SmartHR社座談会 デザイン組織が考える、“コミュニケーションデザイン”とは?

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    大﨑 優取締役/デザインマネージャー/サービスデザイナー

  • 本間有未

    本間有未コミュニケーションデザイナー/アートディレクター


写真:SmartHRのロゴのオブジェと、座談会メンバー4名が一緒に写っている。

コンセントが支援する株式会社SmartHRのコミュニケーションデザイングループ(以下、コムデ)との座談会記事が、SmartHR社公式noteにて公開されました。タイトルは「急成長の中でコムデが直面した課題と、どうやって解決しようとしているかの話」。

本記事はその後編に当たるもので、組織のフローを改善したコムデの持続可能なしくみづくりや、刷新されたコーポレートミッションとコムデが目指す将来像、コンセントの支援等について語っています。

[株式会社SmartHR コミュニケーションデザイングループとコンセント]
クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を運営する株式会社SmartHR。コミュニケーションデザイングループ(通称「コムデ」)は、サービスサイト、営業資料、動画配信、各種イベントや社内で使用するアイテム、SmartHR Design Systemの運用など、事業に関わるあらゆるタッチポイントのデザインを、他部署と連携しながら取り組んでいる部署です。コンセントは、デザイン制作と並行して業務管理などのしくみづくりなどを支援しました。

“忙しい”を構成する要素を“小分け”にして考える

大﨑 優(以下、大﨑):コムデでは、「安定稼働宣言」という名のもとに、組織の体制を整え持続可能なものにしていく取り組みをされていました(2022年7月)。当時のコムデの現場がどのような状況だったのか、ディレクターのmikityさんの視点から教えていただけますか?

安里美紀さん(以下、mikityさん):1人目のディレクターとして2021年9月に入社した当時は、現状の業務に耐えられるだけのフローはできていたものの、必ずしもそれがベストな状態ではないなと感じていました。会社の急成長やメンバーの急増に耐えきれなくなってきているタイミングで、器に対して乗っている期待が大き過ぎる、みたいな。

大﨑:なるほど、“重い”と。

mikityさん:メンバーが必死に現場を支えている状況をどうにかしなきゃいけないなと思ったのが最初です。膨大な課題を分解して“小分け”にしていくしかないと思い、その作業をbebeさん(編注:コムデマネージャーの渡邉惇史さん)と一緒に始めていきました。「安定稼働宣言」を出したのは、現場のメンバーからも「もう、いよいよやばい」という声が上がり始めて、このまま何もしなければみんなのモチベーション的にも、リソース的にも、それこそ崩壊しちゃうぐらいの危機感をもってのこと。何かアクションを起こさねばと思索し始めたときがコンセントさんにお力を借りたタイミングでした。

大﨑:「“小分け”にする」というのは、具体的にどういうイメージでしょうか?

mikityさん:我々が抱えていた“忙しい”という課題の中には、さまざまな種類のものが含まれていたんですね。業務フローが適切に機能していなかったり、目に見えないタスクが多過ぎたり、それこそ単純に会議体が多過ぎて時間に余裕がなかったりなど。それらが全て“忙しい”という大きな風呂敷に包まれてしまっていたので、一つひとつ分解するところから始めたんです。

大﨑:なるほど、“忙しい”を要素分解していったんですね。コンセントでは、これらの課題をヒアリングして解決策を提案していきました。担当した本間さんはコムデの課題をどう捉えていましたか?

本間有未(以下、本間):人手の足りなさが一番深刻なのはもちろん、作業が属人化しているのも大きな課題だなと思いました。皆さんの個々の能力が高いがゆえに、そこに頼ってしまっている部分が大きいのだなということは、見ていてわかりました。

そうした、組織が大きくなると追い付かなくなる状況に対して、システム化したりやり方を変えたりする必要性をコムデの皆さんも感じていたし、私たちコンセントのメンバーも強く感じたので、そのためにいろいろ支援させていただきました。

さまざまな部署と連携しながら、ボトムアップで進めなければいけない点はすごく難しそうですし、単純に人を増やせばいいというものでもありません。ただ、その解決の準備にもbebeさん、mikityさんが丁寧に取り組まれている印象でしたね。

写真:本間有未が話している様子。

本間有未(株式会社コンセント コミュニケーションデザイナー / アートディレクター)
雑誌、企業の広報冊子、教科書のデザインで得た編集デザインのスキルを生かし、紙媒体やウェブサイトなど幅広くアートディレクションを手掛ける。近年は、組織や事業のブランディング支援プロジェクトなど、領域を問わずコミュニケーションデザインに携わる。好物はお酒とうつわ​​。

