創造性のある組織をデザインする 土壌づくりのツール「プレイフルボックス」

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    中條隆彰クリエイティブディレクター

メインビジュアル。プレイフルボックスのロゴと実際のワークシート、チームメンバーが話し合う様子のイラストが組み合わされたビジュアル。

コンセントは、ミッションに「デザインでひらく、デザインをひらく」を掲げています。
先人がつくり出した知識体系を活用する役割にとどまらず、社会のためにデザイン技術や知識を開発していきたい。ひいてはそれが、誰もがデザインできる社会の実現につながり、より良い世界をつくるきっかけの一つになると考えています。

「デザイン技術や知識を開発する」という抽象的なテーマの探索・研究活動を事業活動と同等に推進すべく、私たちは「知識創造とデザインの民主化」と銘打ったイニシアチブ組織をつくり活動しています。

組織の持続的な成長を支える コンセントの「イニシアチブ組織」

今回の記事では、クリエイティブチームの成果として、組織(チーム)の創造性を引き出すコミュニケーションツール「プレイフルボックス」を紹介します。

創造性は現代ビジネスの重要な要素

2023年度の期初、私たちクリエイティブチームは、下記のような目標を掲げ活動をスタートしました。

「創造性を発揮する土壌をつくるための仕組みをプロトタイプし、社内外で実践する」

ビジネスシーンにおいて、現在のような将来が予測しにくいVUCA時代には、変化する状況に柔軟に対応し、既存の仕組みや考え方に縛られない「創造性」が必要だといわれています。

創造性という言葉は、さまざまな意味で使われ、受け取られ方も人によって異なります。多くの人は、創造性を「新しいアイデアや価値を生み出す能力」と考え、これは特別な才能がある一部の天才だけがもつものだと思いがちです。しかし、実際には創造性は生まれつきのものではなく、誰でも後から身に付けることができる能力だとされています。

「フロー理論」を提唱した世界的に有名な心理学者ミハイ・チクセントミハイは、「クリエイティビティはもはや少数派のためのぜいたく品ではなく、全ての人にとっての必需品となった」と語っています。

創造性は、誰もが身に付けることができ、自分が思うより身近にあるものです。社会全体に影響を与えるビッグアイデアやイノベーションも創造性の一例ですが、日常生活や仕事を少し良くするための「ちょっとしたアイデア」も、立派な創造性の表れだと私は思います。
実際、私たちは毎日、試行錯誤や工夫を重ねながら生活しています。このような行動そのものを創造性と考えると、ビジネスと創造性の関係が少し近くに感じられませんか?

創造性は、個人だけでなく組織にとっても重要な要素になっています。変化の激しい時代には、これまでのように一部の優れた個人に頼る統制型の組織から、さまざまなメンバーと協力しながら価値を生み出す、自律共創型の組織への転換が求められています。

しかし、私たちの働くビジネスの現場は本当に創造性が発揮しやすい環境になっているでしょうか。実際には、創造性が失われやすい要因が多いこともあります。
例えば、仕事を進める中で、遠慮して意見を言えなかったり、余計な忖度で議論が深まらず簡単に結論が出されたり、失敗を恐れて規定の枠組みにとどまったり、リモートワークの普及で偶然の出会いが減ったりすることがあります。こうした問題に向き合い、組織で創造性を発揮するにはどうすればよいでしょうか。

創造性のある組織とは

創造性が十分に発揮される組織とはどのようなものか、私たちは以下のように考えています。

組織の創造性を高める7つの要素が記載されている。組織の創造性はこれらの要素が相互に関連し影響し合っているため、関係性をマネジメントしていくことが重要。
  • 心理的安全性
    誰もが安心して自分の意見を言える環境があり、挑戦における失敗もプロセスの一部として受け入れられる状態
  • 余白の設計
    既存のルールや制約から離れるための余白があり、豊かな暗黙知が育まれる環境や仕組みが確保されている状態
  • 人材の多様性
    さまざまな視点を持つ多様なメンバーが集まり、価値観や考え方の違いを尊重し合いながら活躍できる状態
  • 自発的な行動
    一人ひとりのメンバーが自分の役割を理解し、社会と組織における存在意義を感じながら主体的に行動できる状態
  • 実験的な挑戦
    実験的に小さな試行錯誤を積み重ね、目的や手法にこだわらず柔軟に新しいアイデアを試し続けられる状態
  • 曖昧さ耐性
    不確実な状況に直面したときに、すぐに答えを見つけるのではなく、曖昧さを受け入れ、長期的な視点で物事を見ることができる状態
  • 探求的な対話
    メンバーが探求的に問いに向き合い、好奇心に根差した対話の往復を通じて、より良い解決策を共に紡いでいくことができる状態

