企業や行政と伴走し活動を支えるデザイン会社の株式会社コンセント(本社:東京都渋谷区 代表:長谷川敦士 以下、コンセント)は、消費者をだますウェブサイトやアプリのユーザーインターフェースである「ダークパターン」について、全国18歳から69歳までのECサイトやアプリでの購入経験者799人を対象に、見たりひっかかったりした経験やその際に取った行動、認知・理解度などの実態を調査し、「ダークパターンレポート2023」としてとりまとめました。
調査の実施背景
ダークパターンの問題を顕在化し、個人・企業・行政で取り組める社会に
ダークパターンとは「消費者の自主性や意思決定や選択を覆したり損なわせたりする選択アーキテクチャを、主にオンラインユーザーインターフェースに用いる商法」(*1)を指します。言い換えると、「企業にとって都合の良い行動を取らせるために、消費者をだますウェブサイトやアプリなどにおけるユーザーインターフェース(=利用者との接点)」のことです。
昨今、オンラインで商品を購入したりサービスを利用したりすることは、私たちの生活に欠かせないものとなっています。そのため、ウェブサイトやアプリを介して商品やサービスを提供する企業には、オンラインユーザーに対して安全・安心を担保する利用環境を提供することが求められます。しかしながら、消費者をだますこの「ダークパターン」がウェブサイトやアプリなどに使用されてしまっている場合があるのも事実です。2023年4月に発表された東京工業大学のケイティー・シーボーン准教授の研究室の調査結果によると、調査対象とした国内主要アプリ200個のうち9割にダークパターンが使用されていたことが明らかになっています(*2)。
また、国外では法規制が強化されダークパターンの使用により企業が提訴されるケースも増えている一方、日本国内においては消費者庁をはじめとした行政機関で検討が始まっているものの、ダークパターンを直接的に取り締まる法律がない状況です(2023年11月時点)。
ダークパターンは、消費者の捉え方に依るところもありダークパターンかどうかの基準を明確に設けるのが難しいことなどから、法規制だけですべて対応しきれる問題ではありません。そのために、法規制と同時に、企業は意図せずにダークパターンを使ってしまう危険性があることを理解した上で組織として防止に努めること、そして消費者はダークパターンの存在を知り、だまされないよう身を守ることが必要となります。
そこで今回、国内でいち早くダークパターン研究に取り組み、社会に問題提起してきたコンセントでは、ダークパターン問題のさらなる顕在化と、消費者一人ひとりがダークパターンについて知り考えるきっかけとなることを目的に、ECサイトやアプリでの購入経験者を対象としてダークパターンの経験や認知・理解度などの現状について調査しました。
ダークパターンは、消費者に直接的に何かを強制することもあれば、気がつかれないよう巧妙に心理を操ってくることもあります。そのため、消費者の目からすべてのダークパターンを捉えることはできません。そうした構造的な制約が前提とはなりますが、本調査では消費者の目にはダークパターンがどのように映っているかを明らかにしています。
*1:
をもとに、コンセントにて日本語で要約。*2:
本調査において使用したダークパターンの種類と調査方法
本調査ではOECD(経済協力開発機構)による分類(*3)をもとに、代表的なダークパターンについて7つの事象とイラストを例示して、それぞれについて見たことやひっかかったことがあるかについて聞きました。また「見たことや経験したことがある」と回答した人には、その際に取った行動についても質問しています。
*3:
をもとに、コンセントにて日本語で要約。■調査概要
[調査手法]インターネット調査
[調査時期]2023年8月
[調査対象]ECサイトやアプリなど、インターネットを介した商品購入やサービスの利用、またはサブスクリプションサービス利用の経験のある、18歳から69歳までの国内在住の消費者799人
調査結果のハイライト
【ハイライト1】約7割がダークパターンを見たことがある
【ハイライト2】4割強がダークパターンにひっかかったことがある
【ハイライト3】4割強が「ダークパターン」を聞いたことがある
【ハイライト4】3割弱がダークパターンの規制強化について聞いたことがある
【ハイライト5】ダークパターン対策、1位「自衛」、2位「国の取り締まり強化」、3位「ECなどの企業対応強化」
【ハイライト1】約7割がダークパターンを見たことがある
- ECサイトやアプリでの購入経験者の約7割が、例示したダークパターンのいずれか1つでも見たことがあると回答。
【ハイライト2】4割強がダークパターンにひっかかったことがある