まずはたたき台をつくり、議論しながら洗練させていく

大﨑:コンセントからは具体的にどのような提案をしたのか、ぜひ紹介をお願いします。

本間:他部署から見ると、コムデが何をしているグループなのか理解が足りていないところがあったので、コムデに業務を依頼する際に共有してほしい必要な項目や、ヒアリングする際にどういう項目があれば使いやすいかを整理して、クリエイティブブリーフのような形式でコムデが使うヒアリングシートを制作しました。

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ヒアリングシートのたたき台。コムデが他部署から業務の依頼を受ける際、与件の整理をしやすくするために必要な項目を洗い出した。

あとは、プロジェクト対応の中長期のプランを立てる必要があるもののそれを行うリソースが足りていないという課題がありました。それに対しては、プロジェクトに優先度を付けるための基準や、誰がどういうフローで決めるのかといったことを一覧にしたプロジェクト管理表のようなものをたたき台として作成しました。実際に業務で使えるかどうかを検証していくようなこともお手伝いしました。

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中長期プロジェクト管理表は、プロジェクトに優先度を付けるために検討時に必要な項目は何か、どのように表現されていると比較しやすいかを検証した(上:項目の検討過程/下:検討結果をもとに作成した管理表)。

ヒアリングシートも、中長期のプロジェクト管理表も、そのまま使えるものを提供するのではなく、「こういうものがあるといいですよね」と議論するためにたたき台をつくり、それをみんなで試しながらブラッシュアップしていく進め方が多かったなと思います。具体があった方が話を進めやすかったので。

こうしたツール制作支援の他には、共有会や振り返り会、稼働や業務の管理などコンセントで実際にこれまで試してブラッシュアップしてきたこともお伝えしました。そうしたいわゆる「しごとの文化」のようなものもヒントにしていただけましたが、それは「私たちの習慣にも価値があるんだな」という気付きにもなりました。

大﨑:確かに私たちが普段やっていることがお役に立てたのかなという実感はありましたね。mikityさんはどうでしたか?

mikityさん:もう、とっても役立ちました! 今もそのときのヒアリングシートがフォーマットとして運用されていたりします。また、中長期プロジェクト管理表も、マーケティンググループとコムデのプロジェクトの優先順位調整を可視化できたのはすごく大きな一歩だと思っています。

コンセントさんから頂いた知見は、社内でこれから洗練されてSmartHRにフィットする形になっていくと思うのですが、当時はそもそもどこから手を付けたらいいのかわからない状態でした。対話の中で課題を聞いていただき、感覚の中からヒントを拾っていただいて「それならばこういう方法があるよ」「そこにはこんな落とし穴があるんだよね」とアドバイスを頂けたことは、デザイン組織の先輩から教えを請うみたいな感覚でものすごく価値のあることだったと思います。

写真:安里美紀さんが話している様子。

安里美紀さん / mikityさん(株式会社SmartHRコミュニケーションデザインOpsユニット チーフ)
スタートアップやメガベンチャーなど、規模の異なる事業会社でディレクター、コンテンツプロデューサーとしての経験を積み、事業推進ディレクターに。2021年9月から1人目ディレクターとして現職。ディレクションユニットの立ち上げを担う。好物はお酒。

協働の中で得られた、“踏むべきプロセス”の実感値

大﨑:bebeさんはマネジメント視点から見ていかがでしたか? やり方が変わったり洗練されたりしたことで、何か組織が変わったといった実感はありますか?

渡邉惇史さん(以下、bebeさん):自分の身の回りのレベルでの変化はまだわからない段階ですが、僕がコンセントさんと一緒に動かせていただいたところからは、「実感値が得られた」ということを強く感じています。

これまで制作畑にいても制作の方と協働する機会は多くはなかったんですね。それが例えばコンセントさんとミッションのビジュアルをつくったり冊子を制作したりと、いろんな職種の方々と協働させていただいて、「こういうアウトプットをしていただけるんだ」という感覚と共に、「やはり必要なプロセスを踏まないと、いいアウトプットは出来上がらないよね」という実感値を得られたのが結構大きかったなと思います。理解し合ったり伝えたりするためには僕らにも準備すべきものが多分にあるし、僕らの中で理解を深める必要もあるという意味も含んでの“プロセス”です。

