「意味づけ」と「仲間づくり」が組織変革の鍵 竹中庭園緑化×コンセントの土壌づくりの取り組み

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    長沼千夏コンテンツデザイナー/コンテンツストラテジスト

長い歴史をもつ企業にとって、組織変革は簡単なことではありません。これまで築いてきた成功体験や文化は、企業の礎である一方で、変革の難しさの源にもなり得るからです。

では、どうすれば大切なものを守りながら組織を動かすことができるのでしょうか。

創業から約半世紀を迎える株式会社竹中庭園緑化は、フラワーギフトから、オフィスや施設の屋内緑化、屋上や外観などの屋外緑化まで、植物に関わるあらゆるサービスを展開しています。そして今、可能性をさらに広げようと変革に向けて取り組み続けてきたことが、実を結び始めています。

コンセントでは、その変革に向けたアプローチの一環として、会社案内やコーポレートサイトの制作、チーム・組織の変化の土壌を育むコミュニケーションツール「プレイフルボックス」を活用したプログラムの開発・実施を通じて、支援を行っています。

本記事では、支援を担っているコンセントの叶丸恵理と中條隆彰、組織変革を推進されている竹中庭園緑化の油井愼子さんとの鼎談を通して、組織を動かすヒントを解き明かしていきます。

記事のメインビジュアル。竹中庭園がオープンしたポップアップショップ「sooca(ソーカ)」の店内で、3名が鼎談を行う様子。

成功を積み重ねてきた企業が、なぜ変わろうとしているのか

中條:はじめに、竹中庭園緑化さんの事業内容と油井さんの役割について教えてください。

油井:竹中庭園緑化(本社:東大阪)は、1977年に創業した花とみどりに関わるサービスをトータルで提供する企業です。観葉植物のリース、造園工事、植栽管理、ブライダル、販売事業など幅広く手掛け、現在は250名以上の社員が在籍しています。

私自身前職は、広告・人材企業に勤め、システム運用や業務改善、組織デザインに携わっていました。竹中庭園緑化には、2012年にブライダル事業のアルバイトとして転職、その後正社員として東京オフィスの企画デザイン部門の立ち上げを任され、さまざまな企画提案業務やブランディングを実施。そして各役職、部門長を経て2025年に取締役に就任しました。

現在は組織づくりを中心に、ブランドと組織を一体で俯瞰しながら、会社全体の基盤を整えていく役割を担っています。取り組みを進めていく中で、自分たちだけで完結するのではなく、外部の知見も取り入れながら、さらによりよいカタチを模索したいと考えていました。

笑顔で会話をする油井氏

油井愼子/YUI Shinko(株式会社竹中庭園緑化 取締役)
大学で彫刻を専攻し、水族館の擬岩制作に従事。その後、広告・人材企業にてシステム刷新や組織デザイン、業務改善など多岐にわたるプロジェクトを経験。リアルなものづくりの現場を再び求め現職へ転職。入社当初はウエディング装飾の現場に身を置きつつ、東京の企画部門立ち上げや店舗開発、全社のブランディングを担ってきた。「こうなったらもっといい」という自然体の視点で、職人気質の社風に寄り添うゆるやかな組織改革を推進。クリエイティブな感性と論理を融合し、時代の潮流と現場の空気を調和させながら、事業と組織を心地よい形へと整えている最中。

叶丸:コンセントと竹中庭園緑化さんの出会いは、コンセントが出展していた総務やマーケティングなど、バックオフィス系の展示会だったんですよね。

油井:そうでしたね。竹中庭園緑化にはクオリティの高い技術をもっている社員が多くいるんですが、長い歴史の中である意味固定化されてしまった考え方が壁になり、時代の変化に合わせながら文化や認識をアップデートすることが苦手になっていました。そういった課題もあり、情報収集のための展示会に行ったんです。

基本的にみんな職人気質で専門知識や技術・熱量がとっても高いんです。一方で花とみどりへの思いが強いからこそ、それぞれが目の前の仕事に集中して取り組んでいれば大丈夫と思っている側面もありました。そんな中、会社規模や事業の拡大に伴い、社内の体制を整えようとしたとき、マネジメント経験の少ない社員が部門長を任されることになったんです。今までは職人気質ならではの一致団結感というか、先輩の背中を見て覚える師弟関係のように組織が成り立っていて、しかもその風土で問題なく過ごしてこれていました。でも、時代の流れとともにそれだけでは難しくなってきて、マネジメントを任された部門長もどうしたらよいのかわからず大変だったと思います。

