顧客体験実現の鍵「サービスブループリント」

組織の「人」や「データ」の流れを可視化する方法とは?

  • 岡本 拓サービスデザイナー

※本コラムは株式会社翔泳社の運営するWebメディア「Biz/Zine(ビズジン)」に、2019年7月17日に掲載された、岡本拓による寄稿原稿の転載です(運営元の株式会社翔泳社より承諾を得て掲載しています)。

昨今、ビジネスにおいてユーザー体験(UX)をデザインすることの重要性が高まっています。ユーザー体験のデザインには、サービス利用でユーザーが何を感じているのか、ユーザー視点で分析し施策を考えることが必要です。このユーザー視点の重要性やユーザー体験についての理解は近年かなり普及してきたように思えます。

次に必要なことは、そのユーザー視点で考えた施策を実現・実行し、持続可能にすることです。そのためには、同じくユーザー視点を軸にした事業プロセスの設計と理解が重要になってきます。しかしながら、事業プロセスは企業内組織の複雑さやサイロ化、昨今のデジタル接点(タッチポイント)の急増によって、全体像を把握することが困難になっています。本記事では、このような状況において、複雑さを視覚化、整理し、関係性を理解するためのツールである「サービスブループリント」をご紹介します。

ユーザー理解から実行・実現に向けて不足しているものとは

ユーザーのことを理解する上で、カスタマージャーニーマップ(CJM)などのユーザー理解やモデル化の手法を取り入れながらユーザー体験の向上に取り組んでいる人は多いと思います。しかし、せっかくユーザー視点で問題を把握しビジョンが見えても、組織的な壁、部門をまたぐ際の軋轢がネックとなり挫折してしまうケースも多いのではないでしょうか。

サービスの実行においては、一度オペレーションを遂行する組織側に観点を戻し、ユーザー視点とのバランスを取る必要があります。

このようなユーザー体験と組織の課題を考える場合にサービスブループリントを使うことで、ユーザーへのサービス提供に関わる人やデータの流れやしくみを理解することができます。そして、どこに課題があるのかを可視化することができます。また、可視化により組織内外のコラボレーションをする人々の間で、サービス全体像や、サービスがどのように機能する(べき)かに関しての共通認識をもつことができます。

イギリスのサービスデザインエージェンシーのLive|work社が、ノルウェー最大の保険会社Gjensidige向けに作成したサービスブループリントを例に見てみましょう。

Live|work社はGjensidigeと共同して、保険以外のグループ会社であるGjensidige銀行の機能を統合する、というアイデアを実現するためにサービスブループリントを使用しました。それぞれの会社の「バックステージ」の機能をサービスブループリント上にマッピングすることで、機能統合を実現するために何をしなければならないかを皆で話し合うことが可能になりました。

写真:オフィスの壁に、印刷された大きなサービスブループリントが貼られている様子

Live|work社によるGjensidige service blueprint(引用元:SERVICE DESIGN TOOLS「Gjensidige service blueprint」(2019年7月7日時点)

サービスブループリントと他の分析ツールとの違い、どの場面で使うのか

さて、それでは数ある分析手法の中で、なぜサービスブループリントが必要になってくるのでしょうか?

サービスブループリントと同じように事業プロセスを可視化する方法にはプロセスマッピング(ブラウンペーパー手法と呼ばれる場合も)といったものがあります。しかしながら、プロセスマッピングがサービス全体のプロセスを可視化するのに対して、サービスブループリントは、ユーザーの行動や接点を起点に、事業者側のサービスや従業員の関連性を可視化するという点で異なります。ユーザーを中心におくことで、サービスの中の要素のつながりがユーザーにとっての価値につながっている意識をもつことができます。

サービスの内容は複雑であるため、分析をし始めるとユーザーの視点が抜け、組織内の効率化に陥りがちです。サービスブループリントなら、そもそもの目的を見失い迷子になることはありません。

イメージ図:顧客の行動に対して、それぞれのタッチポイントでサービス提供側がどのような行動をすべきか記述されている

サービスブループリントのイメージ図(作成:コンセント)

それでは、サービスブループリントは具体的にどんな時に効果を発揮するのでしょうか?

サービスブループリントは他領域のステークホルダーが関わるプロジェクトにおいて効果的です。たとえば複雑なシステムが関係する銀行や鉄道会社のプロジェクト、巨大化した大企業の組織の整理などです。具体的にはユーザーを中心としつつ、ユーザーに関わるタッチポイントやサービスに関わるシステム(フロントステージ)と見えないシステム(バックステージ)の関連性を視覚化します。

サービスブループリントはプロジェクトのフェーズ全体で使えるものですが、特にプロジェクトの初期設計、そしてサービスのプロトタイピングを行うプロジェクト後期に効果を発揮します。プロジェクトの初めでは、現状のユーザー体験を軸に事業者側のサービス分析をし、どこに欠陥があるのか、そしてどこに施策を考える余地があるのかを組織内で認識合わせをすることができます。

プロジェクトの最終段階では、施策の対象となる将来のユーザー体験を軸にサービスを考えます。サービス内に存在する接点や異なる部署同士の関係性を視覚化することで、サービスの実施、実行のための組織内のコミュニケーションをより効率的かつ効果的に進めることができます。

以上、サービスブループリントについての簡単な解説をしました。記事を読んで興味をもたれた方は、ぜひ実際に参考書籍などを読みながら試しにつくってみてください。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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