コンセントのミッション


写真:株式会社コンセント 代表取締役社長/インフォメーションアーキテクト 長谷川敦士 写真:株式会社コンセント 代表取締役社長/インフォメーションアーキテクト 長谷川敦士

経済の発展、ITの発達にともない、社会における価値観はより多様化し、企業のビジネスに対しての考え方も、ものづくりからサービス型に変化してきています。また、社会全体としても、消費からより持続的な社会を目指す価値観へと移行しています。そういったなか、デザインという分野も従来のプロダクトや広告から、より広い対象へと広がってきました。
過去10年において、デザインの対象は「もの」から「利用者」へと移ってきました。これは、「Human Centered Design: HCD(人間中心設計)」としてアプローチが研究され、現在、UXデザインのための手法として一般化しています。またHCDの考え方をビジネスに取り入れた「デザイン思考」は、顧客志向およびサービスドミナントロジック型の経営のための手法として普及しています。
そしてデザインの対象は今、「利用体験のデザイン」から「しくみ全体のデザイン」、つまりシステムデザインへと広がりつつあります。複雑な社会全体をどうとらえて、問題を解決に導くのか、システム思考のアプローチとHCDのアプローチが組み合わさり、持続的な社会問題の解決手法「サービスデザイン」として、民間企業と公共機関の双方で活用が始まっています。

人を中心として社会変化に適応し続ける
システムのデザイン

どうしてデザインはここまで領域が広がっているのでしょうか。それは、端的に言えば、デザインというものが「人が触れるもの」を扱っているためです。従来、利用者や運営者などの人の要素は一般化/匿名化され、しくみ(システム)ばかりが着目されてきました。「ビジネスモデル」などがその典型と言えるでしょう。しかしながら、ビジネスモデルにしても行政サービスにしても、利用者、運用者は人であり、その人の要素を考慮しなければ本当に多様化する価値観に適用したサービスや製品は実現しません。
また、本質的な要因として、ネットやモバイル、AIといったITの普及によって、システム自体の変化のスピードが飛躍的に加速しており、従来のように固定化したシステムでは対応しきれなくなってきていることも挙げられます。つまり、人の要素を考慮することでシステム自体を変化するものとして設計し、社会変化に対して常に適応し続けられるようにしなければならなくなっているのです。この観点は、まだ一般的とはいえませんが、ビジネス、経済、社会、教育、そして個人のありかたにまで今後広く影響を及ぼすでしょう。

つくり、観察し、発見する思考法としてのデザイン

また、別の視点で、デザインはその思考方法自体があらためて注目されています。デザインでは、伝統的に「まずやってみて、それから考える」というアプローチがとられます。いわゆる「手を動かして考える」手法です。これは人間の思考が、そもそも考えているだけではある幅から抜け出せないことに対して、一度なにかをアウトプットしてそれを観察することによって我々が自分でも想像していなかったなにかをそこに発見し、インサイト(洞察)を得るという行為と理解することができます。
実は、社会が複雑化し、通常の演繹的な考え方では予測が難しくなっているなかで、この「やってみたことから仮説を生成する手法」は、アブダクション(abduction)型の思考方法として社会全般で必要とされているものなのです。この思考法としてのデザインも、いわゆるデザイン思考と並んでこれからの社会に必携のスキルとなっていくでしょう。

根底にある価値観は「きちんと伝わること」

私たちコンセントは、その前身となる集合デン、アレフ・ゼロの時代から、エディトリアルデザイン、インフォメーションアーキテクチャという「伝えることのデザイン」「わかりやすさのデザイン」に一貫して取り組んできました。商業出版物、広報やマーケティングコミュニケーション、そしてサービス自体と、その対象は異なれど、根底にある思想は常に共通して「きちんと伝わること」の価値を最大化するということです。
私たちは、自分たちの持っているこの「きちんと伝わること」の専門性を最大限に活用して、伝えるもの自体のデザイン、利用者の体験のデザイン、そして新しい領域である社会システム自体のデザインにおいて、社会をより豊かに、そして創造的にしていきたいと考えています。
同時に、まだまだ荒削りながら可能性を秘めている新しいデザイン領域を一般的にするために、実践しながら手法、概念共に進化させていく必要があると考えています。

社会の生態系におけるデザイナーの役割を定義する

現在のコンセントの母体となる集合デンが1971年に創業したときから一貫して取り組んでいることがあります。それはデザインのビジネス化です。言い換えれば、我々の歴史はデザインの社会適用を模索してきた歴史ともいえます。1970年代、日本での雑誌文化創生期において、まだ誌面デザインの価値は市場で認識されていませんでした。そこにおいて、我々はエディトリアルデザイナーという役割を定義し、ビジネス化してきました。同様に2000年代初頭、日本でのインターネット創生期において、インフォメーションアーキテクトという役割を社会に提唱してきました。

プロフェッショナルとして新しいデザイン領域をつくること、これはビジネスとして成立されることであり、すなわち社会の生態系において正しくデザイナーの役割を定義づけることだと思っています。仕事として成立するようになることは、デザイナーという仕事のサステナビリティ(継続性)を担保します。それはすなわち社会のなかにデザイナーを適切に組み込むということであると思うのです。
このデザインのビジネス化は、デザイン会社としての我々の役割であると考えています。
デザインで社会をひらき、デザイン自体の可能性もひらいていきたい、これが私たちコンセントのミッションです。

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