価値を再発見し、伝えるために。「異化」から始めるプロトタイピング|コンセント×ジザイエ協働レポート

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    篠田菖子デザイナー

こんにちは。コンセントの篠田菖子です。

2025年4月よりコンセント有志メンバーと株式会社ジザイエメンバーで、「仮想熱学」という協働の取り組みを行っています。

この記事では、その取り組みを通して、技術やアイデアをユーザーに届けるに当たってどのように「価値のデザイン」を行ったか、その価値をどのように言語化・可視化し、伝えていったかをご紹介します。

メインビジュアル。仮想熱学のロゴとキャッチコピーが入っている。キャッチコピーは「”熱”のない仮想は、まだ未完成だ。」

ジザイエは、東京大学発のスタートアップ。最先端の遠隔操作や高画質・低遅延の映像送信技術を開発し、これまでリモートワークが難しいとされてきた職種での遠隔就労の実現を目指して事業を展開しています。

「仮想熱学」の取り組みでは、普段は異なる領域で課題解決を目指すコンセントとジザイエのカルチャーやソリューションを融合させ、アイデアを出すワークショップから外部展示、そしてプロトタイピングで「アイデアを形にする」までを行っています。

はじめに:技術やアイデアの価値を伝えるには?

自分たちがもっている技術やアイデアの価値は、どうやったら他者に伝わるのでしょうか?そもそも、その価値や魅力はどこにあるのか。そして、それらをどう生かせるのか。こうした点を言語化すること自体が難しい場合も少なくありません。

話は変わって、ドイツの劇作家ブレヒトは人々が演劇を通して日々の振る舞いを見つめ直し、これまでとは異なる批判的な視点から捉え直す効果を「異化効果」と呼びました。これは演劇に限らず、私たちが当たり前だと思っている営みのメタ認知ともいえます。

自分たちが向き合っている技術やアイデア、日常の営みをいつもと違う観点から眺めることで、「当たり前」が異化され、新たな発見が生まれる。その効果を期待して、私たちは合同でのワークショップを開催しました。

*出典:小学館国語辞典編集部 編『精選版 日本国語大辞典 1巻「あ〜こ」』(2005)小学館

ワークショップのデザイン──「異化」をもたらす

ジザイエが開発した「JIZAIPAD」は、遠隔就労支援システムとして活用されています。それに欠かせないのが、遠隔操作と高画質・低遅延の映像送信技術です。

ワークショップ開催に当たり、このソリューションの価値をより多くの人に知ってもらうために、「この技術・プロダクトの何がすごいのか?」をあらためて問い直し、価値の抽出と言語化をしたいと考えました。

今回の協働で意識したのは、「支援する・される」という関係性の外に出ること。コンセントとジザイエ、それぞれの異なるカルチャーやソリューションの良さや強みを生かすことに重きを置きました。両社がもつ技術やソリューションを融合させ、遠隔就労支援といったテーマにとらわれず、まったく新しいアイデアを出せるようなワークショップをデザインしました。

ワークショップの様子を写した写真。

ワークショップのテーマは「リモートでは代替できないリアルな価値を考えよう」。

オフラインとオンライン、リアルとリモート。これらは二項対立として認識されることが多いですが、両方の良さを生かす「いいとこ取り」はできないでしょうか?

ワークショップでは、ジザイエのアイデアやソリューションそのものを議論するのではなく、それらを活用してどんな新しい試みができそうか検討し、形にすることをゴールとしました。オンラインかオフラインか。日々当たり前だと思っている前提を疑ってみることで、新しい発見があると考えました。

ワークショップの開催──「日常」の外に出てみる

2025年6月、対面形式で1回目のワークショップを開催しました。参加者は両社から合わせて15名ほど。これまで協働を進めてきたメンバーだけでなく、他の部署からも参加者が集まりました。

1. オンラインの価値を再発見するワーク

ジザイエは、自社の技術によって「リモートワークが不可能である職種のオンライン化」を実現してきました。今回はあえて、その逆の発想を試みることに。

参加者は3〜4名のグループに分かれ、普段の生活を振り返って、「リモートでは代替できないものは何か」「それはなぜか」を考えてみるワークを実施しました。

ここで大切にしたことは、自分の経験を振り返って話すこと。仕事では結論やエビデンスが求められる場面が多いですが、一人称の言葉で会話することで、「仕事」の枠の外側で思考できます。

「リモートでは代替できないと感じるもの」のアイデアを書き出した資料。アイデア、その理由と感じたきっかけやエピソードをまとめている。アイデアとして温泉に入る、観葉植物とそのお世話、祭りで神輿を担ぐ、伊勢参りが挙げられている。

