新卒から高度デザイン人材を目指す デザインストラテジストへの挑戦

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    鈴木芽依デザインストラテジスト/デザイナー

「コンセントで、新卒からデザインストラテジストになる第1号を目指しませんか?」

私、鈴木は大学では生物学、大学院では理科教育学を学び、2024年4月にコンセントへ入社しました。3カ月間の新卒研修を終えて部署に配属された直後、上司の大﨑さんからかけられたのがこの言葉でした。

それから1年半。私と大﨑さんの2人で、高度デザイン人材の育成について振り返り、語り合いました。

コンセントのコミュニケーションスペース「amu」を背景に、鈴木と大﨑が写るメインビジュアル。

大﨑 優
取締役/デザインストラテジスト/サービスデザイナー

2024年に新設された、デザインによる人材開発・組織開発を支援するOrganization Design groupのグループマネージャーも兼任。

鈴木芽依
デザインストラテジスト/デザイナー

2024年4月にコンセントに新卒入社。Organization Design groupの一員として、デザイン人材育成のプロジェクトに従事。

「デザイン」という仕事を把握するためのプロセス

鈴木:1年目の頃、新卒にしては難度の高いプロジェクトを担当しているねと言われることが多かったです。大﨑さんはどのようなことを考えて私の業務を設計していたのですか?

大﨑:鈴木さんが目指しているのは、高度デザイン人材の一つ、デザインストラテジストです。

対談の様子。デスクを囲んで話す鈴木と大﨑。

高度デザイン人材
不確実性や複雑性が増す現代の社会・ビジネス環境において、未来の姿を構想しながら事業課題を創造的に解決できる人材を指す。その育成促進を目的として、2019年には経済産業省より「高度デザイン人材育成ガイドライン」が公表された。
なお、高度デザイン人材は、これまでのデザイン人材よりも立場的、技能的に優れているというわけではない。経営や組織戦略などの視点を強みとしながら、デザイナーと同じ立場で協働し、課題解決に導く人材といえる。

デザインストラテジスト
「高度デザイン人材育成ガイドライン」において、組織を俯瞰し、デザインの視点を経営や戦略に統合する人材として位置付けられている。コンセントでは独自のスキルマップに基づき、下記のように定義している。

経営戦略とDX・人材戦略・デザイン戦略を合致させ、企業組織の変革や成長に向けたロードマップを描き、その実行指揮を執る。デジタル化の進展や価値観の変化など社会変化の動向を踏まえ、俯瞰的・統合的・長期的に企業組織のあるべき姿を描く。組織構成員が主体的に動き、継続的に組織能力を高めうるビジョンを開発し、その浸透や文化形成にも貢献する。デザインの活用を最大化する組織設計や人材育成の企画・実行を担う。(コンセント 技術マトリクス2025年度版より

大﨑:鈴木さんは成長のためにやるべきことの見通しがついていると思っていたので、あまり細かいことは言わず、「視座を高める環境」を整えることを意識しました。

一定数のデザイナーが想起する仕事の全体像は「依頼から納品まで」ですが、デザインストラテジストはより広い経営的・組織的視野で、もっと手前から考える必要があります。そのため、「デザインで何ができるかの言語化」「デザインによる成果の言語化」、そして「マーケティングの視点からデザインに必要な領域を考えること」の3つをやってほしいと思っていました。

だからこそ、細かいことを言わなかった一方で、鈴木さんには少しストレッチをかけた環境で、仕事の全体像をおぼろげながらも見えるような経験をしてもらうよう働きかけていました。

鈴木:確かに、早い段階で責任ある範囲を任されたことで、2年目の今、「次、どのようなことをやるべきだろう」が考えられるようになった感覚があります。

加えて、プロジェクトの推進にあたり、納得できる根拠をもって決断していく力が強化された気もしています。「まだ経験が少ないから……」と下手に出るのではなく、決断に自分の思いをのせて伝えていく力の下地はできたのかなと。

大﨑:実は育成の過程で、周囲から「厳しい」と指摘されることがありました。でも私は、その要求水準の高さからくる厳しさを正しいと思っていました。

デザインストラテジストを含む高度デザイン人材は、たとえデザインの専門教育を経ていなくても、デザイナーに対してディレクションをしないといけない場面があります。その際、デザインストラテジストが生半可だったら、デザイナーは「わかっていない」「言うことを聞きたくない!」となってしまいます。だからこそ、デザインストラテジストとして初期段階でデザインの本質と向き合う厳しいプロセスが必要だと考えていました。

