クリエイティブの可能性を広げるイラストディレクション

書籍『たのしく、イラストディレクション!』から、依頼者の迷いどころを解決するヒントを紹介

  • 岩楯 ユカ(IWADATE Yuka)広報/役員アシスタント


書籍『たのしく、イラストディレクション!』表紙画像

見る人の心を惹きつけたり、ワクワクする気持ちにさせたり、情報を視覚的に伝わりやすくしたり。より良いコンテンツをつくる上でいろいろな役割を担う要素の1つ、イラストレーション。コンセントでもコーポレートサイトやブランドサイト、アプリケーション、会社案内、広報誌、社内報や書籍、雑誌、ポスターなど、さまざまなコミュニケーションツールやサービスのデザインで、イラストレーションを提案することは多くあります。

デザイナーがイラストレーションを描くこともありますが、多くの場合はその媒体の目的や世界観などに合うイラストレーターを、デザイナーや媒体の制作担当者が探して依頼することになります。でも依頼した経験があまりない場合、「どうしたらいいんだろう?」「どんな観点で探したり選んだりすればいいんだろう?」……と不安や疑問がいろいろ出てくるかもしれません。私はデザイナーではなく広報やマーケティングの仕事をしているので、イラストレーションを自分自身で直接依頼することはほとんどなく、どうすればよいのか迷います。

そこでこの記事では、イラストレーションの魅力や、イラストレーターと一緒により良いものをつくる楽しさが詰まった、コンセントのアートディレクター/デザイナーの白川桃子の編著『たのしく、イラストディレクション!』(ビー・エヌ・エヌ 2021年1月27日刊行)から一部抜粋させていただきながら、私のような“依頼初心者”に役立つ、

  • イラストレーターを “探す” 際のポイント「表現・個性を読み解く観点」
  • イラストレーターを “選ぶ” 際の3方向「モチーフ・内容」「印象」「表現手法」

についてご紹介します。

イラストレーターを “探す” 際のポイント
「表現・個性を読み解く観点」

魅力的な作品を生み出す大勢のイラストレーターの中から、媒体の方向性などに合った方を探すのはとても大変です。デザイナーはどんなふうに探しているのでしょうか?

本書では、媒体を通して達成したい目的に合うデザインの方向性を決めたら、その目的にふさわしい人を見つけるきっかけとして、好きなイラストレーターを見つけ、なぜ自分がその作風に惹かれるのかその理由を考えながら、「イラストレーターの個性を知り」「出会いの機会を広げ」「表現を読み解く」ことを挙げています。

さらに、その人ならではの表現や個性を読み解くポイントとして、

  • 全体から細部まで観察する
  • 持ち味を分解して見る

ことを紹介しています。それぞれ詳しく見ていきたいと思います。

全体から細部まで観察する

書籍『たのしく、イラストディレクション!』P.38〜39の写真。ページ見出しは「STEP2-3 表現を読み解く」。イラストレーションを「全体」「ピックアップ」「細部」でじーっと観察する様子を表現したイラストと本文が載っている。

全体から細部まで観察してイラストレーターのことを知る
イラストレーションの魅力を十分に引き出し、デザインとかけ合わせてより良いコラボレーションを生みだすためには、その人ならではの表現の特徴を捉える必要があります。まず作品全体を見て、得意とする表現やテーマ、そこから受ける印象をつかんでみましょう。つぎにひとつひとつの作品に着目し、タッチや配色、構図、ディテールを細かく観察することで、表現の奥深さや細部の魅力を見ていき、イラストレーションへの理解を深めます。これを繰り返すことで、イラストレーターの個性を捉えることができるようになるはず。でも、本当に大切なのはイラストレーションをたのしむこと。それを忘れずに、イラストレーションが表現する世界に飛び込んでみてください!

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.38(STEP2 イラストレーターを探す「表現を読み解く」)

森全体も見るし、1本1本の木の細部も見るーー幹はどうなってる? 枝はどんな分かれ方? 葉っぱはどんな形状? 触った感じは? 匂いは? 根元は?ーー。
そんなイメージを思い浮かべました。全体をつかみ細部をじっくり観察することで、そのイラストレーションやイラストレーターの特徴、個性を感じとっていくこと、何より「たのしむ」気持ちが大切なんですね。

持ち味を分解して見る

書籍『たのしく、イラストディレクション!』P.40〜41の写真。ページ見出しは「イラストレーションの持ち味を分解して見てみよう」。「描いているモチーフ」「主線の有無」「配色」という要素ごと、さまざまな表現方法があることを文章とイラストレーションで伝えている。
イラストレーションの持ち味を分解して見てみよう
イラストレーションから受ける印象やその個性を成り立たせているものをもう少し紐解いていくために、作品を構成しているさまざまな要素を細かく分解して見てみましょう。意識的に見てみることで、たとえば線のゆらぎや色の組み合わせ、構図のユニークさなど、他とは違ったその人ならではの表現に気づき、それぞれの個性をより深くつかめるようになります。

