デザイン会社がつくった研修制度「コンセントデザインスクール」
- サービスデザイン
- コミュニケーションデザイン
- 教育・人材育成
- コンセントカルチャー
コンセントでは2017年4月より、社内の人材育成を目的とした研修プログラム「コンセントデザインスクール」の運営を開始しました。立ち上げを任されてから1年間の試行錯誤の果てに見えてきた、研修制度をデザインするポイントをご紹介します。
※2021年9月7日追記:「コンセントデザインスクール」(通称CDS)を誰もが受けられる「ひらかれた学校」として2021年9月に始動いたします。本記事最後に「お知らせ」としてCDS公式サイトの情報を追記いたしましたので、ぜひ合わせてご参照ください。
コンセントデザインスクールは毎週1回、年間約40プログラムを開催しています。プログラムは「デザインリサーチの設計」「プロトタイピング」「コンテンツ戦略」「タイポグラフィ」「撮影ディレクション」「アクセシビリティ」「デザイン会社の交渉術」「ファッション」など多岐に渡ります。基本的には社員や役員が講師になりますが、ときにはゲスト講師を招いて実施しています。
コンセントは創業から45年以上が経過し、デザインする対象もずいぶん広がりました。社員の専門性も高まり順風満帆わっはっは……ではあるのですが(たぶん)、同時に「現場の知」が個々人の中だけにたまりがちな状況にもなっています。これはもったいない。AとBが結びついたり、かけ合わさったりして、より集団としての強みを発揮できないものだろうか。
と、これは組織視点での話。学習意欲が中の下くらいの社員(私)視点だと「ふだんの仕事に加えて、研修も始まるのか。面倒なことになってきたな」……まあこんなもんです。学びが必要だと感じている人は動いてますし、押しつけの学びには楽しさが少ない。そもそも、自ら学ぶ姿勢がないと知識って身につかないですよね。
つまり、組織の研修制度に必要なのは学びたくなる気持ちそのもの、制度への「期待感」だという仮説を立ててデザインを進めていきました。プログラムを立ち上げて1年近く経ちますが、運営する中で効果的だった7つのポイントを紹介します。
学びの体験をつくるデザイン、7つのポイント。
1. 評価から切り離す
社風にもよりますが「半期で●回参加しなければいけない」などの約束事が、私は苦手です。意味があると感じれば参加したいですし、逆もまたしかり。自由度の高さがコンセントの良いところなので、研修制度も同様にしたいと考えました。そのため参加の有無を評価換算しないことを、役員と握るところからスタートしました。
2. 組織の本気度を伝える
何かが始まる期待感ってなんでしょう。発表時にドン!と表示されるロゴ、印象的なメッセージ、美しいスライドなど、しっかり準備してきたという本気度によってつくられると考えました。情報提供や申し込みも、社内イントラ利用よりオリジナルサイトの方がいい。「いわゆる」社内活動のイメージを裏切る過剰さが必要です。
3. 運営チームにデザイナーとエンジニアを迎える
ということで加わってもらいました。「組織内に散らばっている『未知』と出会う場所」という研修コンセプトがぼんやり見えていたので共有したところ、どんどん発想を広げてくれました。コンセプトに込めた以上のメッセージが伝わるロゴ、関連ツール、Webサイトが短期間で、社員も驚くクオリティででき上がっていきました。
4. いろいろな社員に登壇してもらう
研修プログラムは経営陣+社員間でのブレストを経て決めました。経営陣から出たのは、社員が学ぶことで企業活動がポジティブに回るという視点。つまり「学ばせたいもの」「学ばなければならないもの」です。社員からは「学びたいもの」。そのバランスを取りながら登壇者を決めるのが運営チームの役割。同じ社員が続くと期待感の天敵「マンネリ」が生じるため、一度登壇した人は半年以上の期間を空けてから再登壇するというルールを設けて運営しています。
毎週開催なので大変だが、タレントを発掘する気分で実施。
5. フラットな言葉を使う
