共創と変化を生む場所

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  • 千々和 淳amu ディレクター

Summary
コンセント Service Design Div. は、2017年より恵比寿の amu(あむ)というオフィスに活動拠点を移しました。その目的は、ビジネスやプロジェクトの進め方において起きている「共創」という潮流に柔軟に対応できるようにすることです。その結果、働くスタイルだけでなく、個人のマインドセットからプロジェクトの進め方など、あらゆる場面で以前と明確に比較できる変化が起きました。そんな、Service Design Div. にとって「共創」を生む働き方を叶えた場としての amu をご紹介します。

Points

  • 共創が可能な環境は、単なる「作業しやすい」オフィスではなく、フレキシブルなスペースであることが重要。
  • 共創的な場では、コミュニケーションベースで運営することによって、スタッフの多様性と自律性が維持される。
  • 働き方のデザインは、ステークホルダーも含め、ハード・ソフトの両面から多角的に取り組むことで、提供するアウトプットの品質向上につながる。

こんにちは。Service Design Div.(以下、SD Div.)にて「amuディレクター」という肩書きでamuを運営している千々和淳です。
今回は、SD Div. が2017年から活動拠点にしているamu(あむ)というオフィス/イベントスペースでの活動内容と、それによって変化を迎えている私たちの働き方などについてご紹介します。

ビジネスと共に働く環境も変化する

発足して5年目となるコンセント SD Div. にとって、ここ数年はこれまで以上にビジネス全体に起きている変化を感じています。製造の時代からサービスの時代へ、といった世の中の変化はもちろん、企業から提供される「一方的な価値」よりも、顧客やステークホルダーを巻き込んで共に創る「持続的な価値」とそのプロセスが重視されつつあります。
そんな潮流の中、事業や組織をデザインするためのプロジェクトが共創的であることはもちろん、プロジェクトの仕組みの面だけでなく、それが実現できる環境づくりも重要だと強く感じていました。そこで、コンセント SD Div. が共創的にプロジェクトを進めるのに必要な環境・場づくりのポイントを以下のように整理しました。

  • ある程度の人数が収容でき、さらに共同でアイデアを出し合うなどのワークができるスペースも確保する
  • アイデアなどをすぐにカタチにできるよう、個人が集中して作業ができる場をつくる
  • 機密性が担保されながらも、リラックスして会話(インタビュー)などができる空間がある
  • ワークスペースや設備がフレキシブルに使える

SD Div. のメンバーは2017年1月から現在のamuへの移転を実施し、上記のポイントをハードとソフトの両面からそれぞれ反映してカスタマイズしてきました。ここからはそれぞれの空間を紹介しながら、移転を経た今も改善・改良を続け、日々変化している amu という場所での「共創的な場づくり」を通して見えてきたことを綴ってみようと思います。

amu 所在地:コンセント本社のある恵比寿にあり、代官山駅と恵比寿駅の中間に位置します。

amu 外観:京都駅を設計したことでも有名な原広司氏によって設計され、建築を学ぶ学生さんたちを引率した建築士の先生が見学に訪れることも度々あります。

amu 入口内部:建物の入り口の脇にはグループ会社のビー・エヌ・エヌ新社とフィルムアート社からコンセントのメンバーが選出した書籍を設置。来訪者は購入することも可能です。

「共創」のスペース:ホール

2F建てのamuは、1Fが共創に必要な「連携」「オープン」「インタラクティブ」を可能にする場、2Fがプロトタイプに必要なカタチをつくるための「集中」の場、という2つの場で構成されています。実際に建物を訪れたときのように、まずは1Fからご案内します。

amu 1Fでワークショップを行っている様子

これまでのプロジェクトでもワークショップは実施されていましたが、ビジネスの流れがより共創的な価値へと向かう今、ワークショップはプロジェクトメンバー以外のステークホルダーだけでなく、時には顧客を招いて実施されるなど、規模や人数が増える傾向にあります。
amu 1Fのホールは、そうした数十人規模での共創的なプロジェクトワークを実施するためのスペースとしても活用できます。参加人数や目的に応じて自由にレイアウトを変えられるフレキシブルさ、そしてカテドラル効果があるとされる吹き抜けのオープンさによって、ワークショップやディスカッションの創造性をより高めることができます。

amu 1Fで勉強会を行っている様子(講義形式のレイアウト)