これらは全て、組織が世の中の変化に適応し、価値を生み出し続けるために必要な要素だと考えています。

組織の在り方や進むべき方向を考えるとき、必ずしも厳格なルールや管理体制を浸透させることが最善とは限りません。枠組みが固定されると、最適化が進む一方で、組織が硬直化するリスクが高まります。強力な統制は短期的な課題に対処できるかもしれませんが、新たな変化に適応しにくくなる危険性もはらんでいます。

だからこそ、組織を固定化されたものではなく、変化し続ける存在として再認識する必要があります。その変化を生み出すカギが「創造性」です。既存の枠組みにとらわれず、柔軟な考え方が根付いている組織こそ、創造性に富んだ組織といえるでしょう。

ただし、創造性は自然に生まれるものではありません。創造性を引き出すためには、メンバーが自発的に動きたくなるような「環境」や「場」といった土壌を整えていくことが重要です。メンバー同士の関係性に目を向け、対話を通じて主体性を高めることが大切です。こうした環境が整うことで、答えのない問いにも真摯に向き合えるようになります。

そして、このような自発的な活動が続くことで、やがてそれが組織文化として根付いていきます。これが、「創造性のある組織」の理想的な姿だと考えています。

組織の創造性を引き出すために

2024年3月、私たちは組織の創造性を育む環境づくりを支援するツールとして、「プレイフルボックス」を開発しました。

プレイフルボックスのテンプレート。チームメンバーで共同でアイデアを出し合えるオンラインホワイトボード「miro」を使用。お題となるワークシートが並んでいる。

プレイフルボックスより、実際に使うワークのテンプレートの一部。

Miroテンプレート「プレイフルボックス」(どなたでも無料でご利用いただけます)

https://miro.com/miroverse/playful-box/

プレイフルボックスには2つの特徴があります。

1つ目は、仕事に「遊び心」を意図的に取り入れる。

最初にお伝えした「日常をちょっと良くするアイデア」も、「こうすればもっと面白くなる・楽しくなるのでは?」という遊び心が出発点となっています。ただ、私たちはつい仕事は真面目に取り組むべきだと思いがちですよね。けれど、変化の激しい時代には、既存の枠にとらわれない遊び心がとても重要です。

とはいえ、遊び心をゼロから取り入れるのは難しいこともあります。そこで、プレイフルボックスというツールを使うことで、仕事の中で少し違ったアプローチを試したり、自己開示をしやすくしたりして、硬直しがちなチームに余白を生み出すことができます。

2つ目は、「人と人との関係性」を中心とした創造性の土壌づくり。

創造性を引き出すためには、方法や施策に頼るだけでなく、チームがその力を発揮できる環境を整えることが大切です。誰もが本来もっている創造性ですが、組織内でその機会が失われていると、表層的なフレームワークを導入しても効果はあまり期待できません。

そこで、普段はあまり注目されない、プロジェクトの進行過程における人と人との関係性に目を向け、長期的な視点で組織やチームの土壌を豊かにしていくことが必要です。
プレイフルボックスは互いを受け入れやすくする“ちょっとした工夫”によって、安心できる関係や環境をつくり、創造性が発揮しやすい場づくりをサポートします。

私たちにとってプレイフルボックスは、組織の創造性を高めるための最初の一歩です。
これからも、創造性豊かな組織づくりを実践的に支援しながら、理論の体系化を目指していきたいと考えています。

ワークシートの例:プロジェクトの開始時に、チームメンバーの自己紹介をするシート、自身の特徴をグラフに表すシート。プロジェクトの進行時にもやもやポイントや褒めポイントを洗い出すシート、プロジェクト終了時に、振り返りをまとめる、仕事を通して見えた景色の変化をまとめるシートなど。

プレイフルボックスのワークシートの一部。プロジェクトの過程に合わせて「はじまり、なかば、おわり」の3つのパートに分かれ、メンバーと共有・対話することで、相互理解を深めることができる。

ワークシートの例:好きなひらがなについて発表するシート、オンラインボードの付箋を貼って、自分の気持ちを絵にするシート、好きな写真を2つ選んでその写真を元に自分の意外な一面を紹介するシートなど。

アイスブレイクなどで活用できる、ドリルpartのワークシートの一部。打ち合わせの冒頭などにワークを実施することで、場や考え方をほぐしながら、プロジェクトに遊び心を取り入れることができる。

ワークショップの会場の写真。参加者が、プレイフルボックスのお題を元に記入している様子。ワークの内容をグループごとに発表している。

プレイフルボックスのドリルpartを実際に活用したワークショップの様子

[ 執筆者 ]

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事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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