Service Design Global Conference イベントレポート

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    長谷川敦士 Ph.D.代表取締役社長/インフォメーションアーキテクト

長谷川です。

前回のコラムで、サービスデザインについて書きましたが、2011年10月に、「サービスデザイン」という言葉を冠したカンファレンスに参加してきたので、今回はそのことについて書きます。

今回コンセントが出席した「Service Design Global Conference」は、Service Design Networkという国際組織が主催している、今年で4回目を迎えるカンファレンスです。

コンセントからは長谷川、塩崎(プロデューサー)、圓城寺(UXアーキテクト)、河内(コーポレートコミュニケーション)の、それぞれ異なるポジションの4名が、それぞれの問題意識を持って参加しました。

カンファレンスは、米・サンフランシスコで10月20日、21日の2日にわたって開催されました。

余談ですが、このカンファレンスはこれまではヨーロッパで開催されており、北米での開催はこれが初めてとのこと。

カンファレンスのスポンサーには、米国のUXデザイン会社AdaptivePath社などと並んでハンバーガーのマクドナルドなども名を連ねており、サービスデザインの分野の関心の高さがうかがえます。

参加の人数は約300名で、決して多いとは言えませんが、さまざまな分野の出席者が見受けられました。日本からもソニーなどの企業や大学などから、10名以上が参加していました。

写真:Service Design Global Conference の様子

コンセント圓城寺の「UXアーキテクト(ユーザーエクスペリエンスアーキテクト)」という肩書きは日本ではあまり見かけないのですが、このカンファレンスのプレゼンテーションなどでは普通に見られています。

ちょっと驚いたのはIDEOと並ぶ世界的なデザインファームであるzibaからの参加者の肩書きがサービスデザイナー(Service Designer)であったことです。すでにそこまで認知は進んでいるようです。

カンファレンスでは、いくつかのキーノート(基調講演)に加えて、参加企業からのケース事例やアプローチの提案などが行われました。

キーノートでは、調査会社のフォレスターリサーチVPのKerry Bodine氏から社会の変革とサービスデザインが求められるようになっている状況の概説、そしてサービスデザインのビジネス的なインパクトなどが述べられました。

特に、サービスデザインにおいては、対象者の期待値が重要な意味をもっており、例としてアップルとコストコの利用者満足度の違いについて述べ、コストコの方が利用者が期待していない分だけ満足度評価がアップルよりも高いといった事例が紹介されました。これはサービスデザインを評価する指標という意味で興味深い観点です。

また、別の基調講演として、米国のUXデザイン会社AdaptivePath社の代表であるBrandon Schauer氏による、サービスデザインビジネスの状況を論じたセッションが行われました。

この講演では、サービスビジネス全体の中でのデザインの比率がまだまだ小さいことからこれからの可能性が大きいこと、広告業界に変わってサービスデザインの領域が拡大していくことなどが実際の業界構造を分析しながら述べられました。

Schauer氏のプレゼンテーションは視覚的でわかりやすいものであるので、興味を持った人はぜひ見てみてください。
Brandon Schauer氏の基調講演

スポンサーとして名を連ねたマクドナルド、スウェーデンの自動車メーカーVOLVO、米国の百貨店Searsなどは社内でサービスデザインプロセスを実現するためのアプローチや、具体的に生活者とワークショップを行いながらサービス開発を行っている様子の紹介などを行っていました。

また、企業をサービスデザイン体質に変えていくために、組織内でどういった活動を行っているか、サービスデザインの本質をわかってもらえない人に対して説得するためにどういった観点で説得するか、といったようなセッションもみられました。

僕自身IAやUXのカンファレンスに多く参加しており、また最新トピックスもわりとみているため、正直、個々の発表自体はそんなに目新しさは感じませんでしたが、サービスデザインという言葉やその前提となる概念の普及度、議論のレベルの確認など、参加することで多くの実感を得ることができました。

サービスデザインに関心がある方は、このカンファレンスの主催者である、Service Design Networkのサイトもぜひ見てみてください。
Service Design Network

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