UXデザイン・サービスデザインを学び合う現場発オンライン勉強会「押忍!!ゼロイチ道場」

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    叶丸恵理UXデザイナー


「押忍!!ゼロイチ道場」のビジュアル。ロゴと胴着を着たキャラクターが描かれている

こんにちは、UXデザイナーの叶丸です。

コンセントでは業界の動向や、業務で活用できる技術に関する最新情報を取得するための支援や、社員同士のナレッジの共有が活発で、スキルアップの機会が数多くあります。
セミナーや国内外カンファレンスへの参加費・交通費の全額補助制度、書籍購入制度などのほか、教育プログラムの「コンセントデザインスクール」(通称、CDS)では、社員自らが講師となったり外部からゲスト講師を招いたりしながら、コンセントのもつノウハウを社内外に発信しています。

このようなナレッジ収集・共有の文化があるため、社員が自主的に勉強会を開催することは珍しいことではありません。これらの勉強会は、知識や技術のボトムアップに貢献するだけでなく、社内コミュニケーションの活性化という効果ももたらしています。
今回の記事では、その中の一例として、私が主体となり2020年度に企画・運営した社内勉強会「押忍!!ゼロイチ道場」についてご紹介します。

1.「押忍!!ゼロイチ道場」とは

「押忍!!ゼロイチ道場」は、サービスデザインやUXデザインの基礎を学び合う社内勉強会です。若手メンバーを中心に、知識のベースラインを揃えることを目的に開催。2020年度は隔週1回・1時間30分、全14回のプログラムとして、「miro*」を使用してオンラインで実施しました。

*オンラインのホワイトボードサービス。マインドマップやブレインストーミングなど、複数人が同時にリアルタイムでコラボレーションすることが可能。

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「miro」を使用したオンライン開催の様子

2.勉強会を企画したきっかけ

「学び」や「コミュニティづくり」に興味があった私は、日頃から社員間で楽しく学びを循環できるしくみをつくりたいと考えていました。サービスデザイン、ウェブ、エディトリアルなど、それぞれ異なる専門領域をもつコンセントのデザイナーに対して、私自身がこれまで学んできたナレッジを伝えたいと思い、この勉強会を企画しました。

3.企画づくりとポイント

よりよい学びにつなげるにはどうすればよいか? 企画にあたり、特に3つのポイントに注力して検討を行いました。

  • ポイント1:コンセプトの具現化
  • ポイント2:参加者ファーストのプログラム構成
  • ポイント3:定期開催を意識した運営

ポイント1:コンセプトの具現化

「参加したい!」と思ってもらうために、プログラムの内容はもちろんのこと、親しみやすく覚えてもらいやすいネーミングやビジュアルも重要と考えました。

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ゼロイチ道場のビジュアル

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ネーミング&ロゴ案出しの様子

この勉強会のコンセプトである「知識をゼロから1へ」を表現するため、お互いに学び合うことを象徴する「道場」というキーワードを用いて、「押忍!!ゼロイチ道場」と名付けました。参加者を「道場生」に見立てたキャラクターも作成。加えて、勉強会の中での第一声は「押忍!!」にしました。
参加者からは、「ビジュアルやコンセプトから楽しさが伝わり、参加の動機につながった」との声が寄せられました。

また、楽しさの中にこそ学びがあると考え、「3つのオキテ」を策定しました。

「その1 横断的に発言すべし」「その2 わからないことを恥じるべからず」「その3 楽しんで学ぶべし」と書かれている。

「押忍!!ゼロイチ道場」3つのオキテの図

ポイント2:参加者ファーストのプログラム構成

勉強会は、教えるメンバーを固定せず、若手メンバーが持ち回りで「教える」スタイルにしました。教わることも学びではありますが、人に教えることでより学びが深まると考えたからです。

また、経験の長短にかかわらず誰もがスキルアップできるよう、基本的な知識だけでなく、プロジェクト内の実践知を共有し合うコーナーを設けました。

「押忍!!ゼロイチ道場」基本構成
  1. (1) アイスブレイク
    • 目的:参加者にテーマについて言語化してもらい、疑問点を洗い出す
    • 内容:「●●というテーマについてどんなイメージがありますか?」という質問を投げ掛ける
  2. (2) 知る
    • 目的:テーマに関する基本知識を学ぶ。教える側の若手メンバーは、人へ教えることでテーマへの理解を深める
    • 内容:若手メンバーがテーマに沿って調べてきた内容を共有
  3. (3) ワーク
    • 目的:実際に手を動かし、フレームワーク等の使い方を学ぶ
    • 内容:ミニワーク
  4. (4) 事例共有
    • 目的:実践知を学ぶ
    • 内容:テーマに即した社内事例を共有
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KAカード作成ワークの様子(デザインリサーチ「『KA法』『価値マップ』を学ぼうの巻」より一部抜粋)

