HCDとは:使う人の観点でものを作るためのしくみ

コラム

2010.04.28

HCDとはHuman Centered Designの頭文字をとった言葉で、日本語では人間中心設計と訳されています。

似たような言葉でUCD(User Centered Deisgn)という言葉もありますが、ほぼ同じ意味と考えてかまいません。

HCDは80年代、90年代にそれまで機能が実現され ることが目的であったコンピュータや機器類などに、「人の使い勝手」視点を導入する意図で提唱されました。特に、米国のアップル社では90年代に、それまでのプロダクト、マーケティング等が縦割りであった組織の中で「誰のためのデザイン」で有名なド ナルド・ノーマン博士が「ユーザーエクスペリエンスラボ」という横断組織を作り、利用者観点でのエンジニアリングをスタートさせたよ うな活動が有名です。また、1999年にはISO13407「人間中心設計のためのプロセス」として規格化もされています。

このように重要と考えられているHCDですが、いざそれは何?というとなかなかわかりにくいかもしれません。また、「ユーザビリ ティ」という言葉とどう違うの?と思われる方もいるかもしれません。

わかりやすくするために一言で言ってしまえば、HCDとは「使う人の観点でものを作るためのしくみ」となります。

HCDは次の4つのフェーズ

  1. 観察
  2. 理解
  3. 設計
  4. 評価

で構成されてお り、この手続きを取り入れることで作られるものに利用者の観点を取り入れられる、という考え方なのです。

そう考えると、コンピュータシステムだけでなく、実は書籍やプロダクト、サービスなど幅広くこの考え方が有効であることがわか ります。実際、最近ではこのHCDの考え方をビジネスに取り入れた手法として「デザイン思考(Design Thinking)」というものが普及してきています。また、最近流行のユーザー体験(ユーザーエクスペリエンス)という考え方も、 HCDプロセスが基盤となっています。

「利用者のことなんてとっくに考えているよ」という言う方も多いと思いますが、ポイントは、デザイナーがやっているよということではな く、プロジェクトマネージャがきちんとプロセスとしてこの手続きを取り入れていること、ビジネス主体側がこの考え方を理解しているというところにあります。単なるデザイナーのがんばりではなく、ビジネスとして実施していることが必要なのです。

HCD専門家は、ただ手法を知っている、自分が実行できる、ということだけでなく、プロジェクトとして実現できる、クライアントを巻き 込める、というところも評価されている資格です。HCDの重要性が高まるのと同時に、こういったプロジェクト化できるとい う能力の重要性も高まっていくと思われます。

長谷川 敦士(はせがわ・あつし) Ph. D.
代表取締役社長/インフォメーションアーキテクト
1973年山形県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(Ph.D)。ネットイヤーグループ株式会社を経て、2002年株式会社コンセントを 設立。情報アーキテクチャの観点からウェブサイト、情報端末の設計など幅広く活動を行っている。文化庁メ ディア芸術祭、グッドデザイン賞など受賞多数。著書に『IA100 ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計』、監訳に『デザイニング・ウェブナビゲーション』などがある。情報アーキテク チャアソ シエーション(IAAJ)主宰。NPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事、米Information Architecture Institute、ACM SIGCHI、日本デザイン学会会員。