読者にフィットする雑誌づくり

オレンジページのアートディレクション

  • 高橋 裕子アートディレクター

株式会社オレンジページ様(以下、オレンジページ)が発行している生活情報誌『オレンジページ』。丁寧な文章と明快な写真で構成される、一般家庭で日常的につくることができるレシピの数々は、多くの料理好きの間で長く愛されています。そして、コンセントでは2012年よりオレンジページのアートディレクションとデザインを担当しています。この記事では、アートディレクションを担当している私高橋が、オレンジページの制作においてこだわっている「読者の気持ちにフィットする誌面づくり」を実際のコンテンツやビジュアルを交えて解説したいと思います。

ストーリーを膨らませる

1985年に創刊された『オレンジページ』は、コアターゲットは40歳前後ながら20代〜60代と幅広い年代の料理好きな方々に支持されている料理レシピ・生活情報中心の雑誌です。そんな幅広い層の読者をもつ『オレンジページ』の実際の誌面制作で私が念頭に置いているのは、読者の「食べてみたい」「つくってみたい」という潜在的な気持ちを盛り上げること。読者の気持ちを想像し、「読者はどんな場所や気持ちでこの料理を味わいたいのか」。そのストーリーを編集者と一緒に起こしてみることで、誌面の方向性をふくらませます。ストーリーを設定することは、編集者、料理家、カメラマン、スタイリスト、デザイナー、など、誌面づくりに関わるメンバーがそれぞれの分野で、目指したい世界観をつくり出す一つのきっかけになるのでは、と考えています。

それでは、実際のテーマと、ストーリー、デザインのポイントを見てみましょう。

暮らしの雰囲気を取り入れ、旬の食材を味わう豊かさを伝える。

【テーマ】飛田和緒さんちの炊き込みご飯、混ぜご飯
【ストーリー】春の食材をつかって炊き込みごはんを味わう。いつもより少し丁寧に、家族に旬を味わってもらいたい。
【デザイン】春の光を感じる写真に合わせて、デザインも軽やかに。調理シーンを多めにいれることで、料理に向き合う時間を想像させました。余白を活かして、凛とした印象を抱かせるページに。

普段の食事をもっと手軽に。読者の悩みに寄り添い、便利さで使える誌面に。

【テーマ】青菜のレンチンあえもの
【ストーリー】毎日のごはん、あわせる副菜にいつも悩む。栄養バランスも考えて野菜をとってもらいたいけど、時間が足りないしぱぱっと一品つくれたら…
【デザイン】つくり方を1ページ大で取り上げてわかりやすく。工程を切り抜き写真にすることで、簡単さをアピールしています。左ページは敢えて整然と単調に。カタログのようなレイアウトにすることで、バリエーションをわかりやすくしています。レンチン=手抜きではなく「上手に手間を省く」という印象を与えるために、カジュアルさはもたせつつもすっきりとしたページデザインを心がけました。

料理のシズルを際立て、テーマとイメージにギャップを。

【テーマ】やせたいなら、赤身肉!
【ストーリー】やせたいが我慢はしたくない。肉を上手に味方につけて、健康的にやせようという意識をもってダイエットに取り組む。
【デザイン】「やせる」ということと「肉を食べる」というギャップを強く出すために、料理に寄った迫力ある写真づかいに。落ち着いた色づかいや明朝書体を使うことで、賢さ・強さを際立てました。この企画では敢えて普段の食卓のカジュアルさを排除し、他の企画と差をつけています。

人の集まる休日。大人も子どもも、全員が楽しめる食卓を。

【テーマ】ふわもちフォカッチャピザ
【ストーリー】ゴールデンウィーク、家族や友人が集ってくる日。少し手をかけてでもみんなが喜ぶ料理をつくって、楽しい一日を過ごしたい。
【デザイン】人の集まるわいわい感を感じさせるよう、写真に手書きのふきだしや落書きを入れることでにぎやかさをプラス。ピザをとる手や切り分けるといった動きを写真に取り入れることで、人がいることを印象づけました。写真のスタイリングに加えて、デザインに使用している色や飾りのポップさが、大人も子どもも、一緒に楽しめる料理であることを表しています。

1冊の中での起伏をコントロールする

雑誌は定期的に発行されるものですが、ワンテーマで統一させるか、流れに変化をつけるか、雑誌によって、コンテンツの組み立て方は異なります。『オレンジページ』の構成は、長短さまざまな特集を組み合わせて1冊になっているので、各企画ごとにデザイントーンのメリハリを付ける方法で、バリエーション豊かなコンテンツの入っている雑誌として見せることを大事にしています。また、雑誌のコアターゲットである「家族のためにごはんをつくる、忙しいお母さん」が短い時間の中で、パッとめくって興味のあるコンテンツに巡り会えるよう、テーマは一目でわかりやすく。起伏をつけつつも、レシピ部分などの共通フォーマットはしっかりとキープことで、一冊通しての世界観を守っています。
以下、オレンジページ2019年3月2日号を例に、どういったポイントで流れを作っているかみていきたいと思います。

特集は卵特集。デイリー素材なのでカジュアルな印象に。「卵ってごちそう級!」という特集タイトルに合わせて、写真のシズルを最大限活かす写真づかいを心がけました。18Pと長い特集なので、中程のコラムページは新聞風のデザインにするなど、単調にならない工夫をしています。

その後に続くサブ特集5Pはひなまつりを意識して。書体を明朝体をベースに、華やかさのある、ハレの日をイメージ。

打って変わって肉中華特集5Pでは、味のイメージに合わせてがっつりと、男っぽい印象に。

生活情報誌である『オレンジページ』は、料理以外の特集も豊富。イラストや人物写真を活かすデザインにすることで、コンテンツのバリエーションの豊かさを感じさせています。

発見と定番をほどよく加味したパッケージング

『オレンジページ』は隔週発行のため、表紙に変化をつけ、第一印象を常に飽きさせない工夫をしています。常に新鮮に見せるためには、季節感、企画の肝がどこか、どこに読者がひっかかりを感じるかを意識しています。

7月末発売号。フライパン一つでつくれる、ひと皿ごはんを大特集。料理写真を複数組み合わせ、夏休み中のお昼ごはんに使えるレシピがいろいろあることをアピール。

デイリー食材、卵の大特集。仕上がった料理写真ではなく、敢えて調理最中の写真をメインに。とろっとした質感を見せることで、タイトルの「ごちそう級」という言葉へのイメージを膨らませます。

年に2回のパン&スイーツ号。誌面いっぱいに写真を配し、写真の空気感を最大限に活かしました。おいしそうなスイーツを食べるときのわくわく感を抱かせつつ、非日常への憧れを抱かせるような表紙に。

日本全国のご当地料理を集めた「ニッポンのうまいもん」号。特集名ではなく地名と料理名が大きく目立つデザインに。色面と料理の切り抜き写真で構成することで、いつもと違うオレンジページ、という印象を抱かせます。

アートディレクターは最初の読者であり、企画を一番理解している立場でもあります。読む側の気持ちを想像し、寄り添うことでデザインの拠り所をつくり、読者-編集者-デザイナーと視点を切り替え、企画の意図を最適な表現で伝える。編集者と伴走しながら、これらを多様な視点から生まれたアイデアとイメージでアウトプットすることが、結果的に読者の気持ちにフィットした誌面づくりにつながるのです。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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