また、全14回のプログラムの折り返し時期に参加者へのアンケートを実施し、意見を反映しながら適宜プログラムを更新していきました。

「押忍!!ゼロイチ道場」プログラム
  1. 1.『ビジネスモデルキャンバス』を学ぼうの巻
  2. 2.『ペルソナづくり』を学ぼうの巻
  3. 3.『カスタマージャーニーマップ』を学ぼうの巻
  4. 4.『ユーザーインタビュー』を学ぼうの巻
  5. 5.『親和図法(KJ法)単位化・統合化』を学ぼうの巻
  6. 6.『親和図法(KJ法)図解化』を学ぼうの巻
  7. 7.『KA法』『価値マップ』を学ぼうの巻①
  8. 8.『KA法』『価値マップ』を学ぼうの巻②
  9. 9.『構造化シナリオ』を学ぼうの巻
  10. 10.『ステークホルダーマップ』を学ぼうの巻
  11. 11.『サービスブループリント』を学ぼうの巻
  12. 12.『プロトタイピング』を学ぼうの巻
  13. 13.『ユーザビリティテスト』を学ぼうの巻
  14. 14.『ユーザビリティテスト』を学ぼうの巻(実践編)

サービス設計の流れに沿って、概念や手法、サービスデザインツールの目的や活用方法を学ぶ全14回のプログラム

ポイント3:定期開催を意識した運営

勉強会の運営にあたっては、次の3点を工夫しました。

①テンプレート化で効率UP

勉強会の運営でネックになるのが、準備の煩雑さです。いかに運営を効率化できるかが継続の鍵と言っても過言ではありません。そこで、プログラム構成をテンプレート化し、運用負荷を下げる工夫をしました。また、勉強会に活用する「miro」のボードは、どの回にも利用できるように、汎用性のあるテンプレートを用意しました。

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「miro」ボードのテンプレート

②多様な観点から学ぶ

経験の豊富なシニアメンバーをレギュラー化し、コメンテーターのように参加してもらったり、テーマに関連して話を聞いてみたい社員をゲストとして迎えたりなど、実践知の共有や、疑問に対するフィードバックを受けられるようにしました。参加者からは「現場視点でのティップスや失敗談なども聞けて参考になった」との声が寄せられました。

③繰り返し使える資産になるように記録する

業務都合により、勉強会の開催日時に予定が合わない参加希望者へのフォローや、復習できるしくみとして、毎回終了後に勉強会の「グラフィックレコーディング」(通称、グラレコ)と「録画」の共有を行いました。グラレコについては、「概要がまとまっていてわかりやすい」といった声や、「グラレコに似顔絵を描いてほしいので頑張って参加しています!(笑)」といった声があり、ビジュアル化することの意義を感じました。

写真:グラフィックレコーディングによる記録(その1)
写真:グラフィックレコーディングによる記録(その2)

グラフィックレコーディング

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録画の共有

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「miro」ボードのアーカイブ

4.成果と展望

「押忍!!ゼロイチ道場」を実施した結果、次の3つの成果を出すことができました。

1つ目は、「知識の標準化」。
参加者からは、「知識だけでなく応用を含んだ実例も教わったことで理解が深まり、プロジェクトでよりコミットできるようになった」「実践に近い形でワークをしたので、プロジェクトで活用できそう」といった感想がもらえました。
若手メンバーの上司からも、「参加したメンバーの成長が目覚ましく、育成の一助になっている」という声があったように、人材育成の観点においても成果があげられました。

2つ目は、「組織全体の学びの促進」。
プログラムによってはデザイナーだけでなく、バックオフィスのメンバーも参加するなど、領域を超えた学びの機会創出となり、組織全体での学びを促進できました。

3つ目は「組織内のコミュニケーションの活性化」。
コロナ禍により社員同士のコミュニケーションが取りづらい状況の中で、オンライン上で1週間おきに社員が集まって学び合える環境をつくることができました。

こうした成果を踏まえ、引き続き楽しく学び合える環境やしくみがつくれるよう、「押忍!!ゼロイチ道場」の企画内容や運営方法などをブラッシュアップしていきたいと考えています。

コンセントでは企業や行政などの組織に対し、サービスデザインやUXデザイン力を向上・浸透させるための支援や研修プログラムの提供を行っています。今後も自分たちに必要な学びの場をデザインしていくとともに、ここから得られた知見や学びをさまざまなプロジェクトに還元していきたいです。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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