UXを企業戦略に取り入れる意味とは
- サービスデザイン
- UX/UIデザイン

Summary
2017年9月、米国ボールダーにて企業UX戦略に関する国際カンファレンス「UX STRAT USA 2017」が開催された。その背景として、そもそもなぜUXを企業戦略に取り入れることが重要視されているのかについて改めて考える。
また10/23(月)には、UX STRATのReduxイベントを開催する。
Points
- 企業が顧客に提供する製品やサービスの「価値」は受け手によって判断されるものであり、その「価値」は受け手自身の「体験」によって受け手の内面に生まれる
- 企業戦略にUXデザインを取り入れることとは、受け手にとっての「価値」を最大化する一貫した「体験」を提供することをねらいとして、それを継続的に実現するためのアプローチをプランニングすることである
- UX STRAT USA 2017では、Google、Amazon、Disney、Dropbox、Facebookといった有名企業が登壇し、各企業におけるUX戦略やUXデザインの実践例が共有された
こんにちは。サービスデザイナーの川原田です。
2017年9月、米国ボールダーにて企業UX戦略に関する国際カンファレンス「UX STRAT USA」が開催され、参加してきました。
企業UX戦略とひとことで言っても、企業の形態や扱う製品・サービス、あるいはビジネスモデルの違いなどによって、そのアプローチは実にさまざまです。このカンファレンスでは、各企業がUXデザインを自社なりに戦略に取り入れるにあたっての考え方や具体的な事例が実践者によって共有され、毎回さまざまな角度から議論がなされています。

今回の開催場所となったボールダーシアター
では、そもそもの話として、なぜUXデザインを企業戦略に取り入れることが重要といえるのでしょうか。根本的な部分に少しさかのぼって考えてみたいと思います。
製品・サービスの「価値」は誰が決めるか
まず、製品やサービスの「価値」について考えてみます。
BtoBであれ、BtoCであれ、企業が顧客へ提供する製品やサービスの「価値」は、提供側である企業が一方的に決めるものではありません。その「価値」の大きさや有無は、受け手によって判断されます。
オークションなど特殊な場合を除き、通常、具体的な金額を設定するのは提供側となる企業ですが、それに見合った「価値」があるか否かを判断するのは、それを購入する側です。
したがって、実は「価値」とは受け手によって変動する相対的なものであるといえます。
「価値」に影響を与える「体験」
そのように考えると、企業として他社にはない強みを打ち出し、市場で生き残っていくためには、自社の視点や業界の基準でどれだけ良い製品やサービスを提供できるかではなく、受け手がその「価値」を最大限感じられるようにするにはどうすれば良いか、という視点に立脚することが必要となります。
そしてその「価値」は、受け手が製品やサービスによって得る「体験」を通して、受け手の内面に生まれます。その「体験」の違いこそが、受け手にとっての各製品・サービスの特色であり、さらに言い換えると、それを提供する企業のブランドそのものであるといえます。 よって、受け手の「体験」をデザインすることは、製品やサービスの「価値」を形作ることと密接に結びついており、どのような固有の「体験」を生むかが、市場での差別化を図るための重要な要素になります。

むしろ固有の「体験」を生み出すことが可能な製品やサービスでなければ、それは受け手にとって他社の製品やサービスと交換可能なものとなってしまい、事業としての継続が困難になってしまう要因にさえなり得るでしょう。
一貫した「体験」を継続的に提供するための戦略立案
一方で企業戦略とは、どのようなビジネスの仕組みや組織によってどのような製品・サービスを開発・生産・流通させ、どのような受け手に対してどのような「価値」を届けるかのプランであるともいえます。
そして、このプランにおいて最も重要なのが、最終的に届けるべき「価値」の存在であり、これを形作る手段として、先述の通り「体験」のデザイン=UXデザインが有効であると考えることができます。さらに、受け手にとっての「価値」を最大化するためには、提供する「体験」にブレがなく、一貫したものである必要があります。
つまり、企業戦略にUXデザインを取り入れることは、受け手にとっての「価値」を最大化するための一貫した「体験」の提供をねらいとし、それを継続的に実現するためのアプローチとして、ビジネスの仕組みや組織、製品・サービスそのもの、そしてその受け手となるターゲット像についてプランニングすることを意味します。

では、なぜ近年になって、UXデザインを取り入れた企業戦略が重要視されるようになってきたのかといえば、市場における製品の飽和や受け手側のニーズの多様化によって、これまでの自社視点での戦略立案だけでは競争力を失ってしまう状況になりつつある点を指摘できます。 受け手側の視点に立つことで、それまでフォーカスする対象が主に自社の提供する製品やサービスであったものが、それによって生み出される「価値」へと移り、検討領域がより本質的な部分にシフトしてきたといえます。
グローバル事例にみる企業UX戦略
少々回りくどい説明になってしまいましたが、以上が、なぜUXデザインを企業戦略に取り入れることが重要なのか、に対する私なりの回答です。
これを読んで、各企業がどのようにUXデザインを実際に企業戦略に取り入れているのかについて関心を持たれた方は、今回のUX STRATのReduxイベント(報告会)を10/23(月)に恵比寿にて開催しますので、ぜひご参加ください!(宣伝)
(2017年11月16日 追記:本イベントは終了しています)


今回は、Google、Amazon、Disney、Dropbox、Facebookといった有名企業が登壇する豪華なイベントとなりました。扱われたトピックとしては、例えば以下のようなものです。
- Amazon prime nowをスピーディーに立ち上げるために、どのような考え方のもと開発プロジェクトを推進したか
- Disneyのモバイルアプリ制作にあたって、世界各国に共通した世界観のサービスとして提供するためにどのような戦略をとったか
- Facebookが多様なリーダーシップを育てるために、組織における男女差についてどのように捉えているか
UX STRATのReduxイベントでは上記のより具体的な話に触れつつ、各企業がどのような観点でUXデザインを取り入れ、実践しているのか、できる限りそのエッセンスを共有できればと考えております。
ご参加、お待ちしております!
本記事は、コンセントが運営するオウンドメディア「Service Design Park」にも掲載しています。
http://sd-park.tumblr.com/post/166526499021/uxstratusa2017 ※2021年8月2日に運営を終了しています。