、そこで働く人のユニフォームや施設の空間設計も必要になります。これらのツールすべてが、きちんとそのサービスにふさわしいデザインで統一されていなければなりません。

この研修のゴールは、新しいサービスやそのコミュニケーションツールをつくるとき、そのデザインの良し悪しを判断し、言語化して人に伝えられるようになること。今回の受講者はデザイナーではなく、サービスの開発と運営に携わる幅広い方を対象としています。

まず冒頭で筒井は「みなさん、このなかでどれがいちばん良い配色だと思いますか?」といくつかの選択肢を提示しました。問いかけながらも、「もちろん、判断できませんよね」と続けます。そこで某有名サービスブランドを例にあげ、「そのサービスブランドらしい」と感じる書体や配色を、それぞれ複数の選択肢から選んでいただきました。何の目的もない状態では、そもそもデザインの良し悪しを判断することができない。その前提を実感していただいた上で、前半のワークがスタートします。

  


「◯◯らしいデザインとは何か」を考える


書体から受ける印象を相手に説明し、どの書体を指しているかを当ててみる。互いに似たような印象をもつイラストと書体を結びつけてみる。あるメッセージにふさわしいと感じる写真を複数のなかから選ぶ等、何個かのショートワークを重ねていくなかで、「◯◯らしいデザインとは何か」を考える視点や、言語化するスキルを少しずつ養っていただきました。
このワークの特徴は、例えば、普段の仕事で何かツールを制作するとき、完成したデザインカンプを見比べるだけでは、「このデザインのどこがどう良い(もしくは良くない)のか」について、なかなか各人の視点と意見がかみ合わないことがあると思います。しかし、このように、書体、配色、写真などデザインを構成する要素を分解してひとつひとつ個別に見ることで、「◯◯らしいデザインとは何か」をデザイナーでなくとも判断しやすくなります。一方、デザインというものは、それらひとつひとつの要素が組み合わさることで、全体のブランディング(サービスの人格)が形成されることを実感していただきました。
また、デザインの言語化を行うための方法として、複数の案を比較する・擬人化する・ムードボードを用いるなど、専門的知識だけに頼らないコミュニケーション方法を体験していただきました。

  


伝えたいことの優先度をつけることが大事


後半は少し難易度を上げて、レイアウトされた雑誌の見開きページを複数見比べ、その中からあるサービスのコンセプトや特定のターゲット層にふさわしいものはどれかを選ぶワークです。
ここで筒井は、まず「伝えたいことの優先度をつけることが大事です」と強調しました。サービス開発プロジェクトでは、個別の機能要件を議論する前に提供価値を定めることが重要ですが、それはサービスを告知・宣伝するためのコミュニケーションツールを考える場合でも同様です。たとえ、そのサービスに訴求ポイントがたくさんあったとしても、それらすべてを一つのツールで一度に全部伝えようとしてしまうと情報を多すぎて結果として受け手に対して何の印象も残すことができません。このように、伝えたい情報を整理して取捨選択すること、筒井はこれを著書の中でもご紹介している「ダイジ度天秤」という道具に例えて検討のプロセスを説明しました。また、伝えたい事を整理し取捨選択するうえで、それを目にする人、つまりターゲットペルソナがどんな人かを考えることが「ふさわしいデザイン」を考えるうえで議論の拠り所となることも併せて解説しました。

最後は全体のまとめとして、実際に自分の手でテキストや写真を切り貼りしてフライヤーを制作していただきました。テーマはあるイベントスペースの案内ツールですが、このツールの目的が何かをきちんと決めてからつくることで、個々の要素の取捨選択や、配置の方向性が考えやすくなるというプロセスを体験していただきました。また、1人ずつ自分のつくったツールの目的とデザイン意図を発表し、筒井によるレビューが行われました。

今回の研修をまとめると、コミュニケーションツールのデザインというものは、大きく以下のプロセスに分けられると思います。

● サービスの価値を伝えたい相手(=ターゲット)がどんな人かを考える
● そのサービスで、最も重視したい価値は何かを考える(もしくは優先度をつける)
● これからつくろうとしているツールの目的を定める
● 色、書体、写真・イラスト等、個別の要素ごとに「どんなものがふさわしいか」を考える

なお、このようなプロセスはデザイナーと呼ばれている人だけがとるのではありません。研修終了後のアンケートでは、

● デザインにあまり興味はなかったが、知識として学べたので、今後デザインに関する業務を行う上で、自分なりの楽しみ方や勘所がわかった気がした
● 抽象的な現象やデータを言語化する考え方は、デザイン関連の仕事かどうかに関わらず重要な考え方であると感じた
● システム設計やコーディングのレビュー、パワーポイントの説明資料作成等の場面でも活かせると感じた

等々の感想が寄せられました。特に今回の研修内容が、ビジュアルデザインの仕事以外でも幅広く活用できるメソッドとして理解いただけたことは、専門ジャンルは違えども同じデザイナーとして、私自身もとても喜ばしく感じました。最終的な目的が、UXのデザインであれ、何か特定のツールのデザインであれ、「何を目的にどのようなものをつくりたいのか」という ゴールイメージを言語化して共有することは不可欠です。つくろうとしているもののデザインがそれにふさわしいか否かのジャッジは、プロジェクトメンバー全員が主体性をもって考えるべきことではないでしょうか。
研修は、筒井の「プロジェクトの成功のために、 質の良いコミュニケーションを!」という言葉で締めくくられました。

なお、本研修の講師である筒井の著書『なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉』については、下記リンクをご参照ください。
著書『なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉』(http://www.concentinc.jp/labs/2015/08/naruhodo-design/)

最後になりますが、コンセントでは、サービスデザイン・UXデザインから、グラフィックデザインに至るまで、こうした企業内セミナーを多数実施しています。
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【執筆者プロフィール】
佐藤 史|サストコ