大﨑:コンセントのような“他社のデザイン組織”と一緒に動くことで、現場のコミュニケーションや言語化が洗練されていくということはありますね。

bebeさん:そうですね。前職のとき、外部のパートナー会社さんがつくられたドキュメントを見てそのときの自分としてはメッセージに物足りなさを感じたことがあって。感覚的に「これはつくり手の腕の問題ではなく、中の情報が伝わってないんだな」と思ったことがあったんです。どんなにアウトプットをつくる人の腕が良くても、中の情報をきちんと伝えていないと受け手には伝わらない。今回のプロジェクトで問題があったわけではないですが、「やっぱり大事だな」と実感しました。何かをつくっていただくにしてもお願いして終わりではないのはもちろんそうなんですけど、その解像度がものすごく上がったなと。

写真:渡邉惇史さんが話している様子。

渡邉惇史さん / bebeさん(株式会社SmartHR コミュニケーションデザイングループ マネージャー)
制作会社でエディトリアルデザイン、事業会社でデザイナーとしてアプリやウェブのUI・UXから販促物まで広く経験。その後2016年にSmartHRに入社し、現在はコミュニケーションデザイングループのマネージャーを担当。好物はお米。

“守る”のではなく、輪郭があることを“認識する”

大﨑:座談会前編ではコンセントから見たSmartHRさんについてお話しさせていただいたので、後編ではSmartHRさんから見たコンセント像についてぜひ聞かせてください。

mikityさん:感覚的な話になりますが、コンセントさんはわれわれコムデという生まれたてのデザイン組織のお兄さんお姉さん格なんだというのをすごく感じています。われわれが今、泥だらけで四苦八苦しているところをすでに通ってきた人たちなんだなと。プロジェクト中のやりとりから、ドキュメントの整理の仕方まで、「そういうふうにやればいいんだ!」と間近で学ばせていただいているので、先輩っていう感覚です。

大﨑:先輩キャラでしたか(笑)。

mikityさん:そうですね(笑)。あとは、いい意味でフランクに接してくださるので、われわれの社内カルチャーともすごく相性が良かったのかなと個人的に思っていました。

本間:そこは私たちの方がSmartHRさんに多分に影響されています!

大﨑:初めは、クライアントに対して「mikityさん」「bebeさん」って呼ぶなんてって(笑)。

bebeさん:そうだったんですね(笑)。

本間:真似できるところは真似させていただきました(笑)。

bebeさん:ありがたいです。

写真:大崎優が話している様子。後ろで本間が笑顔を浮かべている。

大﨑 優(株式会社コンセント 取締役 デザインマネージャー/サービスデザイナー)
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。2012年にコンセントにてサービスデザイン部門を立ち上げる。大手企業を中心に新規事業開発やブランディング、デザイン組織構築、デザイン人材の育成支援に携わる。コンセント Design Leadershipメンバー。好物はカレーとビール。

大﨑:bebeさんから見たコンセントはいかがでしたか?

bebeさん:mikityさんが「泥だらけ」と言っていた話と近いんですが。これまでは全部その場に合ったものでオリジナルでやってきたんですよね。なので部分ではうまくいっていても結果的にチーム全体は複雑な状態で、マネジメントする立場としても難しさをすごく感じていたんです。でもコンセントさんを見ていて一番感じたのは、「そこに“型”が必要なんだ」ということです。

フローや役割、体制をその場その場で考えてきた自分からすると、“型”があるだけで実は動きやすいんだなと。もしかしたら“型”があることで「柔軟性が失われる」という課題にぶつかるかもしれないですが、逆にいうと自分は“柔軟”でこれまで来てしまっていたので、やはり一定の輪郭をもたせながら仕事は進めていかないといけないなという気持ちに、先輩方を見ていてなりました。

大﨑:型を“守る”というよりも、輪郭があることを“認識する”ということが大事ですよね。

bebeさん:そうなんですよね。ガイドラインというとルールみたいな方向に話がいきがちなんですけど、そうではなくて、そこに線があるからその線を越えるのか越えないのかというように、1つラインをつくるようなことが僕は“型”だと思っています。その中でやるのか、あえて壊すのか行動を選択できる状態にしておくのが組織として必要なのかなと。

コンセントさん像としてはあと、お名前と勝手な印象から「型にはめてピシッと来られるのでは」と思っていたのですが、そんなことはなくて楽しく会話させていただきました(笑)。

