なぜCMSを導入するのか? 目的の言語化から始める導入プロセス検討方法

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    足立大輔プロデューサー/プロジェクトマネージャー

ウェブサイトの運営にCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を活用していますか?

すでにCMSを導入してウェブサイトの更新をしているが「不満がありリプレースを検討中の方」も、「これからCMSを導入しようと考えている方」も、どのCMSが良いだろうと探す前に、検討から導入まで「どのようなプロセスで進めるべきか」を考えてみることをお勧めします。

この記事では、CMSを導入して達成したいことを明確にし、チームや組織でスムーズに合意形成してCMS導入を実現するためのプロセス例を紹介します。

CMSでウェブサイトをカスタマイズするイメージのイラスト

何を決め手にCMSを選ぶのか

CMSといっても、その選択肢は実にさまざまです。例えば、小・中規模サイトやメディア向けのブログCMS、ECサイト構築向けCMS、グローバル展開に対応するエンタープライズCMSだけではなく、フルスクラッチでの独自開発などの「用途や規模感」という選択軸や、「オープンソース型 or プロプライエタリ型(商用)」か、「インストール型 or クラウド型」かという選択軸も存在し、検討材料がたくさんあって決められないケースも多いです。

何を決め手にCMSを選べばいいのでしょうか。そんなときに考えるべきは「なぜCMSを導入するのか?」という目的です。なぜ導入が検討されたのか、導入することで目指したいことは何かをチーム・組織の共通認識にしておくことが重要です。

CMS導入の目的を言語化する

筆者の経験からCMSを導入する目的には、以下のような例が挙げられます。また、どれか一つだけを目的とするわけではなく、複数の目的を同時に達成したいケースも多いです。

CMS導入のよくある目的(一例)
  • コンテンツ運用の内製化
  • コンテンツ更新の効率化
  • コスト削減
  • デジタルマーケティングの強化
  • セキュリティの強化

上記は端的にまとめた例ですが、分解していくと「チーム・組織として達成すべき業務上の成果」や「解決すべき課題」など、より自分ごと化しやすい具体的な内容に言語化することができるはずです。

CMS導入のアプローチ

導入の目的を言語化することができたら、次はその優先順位を考えてみましょう。導入にかけられる予算や時間なども考慮して、すべてを満たす必要があるのか、優先的に達成すべき項目があるのかを検討します。

目的に優先度をつけて整理することで、ビジネス上の判断も明確になります。例えば、「短期間で導入を完了させるべきか」それとも「業務上の成果や課題解決に向けた活用方法をじっくりと検討すべきか」といった方向性を見定める手がかりになります。

導入のアプローチも同様です。次の2パターンを軸にして検討していくことで、プロジェクト計画を具体化していくために必要な判断基準にすることができます。

CMS導入パターン
  • CMS導入を優先する「スピード重視」パターン
  • 理想的な活用を目指す「じっくり検討」パターン

優先度に応じた導入パターンの比較ポイント

「CMS導入を優先する『スピード重視』パターン」と「理想的なCMS活用を目指す『じっくり検討』パターン」を比較した図表。それぞれビジネス要求、プロジェクト例、プロジェクト期間、CMS選定の観点、業務への新システム適用という軸で対比させている。内容については後続の本文で説明しているものと同様である。

CMS導入を優先する「スピード重視」パターン

DX推進や既存システムの老朽化といった組織課題への対応として、CMSの導入を最優先で完了させる必要があるケースが想定されます。

このパターンでは、まずCMSを導入し、その後に業務フローやコンテンツ運用体制をCMSの仕様に合わせて調整していくというアプローチを取ります。そのため導入の際は、CMSの機能や仕様を把握することが重要です。

プロジェクト例

  • CMS導入によるウェブサイト運営の内製化
  • CMSリプレースによるセキュリティリスク対応

背景・特徴

  • DX推進や既存システムの経年劣化など、システム刷新が最優先課題である
  • CMSの導入・リプレースに期限が設定されている
  • 導入するCMSの機能などにその後のコンテンツ運用・体制を合わせていく傾向にある
  • 開発ベンダーにプロジェクトの推進を任せやすい