鈴木:なるほど。私は特に厳しさは感じていませんでした。それは「間違えたとしてもフォローしてくれるから大丈夫」と思える関係性を大﨑さんが常に示してくれていたからかもしれません。

1年目にはディレクション業務を担当したり、ロゴデザインを行うメンバーに加わったりしました。私はデザインの専門教育を経ていませんが、担当したからには「とりあえずなんでもやってみるぞ」と、がむしゃらに取り組んでいた半面、「こんなに失敗ばかりで自分は大丈夫なのだろうか」と弱気になってしまう場面も多々ありました。それでもどうにか投げ出さずに業務を完遂した経験は、デザインストラテジストとして不可欠なものだったと感じます。

デザインストラテジスト育成における「研修」の役割

大崎が話している様子。

大﨑:鈴木さんの1年目の主な業務は、企業向けデザイン研修のサポートやファシリテーションでした。実は、この「研修」こそがデザインストラテジスト育成の鍵になると考えています。

鈴木:どういうことでしょうか?

大﨑:かつて私は、同じく高度デザイン人材であるサービスデザイナーの育成にも携わっていましたが、大変苦労しました。サービスデザイナーはデザインに加え、事業戦略もテクノロジーも理解しないといけません。そのためにやることが膨大なので、仕事に対する成長の実感や手応え、アイデンティティをもてずに辞めてしまうメンバーもいました。

そんなサービスデザイナーの育成において光明となったのは、リサーチ業務です。リサーチ業務では、問いを立ててさまざまなデータを見つめ、クライアントの意思決定を支援します。これをサービスデザイナーの成長の足がかりとして位置付けられたことで、徐々にコンセントのサービスデザイナー育成を安定的に行えるようになりました。

今の鈴木さんの様子を見ていると、サービスデザイナーにおけるリサーチ業務のような位置付けの業務は、研修ではないかと思っています。

鈴木:確かに。クライアントから依頼される研修の仕事は、部署や組織全体での人事戦略とひも付いていることが多々あると感じていました。人事戦略や経営戦略そのものにも介入し、伴走支援していくデザインストラテジストの第一歩として、「デザイン研修」という仕事が位置付けられるということですね。

大﨑:その通りです。先ほどはストレッチをかけた話をしましたが、実は鈴木さんには常に気を使っています。高度デザイン人材の育成は産業全体に共通する課題です。そんな中でコンセントで育成の好事例を出さないと人材供給が追いつかないばかりか、少し極端ですが日本の産業全体を駄目にしてしまうという危機感があるからです。

鈴木:一個人の成長の話ではなく、業界や社会全体につながる取り組みなんだと聞いて、身が引き締まります。

デザインを体得する時間軸

鈴木が話している様子

鈴木:研修プロジェクトで実際の参加者を支援する中で、「デザインしていく上での姿勢を自分の解釈でもって腹落ちし、息を吸って吐くように実践したり、他者に伝えたりすること」、つまりデザインの身体化って難しいな……と感じています。

大﨑:デザインの身体化というと?

鈴木:研修でデザインを教える立場として、教科書通りの言葉や、飾られた言葉だけでは参加者に響かない難しさを感じます。デザインの専門教育を経ていない私が、これまで培ってきた土壌にデザインをうまく融合させて、私のポジショニングだからこそ伝えられる言葉をどう生み出していけるのか常に模索しているのですが……。

大﨑:だったら、「デザインすればいいじゃん」と思いますね。ロゴデザインのプロジェクトを担ってもらったのも、そのためのいい機会だったと思っています。自分がデザインしたものに批評や否定が加わると生じるネガティブな感情は、強い当事者性と内発性を伴う。それを経験することができたと、プロジェクトの終了後に鈴木さんも言っていましたよね。

デザインを身体化することで、デザイナーの気持ちが理解できるようになる。これは、先ほど言った、デザインストラテジストのディレクションを踏まえて創造する立場を理解することにもつながっています。だから仕事でもプライベートでも、どんなに稚拙でもいいから「つくって見せる」行為をどんどんやってほしいです。思いを込めて創造性を発揮することを、急がずにやっていく。