大﨑:われわれコンセントのブランディングがちょっと間違えているのかもしれないですね(笑)。

bebeさん:(笑)いや、でも難しいと思うんです。政府から出されている資料の中にコンセントさんのお名前があったりするので、そこから勝手に堅そうな印象を想像していたんですよね。でも一方で、信頼感がすでにあるという良い印象にもつながっていますからね。

“軸のもたせ方”が企業らしさをつくる

大﨑:今回、プロジェクトを一緒に進めていた間に、SmartHRさんのコーポレートミッションが「社会の非合理を、ハックする。」から「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」に刷新されました。私の所感としては、事業がより拡大していく中で、少子高齢化に伴う労働生産人口の減少や人的資本経営といった“人”に注目が集まっている時代において、やることの意義を捉え直して拡大していくというイメージを強くもちました。

同時期に、コムデの全メンバーで行ったディスカッションの場で、「そもそも、コミュニケーションデザインってなんだっけ?」ということを議論できたのもすごく重要だったなと思っています。いわゆるSaaSのプロダクトや企業そのもののブランディングのためにコミュニケーションデザインがあるのではなく、社会で“人が働くこと”のコミュニケーションを変えていくことにデザインの役割がある。そういうところに意識が変化していることが感じられたのは、今回のプロジェクトの中でとても刺激的でした。

本間さんは、コーポレートミッションが刷新されたことによるコミュニケーションデザインの変化や、コムデの動きをどう感じていますか?

本間:ちょうど変わっていく過程を見せていただきました。社会や事業規模の変化によって企業ビジョンもそれに対応できるようにしていかなきゃいけないし、それに応じてデザインも変わらないといけないのだなと感じました。その中でも、SmartHRらしさをどう定義してどう伝えていくか、その品質をどう保っていくかといったところを考え続けていくのだろうと。すでに工夫されているところもすごくたくさんあって、これから出版される本でも紹介されていると思うのでとっても楽しみにしています(座談会は書籍出版前に実施)。

写真:「ちいさくはじめるデザインシステム」書影。

書籍『ちいさくはじめるデザインシステム』(大塚亜周・稲葉志奈 著・編集、金森悠 ほか著  ビー・エヌ・エヌ刊 2023年3月15日発行)。SmartHRのデザインシステムの立ち上げ前から現在までの取り組みをケースとして扱いながら、デザインシステムの構想・構築・運用について一般論を含めて解説している。

取り組みについての発信もたくさんされているのですが、コムデの皆さんがやっていることは、課題の解決に向かうだけではなく、そこに遊び心や自分たちらしさをもたせることをすごく大事にされているなと感じています。かつそこをブレさせないとか、逆に意図をもってずらすという柔軟性もある。

そうした“軸のもたせ方”というのが企業らしさをつくっていくのだなというのを、今回ご一緒させていただいてすごく実感しました。その“軸のもたせ方”がこれからのSmartHRさんの中でどう変わっていくのかも、注目していきたいです。

コミュニケーションデザインとは?

大﨑:最後の質問になりますが、コーポレートミッションの変化を経てSmartHRのデザインやコミュニケーションデザインはこれからどう変わっていくか教えてください。

bebeさん:すごく難しい質問(笑)。

mikityさん:難しい質問ですね(笑)。コーポレートミッションを「well-working」に定めたことで、私たちSmartHRのサービスを提供する対象が本当に広くなったと実感しています。働く人すべてに対象が広がったことで、“働く”は苦しいこと、嫌なことではなく、経済活動や社会に関わっていく良いものであるというような肯定的なイメージや新しさを感じています。

なので、デザインでそれをまたポジティブに変換していけるといいなと思っています。機能的な美しさはもちろんあると思うんですけど、「デザインは“善く働くこと”に貢献できる余地がもっとあるんだよ」ということを、今回のコーポレートミッションの刷新で新しく示してもらったという気がしていて、そこを北極星のように追い求めていけるといいなと思っています。

大﨑:bebeさんはいかがでしょうか?

bebeさん:予想ではなく自分自身の気持ちになりますが、「開拓できる領域が広がった」という印象があります。人事労務の課題も役所の手続きの課題解決というところから始まり、今ではタレントマネジメントという領域のサービスにまで広がっています。そうした中で例えば以前、SmartHRのサービスビジョンが「Employee First. すべての人が、信頼しあい、気持ちよく働くために。」に変わったことをきっかけに、コムデで、人事労務や従業員の皆さまが年末調整を少しでもスムーズにできるようにという思いを込めて「年末調整書類があつまる封筒」をつくるというのを試みたことがあったんです。