ワークショップ参加者が持ち寄った「リモートでは代替できないと感じるもの」のアイデア

2. 非日常性がもたらした効果

このワークショップは、2つの意味で非日常的な場でした。

1つは、普段とは異なる場所で初対面の人々が集い、言葉を交わしたという「場」の非日常性です。

もう1つは、予算や時間、実現可能性といった仕事上の制約をいったん忘れて、主観や感情、個人の経験に基づいた発言が受け止められるという非日常性です。ジザイエのエンジニアからは「実装の可能性を考えることなくアイデアを出すのが新鮮だった」という声も聞かれました。

こうした非日常性は、「オンライン・オフライン」「実装できる・できない」「役に立つ・立たない」といった二項対立の外側で、伸び伸びと発想することを後押ししてくれました。

3. ワークを通して発見した価値

ワークショップの最後には、ジザイエとコンセントのメンバーが共同でプロトタイピングしたいアイデアが選ばれました。

ジザイエの技術は工事現場や工場、災害支援などの場でさらなる活用が期待されていますが、今回のワークでは、それ以外での新たな領域での活用アイデアも多く生まれています。

非日常の場で、普段とらわれがちな二項対立の外に出てみることにより、ジザイエの技術やソリューションがもつ新たな可能性に出合えました。

プロトタイピングしてみたいアイデアを書き出した資料。着目した「リアルな価値」と、ジザイエの技術やソリューションを掛け合わせてできるアイデアをまとめている。アイデアとして遠隔ライブペイント、くらしのパートナーとしてのロボットなどが挙げられている。

ワークショップで生まれたプロトタイピングしてみたいアイデア

アイデアのプロトタイピング──形にして他者へ伝える

ワークショップ開催後は、CEATEC2025(2025年10月開催)への出展に向けて、ワークショップで生まれたアイデアのプロトタイプ制作を進めました。形にし、可視化することで、その魅力や価値をより理解できるようにし、他者にも伝わりやすくなることを狙いとしています。

コンセントでは、この活動体のネーミングとロゴ開発の他、取り組み内容やアイデアを紹介するイラストとスライドを制作し、CEATEC2025で展示しました。

「オンライン」という言葉には無機質な印象がありますが、私たちにはそこに熱や息遣い、質感といったシズル感を漂わせたいと考えました。「ジュワジュワ」「滴る」「体温」といったキーワードから、この活動体を「仮想熱学」と命名しました。

ロゴでは温度を表す「°」の記号をモチーフに、「滲み」や「生命感」「プリミティブ」を表現。モノトーンで幾何学的なタイポグラフィに、インクの染みのようなエフェクトを加え、クールながらも有機的な質感を併せたデザインにしています。

「仮想熱学」のロゴ

コンセントメンバーが作成した「仮想熱学」のロゴ

ワークショップで生まれた3つのアイデアを表すイラストレーションも制作しました。これらはスライドとして構成し、展示会場で投影しています。

アイデアがイラストレーションになることで、見る人がその実現シーンを具体的に想像できるようにしました。さらにスライドの右下にはプロトタイプの写真やスケッチも配置し、SFのように感じられるアイデアが現実になりつつあることを伝えています。

見る人が、これからの可能性に期待を膨らませ、ワクワクするようなスライドを目指しました。

ワークショップで出たアイデアを可視化したイラストを使用したスライド3枚。アイデアが実現した具体的なシーンを、水色1色でラフ感のあるタッチを用いて描いている。

ワークショップで出たアイデアを可視化したイラスト

アイデアやイメージは、形になることで人々の間に共通認識やビジョンを形成する手助けになります。イラストレーションやテキストは、「仮想熱学」の取り組みの面白さだけでなく、ワークショップで生まれたアイデアやジザイエの技術がもつ価値・魅力・可能性を、見る人に伝える役割を果たしました。

CEATEC2025へ展示した様子を写した写真

CEATEC2025の展示風景

おわりに:価値を再発見し、伝えるために

私たちは日々の仕事の中で、無意識に思考へさまざまな制約を課しています。それは、物事を進める上で必要なことですが、時には非日常の場で、自分たちの「当たり前」を異化してみることも大切です。そうすることであらためて、その価値・魅力・可能性に気付くことができるかもしれません。

さらに、アイデアはプロトタイピングで形にすることで、実現した際のイメージがクリアになります。そこから、新たな活用の可能性や価値が見つかることもあります。プロトタイプは、机上の議論を、人々が一緒に見て、触れて、体験できる共通言語へと変え、アイデアの価値を他者に伝える役目を担います。

デザインのプロセスは、与件定義からアウトプット制作まで直線的に進むものではありません。自分たちが「当たり前」だと思っている物事を別の角度から見つめ直し、形にしてみる。「支援する・される」という関係性を超えて、共に模索してみる。

「仮想熱学」はこれからも、未知のアイデアや可能性を見つけるために、時に寄り道をしながら前へ進んでいきます。

アイデアで出ていた遠隔ライブペイントのプロトタイプが動く様子を写した写真。

ロボットアームで作成した遠隔ライブペイントのプロトタイプ

[ 執筆者 ]

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