叶丸:なるほど。長い歴史があり、さらに成功体験が積み重なっていくと、組織に根づいたやり方や価値観が強く残り、新しい取り組みや変化の必要性に気付きにくくなることがあります。加えて、組織が拡大して役割や責任が増えるにつれ、これまで暗黙の了解や個人の裁量で回っていたやり方だけでは対応しきれなくなってくる。

現代は変化のスピードが非常に速いため、社員一人ひとりが自分で考え、判断して動く力がますます求められます。その中で、これまでの文化や価値観と求められる役割との間にギャップが生まれ、戸惑いや混乱を感じることも少なくありません。こういった状況は、成長企業ではよくある課題ですよね。だからこそ、会社として方向性や仕組みを整備し、役割を明確にしていきながら共通認識を形成する必要があります。

叶丸が話している様子

叶丸恵理/KANOMARU Eri(株式会社コンセント UX/UIデザイナー/デザインストラテジスト)
2018年にコンセントへUX/UIデザイナーとしてキャリア入社。以降、コーポレートサイトなどの設計・デザインや、サービスデザイン支援プロジェクトのビジョン構築、ブランディング支援など、領域を問わず幅広い業務に携わる。社内ではマネジメントをはじめ、採用や人材育成にも関わり、組織づくりに貢献。現在は2024年に発足のOrganization Design groupに所属し、デザインを通じた人材開発・組織開発に取り組み、企業や行政の価値向上を目指した伴走支援を行う。

油井:まさにそうで。私は中途採用で入社したのですが、当時の会社の印象を例えるなら、気軽に変えられない防波堤でしょうか。

「何十年もこの方法でやれてこれているし、なんとなく変えたほうがいいのもわかっているけれど、それが今なんだろうか」と思っている社員は少なくなかったと思います。
でもおっしゃる通り、これからの時代ではなかなか立ち行かないのでは?と感じていましたし、経営層も危機感をもっていたと思います。これはもうガッツリ会社の方向性を決めて動いていかないと変われないのではと思い、ブランディングと組織変革一体となって取り組んでいこうと思いました。

組織の中で固定化した考えや関係性をほぐすために

油井:個人的には、内部の小さな力だけでは難しく、外部パートナーの力を借りてブランディングとともに組織を一気に変える方がいいのではと思っていたのですが、社内の事情ですぐにはじめるのは難しく。ただ、コンセントさんと関わりを保っていれば、きっといつかどこかで次につなげられる気がしていました。

中條:最初はなかなかタイミングが合いませんでしたが、満を持して会社案内を刷新されることになり、コンセントが制作を担当することになりました。

叶丸:その制作期間のミーティングの冒頭で、「プレイフルボックス」を使ったアイスブレイクをやっていたんですよね。

中條:会社案内のプロジェクトが始まった頃、コンセント社内でもチームづくりに課題を感じていて、メンバーとの相互理解を深めながら創造性を発揮できる仕掛けとなるプレイフルボックスの開発に取り組んでいました。

竹中庭園緑化さんとは本格的に一緒に仕事をするのは初めてでしたし、油井さんからも「今までとは違う新しい会社案内にしたい」という要望があり、アウトプットを完成させるまでのプロセスがより重要になると考えました。具体的には、毎回の打ち合わせの冒頭に5〜10分ほどの時間を設け、テーマを変えながら自己紹介ワークを実施し、人となりを知るだけでなく、メンバーそれぞれの興味関心や独自の視点、物事の捉え方が自然と共有されていくことを意図しました。こうした取り組みを重ねることで、会議の場には心理的安全性が生まれ、思いついたアイデアを気軽に発言できる雰囲気が育っていきました。その結果、メンバー一人ひとりの持ち味が生かされた、これまでにない会社案内をつくることができました。

自由なテーマの写真を選び自己紹介を行うワークのワークシート。ひまわり、ゴルフ、砂漠、遊園地などの写真を参加者が選び、自己紹介をしている様子。

プレイフルボックスの自己紹介ワークの例。こちらは、チェックインの時間で行った「2つの写真を使って自分の意外な一面を紹介する」ワーク。

叶丸:実際にやってみて、いかがでしたか?