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.40(STEP2 イラストレーターを探す「表現を読み解く」イラストレーションの持ち味を分解して見てみよう)

さらに本書では、この「持ち味を分解して見る」際の観点として以下の5つが紹介されています。

1.描いているモチーフ

イラストレーターの得意な表現やテーマ性があらわれるモチーフ。どんなものをどんなふうに描いているか見てみよう

人物1つとっても顔のみなのか全身なのか、動きがあるのか静止しているのか、風景込みなのか、デフォルメされているのかなど、モチーフの描き方もさまざまなようです。

2.主線の有無

主線の有無や太さ、速度、緩急のつけ方など、線ひとつでまったく異なる表情になる

主線がありなのかなしなのか、ある場合、主線には隙間があるのかないのか、線はどのくらいの太さなのか。主線がなければ軽やかな印象になり、太い主線で描かれていればしっかりした印象になる。線だけでも表情が変わりますね。

3.配色

色数をしぼったり、ビビッドな配色をかけ合わせたり、全体的に淡い色調でまとめたり。配色も大きな個性になる

モノクロで描かれているのか、1色なのか複数の色が使われているのか。ビビッドなのか、ペールトーンなのか。「大きな個性」とあるように、配色で世界観や感じる印象が変わってきます。

4.テクスチャ

線や塗りに用いられている多種多様なテクスチャの違いを見る。イラストレーションの雰囲気を大きく左右する要素

ベタ塗り、水彩、鉛筆、パターン、コラージュなど。ベタ塗りなら「しっかりした印象」や「元気な印象」を、水彩なら「繊細さ」や「優しさ」を感じるかもしれません。

5.構図・構成

正面からの構成や俯瞰、奥行き、浮遊感を感じさせる構図などイラストレーターならではの切り取り方、配置のおもしろさを見る

インスタグラムなどのSNSを使っていたりカメラが趣味だったりする場合、写真との共通性を感じませんか? どこを切り取ったら料理のおいしさやシズル感が伝わりそうか、どんなアングルが素敵に見えそうか、こういうメッセージに合う構図ってどんなものだろうか、とか。イラストレーションも同じ見方ができるんですね(以上、出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.40-43(STEP2 イラストレーターを探す「表現を読み解く」イラストレーションの持ち味を分解して見てみよう))

こうして構成要素一つひとつを分解してじっくり見ていくと、なんとなく見ているときとは格段に理解度が変わってくると思いました。たくさんのイラストレーションを観察することで、自分が惹かれるイラストレーションの共通点という気付きもあるかもしれません。なぜそこに惹かれるのかや、全体を見てつかんだ「雰囲気」がどんな要素の組み合わせから感じるものなのかといったことを熟考してみることで、イラストレーターの方の個性や表現を見る目を養えそうな気がします。

ウェブサイトや広報誌、社内報などのデザインや制作を外部パートナーに依頼している方の場合、外部パートナーからイラストレーターの提案を受けたときに、上記の観点で観察してみることで、そのイラストレーターの個性や作風を理解した上で判断がしやすくなるかもしれません。

イラストレーターを “選ぶ” 際の3方向
「モチーフ・内容」「印象」「表現手法」

書籍『たのしく、イラストディレクション!』P.44〜45の写真。ページ見出しは「3つの方向から候補を見つける」。「モチーフ・内容」「印象」「表現手法」という3つの方向から基準や条件を定めて探すことを文章とイラストレーションで伝えている。

全体と細部を見てイラストレーターの方の個性や表現の特徴を捉えることができるようになった。でも、媒体の目的やデザインの方針に合ったイラストレーターをいざ探すとなったときに、「具体的にどうすればいいのかわからない」と思う人も少なくないのでは?

そんな疑問に、本書では「モチーフ・内容」「印象」「表現手法」 の3つの方向から、基準や条件を決めて探すことを提案しています。

曖昧な感覚だけで判断すると、イラストレーターの持つ世界観や作風を活かすどころか、定めた方針とズレてしまい、発注後に「なんか違う……」という事態が起きてしまうことも。それを避けるため、依頼するイラストレーターを探すときはSTEP1で作成したデザイン案をもとに、「モチーフ・内容」、「印象」、「表現手法」の3方向からしっかりした基準や条件を定めて探すようにします。ある程度候補がしぼれたら、最近の活動状況などについて確認することもポイントです。

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.44(STEP2 イラストレーターを探す「3つの方向から候補を見つける」)

「モチーフ・内容」「印象」「表現手法」の具体例として下記が紹介されています。

  1. 1.どんなモチーフ・内容を描いてほしい?
    「食べ物」「人物」「動物」「仕組みの解説」「風景」「パターン」など。描いてもらいたい、具体的なモチーフや内容
  2. 2.どんな印象にしたい?
    「知的」「かわいい」「きれい」「かっこいい」「ゆるい」「華やか」など。ターゲットに合わせ、演出したい雰囲気や狙いたいイメージ
  3. 3.どんな表現手法で描いてほしい?
    「シンプルな線画」「精密な線画」「鮮やかな油彩タッチ」「2色のカラー展開」「原色でカラフルに」「やわらかな水彩タッチ」など。タッチやカラーなど、得たい印象を表現するための手法

