社会課題をデザインで解決するコミュニティ「ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ」発足
- サービスデザイン
こんにちは。サービスデザイナーの小山田です。
去る2018年9月27日、内田洋行ユビキタス共創広場CANVASにて、デザイン領域の各分野で活動する100名以上の方々が一同に会し、「ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ」という新しいコミュニティの発足会が開催されました。私自身も発起人および運営事務局として関わっている本コミュニティのテーマは、「地域、日本、世界をクリエイティブにデザインする」。今回の記事では、領域を横断して社会課題の解決を目指す本コミュニティの活動趣旨と今後の展望についてお話ししたいと思います(※コミュニティへのご参加は本記事の最後でご案内しています)。
ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブとは
少子高齢化や産業構造の変化など、現在日本が直面している社会課題は少なくありません。それらに対し、行政・民間企業・組織それぞれが単体で向き合うのではなく、領域横断的に各専門分野で連携し、オープンに課題解決に取り組んでいこうと発足したのが「ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ」です。
本コミュニティでは、組織発足前に発起人を中心に3回に渡るプレワークショップを行い、活動テーマを絞り込みました。
発足前のプレワークショップ
このプレワークショップでは、企業やデザインエージェンシー、教育機関など、さまざまな立場の方が、ソーシャルとデザインをテーマにした話題提供を行い、多方面で展開されているデザイン活動に対する理解を深めました。そして、3回目のプレワークショップで参加者が感じている課題を出し合い、ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブとしての全体的なビジョンをまとめました。
経済や生活の価値観が変容を遂げ、複雑さを増している昨今、本コミュニティの活動の目的は、デザインの力を用いたソーシャルインパクト(成果)を生み出し、継続的に社会課題の解決に役立てていくことです。そのために、問題解決のための柔軟なネットワークとして機能する組織でありたいと思っています。
発足会の様子。スタンディングで20分ずつ3つのワークショップを体験する機会も
「官」と「私」の間にある「公」
プレワークショップの中で挙がった議題の一つとして、「官・公・私」という概念があります。一般的に、日本で“社会課題”というと、行政や自治体といった「官」が解決するものであり、そういった“世の中をつくる”場面に私的な領域の人々はコミットしないという暗黙の了解がまだまだ強いように思います。しかし、私たちひとりひとりの「私」が、行政の仕組みや社会課題を理解し、各領域の専門知識を互いにもち寄ることで「官」と「私」が交差する「公」―ソーシャル―という領域にアプローチしていくことは可能です。
近年、デザインという言葉はクリエイティブとして目に見える成果物だけではなく、その考え方も含め注目され、さまざまな領域で導入され始めています。 行政領域においても、デジタルガバメント推進の文脈で、利用者中心の行政サービスの実現に向けた取り組みが計画され、サービスデザイン思考に基づく業務改革が進められようとしています。
コンセントでも、行政組織へのデザイン思考の導入支援や、行政サービスへのサービスデザイン導入に関する調査・研究などを行っていますが、最終的には、「官・公・私」がシームレスにつながりながら、さまざまな課題解決を行えることが理想的な環境です。このような全体感をもったアプローチこそが、「ソーシャルクリエイティブの本質」だと考えています。
「ユーザー参加型」から「ユーザー共創型」へ
「ソーシャル」という言葉はさまざまな意味の広がりをもつ言葉です。その浸透をさまざまなシーンで感じる一方で、話し手の解釈に依存する面も多いと感じています。ただ、その根底には共通して「私たちの普段の暮らしが豊かになること」が重要な価値観としてあると考えています。
私たちの普段の暮らしは、社会的な制度やビジネスという「デザイン」されたシステムの上で営まれるものです。「私たちひとりひとりがこのシステムを変えうる」という意識や考えを醸成し、ユーザーがただ部分的に「参加」するだけではなく、対等な立場で「共創」できる環境を構築することも、我々デザイナーが目指すべきことだと考えています。
例えば、コンセントのいすみ市発ライフスタイルプロジェクト』では、サービスデザインメソッドを利用し、地域おこし協力隊の方々の事業アイディア検討の支援を通して、さまざまなステークホルダーと共に考えるという共創関係の構築を目指しました。
(パブリックラボ)で実施した、産官学民協働プロジェクト『事業アイディアを「プロトタイピング」できる場としてプレゼンテーションイベントを実施
地域の方々とともに行ったリサーチ結果をサービスエコロジーマップとして視覚化し、包括的な視点で地域課題をとらえた
デザインプロセスにおいてユーザーを中心とした取り組みが重要視されるようになり「ユーザー参加型」のアプローチが広がりを見せています。今後は、より多様で本質的な価値を創出するために、サービス提供者と利用者が対等な立場でデザインを行う「ユーザー共創型」へとスタンダードが変わっていくのではないでしょうか。
組織の垣根を超え、社会を変える活動を
課題やビジョン、自身の能力をもち寄り、オープンに議論し、課題解決に向けた専門知を集めて社会課題解決のエンジンとなるような存在を目指すソーシャルクリエイティブ・イニシアチブは、情報交換の場としてFacebookページを開設しています。本コミュニティの活動に興味のある方はこちらからぜひご参加ください。
ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ Facebook公式ページ
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