油井:面白かったです。ついつい話し過ぎて本題の議論の時間が少なくなってしまったときもありましたが、今思うとしっかりと関係性を築いていく余白や遊びがあったからこそ、私たちも安心して前に進めていけた気がします。後日、一緒に参加していたスタッフが社内のミーティングでまねしたりして。「30秒でお互いを褒め合いましょう」など、早速取り入れて盛り上がっていました。

叶丸:コンセントは、プレイフルボックスを社内外問わずたくさんの人が使えるツールとして開発を進めてきました。アイスブレイクを通じた関係性づくりはもちろんですが、実践を重ねる中で、対話の質や組織内の相互理解に変化が生まれることを実感してきて。そうした手応えを得るうちに、文化の醸成やブランディングと連動した組織変革にも寄与し得ると考えるようになりました。組織開発支援を行う立場としても、そこはぜひ取り組みとしてチャレンジしたいと。

中條:以前より竹中庭園緑化さんが組織変革に取り組んでいたことと、会社案内制作でプレイフルボックスを楽しんでやってくださったことも相まって、より組織変革に特化させたプログラム、「プレイフルボックスキャンプ」を部門長のみなさんに向けて実施することになりました。

中條が話している様子

中條隆彰/CHUJO Takaaki(株式会社コンセント クリエイティブディレクター/デザインストラテジスト)
「遊び心」を起点に新しい可能性をカタチにするクリエイティブディレクター。これまで、分野を問わず企業やサービスの課題解決に向けたブランドコミュニケーションに従事する。近年では組織変革に向けた、企業や組織のビジョンやパーパス策定から、変革の土台となる仕組みづくりや組織文化の醸成など、人や組織の可能性の土壌をたがやす支援に取り組む。

叶丸:部門長間の連携が十分とはいえない、という構造的な課題があったことが背景にありましたね。経営層からすると、部門長会などで組織のありたい姿や将来の方向性について議論し、意思を擦り合わせてほしいという期待がありました。

ただ現実には、日々の目前の課題や業務対応が優先になりがちで、そのままでは部署間で意思決定や行動にブレが生じかねません。もちろん短期課題への対応は重要ですが、部門長が組織全体の方向性や価値観をそろえ、共通認識をもつことで、社員が変化や新しい取り組みを理解しやすくなります。
だからこそ、マネジメント層が長期的な課題に向き合い、組織の基盤を整えることが、会社として社会に価値を安定的に提供し続けるためには欠かせないのです。

油井:そうですね。部門長世代の目線がそろわないと、社員のみんなもどう動いたらよいのかわからないですし。まずはそこを何とかしたい気持ちはありました。

叶丸:組織をより良くしていくには、制度や仕組みといったハード面と、文化や人といったソフト面の両方を意識することが重要ですよね。例えば、社員同士の関係性や信頼といった土壌がまだ整っていない状態で、制度やルールだけを整えても、みんなで同じ方向を向くことが難しい。だから私たちはまず、そこのソフト面の関係性をいかにほぐして、対話や理解の場をつくっていくかを重視しています。プレイフルボックスキャンプはチームや組織が変革の一歩を踏み出せるような、変化の土壌を育むプログラムになっているんです。

組織の構造を木に例えた図。葉っぱ=事業・プロダクト、幹・枝=制度・仕組み・組織構造、根っこ=企業理念、土壌=組織文化を表している。

日頃の制約や責任を突破する

中條:プログラム設計のために、まずは課題の洗い出しを行いました。油井さんからは事前に、「社長は変革に向けて意欲的に活動されていて、部門長の方にもいろいろメッセージを伝えてはいるんだけれども、部門長のみなさんからの納得感を得られていない」ということを伺っていたのですが、実際に部門長のみなさんとお話をする中で、その具体的な背景が見えてきました。「社長からのメッセージに対して共感することや疑問に思うことはあるものの、それを表立って周りに言いづらくなっている」という状況があったことです。そして意見を交わし合えないが故に、部門長同士の認識もずれてしまう。

