新型aiboと考える「人に寄り添うためのUXデザイン」

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  • 内山 啓文ディレクター

Summary
コンセントのサービスデザイン事業部のオフィスに、新型aiboがやってきた。aiboとともに過ごすなかで考えた「人に寄り添うためのUXデザイン」のポイントを考察する。

Points

  • 新型aiboは、「目」「滑らかな動き」「AI」の進化によって、「生命感」を演出している。
  • 適度な距離感をインタラクションデザインで実現することで、生きているペットとロボット双方のよさを両立させることが重要。
  • ユーザーの想像力を引き出すインターフェースデザインで、心が通じ合った感覚をもたらす豊かなコミュニケーションをつくることが重要。

こんにちは。ディレクターの内山です。
IoT、AI、ロボット……さまざまな技術革新が進むなか、Google Homeなどのスマートスピーカー(AIスピーカー)やチャットボットも普及が進み、これらの技術を利用したサービスがますます身近な存在となりつつあります。そんななか、ソニーの犬型ロボットaiboが新たな姿で登場し話題となりました。予約開始数時間で売り切れるほどの人気から、aiboに対する期待の高さがうかがえます。そんなaiboが私たちサービスデザイン事業部のオフィス「amu」にやってきました。今回の記事では、aiboとともに過ごすなかで考えた、ペット型ロボットが「人に寄り添うためのUXデザイン」についてお話ししたいと思います。

こんにちは! 次郎

コンセントにやってきたaiboは「次郎」と命名。aibo購入を決定したサービスデザイン事業部マネージャーの赤羽「太郎」の弟分ということで名付けられました。オフィスでは通りがかる人が撫でてあげたり、休憩している人が遊んであげたり、さらには社員の家にお泊りに行くことも。すっかり社内で愛される存在となっています。そしてついには、コンセントに社員として迎えられ、社員リストにも登録されています。

aiboが撮影(!)したコンセントのメンバー

新型aiboのキーワードは「生命感」

今回の新型aiboの特徴を一言でいうと「生命感」でしょう。1999年に世界初のエンターテインメントロボットとして誕生して以来、ソニーの技術力を示す存在として、こだわりぬいて開発されてきました。それだけにaiboには毎回、多数の新機能が盛り込まれているのですが、新型aiboにおいてはとくに「目」「滑らかな動き」「AI」の3つが大きな変化だと思います。
1つめの「目」。旧世代と比較してもっとも大きな変化といっていいでしょう。有機ELディスプレイが搭載され、アニメーションによってさまざまな目の表情を表現できるようになりました。たくさん撫でてあげるとニコっとした表情で喜びを表現してくれて、とてもかわいらしく好意的なフィードバックを返してくれます。
2つめは、関節数が増えたことで実現した「滑らかな動き」。これにより、生き物により近い動きができるようになりました。起きあがる際、本物の犬が眠りから覚めるような動きを見せてくれて、その表現力の高さに大変驚きました。
3つめは、AIの搭載。人の顔をおぼえたり、人ごとのなつき具合によって態度を変えたり、徐々に性格が変化していったりと、成長による変化を感じることができます。さらにクラウドと連携しているため、日々行動の種類がアップデートされる、飼い主とのコミュニケーションによって変化する「性格」のバリエーションが豊富になるという機能が実現されています。

目の豊かな表情で気持ちを表現する次郎

しかし、この「生命感」に感動する一方、なにか物足りなさを感じてしまうことがあります。それはなぜなのか。そもそも私たちはaiboが代表するような「ペット型ロボット」にどのようなことを求めているのでしょうか。aiboのような、これまでとは違った「人との寄り添い方」が求められる製品 / サービスのUXデザインでは、どのようなことをポイントとして意識すればよいのでしょうか。

