HCDの代表的なツールと応用例:一般社会にも見られるHCDの例

コラム

2010.04.28

HCDを端的に言うと、自分とは価値観や考え方が違う他の誰かのためにデザインをすることを意味します。

子供や高齢者向けのデザインだと話がわかりやすいのですが、他の部署の人のため、自治体のためのデザインとなると、デザイナー自身も利用者に含まれるため、何となく自分が使いやすいものを作っておけば問題ないだろう、という暗黙の了解をデザイナー自身が持ってしまうことが良くあります。

HCDはデザイナーが自分自身のために作っているのではないことを明示化することで、より的確な設計解を出すための手法であるので、設計する対象は特にウェブサイトに限られません。

コンセントでは主にウェブサイト構築を行っていますが、ウェブ以外のプロジェクトというのも存在します。例えば、携帯端末の機器UIデザインや、新しいサービスやアプリケーションの使われ方に関する調査や考察などです。(詳しくは、ソリューション内のユーザーエクスペリエンスデザインをご覧ください)

こうしたウェブ構築ではないプロジェクトで利用する代表的なHCDツールには、ペルソナやそれに基づいたストーリーボード、ペーパープロトタイピングなどがあります。

ペルソナとは調査、分析に基づいて定義される架空のユーザー像のことで、プロジェクトチーム内で共通のターゲットユーザのイメージを持つために作られます。また、ストリーボードは新しくデザインされたモノが具体的に使われるシーンや状況をプロジェクトチーム内で共有するために作ります。

こうして作られるペルソナやストーリーボードは情報構造設計や画面デザイン、フロントエンド開発などの過程で、複数デザイン案が考えられる際にそれらの妥当性を評価するための物差しになります。

3次元のモノをデザインする場合はラピッドプロトタイプ、2次元のモノをデザインする時には紙やポストイットの切り貼りで仮画面を作るペーパープロトタイピングを使います。これらはプロジェクトチーム内で挙がった画面デザイン案を即座に形にしてデザイン案を検討するのによく使われる手法です。

ウェブ以外のプロジェクトについて先に触れましたが、ウェブのプロジェクトの中でも、例えばユーザーがサイトを利用する際、ページのどこを見ているのか、ユーザーの目の動きを追って具体的に計測するアイトラッキングツールを用いることで、ユーザーの行為を観察し、デザインの妥当性を検証することもあります。

技術の進歩とともに利用できるツールの種類が増えたり精度があがったり、またデザインするモノやその利用者によってデザインが達成すべき目的や解決すべき問題が変ったりするため、実際のプロジェクトでは、問題ごと、状況ごとにHCDプロセス、ツールを使い分けることになります。

状況によってHCDプロセスやツールをうまく使い分けている例は、一般社会にも見ることができます。

たとえば病院での例。外来患者や入院患者にとって、病院での待ち時間をより快適なものに再設計するために、デザイナーが患者を演じることで患者の気持ちをくみ取るロールプレイを行ったり、段ボールやクリップやノリといった身近に手に入るものを使って、解決策になりそうな道具をすぐに作り、すぐに試す、ラピッドプロトタイプなどの手法で試行錯誤を繰り返すことも、患者を中心に据えたHCDの1つです。

システム開発では、コンテクスチュアルデザイン(Contextual Design)という手法を用いて、業務担当者が行っている業務フローや組織内外の力関係などをヒアリングし、それを元にモデル化して要件定義から仕様策定を行うことがあります。
例: http://www.sapdesignguild.org/editions/philosophy_articles/holtzblatt.asp新しいウィンドウで開く

都市計画では、タウンミーティングという場を設けて、その地域に住む住民の意見を具体的な絵に落としこみ、それを共有して都市計画に反映するようなワークショップを行うことがあります。これも住民中心の都市計画を試みると言う意味でHCDの1つと考えられます。
http://www.jia-setagaya.com/CCP.html新しいウィンドウで開く

発展途上国の農村では、住民がどのような生活をしているのかをよく知るために、住民にインスタントカメラを渡し、日常生活を撮影してきてもらうことで、インタビューでは聞き取ることができない日常の様子を知ることで、その国、地域に則した農耕具や運搬具のデザインに役立てるという方法もあります。
http://www.ideo.com/work/item/human-centered-design-toolkit/新しいウィンドウで開く

このように、HCDとは、広い意味で「ものづくり」を行う時に利用することのできるものであり、ウェブやシステム開発といった限られた分野のための特別なものではないのです。

圓城寺 人史(えんじょうじ・ひとし)
ユーザーエクスペリエンスアーキテクト
1981年埼玉県生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科基盤情報学専攻修了(MSc)。2007年コンセント入社。ユーザー中心設計の手法・観点を 応用し、国内大手企業や外資系企業におけるサービスサイト構築、イントラサイト構築、携帯端末アプリ設計等のプロジェクトにおいて、ユーザ調査から情報構造設計、運用支援、サイト構築支援を行う。Interaction Design Association会員、Design Management Institute会員、Association for Computing Machinery会員