というのも、「SmartHRというサービスプロダクトを提供することも大事だけど、そもそも“働く”って、プロダクトを提供するだけじゃ解決できないよね」という課題感があったからなんですよね。当時はその課題に直接アプローチした事例だと思っていました。

写真:「年末調整書類があつまる封筒」の写真。SmartHRのメインブランドカラー(SmartHR Blue)を使った封筒。

年末調整の各種原本書類を従業員が提出することに特化した「年末調整書類があつまる封筒」。2022年度版ではより使いやすくしたり環境負担に配慮した素材にするといった改善が加えられている。こうしたアイテムは「より多くの方々が気持ちよく働ける環境づくりをサポートしたい」という思いで立ち上げられた「SmartHR Store」で提供されている。

ただ、コーポレートミッションが「働くをサポートする」というところから「well-working」になったことで、そこからさらに変わったなと。人事・労務の延長にある“働く”ではなくさらに広範囲の“働く”という、僕たちが耕せる領域が増えてきたなという印象があるんですよね。

人事労務の領域はコミュニケーション側でさえ、取り組める範囲がもっともっとあると思うんですけど、これまでデザインされていなかったところをデザインしていける可能性の変化として見ています。コミュニケーションデザインというものは変わらないかもしれないですが、僕らとしては、もっと取り組むべきことがより増えていくのだろうなと思っています。

写真:コーポレートミッションが掲載されたサイトページのスクリーンショット。Well-workingというメッセージと、人やさまざまな形のオブジェクトが絡み合ったイラストが組み合わさりデザインされている。

刷新されたSmartHR社のコーポレートミッションは「well-working」。このビジュアル制作ディレクションもコンセントで支援(SmartHR社コーポレートサイト「私たちについて」)。

大﨑:そうですね。働くこと自体に対する感覚が世の中的にも変化している中で、経営の領域にもデザインの感性的な部分が根付くことは、デザインが資するところかなと。それがひいては公平性やより良い生き方につながってくるのかなと思いますので、SmartHRさんには日本の社会を変えていっていただけるといいなと感じています。

bebeさん:ありがとうございます。

1つ思い出したことがあるんですけど、弊社でも以前「災害時に会社がどう対応するか」というトピックをnoteで発信したことがあったんですが。それに関連して最近すごくいいなと思ったのが、マネーフォワードさんが「産休育休ガイドブック」を公開されたことです。それもまた一つのコミュニケーションの形なんだろうなと。

mikityさん:私たちの災害時マニュアル(編注:note「地震発生時の安全マニュアルと普段からの備え【随時更新】」も当初は社内用につくろうと言っていたのを、他のグループのメンバーのアイデアで「これをオープンにしたら、SmartHRと似たフェーズの会社の人が助かるよね」とnoteでの公開に切り替えたんです。これもコミュニケーションデザインだったなと。メンバーも見やすいし、社会のためにもなるという具体的な事例ですよね。

bebeさん:本音でいうと、去年あたりから「コミュニケーションデザイングループが」という主語を置く捉え方を自分はできなくなっていて。もっと広く取り組むというか。デザイナーは本当に“デザイン”をする一部なんですよね。災害時マニュアルをつくる際も、マーケティングのメンバーがかなり関わっていましたし。

もっと会社全体視点でっていうとちょっと大げさになりますが、やはりそういう視点をもって体験設計ということにチャレンジしていきたいと思うんですよね。

大﨑:今回、「コミュニケーションデザインとは何か」というのをあらためて考えました。例えば、「企業と顧客」というような二者間のコミュニケーションデザインや、「企業と社会」といった企業を主役としたコミュニケーションデザイン。このようなものはこれからも続いていくと思います。

ただ、今回のプロジェクトで議論されたのは、「企業と〇〇」という視点ではなく、「社会に生きる人々同士」のコミュニケーション。その意味や関係性をより良くデザインしていく行為。企業がそのドライバーとなって、社会を良くする手段として行われるコミュニケーションデザインでした。その主役は必ずしもデザイナーである必要はなく、デザイナーはその場をデザインし協働していくという考え方もあったと思います。

コムデとコンセント。同時代に営むデザイン組織として、「良くデザインすること」を共に探求していきたいですね。

写真:座談会参加メンバー4名の写真。机を囲み、笑顔で会話をしている。

コムデの組織課題やその具体的な対応について語っている本座談会の前編は、下記SmartHR社公式noteをご参照ください。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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