西日本旅客鉄道(JR西日本)    鉄道利用体験におけるサービスデザイン

輸送障害時のあるべき顧客体験を実現する

「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」の実現を目指し、鉄道事業、創造事業の強化に取り組んでいる西日本旅客鉄道株式会社様(以下、JR西日本)。同社が年に1度実施している顧客満足度調査において顧客のストレスポイントがもっとも高い「輸送障害時の情報提供」に関する課題調査を端緒に、現在および未来のあるべき顧客体験のビジョン策定、さらに、その実現に向けた組織横断での実現施策の各部署を巻き込んだ共創的な具体化の検討まで行いました。

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[ プロジェクトのポイント ]

  • 実地観察調査やインタビューによる顧客視点での課題・ニーズの抽出
  • サービスブループリントやカスタマージャーニーマップを用いたあるべき顧客体験と業務オペレーションの設計&定義
  • 7部署+2社にまたがる組織横断的なビジョンと実現施策の具体化
ワークショップの様子(1点目/全5点)
ワークショップの様子(2点目/全5点)
ワークショップの様子(3点目/全5点)
ワークショップの様子(4点目/全5点)
ワークショップの様子(5点目/全5点)

プロジェクトの背景

JR西日本では、年に1度実施する顧客満足度調査での「輸送障害時の情報提供」の顧客評価の低さがかねてより大きな課題でした。同社ではこの状況の改善のために iPadの導入やデジタルチャネルの新規開設、社内でのやり取りのデジタル化など取り組みを実施。しかしデジタル化をするだけで顧客体験が改善するわけではなく、デジタルでの提供情報が重複したり、適切なタイミングや内容でなかったり、どの情報が最新なのかがわかりにくかったり、など、依然として課題は残ります。さらに部署それぞれが個別で施策を実施した結果、情報伝達のフローが複雑化、社内運用負荷の増加など、組織連携やオペレーション上での別の課題も発生してきました。
本プロジェクトはこうした状況をふまえ、顧客視点に立った課題の抽出とコミュニケーションのあるべき姿の定義、さらにその実現のための部署間の連携強化を目指して実施されました。

問題解決までのアプローチ

まず、課題を把握するためのアプローチとして、実地観察調査、顧客インタビュー調査、社内インタビュー調査の3つを実施しました。 
駅のホームや改札における実地観察調査では、一次情報が発信されて現場に伝達されるまでに、伝達手段や各部署の利用ツールの違いなどで情報精度が落ちてしまう問題が明らかに。現場で顧客対応する駅員の情報取得環境などもBAD UX(顧客満足度の低い体験)の発生に影響していることがわかり、これらの発生要因や背景の文脈探索を行いました。顧客インタビュー調査では、輸送障害時の体験、その際に必要だと思った情報、周囲の状況や文脈を顧客自身の言葉で語ってもらいました。そこから、顧客が求めているのは端的に言えば「電車の遅延情報」ではなく「判断ができる、納得できる意思決定のできる情報」「目的地に行くための手段や方法」である、と定義しました。
複数部署に対する社内インタビュー調査では、各部署や現場での課題感をヒアリングするとともに、さまざまな情報源から顧客に情報が届くまでのフローを整理。
これらの調査結果を現状の課題のモデルとして輸送障害発生から各チャネルまでの情報伝達フローチャートとカスタマージャーニーマップの形に統合しました。 こうして抽出・定義された課題をふまえ、未来のあるべき理想の顧客体験を描くためのJR西日本の7部署とグループ会社2社(IT子会社+カスタマー子会社)の人々とともにワークショップを実施。将来のビジョンとそれを実現する具体的なアイデア出しを行いました。

ワークショップに続いて具体的な戦略とアクションに落とし込むために、3年後、5年後、10年後それぞれの段階でのビジョンとそこで実現すべき顧客体験をマイルストーンとして定義。そして実現に向けて動き出すために、まずは3年後のビジョンと顧客体験の実現において必要な業務オペレーション設計を再検討し、サービスブループリントとして顧客体験とオペレーションをつなぐ形でビジュアル化しました。これをもとに中長期を見据えたビジョンを共有するとともに、組織を横断する情報伝達のフロー上でどのようにビジョン実現に向けて「すぐ動く出すべきこと」「1年後までに取り組むべきこと」など具体的にアクションに落とし込む議論を実施。さらに個別の施策実現に向け誰がどう動くか、といった各部署の主体的な関与についても具体的な検討と設計を行っています。

輸送障害時のカスタマージャーニー

輸送障害時の情報伝達フローマップ

遅延時顧客体験改善のサービスブループリント

クリエイティブのポイント

本プロジェクトでは、実際に輸送障害が発生している現場での実地観察、および顧客へのインタビュー調査をすることによって、顧客視点での課題と潜在的なニーズを引き出すことができました。また、中長期的な「あるべき顧客体験」を起点として共通のビジョンを明文化し、それを実現するために各部署の具体的な実現施策に落とし込むことで、顧客視点に基づく全社的な業務改革の方針を示しています。

[ プロジェクト概要 ]

クライアント名 西日本旅客鉄道株式会社 様

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