ターゲットユーザーに伝わる・響くウェブサイトにするためのUXリサーチ

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    坂本 輝美ウェブディレクター/プロジェクトマネージャー

UXリサーチのイメージを表すイラスト。ビジネスパーソンがパソコンの前で、ユーザーに関する意見交換をしている様子が描かれている

担当しているウェブサイトをリニューアルをするとなった際、何から手を付ければよいかわからないという方は多いのではないでしょうか。また、サイトの運用でも直面する課題の改善はしているものの、「なかなか効果が出ない」「抜本的な改善が必要なのではないか」という悩みを抱えている方もいるでしょう。

サイト改修で効果を上げるための最初の一歩は“現状を知ること”。コンセントでは、現状のサイトを以下の3つの観点で把握することを大切にしています。

  • サイトにはどんなユーザーが訪れているのか
  • サイトにはどんなコンテンツがあるか
  • どんなコンテキスト(ビジネス背景)があるのか
サイトを把握する3つの観点「ユーザー」「コンテンツ」「コンテキスト」が書かれた図。

この中で、“サイトにはどんなユーザーが訪れているのか”を知るための手法として、「UXリサーチ」があります。本記事では、サイトリニューアルのためのUXリサーチについて、その目的と実施するメリットを紹介します。

UXリサーチとは何か

UXリサーチは、「UX(user experience=ユーザー体験)」と「リサーチ(調査)」という2つの言葉から成り立っている通り、ユーザー体験を調査する ━━ つまり、「体験」の対象となるユーザー像と、その行動やインサイトを知るために行う調査のことです。

サイトリニューアルにおけるUXリサーチは、主に「探索」と「検証」の2つの目的で実施します。

  • 探索
    現在のサイトにはどのようなユーザーが訪問しているかを知るための調査。消費者、株主、求職者などの分類や、どのようなニーズや嗜好をもっているかを探ります。
  • 検証
    リニューアルに当たって設定したサイトのコンセプト、コンテンツやビジュアルなどがターゲットユーザーに響くか、伝わるかをリリース前に検証する目的で実施します。

また、手法として「定量調査」と「定性調査」の2種類があります。

  • 定量調査
    おおまかなユーザー像とユーザー行動・インサイトの傾向を知ることが目的。代表的な調査方法にアクセスログ調査、モニターアンケートがある。
  • 定性調査
    具体的なユーザー像、ユーザー体験の質やユーザー行動・インサイトを知ることが目的。代表的な調査方法にユーザーテスト、ユーザーデプスインタビューがある。

ざっくりとですが、サイトリニューアルプロジェクトでは、下記2つの工程で「探索」と「検証」のUXリサーチを実施できると、ユーザーニーズを把握した良いサイトをリリースすることができます。

ユーザー調査からリリースまでのプロセスを示す図。左から順に「探索」「コンセプト立案・制作」「検証」「リリース」の4ステップが矢印で示されている。「探索」では、アクセスログ解析やモニターアンケート(定量)、ユーザーデプスインタビュー(定性)を実施し、ユーザーの行動やインサイトを理解する。「検証」では、設定したコンセプトが伝わっているか、どのアウトプットが良い反応かを見極めるため、ユーザーインタビュー(定性)やABテスト(定量)を行う。

UXリサーチを行うメリットは何か

実際のユーザーの姿が見える

調査の範囲と規模にもよりますが、UXリサーチによって、「提供側がイメージしていたユーザーと実際のユーザーには違いがあった」といったことに気付くことができ、本質的なユーザー理解につながります。

過去に、あるブランドの特定カテゴリ商品の愛好者3名にインタビューをしました。3人ともそのブランドの愛好者であることは購入頻度や購入金額からわかっていたことですが、インタビューを行ったことで、異なる購入の傾向があることがわかりました。

一人は、このブランドしか買わないユーザー。もう一人は、他のブランドとこのブランドを併用しているユーザー。そして最後の一人は、このブランドの他カテゴリ商品をメインに購入するついでに当該カテゴリ商品も購入しているユーザー。

調査前は同じ「愛好者」という一つの大きな箱のユーザーとして認識していましたが、調査後は、「指名買い」「並行買い」「ついで買い」といった具体性の高い小さな箱にユーザーを分類できるようになりました。ユーザーの解像度が上がったことにより、それぞれの目的・行動に合った施策検討ができた例です。

ターゲットにすべきユーザーを決められる

実際のユーザーを知ると、そこから誰をサイトのターゲットにすべきかの検討を進めることができます。ターゲットユーザーを具体的にイメージしながらコンセプト策定や動線設計を行うことで、万人向けでありながら印象に残りにくいサイトから脱却し、“本当に情報を届けたいユーザー”に伝わる・響く効果的なサイトをつくることが可能です。