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.44(STEP2 イラストレーターを探す「3つの方向から候補を見つける」)

こうして3つの観点から言語化することで、依頼者とイラストレーターとが同じ方向性を共有しやすくなりますね! 本書ではさらに「最近の活動状況」「イメージをふくらませてくれそうか」など「+αの視点」も紹介されています。

可能性を最大限に広げて候補を探す「7つのヒント」

ただ、この「モチーフ・内容」「印象」「表現手法」 という3つにしばられ、探すときの選択肢が狭くなり過ぎてしまうかも、と不安になることがあるかもしれません。

本書では、「条件にしばられるあまりに、イラストレーションを見る幅を狭める危険性」を伝え、イラストレーションの可能性を最大限に広げながら候補を探していくための「7つのヒント」を紹介しています。

  1. 1.完成形をシミュレーションしながら見てみよう
  2. 2.世界観や作風を無視した依頼はしない
  3. 3.過去作品のモチーフだけにしばられない判断を
  4. 4.好きの気持ちも大事。でも好みだけで選ばないように
  5. 5.デザイン要素とのバランスも考えよう
  6. 6.「適材適所」を考える
  7. 7.ひらめきも大切に!

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.46〜51( STEP2 イラストレーターを探す「3つの方向から候補を見つける」候補を探すときの7つのヒント)

この7つのヒントについてさらに具体的な説明が続きます。たとえば、

3. 過去作品のモチーフだけにしばられない判断を
描いてほしいモチーフに近いものを過去にも描いていることは選択基準のひとつとなりますが、それだけを理由に探していくと、新たな出会いの機会が減ってしまいます。観察してつかんだ作品のタッチや手法からイメージをふくらませ、希望するモチーフを描いてもらったらどんな表現になるか想像をめぐらせて考えるようにしましょう。

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』)P.48(STEP2 イラストレーターを探す「3つの方向から候補を見つける」候補を探すときの7つのヒント)

など。

イラストレーターの持ち味を生かしながら、デザインとコラボレーションさせることにより、1人では創造できないクリエイティブのジャンプを起こせるかもしれません。そのためにもこの7つのヒントはぜひ押さえておきたいですね。

同じゴールに向かうパートナーとして

ここまで、イラストレーターを “探す” “選ぶ” という2つのフェーズに絞り、パートナーと一緒にものづくりをする「依頼する立場」としての視点で、特に不安になったり迷ったりする部分についてその解決のヒントとなりそうな観点や考え方を、書籍『たのしく、イラストディレクション!』からご紹介してきました。

本書で紹介されている考え方や観点は、イラストレーションに限らず、撮影やコピーライティング、デザインなどを依頼する際にも生かせるのではと思っています。「迷ったらこの観点で分解して見てみよう」「より良いコンテンツをユーザーに届けるために、パートナーと一緒にもっともっと追求してみよう」と思っていただけたらうれしいです。

書籍『たのしく、イラストディレクション!』の表紙の写真。

この本の編著者の白川は、雑誌や書籍、教科書、大学案内、地域プロモーション、企業のウェブサイトなどさまざまな媒体のアートディレクションやデザインの経験が豊富です。この記事でご紹介した内容以外にも、そもそものイラストレーションの役割や発注者としての心構えや、白川が経験してきたイラストディレクションの工夫やヒントがたくさん紹介されています。

イラストレーションとものづくりへの愛が詰まった、依頼者としてのコミュニケーションをデザインする、まさにそんな1冊。ぜひ読んでみてくださいね。

最後にものづくりに携わる1人として、あらためて心の中に残しておきたいと思った言葉を、本書の「はじめに」で見つけたのでご紹介して終わります。

本書を読めば、イラストディレクションが完璧にできる! うまくいく! と言い切ることは、残念ながらできません。なぜならものづくりは、それぞれの状況ごとに人と人とが複雑に絡み合うため、「ケースバイケース」なことが非常に多く、たったひとつの正解が存在しないからです。ただ、私が大切に考えているのは、同じゴールに一緒に向かうパートナーのことを理解し、お互いの力がより発揮できる環境をつくること。そうすることが、よりよいものづくりにつながると信じています。これはイラストレーターとの仕事に限らず、フォトグラファーやライター、スタイリストといった、パートナーと一緒につくる仕事すべてに言えることではないでしょうか。

出典:白川桃子編著『たのしく、イラストディレクション!』P.2(「はじめに」)

『たのしく、イラストディレクション!』
表紙画像
  • ■編著:白川桃子
  • ■イラスト:深川優
  • ■アートディレクション:白川桃子
  • ■出版社:株式会社ビー・エヌ・エヌ
  • ■仕様:B5判変型、264ページ
  • ■ISBN:978-4-8025-1125-4
  • ■発売日:2021年1月27日
  • ■定価:本体2,500円+税

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出版元株式会社ビー・エヌ・エヌのオフィシャルページ

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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