沖縄で、東京のチームと働く 地方移住したディレクターの働き方デザイン

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    識名尚美ディレクター

14年前、沖縄の風土や人柄に惚れ込んだ私は、東京での仕事を辞め、沖縄に移住することを決意しました。思えば、すべてを手放しての覚悟でしたが、私は今も沖縄で東京にいた頃と変わらない仕事を続けています。今回のひらくデザインでは、なぜこのような働き方が叶ったのか、東京にいるチームとの働き方や連携、環境などについてお伝えしたいと思います。

「移住先で仕事を続けてみたら?」

冒頭でお話しした通り、私はいま沖縄に住みながらリモートワークで東京のチームと共に仕事をしています。現在はチームリーダーという立場で東京に在籍しているメンバーと定期的にミーティングを行い、東京にいた頃と同じように仕事をこなす毎日です。

沖縄移住前は、東京でディレクターとして、とにかくせわしない日々を送っていました。朝から晩まで、平日と週末の境目のない生活は、漠然と抱いていた地方移住の思いを後押しするには十分で、会社の成長と人が増えつつあったことをきっかけに、ある日ついに「沖縄に移住するので、仕事を辞めようと思います」と上長に告げました。

しかし、そのとき上長から返ってきたのは「沖縄に移住して、このまま仕事を続けてみたら?」という意外な言葉。今でこそ、リモートワークは世に知られたメジャーな働き方ですが、当時はまだまだ未知の領域。しかし、これは与えられたまたとない機会だと発想を変え、チームと距離のある作業環境が想像できないままに沖縄へと移住しました。

現場指揮から制作進行へ、働き方と環境の変化

沖縄移住後は、自分でも日々工夫をしながら、チームメンバーも一緒にリモートワークでの連携について試行錯誤してくれて、東京での働き方との違いを少しずつ埋めるように仕事に慣れていきました。ディレクターとして積み重ねてきたキャリアはそのままに、プロジェクトをまとめる存在に徐々にステップアップ。現在ではプロジェクトを統括して制作指示を行う業務をメインに、リーダーとしてのチームマネジメントや、勉強会などにも参加しています。

現在の1日は、8:00から9:00の間に仕事を開始、リモート会議をメインに17:00まで働いた後、2人の子供を迎えにいって帰宅という流れが基本的なスケジュールです。17:00以降は働くことが難しいため、自分でも仕事配分やチームとの調整を気に留めながら、チームのメンバーに協力してもらっています。

写真:識名が沖縄オフィスでの業務をしている様子

オンラインで温度感を共有、オフラインで的確な指示

チームメンバーと距離がある分、オンライン会話でメッセージの温度感を伝えるようにしていますが、距離があることでお互いの「汲む」力が飛躍的に伸びたように感じます。しかし、メンバー同士で構築した「汲む」力に私自身が甘えず、常にお互い気持ちよく仕事ができるよう、日頃から手順を明快かつ詳細にテキストにして指示を残すようにしています。これはリモートワークを始めた当時から続けていることで、伝えたいことや人によって情報の粒度を変えたりもしています。
反対に、デザインのニュアンスについて相談したい場合はあらためてリモート会議を設定して会話をする時間をとるなど、コミュニケーションの取り方を工夫しています。

また、制作管理では、宙に浮いているタスクがないか、タスク担当者も併せて念入りに確認をします。近くにいない分、「これ、どうなってる?」といったライトな確認ができないので、東京にいるときよりも気を遣ってチャットツールなどで声をかけて曖昧な部分が残らないようにしています。固定化された作業はマニュアルを作成して抜け漏れがないようにするのはもちろん、マニュアルは更新のしくみも整え、距離の離れたメンバーとも持続的な対応ができるよう心がけています。

沖縄にいる自分だからこそできること

東京のチームと仕事をこなす一方で、沖縄という場所にいる「自分だからこそできること」も模索しました。東京に住んでいては難しかったであろう、沖縄地方のパートナー開拓を積極的に行っています。そして、沖縄に移り住んで13年となる2018年5月に、コンセント沖縄オフィスがオープン。早1年が経とうとしていますが、今のオフィスを立ち上げることができたのも沖縄でのご縁がきっかけです。

社内で完結していたコミュニケーションから、社外も含めた積極的なリレーションづくりへと視点をシフトすることで、東京にいた頃とは違った部分で会社に貢献できるようになるとともに、以前の私では到底実現しえなかった環境を自分でつくることが叶い始めています。

写真

沖縄事務所での勉強会の様子

社内のママ友と「リモートランチ」

チームと物理的な距離が離れて14年が経ちますが、仕事中に孤独感を感じたことは一度もありません。そればかりか、「今日誰とも話していない」という感覚が全くないのです。

写真:リモートランチの様子
会社のママ友とリモートランチ

仕事以外でもそれは同じで、ときどき「リモートランチ」と称してPCの前でママ友たちと会話をしながらランチをすることもあります。「スカイプ飲み」という言葉をはじめて聞いたときに「こんなこと誰がやるんだろう?」と味気なく思っていましたが、今では自分もすっかり楽しんでいます。

自分の価値観に合う働き方を

最近、沖縄オフィスではベランダにゴーヤを植えて緑のカーテンをつくり、ゴーヤが実ったら売ろう、なんていう話もしています。仕事の密度は変わっていないのに、沖縄時間の中にいるせいか、東京で感じていた目まぐるしいスピード感も感じなくなり、言葉のやりとりもおだやかに。何より「好きな場所で働いている」という充足感でいっぱいです。

写真

お気に入りスポット「備瀬のワルミ(左)」と「読谷村の窯(右)」

会社で前例がないという理由で「だめだろう」と諦めていたら、今の私はなかったと思います。環境を変えるため、ひとつ声を上げてみる。図々しくやってみる。声を上げることで色々な賛否の声が聞こえるかもしれませんが、声を上げることでつながりは生まれます。場所はどこであれ、長い労働の時間が最大限に幸せであるよう、自分の価値観に合う働き方をデザインしてみませんか?

[ 執筆者 ]

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コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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