登壇者と受講者には、自然に教える/教えられる力学が発生します。社外からゲストを招く場合はOKなのですが、社員同士の場合は登壇者側のハードルが上がります。業界を牽引するプロフェッショナルであっても、必ずしも教えることに慣れているわけではありません。自分はまだ何かを教えられる立場にない、〇〇さんの方がふさわしい……この気持ち、わかりますよね。そのため制度内では「登壇」「受講」「教える」「教わる」といった言葉を、「スピーカー」「オーディエンス」「伝える」「聞く」に置き換えていきました。教える/教わるが、伝える/聞くになるだけで、参加への心理的な負担が減ります。スクールという名称も、みんなで集まってわいわい話す場所になれば良いなという思いから付けました。
プログラムが終わったら、一緒に軽食を食べなから振り返り。ここから発見が生まれることも。学びには、対話と振り返りをさりげなく織り込むことも重要なポイント。
6. 開催枠、広報枠を確保する
制度の浸透には習慣化がキモだと考え、プログラムは毎週定時の開催にしています。会議室が埋まりがちなコンセントで開催場所を抑えるのは、地味ですが超重要。1年先まで予約済みです。また、全社会議や社内報でも定期発信させてもらえる枠をゲット。制度と社員との間に接点を持ち続けることが、習慣化につながります。
7. 感謝を生で伝える
そうして始まった研修制度ですが、実際のところ、いちばん大変なのはプログラム内容を考え実施するスピーカーです。オーディエンスからの感謝を深く伝えられないかと思い、生まれたのがメッセージカード。手書きのメッセージなんて会社を辞めでもしない限り、なかなかもらえませんよね(言い過ぎ)。これが欲しいからスピーカーになりたいという邪な動機も生まれるくらい好評です。
社外からお招きするゲストにもプレゼント。とても喜んでいただけます。
そんなこんなで、なんとか1年近く続けることができました。業務への好影響、社員満足度の向上は目に見える成果として出ています。しかし一方で、参加者層が固定化してきたなどの課題も現れています。「準備と集客」から「維持と向上」にフェーズが変わったことを、ひしひしと感じる日々です。
それに対抗すべく、Tips レベルの知見収集とアーカイブ強化、現場リーダー層との連携強化などのアイデアを運営部で考え中。引き続き、仮説・トライアル・検証を繰り返しているところなので、またレポートします。
コンセントデザインスクール担当役員大崎から
「働く」の意味が日々更新される中、組織内のいわゆる「教育制度」にも変化が求められています。
コンセントでは、個人レベル、もしくは近い職種間でのナレッジシェアや勉強会は日々行われていました。しかしながら、遠い事業領域や関連性の薄い職種感での有機的なつながりは希薄とも言える状況でした。業務上必要な研修は行われますし、OJT(現任訓練)にてスキルアップは望めますが、不確実な市場変化に対応するためには、キャリアアップのために自分の学びを主体的に設計する必要があります。
コンセントメンバーが主体的に学び、行動できるような「学びのプラットフォーム」となるべく『コンセントデザインスクール』を2017年4月から開始しました。デザイン会社という性質上、トップダウンよりもボトムアップ、「教える」よりも「自学する」制度が望ましいと考えたため、「カイシャ主導のお仕着せな研修制度」ではない真に学べる制度デザインを、責任者である石野と運営メンバーに一任しました。
開始から約1年が経過し、学びの効果は実感値としてはかなり出ています。ただ、「学び」は1年やそこらで一喜一憂するものではありません。コンセントデザインスクールという学びのプラットフォームが、空気のように存在し、「学びながら働く」価値が当たり前のようになるまで、取り組みは継続します。
お知らせ「CDSを誰でも受けられる“ひらかれた学校”に」
このコンセントの社内研修制度「コンセントデザインスクール」を、デザインを広く社会にひらいていくため、誰でも受けられる「ひらかれた学校」として2021年9月に開校いたしました。 CDS公式サイトを新たに公開しましたので、ぜひのぞいてみてください。