実務で重ねてもらっている研修ももちろん、一種の身体化のきっかけだと思います。引き続き実践しつつ、デザインの身体化を焦らないことが大切です。

鈴木:大﨑さんの話を聞いて、今、私はとても焦っていることに気づきました。自分が「デザインできていない」と感じる状況に直面すると、「できていない自分は駄目なんじゃないか」と落ち込んだり、卑下したり。そうなると普段の業務を遂行する中でも「できない」が尾を引いて、どうしてもそちらに思考の容量が割かれてしまうことさえありました。

大﨑:私がデザインを始めたのなんて、16歳ですよ。そこから高校と並行して美術予備校で3年、美大で4年、そしてプロとして20年以上やっています。焦らずに自己革新を繰り返して、デザインを「楽しい」と思えることが重要なので、デザインの身体化は5年や10年かけてもいいんです。デザインストラテジストとしては、「デザインが好きか、自己革新を繰り返していく中で楽しいと思えるか」も大切です。だから鈴木さんがデザインを好きかどうかは気になっています。

鈴木:デザインは好きです。特に、多様な分野を接続できる「普遍性」と、専門的な「特殊性」が両立しているところが好きです。

最近は、システミックデザインに惹かれています。システミックデザインは、デザイン思考とシステム思考のいいところどりをしたものですが、かつて私が学んでいた生態学にルーツをもちます。そんなシステミックデザインを足がかりにデザインをもっと理解して、ますます好きになっていきたいです。

大﨑:そうですね、システミックデザインを起点に、デザインをさらに深めていくのもいいかもしれませんね。

対談中に走り書きされたメモ。システミックデザインについての気付きが書かれている。

自分のポジションを俯瞰的に把握する

大﨑:鈴木さんは実務を通して気付きを得ること、そして私はその気付きから、デザインの社会的価値を磨いていくことがそれぞれの役割だと思っています。そこにはデザインのバックグラウンドの有無は関係ありませんが、ここまで話していて、鈴木さんはデザインの専門教育を経ていないことを気にしすぎているのかも、と思いました。

鈴木:確かにあるかもしれません。デザインとは違うところで学んだことを強みにしていかないといけないプレッシャーといいますか。

大﨑:ポジショニングとして、バックグラウンドの違いを強みに変えることは大切だと思います。ただ、それが鈴木さん自身の言動や行動を縛ったり、相手にミスリードさせてしまったりする場合には、バックグラウンドに固執しない方がいいかもしれませんね。

鈴木:私がやりたいのは領域横断的なことで、だからこそ学生時代の専門領域を越境してコンセントに入社しました。ポジショニングを強く意識しすぎてしまうと、私がやりたかったことと正反対である分断を招きかねないので、何事もバランスを意識したいなと思いました。

大﨑:うん、そう思います。

「ポジショニング」といえば、鈴木さんは今、日本の産業的にとても良いポジションにいると思いますよ。現在、携わっている大手企業のDX推進施策などは、日本の産業における最前線の現場です。その中で動いている人たちがどのような気持ちで、何につまずいて、どのような成果を出していて、そしてどう学びを実業務で生かしているのか。これは実際に関わっている鈴木さんにしかわからないことで、これを知っていることは、日本というスケールで見たときにとても良いポジションにいると思います。

日本の産業を底上げするためにも、最前線の課題感や、切迫感も含めて普遍化していくこと、ミクロの事象をマクロにまで広げていくことは、研修実務に携わる立場だからこそできることだと意識して今後も取り組んでほしいです。

鈴木:日々の現場で感じたことを丁寧に捉え、言語化し、広げていく。その積み重ねを大切にしていきたいと思います。

鈴木と大﨑が対談している様子。俯瞰から見下ろしている。

対談を終えて

人材、経営、そして産業という大きな枠組みでデザインを捉えること。デザインのプロセスにひたむきであり続け、デザインを身体になじませていくこと。高度デザイン人材になるには、この両輪を駆動させることが大切であると再認識しました。実務を通じて得た経験を自分なりの言葉に変換していくことで、少しずつですが成長の道筋が見えてきたように思います。

デザインストラテジストを目指して2年目。実務経験も視野も、はたまたデザインへの向き合い方もまだまだ途上ですが、焦らずに成長点を自らに見いだしながら進んでいきたいです。

二人が対談している様子。にこやかに話している。

[ 執筆者 ]

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コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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