ワークショップだけでなく、デザイン業界の方や新しい分野を切り開いている外部の方を招いての勉強会や共有会、社内の交流会やキックオフミーティングなどにも活用され、オープンなアクティビティが可能なスペースです。ワークショップやイベント以外の時は、椅子とテーブルを並べ、通常のデスクワークを行うスペースとして、フレキシブルに活用しています。広いスペースを活用して、歩きながらアイディエーションをしている人もいたり…(よく考えるとより広い本社オフィスでは歩き回りながら考える人はいませんでした)。

普段の業務の様子

コミュニケーションのスペース:ラウンジ

amu 1Fでのコミュニケーションをより濃密に促進するのは、ラウンジと呼ばれるスペースです。決して広くはないこの小部屋も、ガラス壁となっているおかげで開放感をキープしています。特徴的なのがコーヒーミルや焙煎機の並ぶバーカウンター、その向こうにミラーを背にして並ぶワインやリキュール。通常のミーティングなどにも使われるラウンジですが、バーにいるようなリラックスした雰囲気を活かしてデプスインタビューなどを実施すると、通常の会議室ではつくりにくい和んだ雰囲気で実施することができます。インサイトをつかむためのコミュニケーションには「安心感」が重要ですが、それは調査者やインタビュアーの言葉づかい、表情などはもちろん、環境によっても左右されることは実体験として誰もが理解できることではないでしょうか。

ミーティングや交流会に活用されるラウンジ

このスペースも、夜には仕事を終えた社員がお酒を飲みながら読書をしてインプットをしたり、大きなディスプレイを使ってみんなで映画を見て社内の交流を深めたり、外部の方を家に招くようにもてなして情報交換をしたり、帰省したときのお土産を持ち寄って小さなキッチンを囲み、社内イベントを開催したり…といった、主にコミュニケーションや知識を深める場として活用しています。ホールと同様、クライアントとのプロジェクトの品質向上だけでなく、コンセントの会社全体のコミュニケーションを支える1つの場所だと考えています。

「集中(Concentration)」のスペース:パーソナルスペース

2Fは1Fよりもやや狭く、個人作業に適したレイアウトになっています。これは、プロトタイピングを重視するというコンセントとしてのプロジェクトの進め方に寄り添い、素早くカタチをつくるために集中ができるスペースとして必要な空間です。低めに設計された天井は集中力を高める効果があり、そういった作業に適しています。また、ノイズを遮断するための扉や、ある程度の機密性を担保するブラインドなども設置し、1Fのホールで共創的に生み出されたアイデアやコンセプトをすぐにカタチにするのに利用しています。

amu 2Fのパーソナルスペース

ミーティングをするためのスペースは1Fだけでなく、2Fにもあります。そこは個人作業をするだけにとどまらず、壁一面をホワイトボードのように使えるなどの工夫を凝らすことで、グループワークにも対応できるフレキシブルさも担保しました。ある程度の機密性が維持された空間なので、プロジェクトのブースとしても活用しています。その他にも、1Fのホールで開催されるイベントをオンラインで配信するためのPAブース、くつろいで作業のできるソファが設置されたスペースなどがあります。
2Fはスポットごとでそれぞれの個人作業やディスカッションの形に多様に対応した空間と機能をもっています。

新しい意味を編む場所

amu の活用の仕方として最も特徴的なのは、メディアとしての側面かもしれません。
そもそも、この“amu”という名前は、共創的な響きをもつ「編む」からきています。「異なるものを編み合わせて新たな意味をつくること」はC・クリステンセン氏のかの有名なイノベーションの定義ですが、それをプロジェクトだけでなくあらゆる人たちとのコミュニケーションや活動においても適用しようというのが、活動体 amu のコンセプトです。ある特定のメソッドや思考法などを伝えるためではなく、それらの間に気づかれなかった関連性を見つけ、さらに新しい意味を編む。そうしたデザインプロセスをさまざまな人たちとで共創的に実践する場であることがオフィス/メディアとしての amu です。 こちらの活動については、ぜひamuサイト( http://www.a-m-u.jp/ ) をご覧ください。
amu の活動や開催しているイベントなどについてはまた別の機会に。ただ、夜のイベントが週に2~3回の頻度で開催され、時には展示スペースとして開放しながらオフィスとしても機能させるには、やはり運営の工夫と利用者の協力が今も必要になっています。

