グローバル目線のWebアクセシビリティ

  • 千田 汐香ディレクター

こんにちは、ディレクターの千田です。
コンセントではグローバル企業のWebガバナンス構築支援を行っており、私自身も数年間従事しております。プロジェクトに携わる中で、いろいろな企業のお話をうかがいましたが、たくさんの企業が複雑な課題に直面している印象を受けます。
しかし、そんなとき、Webアクセシビリティの知見を活かせば、課題解決のきっかけになることがあります。コンセントを代表するWebアクセシビリティ従事者として、いくつか観点をご紹介します。
なお、この記事の内容は、2018年9月27日にamuで開催したセミナー「いま、企業が取り組むべきWebアクセシビリティ」でお話しした内容です。

Webアクセシビリティ=基準達成?

「Webアクセシビリティ」と聞くと、WCAG 2.0などの達成基準やWAI-ARIAのような実装の専門知識、Section 508やACAAなどの法規制、その他専門用語などがたくさん出てきて、とっつきにくいイメージがあるかと思います。しかし、本稿では、あえてそれらには触れずに、「Webアクセシビリティ」=「Webサイトで情報を享受できる(しかもしやすい)」という観点で、Webアクセシビリティを広く捉えてみたいと思います。

グローバル企業のあるある課題を知る

いろいろなグローバル企業の皆さんのお話を聞いていると、状況はそれぞれあるものの、共通の課題がいくつかあることが見えてきます。

1. Webサイトのテンプレートやユーザー体験のどこを揃えて、どこに多様性を与えていいかわからない

課題を図示したイラスト

各国からさまざまな要望が上がってきて管理が追いつかなかったり、勝手にデザインを変えられてしまったり...同じ企業である以上、ある程度統一感をもたせたいけれど何をしたら一番効果的なのかわからない、など。

2. 改善点はたくさんあるけど優先度が決められない

課題を図示したイラスト

課題はいろいろなところにありそうでものすごく不安だけど、棚卸しや整理ができない、重要度や緊急度の判断がつかない、など。その結果、何から手をつけていいかわからず足踏みしてしまうケースが多いようです。

3. ブランディングとマーケティングのいい落とし所が見つからない

課題を図示したイラスト

本社や販社、またブランディングやマーケティングなどで部門が分かれていて、会社や部門の垣根を超えた統括機能がなかったり、情報が分断されて連携が難しく、変えるべきことや方向性に見定めがつかない。

Webアクセシビリティをキーワードに解決の糸口を探る

上記のような課題は、どのグローバル企業も大なり小なり抱えているようです。そして、そのほとんどの場合、組織や言語の壁が原因の一つとなっており、課題を紐解き、解決にもっていくことが大変難しい状況になっています。
そこで、上述のように、「Webアクセシビリティ」=「Webサイトで情報を享受できる(しかもしやすい)」と広く捉えた上で、解決の糸口になりそうな観点をご紹介します。
各データの引用元は、Byte Level Research社の「WEB GLOBALIZATION REPORT CARD 2018」です。
「WEB GLOBALIZATION REPORT CARD」は、米国のリサーチ・コンサルテーション会社であるByte Level Research社が、毎年独自の観点でグローバル企業のサイトを調査し、トレンドをまとめて発行しているレポートです。

1. その国の人の言語にWebサイトが対応している

円グラフ : 世界中のインターネットユーザーが使用する言語。中国語 21%、英語20%、スペイン語8%、主要12ヶ国語24%、その他言語27%

まず、ターゲットユーザーに伝わる言語でサイトのコンテンツを提供することは、Webアクセシビリティの一つと考えます。「WEB GLOBALIZATION REPORT CARD 2018」によると、Webサイト群が47ヶ国語に対応したときに全インターネットユーザーの95%に母国語でコンテンツを提供できているとされており、中国語・英語・スペイン語に始まる主要な15ヶ国語に対応したときには、73%に提供することができるとされています。数値はあくまで参考値になりますが、これは、1つのWebサイトでも言えることです。

例えば、国内ブランドのWebサイトをもっているとして、そのブランドのファンは日本語を母国語にしたユーザーだけでしょうか?他の言語を母国語としているユーザーは何%いますか?そのユーザーたちに、情報提供ができていますか?
「WEB GLOBALIZATION REPORT CARD 2018」ではNISSANとHYUNDAIのサイトを紹介しています。NISSANのUSAサイトは、アメリカ英語のみならずスペイン語にも対応しており、HYUNDAIのUSAサイトはアメリカ英語・スペイン語・韓国語・中国語の4ヶ国語に対応しています。(2018年9月現在)

2. コンテンツや画像がローカルの人に親和性の高いものである

適切な情報を、適切なWebサイトで提供することも、Webアクセシビリティの一つです。
日本に本社を構えるグローバル企業の方に、「グローバルサイトは日本サイトの英語版になっている」というお話をしばしばうかがいます。運用コスト面ではメリットがあるかもしれませんが、本来、グローバルサイトと日本サイトとでは、役割やユーザーが異なるはずです。当然、ユーザーに提供するコンテンツも違うものにすべきでしょう。そのサイトを訪れるユーザーやその目的を考え、適切な情報を適切なWebサイトで提供しないと、ユーザーは「このWebサイト自分に関係ない」と思い離脱するため、機会損失につながりかねません。

これは情報のみならず、画像コンテンツにも言えることです。NIVEAは、コンテンツをユーザーに自分ごととして捉えてもらうため、各国サイトでその国のモデルを起用しています(2018年9月現在)。そうすることで、「自分の肌に使えるのだ」とビジュアルで伝えています。例えば、アイシャドウを買いたいときに、サンプル画像のモデルが自分と異なる人種だと、骨格も肌の色も異なるため、全く実際のイメージがわきませんよね。皆さんのWebサイトでは、ターゲットに親和性の高いコンテンツを提供できていますか?

3. ページが軽いと通信環境の悪い場所や環境でもアクセスできる

世界には日本のようには回線速度が速くない国がたくさんあります。例えば、カンボジアでは2G、ブラジルでは3Gが標準です。グローバルでのWebアクセシビリティを考えるなら、テンプレートやページコンテンツはこのような回線速度でもストレスなく閲覧できることが大切です。Googleの2016年の調査(「Think with Google」でも「モバイルサイトにおいて、完全に表示されるまでに3秒以上かかると、53%のユーザーはページを離れる」という結果が出ており、例えばグローバルテンプレートが非常に重い場合、国や地域によっては大きな機会損失につながる可能性があります。

これは日本国内でも言えることです。地下鉄や山奥などでは比較的電波が弱い傾向にありますし、首都圏でもカフェのフリーWi-Fiが遅い、速度制限がかかってしまっているなどの固有の状況も考えられます。皆さんのWebサイトは、どんな環境のユーザーにも、快適に閲覧できるページの重さになっていますか?

4. まとめ

以上、いわゆる規格から求められる「Webアクセシビリティ」とは少し違う目線で、みなさんの課題解決のヒントになるような観点をご紹介しました。まとめると、

  1. 1.その国の人の言語にWebサイトが対応している
  2. 2.コンテンツや画像がローカルの人に親和性の高いものである
  3. 3.ページが軽いと通信環境の悪い地域や場合にもアクセスできる

の3点です。
グローバルテンプレート改修やWebサイトリニューアルの際に迷ったときには、一度、「Webアクセシビリティ」=「Webサイトで情報を享受できる(しかもしやすい)」と広く捉えてみて、この3つのポイントを活用してみてください。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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