一方で、みなさん口をそろえてお互いの技術力や人の良さをリスペクトしていたり、会社愛の強さを感じられたりすることもあって、そこは強みだなと思いましたね。

油井:みんなほんと優しすぎるんです。疑問など感じても遠慮して黙ってそのまま過ごしてしまう。そして「???」を抱いたまま過ごしていくうちに、風船のようにふくらんでいつかパチンと割れてしまう。そのパチンとなるタイミングを早めて、今回のプログラムで発散させつつ、擦り合わせできたことは良かったなと思います。

叶丸:そうですよね。あらためてですが、プレイフルボックスキャンプは、寄り道と対話から始める、チームの関係性を育む土壌づくりのための集中プログラムです。通常業務から一歩離れた「非日常の場」で、チームや組織が持続的に成長していくプロセスを示した理論の「成功循環モデル*」を土台に関係・思考・行動を段階的に高めていきます。自己理解から共通言語の創出、具体的なアクション設計へとつなげ、人と組織の変化を生み出す転換点となります。そういった点からも、先ほど油井さんがおっしゃっていた効果につながったのではないかなと思います。

*マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱。「関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質」という循環で組織の成果が生まれていくという考え方。

関連記事|竹中庭園緑化 寄り道と対話による組織の未来探索プロジェクト

今回のプログラムは大きく分けて4つありましたが、特に印象的だったものはありますか?

油井:印象的なのはやっぱり、Day2の、組織のありたい姿を創作したところですね。みんなものづくりが好きなので、コミュニケーションをとりながら実際に手を動かすことがとても楽しかったと思います。マネジメントの業務が増えるとその時間も減ってくるので、プログラムの中でも一番イキイキしていたと思います。

4日間のワークショップの流れを示した図。Day1「自分の根っこを深掘る」、Day2「組織の空気を揺さぶる」、Day3「未来への種を言葉にする」、Day4「アクションを根づかせる」という段階で、自己認識から組織の 想い・アクションにつなげていくプロセスを示している。
ワークショップの様子をまとめた写真。参加者がモールや紙などの素材を使って作品を制作し、テーブルで作業したり完成した作品を発表している様子。

「あなたが会社で働く意味や理由をオリジナルの植物で表現するとしたらどんな色や質感、かたちになる?」というお題をもとに、それぞれ作品をつくり、対話する時間を設けた。

中條:ワークでは、部門長のみなさんが自分たちの目線で、竹中庭園緑化で働く理由や、理想の未来を意味づけして考え直してみようということをやりたかったんです。でもそれをストレートに「じゃあ考えましょう」と言われても、これまでに形成された考え方の枠から出るのは難しい。そこで、何か別のモチーフを媒介することで、新しい解釈が生まれることが狙いでした。

私たちは本来、日々の出来事に意味づけをしながら生きていると思うんです。新しいことに出会うたびに、自分なりに解釈し、納得したり、共感したりしています。けれど、会社のような一つの枠組みの中に長くいると、そこにあるルールや前提に適応して、新しく意味づけをする機会が少なくなってしまう。一方で、生き物も組織も、新陳代謝を繰り返すことで生き続けていくといわれています。外部環境が変わり続けるからこそ、その変化をどう捉え、どう意味づけるかが大切になる。その積み重ねの中で、自分に合った働き方や、これからの組織のあり方が、少しずつ見えてくるのだと思います。

油井:実際にやってみると、「そこを課題に思っていたんだ」とか、「そういうことをやりたかったんだ」といった気付きがありました。みんなが同じことを考えていたとわかる場面もあれば、これまで知らなかった思いや考えにも触れることができ、改めて共通認識をもつとともに、新しい発見も得られたのが良かったです。面と向かって話すだけだとなかなか言いづらいけど、みんなでゲーム感覚で楽しく対話しながら、リラックスした環境だったからこそ自然と出てきた思いだったのかなと。

私たちはものづくりの会社でもあるので、やはりみんな個の経験を活かして、手を動かし、新しい価値をチームでつくりあげていくのがよい姿なんですけれど、組織が大きくなればそれぞれの責任やルールも膨らんでしまい、なかなか自由に動きづらくなる。しかしプレイフルボックスでその姿が自然と引き出せたのはすごく良かったです。

3名が会話する様子。

ほぐれた関係性から生まれる社員の成長

中條:最後のプログラムでは、組織のありたい姿と、それに向けた小さなアクションを宣言・実行してもらいました。プレイフルボックスキャンプを実施してから2カ月ほどたちましたが(2025年12月取材時点)、社内で何か変化などはありましたか?

