【レポート】株式会社リクルートジョブズ様 UXデザイン研修

Service Designについて学ぶ コラム

2017.02.10

Service Design Div.の佐藤史です。

2016年6月30日と7月1日の2日間にわたり、株式会社リクルートジョブズ様(以下、リクルートジョブズ)の社内向けに開催した、UXデザイン研修をご紹介します。

リクルートジョブズは、求人メディア「タウンワーク」「フロム・エー ナビ」など人材採用に関するさまざまなサービスを開発・提供しています。今回の研修はそのリクルートジョブズの入社1〜5年目の若手社員を対象にしたものです。

受講された方の職種は、主に商品・サービス企画開発、マーケティング、Webサイト統括、エンジニアリング等ですが、これから基本的な手法(定性調査やプロトタイプなど)を学ぼうと考えている方から、普段の業務ですでに実践されている方まで、UXデザインの経験年数はさまざまでした。

そのため、基本的な手法を学ぶだけではなく、事業開発(もしくは改善)プロジェクトにおけるUXデザインの活用のしかたについても、受講者が良いヒントを得ることができるよう、研修のプログラムを企画・設計しました。

2日間の研修プログラムは、講義とワークショップから成り立っています。
講義は、UXデザインを事業開発に繋げる方法論である「サービスデザイン」に関して。
ワークショップでは、受講者が普段の業務でもよく実践されている「定性調査」と「UIデザイン」の2つを実施しました。

研修の内容と様子を以下に時系列で紹介します。

 


1)講義「サービスデザインの実践 」(6月30日)


コンセント社のService Design Div.担当役員の大崎が、サービスデザインの概論について30分ほど講義しました。
現在は、テクノロジーやメディアの変化に伴う「顧客の時代」であり、そのなかで顧客視点に立脚して事業を設計するサービスデザインの意義が高まっていること。サービスデザインは、製品・サービス開発に限らず、顧客開発・管理やブランディングの領域においても有効な方法論であることを説明しました。
そして、コンセント社のプロジェクトの進め方の事例として、カシオ計算機様との新規サービス開発プロジェクト事例と、6週間の新規事業開発プログラム「コンセント サービスデザインスプリント」を紹介しました。

※カシオ計算機様との事例および「コンセント サービスデザインスプリント」の詳細については、下記リンクもご参照ください。
カシオ計算機様との事例 (http://www.concentinc.jp/works/casio-daisycircle/)
「コンセント サービスデザインスプリント」 (http://www.concentinc.jp/news/2016/04/concent-service-design-sprint/)

 


2)ワークショップ「サービス開発のための定性調査 」(6月30日)


大崎の講義に続いて、サービスデザイナーの私、佐藤史が定性調査に関するワークショップを実施しました。
サービスを新規開発(もしくは改善)するとき、サービスアイデアをどうやって探索し、そこからどうリサーチ計画を立てるかを考えるワークショップです。実際のプロジェクトでリサーチを実践しているUXデザイナーだけではなく、プロジェクトプラン設計時にどういうリサーチを実施すればよいかを考えることのあるマーケット担当者やプロジェクトマネージャーにも意義のあるテーマです。

 

■行動観察とインタビューで仮説を強化
最初にまず、「駅の施設を利活用した新しいサービスアイデアを考えてほしい」というテーマを設定して、実際に駅に足を運んで行動観察を体験していただきます。次に、行動観察から生まれたサービスアイデアの仮説をインタビューで検証します。そして最後に、インタビュー結果を振り返り、仮説を強化・修正して、その市場性や有用性を検証するための調査計画を考えていただきました。

受講者の皆さんには数名の班に分かれてワークを実施していただきましたが、漠然としたテーマをいきなり与えられたことに最初は少し戸惑いつつも、とりあえず外に出てみれば何かわかるだろうと考えてすぐ行動を始める班、外に出る前にまず何かしらのアイデアや観察する対象を話し合ってから行動を開始する班など、各班の様子はさまざまでしたが、それぞれの観点で観察することでいろいろな気づきがあり、中にはアイデアがたくさん出すぎて絞り込みに苦慮する班もいたようです。また、インタビューでは、初めてインタビューを経験された方は、インタビュー対象者から話を引き出すことにも苦戦されていたようですが、「短時間でも多くの気づきがあった」という感想もあり、最後は全班が無事に、アイデア仮説と調査計画を発表することができました。

 

■調査では、良い仮説をもつことが大事
実際のサービス開発プロジェクトの場合でも、データを眺めているだけでは、なかなか良いアイデアが出にくかったり、調査をしようにも何から調べ始めたら良いかわからず悩んだりすることもあります。そんな時、机上で考え続けるよりも、ひとまず現場を見に行き、人に尋ねることで、良いアイデア仮説が生成されることが多々あります。そして、何かしらの仮説をもつことで次に何をすればいいかの計画(調査設計)が生まれ、ひいてはプロジェクトの推進に繋がることを、このワークを通して体験していただきました。
最近は、インタビューなど定性調査のテクニックを教える研修や書籍もいろいろと出てきています。しかし、定性調査で良いアウトプットを出すためには、テクニックだけではなく、調査設計(問いの立て方、定量調査との組み合わせ方 等)が適切かどうかも重要なポイントです。それを受講者の皆様にぜひ体験していただきたくこのワークを設計しました。
ワークショップ終了後のリフレクションの場では、「行動観察をすることで、いつもの環境の中でも新しい発見があることに気づくことができた」「アタリをつけつつも広い視点で事実を見ることが大事だと感じた」等、定性調査のエッセンスを実感できたという声が上がりました。また、「仮説にこだわりすぎずにブラッシュアップしていくことが大事」「小さなニーズの深掘りにならないように定量調査でも見ていきたい」等、留意したいことまでも感じていただき、今後の皆様のプロジェクトでの実践が期待される内容でした。