伝え方の精度を上げられる

検証のためのUXリサーチとして、ページデザインが出そろったタイミングでユーザーテストを行う場合があります。ページに掲載する情報をどのような順序・表現で伝えると効果的かなどについて、ユーザーからの直接的なフィードバックが得られるため、目指す成果を得る目的での最終調整を行うことができます。

サイトリニューアルに効果的なUXリサーチの手法

アクセスログ解析

サイト上でユーザーがどのような行動を取っているかをアクセスログから探る調査です。Google Analytics、Googleサーチコンソールなどのアクセス解析ツールを使います。

ユーザーがどこからサイトに訪問し、どのコンテンツを見て、どのページに遷移し、どこで離脱したのかなどのユーザー行動と、使用しているデバイスや居住地などの情報を知ることができます。これらの情報から、「検索サイトからの流入が多い」「トップページよりも下層ページに直接ランディングしている」などの特徴を見つけたり、「見てほしいコンテンツが思ったほど見られていない」「すぐに離脱されている」というような課題の発見に役立ちます。

過去にあるメディアサイトのアクセスログ解析をした際には、特定のキーワードでの検索流入数が顕著で、かつそこから流入したユーザーのエンゲージメント率は高く、離脱率が低いという結果が出ました。検索キーワードのテーマに対してユーザーが特に興味・関心が高いことがわかったことで、コンテンツ検討の重要なヒントを得ることができました。

ウェブページのアクセスログを収集し、ユーザーがどのようにサイトを使ったかをデータで分析している様子のイラスト。

ユーザーテスト

実際にユーザーがサイトを操作する様子を観察しながら、ユーザーのサイト上での行動理由について探る調査です。テストの様子は収録し、気になる発言や行動があればテスト後に詳しくインタビューするやり方が主流です。

前述のアクセスログ解析は数字しか見られないため、「なぜその行動を取ったのか」については類推して仮説を立てるしかありません。一方で、ユーザーテストでは実際のユーザーから「なぜ」の部分を詳細に聞くことができます。

また、ユーザーの目線やカーソル移動、画面をタップする行為などに無意識の要求が表れることもあります。そうした場面を見逃さず、「このときどのような気持ちでしたか?」と問いを重ねることで、ユーザー自身も認識できていない行動の根拠や動機(インサイト)が得られます。

ユーザーが実際に製品やサービスを使っている様子を表すイラスト。

ユーザーデプスインタビュー

ユーザーと1対1で、時間をかけてインタビューをする調査です。前述の2つがサイトを介した行動の傾向や感情を知る調査なのに対して、デプスインタビューはサイトから離れ、企業、ブランド、サービス、商品に対してどのような意識でいるのか、というそもそものところを探っていくための手法です。ユーザーデプスインタビューによって得られた発見をサイト改善に反映することで、ユーザーのサイト体験をより良いものに改善することができます。

ユーザーデプスインタビューの難しいところは、ユーザー自身が自分の感情や行動の背景をなかなか言語化できないことです。なぜそうした行動を取ったのかの本当の理由を、調査中に明らかにするのはとても難しいです(もちろんいじわるで教えてくれないのではなく、人間は無意識のうちに行動していることの方が多いからですね)。インタビュアーはなるべく本質を突くような質問でその深層心理に迫りながら、後でインタビュー内容を俯瞰してしっかり分析することが重要です。

ユーザーにインタビューするイメージを表すイラスト。

始めてみようUXリサーチ

ここまでのお話でサイトリニューアルにおけるUXリサーチとは何か、実施するメリット、サイト改善に効果的な調査手法について理解してもらえたらうれしいです。

とはいえ、実施となると「専門的な知識が必要になりそう」「しっかり計画した上で始めないといけなそう」などとハードルを感じて二の足を踏んでしまうかもしれません。しかし、そもそもの目的はUXリサーチを実施することではなく、ユーザーを知るということです。

例えば、自分がそのサイトのユーザーであると仮定して、サイト上でどのような行動を取るか、そのときどんな心理状態なのかを言語化してみたり、知り合いにサイトのユーザーがいたら「どんな使い方をしているかちょっと見せてもらえない?」と聞いてみる。これくらいの規模であっても、ユーザー理解を一歩先に進めるという意味では、十分にUXリサーチといえます。小さな取り組みでも、やってみることで新たな気付きが生まれるはずです。

もちろん、どうせやるなら効率的にしっかりやってみよう、UXリサーチの進行はプロに任せてユーザー理解の分析に集中したい、という場合は専門家と一緒に取り組みましょう。その際は、ご自身の専門性や商品・サービスへの深い理解を、専門家との協働の中でうまく生かしながら進めてください。

[ 執筆者 ]

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