油井:コミュニケーションは増えていると思います。あと、ゆるやかにですが、部門長から社員への仕事の任せ方が変わってきたように思います。こうしなさいと指示を出すのではなく、可能な限り自分たちで考えてもらったり、新しい意見を取り入れてみたり。もちろん装飾の現場も、部門長や経験豊富な方が考えたり動いたりするほうが安心なんですが、それをあえて若手に任せフォローにまわり、お互い安心感を築いていく動きも見られるようになりました。

中條:実施直後のアンケートでは、コミュニケーションや関係性にまつわるアクションに取り組みたいと書いてくれた人が8割くらいだったので、まさに実践してくださっているんですね。

油井:少なからず今までは自分たちが慣れているやり方のほうが失敗もないし、合理的だったと思います。だた、自分たちのまわりだけではなく、他との関係性にも目を向け、さらにそれぞれの立場を超えたコミュニケーションを増やしてくれていることは嬉しいですね。

叶丸:プレイフルボックスキャンプを通して対話することの重要性や価値を、身をもって感じてくださったんですね。

油井:あと、部門長同士、組織の課題や理想の未来など、実は同じようなことを考えていたんだとわかったことも、それぞれが行動を起こす上での安心感につながったんだろうなと思います。

油井氏が話す様子。

変革を前進させるキーパーソンとアクション

変革の輪を広げる「グル」を増やす

叶丸:油井さんは変革の取り組みを画策する、いい意味での「グル」を増やすみたいに(笑)、社内外問わずうまく周りを巻き込んでいますよね。

油井:そうですかね。でもコンセントさんもグルにしましたね(笑)。

叶丸:なりました(笑)。組織変革のご支援をする中で、一人で旗を振っても限界があると何度も感じてきました。以前ご支援した別の企業でも、最初に声を上げてくださったマネージャーの方に加えて、現場で信頼を集め、「組織を良くしたい」という思いをもつ若手の方をあえて巻き込み、ボトムからも動きをつくるようにしたんです。さらに人事の方にも入っていただいて、組織全体を俯瞰する視点で補完してもらう。内発的な動機が互いに影響し合い、立場の異なる当事者が交差する場を意図的に設計することが重要だと、あらためて感じました。そうすることで、単発の施策ではなく、持続する変化へと熱量高くつながっていくんです。

油井さんは本当に自然体で周囲を巻き込まれていますが、やはり仲間づくりは偶然ではなく、意識してされてるんでしょうか。

油井:たぶん意識してますね。一緒に動いてくれる仲間は増えているものの、やはり目の前の仕事もあるし、正直時間もかかるし、なかなか腰は重くなってしまうと思います。であれば、タイミングを見計らって、同じ課題について外部から客観的にアドバイスしていただければ、物事は動き出すだろうなと思っていたので、外部から変革を仕掛けてくれるグルを増やしたかったというのは確かにです。

叶丸:今回このプロジェクトがうまくいっているのは、油井さんのようなキーパーソンになる方がしっかりコミットしてくださっているのが大きいです。

中條:確かに、油井さんは中途入社されているので、社員としての内部の視点と、前職での経験も踏まえた外部の視点を行き来して変革のバランスを取っていらっしゃるように感じます。変えるべきではない伝統の部分と、変えるべき暗黙の風習を見極めて行動されているのがすごいなと思いますね。

中條・叶丸が油井氏の話を聞く様子。

新しい取り組みを怖がらせない、前向きな呼びかけ

叶丸:プレイフルボックスキャンプのような新しい取り組みって、慣れていないと抵抗を感じる社員の方もいると思うのですが、そういった方に対して油井さんが働きかけたことはありますか?

