実践の中で見えてきたグラフィックレコーディングの有益性

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  • 赤坂哲伸ディレクター

こんにちは。ディレクターの赤坂です。

突然ですが、最近、グラフィックレコーディングをするようになりました。
グラフィックレコーディングとは、会議や議論の流れ・全体像をわかりやすく視覚化し、参加者と共有する手法です。
仕事柄、抽象的な言葉や、複雑に入り組んだ話に接する機会が多く、議論が空中戦になりがちなことに課題を感じていた私は、グラフィックレコーディングという手法に前々から興味をもっていました。と同時に、「グラフィックレコーディングって実際どうなの? 仕事に使えるの?」という疑問も抱えていたのでした。
今回は、グラフィックレコーディング初中級クラスの私が、実際にイベントやプロジェクトで実践する中で感じたグラフィックレコーディングの有用性や活用シーンについてレポートします。

緊張のデビュー戦

デビュー戦は、「今夜は波風の話をしよう」というトークイベントでした。
このイベントは、コンセントの社員たちが、ニッチなテーマを参加者と話し合う、社外向けのイベントです。「今夜は○○の話をしよう」というシリーズもので、◯◯の部分は毎回変わります。
進行の傍ら、人前でグラフィックレコーディングを実践するのが初めてだった私は、緊張していました。何を描いたらいいものか……。しばらくはペンが進まず、イベントの進行を傍観していたように思います。ある程度話の展望が見え始めたら、ぽつりぽつりと紙に落とし込むといった具合でしたが、描き始めて勢いに乗ると、気恥ずかしさも少し和らいできます。イベント終了後、話の上澄みや、盛り上がったポイントのみを切り取ったようなレコーディングが残りました。

なんとかそれらしい形になったんじゃないか? と、1人で胸を撫で下ろしていたのですが、意外と周りも反応していました。「そうそう、こんな話だったよね」と、参加者同士で会を振り返っていたり、「記念に持ち帰ってもいい?」と、スマホで写真を撮っていく方もいました。
グラフィックレコーディングは、議事録や録音、録画のように詳細を残すのは難しいですが、話の特徴や全体像をひと目で捉えやすく、持ち帰ったりシェアしたりしやすいといった側面があるんだなと、実感した瞬間でした。
主催側のスタッフも新鮮に感じたようで、その後も、同様のイベントで2回、3回……と、グラフィックレコーディングをする機会を何度ももらえました。

グラフィックレコーディングを行うたびに課題が見つかり、手法やまとめ方に工夫を重ねてきましたが、いくつか「これはグラフィックレコーディングには向いていないな」「相性が悪いな」と実感するようなイベントもありました。その特徴は、

  • あらかじめわかりやすいプレゼン資料が用意されている ← 改めてグラフィックを起こす意義が薄い
  • あまりにも専門的な話 ← レコーディングする側の理解が追いつかず、形に残すのが難しい
  • 進行や流れが決まっている ← あえてグラフィックレコーディングを用いる必要性に乏しい

といったところです。
主催する側が、グラフィックレコーディングの特徴を把握した上で、事前準備段階からグラフィックレコーダーを巻き込むなど、戦略をもって活用した方が、より活きる手法なのではと感じるようになってきました。

議論の初期段階での活用

こうした実践のかたわら、グラフィックレコーディングやビジュアルファシリテーションの実践者たちが集まるイベントに参加して、社外ではどのような取り組みが行われているのか、情報を収集していきました。さまざまな意見が交換される中、よく耳にしたのは、「グラフィック/ビジュアルを書記的に用いるのもよいけど、議論や話し合いの初期のタイミング、根幹のタイミングで導入した方が、より役に立つ有意義な手法なのではないか?」という意見。書記的な活用でも、議論の可視化や記録として俯瞰しやすいといった効用がありますが、初期段階に用いることで、そもそもの課題を発見しやすくなったり、今後の方向性を定めるための材料になるということです。

共感を覚えつつも、議論や話し合いの初期段階に活用した経験がないため、実感は伴いませんでしたが、その後、まさに議論の初期タイミングである「新規プロジェクトのキックオフミーティング」で、グラフィックレコーディングを行う機会ができました。
このプロジェクトは、あるクライアントの「ファンづくり施策を考える」というもので、コンセントメンバーとクライアントメンバーを合わせて20名。初対面の人が多い中でのキックオフミーティングでした。
活発な意見交換を行いたいと考えていた担当のプロジェクトマネージャーは、メンバーの自己紹介時に「自分が好きな企業とその理由を述べる」という、プロジェクトの今後につながるアジェンダを用意していました。20名規模だと、前半の内容がうろ覚えになったり、途中で集中を欠いてしまう可能性がありました。
そこで、グラフィックレコーディングを用いることで、それぞれの発言内容を図示して残したり、議論を活発につながるのではと考えてのことでした。

狙いは成功し、自分たちの話がどんどん図化されていくという体験も相まり、全員が集中力を維持したまま、自己紹介を乗り切ることができた上に、その後の議論も活気づき、次々と新しい意見が出てきました。議論が図化されたことによって「企業のファンになる経験って、こういう傾向があるんだな」というプロジェクトに役立つ示唆が得られたのも、プロジェクトメンバーにとってよい経験となり、ファンづくり施策のストーリーを考える上で、役立ったようでした。

単なる書記ではなく道筋を整理するためのツール

グラフィックレコーディングを書記的に活用するのも、場をわかりやすくまとめる効果があり、キャッチーで盛り上がるので、それはそれでよいと思います。
しかし、まだ先行きが見えない初期段階で用いることで、更に効果を発揮するように感じました。
ともすると、口が立つメンバーや主張が得意なメンバーに意見が偏りがちなタイミングで、埋もれかけの貴重な意見をピックアップできたり、暗中模索の状況を把握し、その後の道筋を整理することに役立てることができるからです。

これは、ビジュアルファシリテーションの考え方に近いと思います。ビジュアルファシリテーションとは、ビジュアルを用いて、議論や対話の場を取りまとめ、リードしていく手法のことですが、グラフィックを用いて議論をわかりやすくとりまとめるだけではなく、議論の内容自体を活性化したり、話がその場で整理されることに貢献できれば、さらにグラフィックを用いる意味や価値が向上すると思います。

まだまだ発展途上で、過渡期にあるイメージが強いグラフィックレコーディングですが、私としても、今後さらに経験を重ねるとともに、さまざまなプロジェクトの初期段階でも導入してみたり、ビジュアルファシリテーションにも挑戦していきたいと考えています。

[ 執筆者 ]

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