活動の多様性を維持する空間のアイソレーション

最近のオフィスのトレンドが、仕切りがなく、フラットで見通しがよく、オープンなことがキーワードであるとすれば、amu はその逆かもしれません。建物の構造は死角が多く、建物に入るとすぐに階段があることなどから、1Fで作業をしていても2Fの出入りがあったことにすら気づきませんし、2Fの個人作業に集中するスペースからは、1Fのメインホールに誰がいるかは見えません。つまり、1Fのホール、ラウンジ、2Fの個人作業スペース、ミーティングルームのそれぞれが独立した状態で存在しています。だからこそ、各スペースの利用者は他から影響されずに活動することができます。例えば、「まだ働いている人がいるのに悪いかも」などの気兼ねもなく、1Fのラウンジではスタッフ同士が料理をつくって交流会を開いたりすることができるような、多様性が損なわれない空間活用になっていることが amu の構造上の特徴です。パントマイムなどで、体の各部位が独立した動きをすることを「アイソレーション(Isolation)」というらしいのですが、amuの各部位も同じように独立して機能することで、互いに干渉されずに自由な活動ができるようにしています。
これはamuのハードの特徴を活かした運用で、こうした「共創的な場」には利用者の協力と理解も必要です。

利用者の協力から働き方とプロジェクトのアプローチが変わった

オフィスとして利用する際は完全にフリーアドレスとなっており、ほとんどのスタッフが毎日業務をする場所を変えています。 1Fのホールで作業をしていても、人の集まる気配があれば移動したり、集まる予定がある人たちは Slack などを使って連絡するだけでなく、お互いに声を掛け合ったり。amuの中ではどこでも仕事ができるようフレキシブルに仕事をしています。
こうしたことは、私たち個人のワークスタイルにも影響しました。例えば、夜にイベントが開催される時は、ワークスペースとして使用できる時間の制限が発生します。しかしそのことがかえって、「時間や場所が共有された資源である」という普段は忘れがちな事実を意識した行動を促し、長引きがちなミーティングや、際限なくアイデアを考えてしまうことを抑止する結果となりました。
そうした個人の自律性と柔軟性が醸成されるよう、管理・運用ルールも最低限なものにデザインしています。流動性のある空間では、管理コストよりもコミュニケーションコストに投資する方が価値があると考え、都度各自のコミュニケーションや自分の判断で解決する余白ができるように運営しています。

各自が自由に使えるラウンジの管理・運用ルールも最低限に。

社員数は200人を超え、デザイン会社としては日本でも最大規模となったコンセントは、今やその数だけの価値観や個性をもった組織だといえます。だからこそ、互いに干渉することでも同化することでもなく、まず個としてのパフォーマンスを最大限発揮することが求められます。それは、amuという空間で働くことでさらにブーストされるようになった実感があります。例えば、これまでは業務を行うのに最適な場所として、単に集中できる静かな環境を選ぶしかなかったのが、amuでは活用できる空間の選択肢が増えたため、正確さが求められる作業なのか、より飛躍した発想が求められるワークなのか等、業務内容に合わせて適切に場所を使い分ける選択や自律性が養われました。
個人のワークだけでなく、チームとしての連携の仕方も、会議室で着席してノートPCを見ながら言葉と資料でやり取りをするだけでなく、ペンや模造紙、ホワイトボードを使って手や体を動かすことがこれまで以上に増え、積極的にアウトプットとフィードバックを繰り返しながらプロジェクトを進めていくスタイルへと変化しつつあります。amuに本拠地を構えるコンセントのService Design Div. には、大人数での共創的なデザインワークについての知見や経験も貯まり、結果的にプロジェクトやサービスデザインのさらなる品質向上へとつなげることができています。
今後も、外部とのコワーキングや、パブリックスペースとしての活用など、新たな取り組みに挑戦しながら、より共創的な働き方、プロジェクトの進め方、コンテンツのあり方をプロトタイプしていきます。

[ 執筆者 ]

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コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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