導入プロセス例

CMS導入を優先する「スピード重視」パターンの導入プロセスを簡潔に示した図。ビジネスゴールの確認、実施計画準備から開始し、CMS構築側ではシステム要件定義→システム設計→開発・テスト→公開と進む。運用準備側では運用計画・ツール作成→業務開始へと進む。

メリット

  • CMSが本来もつ機能や特性を最大限に活用することで、業務負荷の軽減が期待できる
  • SaaS型CMSを選択した場合、業務設計の簡素化や初期設定の効率化につながり、導入までの期間を短縮できる

デメリット

  • 導入するCMSを前提とした判断・進行が必要であり、導入したCMSでは解決の難しい課題が後から見つかる可能性がある
  • SaaSサービスを選択すると、プロダクト提供会社の事情による機能・業務の柔軟な変更が必要であり、提供終了も視野に入れて利用する必要がある

理想的なCMS活用を目指す「じっくり検討」パターン

DX推進に伴うマーケティング活動や業務プロセスの最適化、あるいは組織再編など、大きな組織変化への対応が求められるケースが想定されます。業務上の成果を達成し、課題を解決するために、組織構造や業務フローを見直しながら、最適なCMSや関連システムの導入・活用を検討するアプローチです。

プロジェクト例

  • デジタル製品カタログを活用した潜在顧客との新しい接点づくり
  • リブランディングやコンテンツ戦略を実行するデジタル上の情報発信基盤の実現

背景・特徴

  • 組織課題の解決のために、既存の業務をシステムで代替する必要がある
  • 目指すべき理想の業務像や全体方針を策定した上で、適したCMSや関連システムの選定を行う
  • 既存業務のシステム化検討において、一定のシステムリテラシーが必要になる
  • 導入するCMSなどのシステムは、業務最適化に伴いカスタマイズすることが前提となる
  • ユーザー視点で課題を解決する「デザイン思考」の手法が活用できる

導入プロセス例

理想的なCMS活用を目指す「じっくり検討」パターンの導入プロセスを簡潔に示した図。ビジネスゴールの確認、実施計画準備から開始し、CMS構築側ではシステム要件定義→システム設計→システム開発→コンテンツ制作→テスト→公開へと進む。運用準備側では業務設計→運用計画・ツール作成→トレーニング→業務開始へと進む。

メリット

  • 目指すべき理想の業務像や全体方針を策定することで、プロジェクトにおける共通の判断基準をもてる
  • どのような組織課題であっても、システムで解決できる方向性を模索・適応できる
  • 組織の特性やメンバーのリテラシーを踏まえた、利用者視点でのCMS選定・システム構築が可能になる
  • 組織や業務に最適化し、長期的かつ継続的な利用を前提にしたシステムの検討ができる

デメリット

  • 全体像や方針策定を経てシステム選定を行うため、プロジェクトが長期化する傾向がある
  • 組織内の複数部署を横断する業務が対象範囲になるため、プロジェクト主管部署の推進力がない場合、合意形成や意思決定でプロジェクトが停滞する懸念がある
  • 最適化実現のためにCMSカスタマイズ対応を実施した場合、CMSのアップデート時に改修コストが発生する可能性がある

さいごに

CMS導入の検討は、思っていたよりも難しいと感じましたか?確かに導入するだけなら、「よく知られたCMSを選び、知識のある人が1人で頑張って開発する方法」がないわけではありません。それでも、企業や組織にとって大事なことは、「CMS導入の目的は何か?」をあらためて言語化した上で、目的達成の優先度に応じてアプローチを決定することです。

最近ではインフラ環境が不要なSaaS型CMS、ローコードやノーコードで利用できる高度な知識を必要としないCMSなど、選択肢も増えています。目的達成に適したアプローチで検討することで、製品のパフォーマンスを最大化することもできます。

CMSを導入することはゴールではありません。本来の目的を達成するスタートラインに立つためにこの記事を役立ててもらえれば幸いです。

[ 執筆者 ]

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