 


3)ワークショップ「UI Design Workshop」(7月1日)


2日目は、アートディレクターの佐藤通洋とコンテンツストラテジストの中垣美香による、UIデザインに関するワークショップを実施しました。テーマは「若いカップルをペルソナとした対話型アプリのUIをペーパープロトタイプを使って考える」というものです。

■ペーパープロトタイプを体験
このワークショップで佐藤と中垣が伝えたかったことは大きく2つあります。まず、いきなり画面のUIを考え始めるのではなく、最初に「ユーザー(ペルソナ)はそのアプリをどう使うのか」という利用体験シナリオをしっかりと頭で考えて設計に臨むこと。次に、利用体験シナリオが固まった後は、今度は頭よりもとにかく「手」を動かしてカタチにしていくこと。この2つのポイントを、佐藤と中垣はワークの間中、何度も繰り返し強調していました。その他、ペーパープロトタイプを作り始める前のレクチャーでは、佐藤が「時間と空間のモデル&ルールをしっかり設定すること」「全体に関わる観点と細部に関わる観点を行き来して精度を上げる」など重要な6つのポイントを細かく解説しました。

前半の利用体験シナリオを考えるワークでは、ペルソナの若いカップルが、受講者の皆様とほぼ同世代だったこともあり、具体的で楽しそうなシナリオが次々と生まれていました。一方、後半のペーパープロトタイプでは、アイデアをカタチにすることにやや悩まれた方もいましたが、コンセント社オリジナルのペーパープロトタイピングツール『Handmock(ハンモック)』と3Dプリンタで出力したスマホ筐体のモックアップが、参加者が楽しみながら「手」を動かすことを促してくれたようです。このようにペーパープロトタイピングには、デザイナー職ではなくとも、誰もがアイデアをカタチにできることで、完成イメージについて全員の目線を揃えてディスカッションができるという効果があります。

また、いきなりUIデザインのイメージを思い描く前に、カップルの楽しい利用体験を自由に発想したことがきっかけとなって、最終的には、昨今のスマホアプリの一般常識にこだわらない、ユニークなUIデザインのアイデアもたくさん生まれました。

 

■最初の段階で、設計を意識すること
各受講者が作成したペーパープロトタイプを書画カメラに映しながらの最後の発表では、受講者全員に対して2人の講師より詳細に講評させていただき、ひとりひとりの満足度も高かったようです。
終了後の感想では、「ペーパープロトタイピングを実施した経験は何度もあるが、何に留意すべきか考えず感覚的に作っていたので、体系的に学べてとても良かった」「チャットUIだからできることや、チャットUIの強みとは何かを、もう少し意識できたら良かった」等、感覚値にだけ頼らずに、デザインする手前の段階で設計を意識することの重要さに気づいたという声が上がりました。また、「ペーパープロトタイプを作ることで短時間でストーリーをビジュアル化でき、それをもとに要件を詰めていくことでメンバー間の会話もスムーズになることがわかりました」等、プロトタイプは単なる仕上がりイメージの確認だけではなく、プロジェクトメンバー間の共通認識を形成して健全な議論を促す意味でも有効だということに、気づいていただけたようでした。

 

なお、コンセント社オリジナルのペーパープロトタイピングツール『Handmock』の詳細については、下記リンクもご参照ください。
ペーパープロトタイピングツール『Handmock』(http://www.concentinc.jp/labs/2014/09/handmock-mobile-ui-design-prototyping-kit/)

 


UXデザインのプロセスを組織で活用するために


研修終了後には、受講者の皆様にアンケートをとらせていただきました。
「業務上、現在課題に感じていることがあれば教えてください」という質問に対しては、

● UXデザインの重要性と実施意義を、プロジェクトメンバーとしっかり伝えたい
● 他部門の人を、リサーチやデザインのプロセスに巻き込んでいきたい
● プロジェクトメンバーが全員、「カスタマー主語」で会話できるようになってほしい
● UXデザインを実践するにあたり、導入効果や指標を考えていきたい

といったコメントが寄せられ、組織とプロジェクトに対する、UXプロセスの導入・啓蒙について課題意識をおもちの方が多いように見られました。
また、今後さらに具体的な事例や手法の詳細をもっと知りたい、という感想も多く寄せられました。
最初に述べた通り、今回の研修は、単なる手法の伝授にとどまらず、実プロジェクトでどう活用すればいいかを考えていただくことにも比重を置いて企画しました。この講義とワークショップで得たことが皆様の業務における良い示唆になるとともに、学んだことを日々の業務で活用いただきつつ、UXやサービスデザインをさらに深く学んでいただくきっかけになれば幸いです。

なお、今回の研修では、本稿で紹介したUXデザイン研修と併せて、一部の受講者を対象に、「コミュニケーションデザイン」に関する研修も実施しました。あわせて下記のレポートもご覧ください。
【レポート】株式会社リクルートジョブズ様「なるほどデザイン」研修(http://www.concentinc.jp/labs/2017/02/recruitjobs-naruhododesign-training/)

最後になりますが、コンセント社では、サービスデザイン・UXデザインから、グラフィックデザインに至るまで、こうした企業内セミナーを多数実施しております。
セミナーや執筆依頼などございましたら、コンセントサイトのお問い合わせフォームよりご相談ください。
お問い合わせフォーム(講演・セミナー・取材の依頼やご相談)(https://www.concentinc.jp/contact/seminar/)

 

【執筆者プロフィール】
佐藤 史|サストコ