油井:毎回コンセントさんから宿題を出してもらっていたので、社内チャットの中で「もうすぐだよ!やったの?」みたいな感じで、ある意味夏休みの親みたいに振る舞ったりしてましたね(笑)あまり肩肘張らず、参加しやすい、参加したら楽しいことがあるぞ!的なアクションはしたかもしれないです。

叶丸:組織変革の文脈だと立場のある方からそういう働きかけをしていただくのがすごく大事なので、とてもありがたかったです。

油井:おそらく社長や経営層からの指示だったら、ちょっとした緊張感も起きてしまうのはどこも一緒だと思いますが、みんなに近い立場の私やグルから「みんなで楽しくやってみよう!」って呼びかけるだけで、グッとハードルは下がり取り組みやすくなるだろうなと思います。

世代・立場の垣根を超えた新しい変革の仕掛け

叶丸:今日、鼎談会場としてお邪魔しているポップアップショップ「sooca」も、組織変革の一つだと思っていて。正式オープン前の内覧会へ伺った際に、販売の方に加えて当日は営業や現場の方もお店に立っていらっしゃったのがすごく印象的だったのですが、立ち上げの背景を伺ってもよいですか?

油井:本社がある大阪には販売事業があり店舗が複数あるのですが、東京にはありませんでした。東京で販売事業の部署を置くとなれば、売り上げが立つ部署づくりが必要になります。でも今の東京には、高い技術力があり経験豊富なメンバーもいれば、新しい価値観をもつメンバーもいる。それなら、新しい部署を立ち上げなくても、世代や立場などお互いの関係性を上手に利用し合い、その強みを掛け合わせて協力しあったら意外とできるんじゃない?と、実験的な感覚で進めていきました。そういうところでは、おっしゃる通り組織の変革に一役買っている店舗になっているのかもしれません。

soocaの店内。さまざまな観葉植物、花瓶や生活雑貨が販売されている。

竹中庭園緑化が2025年9月より期間限定でニュウマン高輪にオープンしたポップアップショップ「sooca(ソーカ)」。植物そのものに加え、植物と心地よく暮らすための雑貨やアイテムを多数取りそろえ、「植物と人とのあたらしい関係を提案する場」として出店した。

小さな変革を積み重ね、あるべき姿に近づいていく

叶丸:あらためて、今回のプレイフルボックスキャンプやその後のアクションを振り返ってみていかがでしたか?

油井:やりたかった方向に確実に向かっていると思います。企業によってはトップダウンで一気に変われるところもあると思いますが、うちはそうじゃなかった。ゆるやかにみんなの考えやメンバー同士の関係性をほぐして、爆発的に変えるというよりは、自分たちで意識しあって土壌を整えていくことがマッチしているんだなと思います。

叶丸:小さな成功体験を積み重ねていって、気付いたら変革につながっていたというのもありですよね。

油井:ただ、その成功体験もゆるやかすぎると時代のスピードに追いつけなくなるので、ここぞというタイミングでグッと前に進められるよう、しっかり土壌を整えてタイミングを逃さないように準備していきたいです。

今回部門長世代は、思いを表に出したこと、同じ気持ちで同じ方向を向いていたというのがわかって、バラバラかもと思っていた関係性がひとつにまとまったのは良かったと思います。だけど今度は世代ごと、縦のコミュニケーションロスは残っているのを私も社長も感じていて、さらに若手世代同士も今までの部門長と同じように認識がそろってないので、その世代にプレイフルボックスキャンプを体験してもらって、縦と横の関係性も整えていけたらと。やはり常に組織は変わっていくので、継続して変革に取り組んでいくことが大切かなと思います。

中條:まさにその通りですね。組織をキャリアで大きく分けると、ベテラン層・中堅層・若手層に分かれますが、良くも悪くも関係性が偏りやすいものです。だからこそ、定期的に縦・横・斜めの関係性をほぐしていくことが重要だと考えています。今回は主に組織のソフト面にフォーカスした取り組みでしたが、ハード面の成果をしっかり支えるためにも、組織が持続的に循環していく土壌を耕し続けることが欠かせません。

叶丸:そうですね。制度やブランドなど目に見えるところだけ変えても、やはりその中で働く方々が意味を理解して動けないと本質的な意味での変革は難しいので、今回油井さんとその部分の意義について同じ志をもって取り組めたのはわれわれにとってもすごく大きな経験になりました。

油井:今回のプロジェクトを通して、劇的に変わることだけが変革ではなくて、社員一人ひとりが考え方をほぐし、想像し、それらが融合することで、少しずつでも心地よいスピード感で組織のありたい姿に近づける、それも変革の一部なんだなということが実感できました。

観葉植物に囲まれた店内で、3名が会話をしている様子。

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