- 例示したダークパターンのいずれかに1度でもひっかかったことがある人は4割強。「意図していなかった商品の選択」「小さな文字をよく読まずに商品を購入」「繰り返し表示されるポップアップにしかたなく『はい』を選択」といった経験があると回答。
- ただ、ダークパターンそのものを知らないとダークパターンであることが認識できないことから、「ひっかかったことはない」と回答した人の中には、そもそもダークパターンであることに気づいていない人が一定数いると考えられる。そのため、実際には結果数値以上の人がダークパターンにひっかかっていることが想定される。
【ハイライト3】4割強が「ダークパターン」を聞いたことがある
- 回答者にダークパターンの概要について説明した後に、これまで「ダークパターン」という言葉を聞いたことがあるか、理解していたかについて質問をしたところ、「具体的に理解している」と回答した人は16.6%。
- 「聞いたことはあるが、具体的なことは理解していない」(28.2%)と合わせると、ダークパターンという言葉を聞いたことがある人は44.8%と半数に迫った。
- 昨今、ダークパターンに関連した海外での摘発事例などが日本国内でも報道されたり、消費者庁をはじめとした行政機関でも取り締まりを強化したりしていることから、ダークパターンという言葉を耳にする機会が増えていることが考えられる。
【ハイライト4】3割弱がダークパターンの規制強化について聞いたことがある
- 国内外でダークパターンの規制が強化されていることについて知っているかを聞いたところ、海外での規制・国内での規制ともに3割弱が「ニュースやウェブなどで見たり聞いたりしたことがある」と回答。7割強は「見たり聞いたりしたことはなく、まったく知らなかった」。
【ハイライト5】ダークパターン対策、1位「自衛」、2位「国の取り締まり強化」、3位「ECなどの企業対応強化」
- ダークパターンにだまされないために必要なことを聞いたところ、1位は「自分たち利用者がだまされないために気をつけること」(76.3%)で、2位は「国が取り締まりを強化する法律を整備すること」(71.8%)。さらに、7割強がネットショッピング等を運営する企業に対して「ダークパターンを使わないように取り組むこと」を求めており、3位となった。
- 「報道機関がニュース等で取り上げることで消費者が知る機会を増やすこと」も6割を超えた。ダークパターンはその存在を知らないと認識しづらいため、防止策の強化とともに認知を広げることも急がれる。
総括
企業に対し、倫理的な姿勢がますます問われる時代に
本調査担当:川崎実紀(株式会社コンセント UX/UIデザイナー)
本調査の中でOECDによる分類の中から典型的なダークパターンについて例示し、見たことがあるかについて調査したところ、ECサイトやアプリでの購入経験者の約7割が「見たことがある」という結果となりました。真に巧妙なダークパターンは、消費者自身が操られていることにすら気がつかないことを加味すると、実際にはさらに多くの人がダークパターンを見ていると考えられます。
また、ダークパターンに関する知識をもっているほどダークパターンに気がつきやすくなることもわかりました。ダークパターンは認知バイアスを利用し、消費者を巧妙にだますように仕組まれています。ダークパターンによる被害を未然に防ぐためには、ダークパターンというものがあることをまず認識して、気づけるようになることが消費者にとっては重要です。
オンラインでの商品の購入やサービスの利用は、すでに私たちの生活インフラとなっています。安全な購入行動を脅かす仕掛けが張り巡らされている現在の状況は、決して看過されて良いものではありません。
本調査を実施した2023年8月時点では、ダークパターンについて具体的に理解しているECサイトやアプリでの購入経験者は16.6%にとどまりましたが、ダークパターンに関する報道は増えてきており、多くの消費者がダークパターンを理解している未来はすぐそこに来ています。今後、ウェブサイトやアプリなどのオンラインでサービスを提供する企業の倫理的な姿勢がますます問われることになるでしょう。
■調査結果の詳細レポート
レポート「ダークパターンレポート2023 ECサイトやアプリでの購入経験者799人への意識調査」では、本プレスリリースでご紹介したハイライト5つのほかに、OECDの分類をもとにした代表的なダークパターン7つの事象それぞれについて、見たりひっかかったりした経験とその際に取った行動についての調査結果をまとめています。
レポートはコンセントサイト内「資料ダウンロード」ページよりダウンロードいただけます。
https://www.concentinc.jp/download/d010