【レポート】第2回 HCD-Netサロン

コラム

2009.08.17

8月7日、急に降り出した土砂降りの雨のなか、外苑前にあるアーキテクトカフェで開催された「第2回HCD-Netサロン|Webデザインと人間中心設計 – もの作りとしてのWebデザイン」に参加してきました。

人間中心設計推進機構(通称:HCD-Net)主催の、本イベントが企画された背景には、人間中心設計の概念は組み込み業界やメーカーでは認知されているものの、その主要なフィールドであるウェブデザイン業界では体系的に理解されていないのではないか、という認識があるようです。

そのため、イベントのイントロダクションでは、人間中心設計の概念に関する説明のあとに、ウェブデザインの現場では、ペルソナ法などのHCD概念がそこまで浸透していない、といった問題意識の提示がありました。そしてそこから、仕事としてのデザインにこうしたHCD的なプロセスを盛り込む必要があるのか、また盛り込むとしたら、この部分の仕事を担うのはデザイナーなのか、と言った疑問について、パネルディスカッションが行われました。

パネリストは第一線で活躍しているデザイナー

パネリストは第一線で活躍しているデザイナー

パネリストには第一線で活躍されている

といった魅力的なデザイナーの方々に加え、コンセント代表、またHCD-Netの理事も務める長谷川敦士がモデレーターを務めました。

コンセントには、情報アーキテクチャ(IA)やユーザーエクスペリエンス(UX)を専門としているメンバーがおり、機能性の求められるプロジェクトや、大規模に情報構造やエクスペリエンスフローの変更が加えられるようなプロジェクトでは特に、中心的な役割を担います。その中で、HCD的な考え方や手法は、IA設計やUX検討の業務の中で、日常的に活用されています。そのため、デザイナーの私からすると、HCD的な考え方は、IAやUXを専門としているメンバーが、サイトの情報設計をする時に必要な手法として捉えがちで、そこで使われる手法や専門用語には、少し距離を感じるところがありました。

社外のデザイナーの方々は、普段の業務にどのようにHCD的な概念をとりいれているのか、またそれをどのように言語化してくれるのか、ということを知りたいと思ったのが今回のセミナーに参加したきっかけでした。

小泉さん、宮崎さん、山崎さん、の順番で、これまでに携わったプロジェクトの内容や取り組み方などについてのプレゼンテーションがあり、それらはどれもデザイナー観点からのお話で、普段同じようなことを見たり聞いたりしていながらも、より深く共感してしまいました。

その中でも強く印象に残ったトピックは、

といったことです。

満席の会場。参加者の関心の高さがうかがえる。

満席の会場。参加者の関心の高さがうかがえる。

特に5番目の「デザインする人には、論理的な手法を活用してデザインする人と、センスや体験でデザインする人の二通りいる」という点については、両方のタイプの人をよく観察してみたら、センスや体験でデザインする人も、結局のところ、感覚的にUCD(User Centered Design)ができているという発見があったそうです。

確かに、手法はどうあれ、デザインをするときに、エンドユーザーの事やシチュエーションを考えずにデザインをしたことはないなぁ、と今までの自分の十数年にわたるデザイナー人生を振り返ったりしていました。
(実際には、コンセントに参加するようになるまでは、限りなく感覚に近いところでデザインしてきましたが…)

今回のセミナーでの収穫は、「プロジェクトにおいては、手法はなんであれ、目的の共有こそが大切」ということをはっきりと再認識できたこと。

最初から最後まで一人で全部やるのであれば問題はないけれど、チームを組んでコラボレーションする時には、共通言語を持つことが必要です。その共通言語になり得るものの1つが、手法なのかもしれません。しかし、手段が目的になってしまってはいけないように、手法に踊らされてはいけないし、案件(目的)毎に、最適な手法を提案できるデザイナーでなければならないとも思います。

また、デザイナーではない人の中には、とかくデザインというと、スキルやセンスがないとコメントしてはいけないのではないか、と感じる人もいるようですが、実際にはそんなことはなく、各々の立場で自分なりの気づきや目線をアイディアとしていかにプロジェクトに落とし込んでいけるかの方が大事だと思っています。この落とし込みのために、デザイナーではない人とデザインについて議論するための共通言語として、プロトタイピングなどの手法があるのではないかなとも考えました。

日々デザインに携わっていても、こうしたことについて思い巡らす機会はなかなかないため、HCDという切り口から再認識することができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。