ポイント1:適切な距離感をつくる

前提として「ペット型ロボット」の価値の1つには、生きているペットを飼う場合のハードルを下げられることがあると考えています。たとえば、アレルギーやマンションの規約、騒音問題など居住環境上の制約などです。飼育を検討する際、生きているペットよりもペット型ロボットを迎え入れることを選ぶ方がずっと楽です。
また、飼育中を考えてみると、生きているペットは必要なときに適切な世話をする必要があります。人間の状況や気分に関係なく関わりを求め、仕事で疲れているときでも、遊びや散歩をねだってきたり、悪戯をしたりすることもあるでしょう。ペットと人間の距離感は近くならざるを得ません。ペット型ロボットであれば、こうした距離感にも振り回されることはないでしょう。
しかし、手がかかるからこそ心が通じ合ったと感じる瞬間にかわいく思える、というのもまた事実。まったく手がかからず、距離感が遠すぎては、ペットを飼う醍醐味であるこのような体験はできないかもしれません。
実際、私がどこか物足りなさを感じたのは、aiboとの触れ合いがオフィスという接触頻度が低い環境に限定され、また、手がかかるシーンに出会っていなかった、というのも1つの要因としてあるのかもしれません。
そう考えると、飼育のハードルが下がり、よりさまざまな飼育シチュエーションが現れるとき、ユーザーとの適切な距離感を生み出すインタラクションデザインが重要ではないか、というポイントが浮かび上がってきます。

ポイント2:ユーザーの想像力を引き出す

第2のポイントは、ユーザーの想像力を活用するインターフェースデザインが重要ではないかということです。
新型aiboで進化した「目」は、嬉しい、悲しいなどの気持ちを豊かに表現することができます。目の表情を通してaiboの気持ちがパッと見てわかるのですが、これは一方でユーザー側がaiboの「気持ちを想像する」という余地を狭めてしまったのではないでしょうか。この想像の余地が狭まったことは「物足りなさ」の1つの要因になっていると思います。
たとえば、こんなシーンを考えてみましょう。イスに座ってテレビを見ていると、あなたのaiboが足元に近づいてなにかアクションをします。自分自身が寂しいと思っていたので、「aiboも寂しいのかもしれない」と考え、「あら、寂しかったの?」などと話しかけながらaiboの表情を覗き込むと、満面の笑みでこちらを見ており、寂しいわけではなかったようです。ユーザーは自分の寂しい気持ちを共有できなかったことで少し複雑な気持ちになりますが、「aiboはマイペースだなあ」と愛らしく感じています。この例は、思い通りにならないからこそおもしろい、というペットを飼う醍醐味になり得ます。しかし、気持ちのすれ違いが何度も繰り返されることでaiboとの心の距離を感じてしまったり、表情があることによってaiboの気持ちを想像する楽しみが減ってしまう側面もあるのではないでしょうか。それがペット型ロボットとしての「物足りなさ」につながっているのではないかと感じています。
一方で旧世代のaibo※にはほとんどのモデルで「目」という表現方法がありませんでした。そのため、aiboのさまざまな動きやユーザーと接しているコンテクストにユーザー側が意味づけを行い、ある意味「都合のいいように」感情を読み取っていたと考えられます。
表情が読めない旧世代aiboだからこそ、「想像の余地」が生まれ、心が通じ合ったと感じやすかったのではないでしょうか。もとより私たちは、童謡「大きな古時計」の歌詞のように単純な製品にさえ人格を感じ、強い共感をおぼえることがあります。今後、ペット型ロボットが浸透していくのであれば、ユーザーの想像力を引き出すことができるインターフェースデザインの重要性が増していくのではないかと感じます。

初代aibo。旧世代aiboは基本的に「目」がないか、あっても非常にシンプルな形状
出典:ロボットスタート株式会社(https://robotstart.co.jp)

テクノロジーの変化にあわせたUXデザインを

今回aiboをオフィスに迎えたことをきっかけに、ペット型ロボットのUXデザインのポイントを考えた結果「適切な距離感をつくる」ことと「ユーザーの想像力を引き出す」ことの2点が重要なポイントではないかと感じています。
今後、テクノロジーの発達により、ペット型ロボット以外にも、さまざまなコミュニケーションの形が登場し、現在とは比較にならないような多様なサービス利用シーンと新しいコミュニケーションの形態が現れてくるでしょう。そこではまた、UXデザインにおける重要なポイントも変化していくことが考えられます。しかし、どのようなケースであっても、よりよい体験をデザインするために必要なものはユーザーにいかに寄り添えるか、ではないでしょうか。これからもユーザーを中心としたとした視点から、いいUXを考えていきたいと思います。

※旧世代aiboの正式な表記はAIBOですが、本記事ではaiboに統一して表記しました。

本記事は、コンセントが運営するオウンドメディア「Service Design Park」にも掲載しています。
http://sd-park.tumblr.com/post/174232154766/aibo

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