バックオフィスにデザイン思考を導入する

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    家内 信好
取締役

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    江辺 和彰
プロジェクトマネージャー

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    山本 和輝人事

画像:バックオフィスにデザイン思考を導入する

デザイン思考は経営のためのみにあらず

2018年5月、経済産業省・特許庁よりグローバル環境での企業競争力向上を目指したデザイン経営宣言が発表されました。その後、多くの企業にデザイン思考は受け入れられ、複雑化する経営課題解決のための有効な手段としてビジネスの新潮流となっています。

昨今では、デザイン思考は世の中のあらゆる物事に対して有用だという実例も現れています。たとえば、がん検診の受診率向上を目指して実施されたスウェーデンのサービスデザインプロジェクトでは、政府・自治体・地域がんセンターと、サービスデザイナー・マーケターが共創し、特定ターゲット集団で約20%の受診率アップを達成しました(参考:サービスデザインによるイノベーション)。

同時に、経営レベル・管理レベルだけでなく、現場レベル・業務レベルにおいてもデザイン思考の可能性は期待感をもって注視されています。しかし、導入の具体的アプローチが確立されていないことや、業務との隔たりを理由にその有用性への理解が得にくいなど、実際に現場へ浸透させるには課題が山積しているというのが現状ではないでしょうか。

私たちは、自らの業務が“デザイン思考と親和性がない”と感じている層の理解獲得と行動変容こそ、現状打破に大きなインパクトをもたらす可能性を秘めており、デザイン思考導入にあたって重視すべき点の一つであると考えます。そのテストケースとして、コンセントのバックオフィス所属メンバーを対象に、デザイン思考のフレームワークを使用した研修ワークショップを開催しました。

成果を生むためにすべてのメンバーがクリエイティブであれ

企業の屋台骨として事業部を支えるバックオフィス。ふだんは顕在化した問題へのサポート業務が中心ですが、今回のワークショップでは自ら課題を発見し解決に向けて主体的に取り組むことを目標に据え、研修プログラム開発・実施しました。

研修概要


タイトル問題解決研修
目的潜在的な問題発見と解決のために、デザイン思考のプロセスを活用し行動できるようにすること
テーマコンセントの従業員満足度を上げる
対象バックオフィスメンバー(総務・経理・人事・広報・システム)
チーム編成 部署を横断して1チーム4〜5名で構成所要時数:1回@2時間のプログラムを4日実施(計8時間)

プログラム内容

Day1/従業員の観察

  • WORK1:アイスブレイク
  • WORK2:“従業員への共感”の重要性を知る
  • WORK3:“観察(インタビュー)”の意義を学ぶ
  • WORK4:インタビューの設計
  • WORK5:インタビューのトレーニング

初日は「コンセントの従業員満足度をあげる」というテーマに関する課題を発見するために、その手法となる観察(インタビュー)の設計・トレーニングを行いました。デザイン思考において観察はイノベーションを生むヒントとなり、対象者の潜在的な価値観を明らかにするための非常に重要な活動です。

インタビューは、まさにその実践の場。聞き方ひとつで対象の本音を引き出すことができます。実のあるインタビューにするためには目的の明確化、質問項目の設計、対象者の選定など、実施前の準備が大切であることを理解した上でインタビューに臨みます。本研修では、インタビュー手法を知ることが目的ではなく、業務の日常会話の中で従業員の潜在ニーズや、現場の問題発見ができるような技術の向上を目指します。

ワークショップで使用したスライドの抜粋。インタビューで何を聞き出すかのポイントが書かれている。最も重要なのは、相手に興味を持つこと。

Day2/観察で得た気づきから、何が問題かを紐解く

  • WORK6:インタビューの実施
  • WORK7:インタビュー結果のまとめ
  • WORK8:インタビュー結果の分析
  • WORK9:観点の整理

2日目はコンセント従業員に対して実際にインタビューを実施。得られた生の意見について分析を行い、「状況・従業員・行動」「建前」「本音」という枠組みで観点の整理を行いました。

ワークショップで使用したスライドの抜粋。抽出された意見を「状況・従業員・行動」「建前」「本音」観点で整理し、どの意見を採用すれば最も従業員満足度の向上につながるかを考える。
ワークショップで使用したスライドの抜粋。観点の整理で最も抑えるべき「本音」部分への言及がなされている。

本研修では、分析を意味あるものにするためには本質的・多角的な視点からの問いを繰り返すことの重要性を理解してもらいました。従業員行動や発言をそのまま捉えるのではなく、その内面にある目的や本音を掴むことで、業務が円滑に行われると同時に従業員満足度が上がる実感をもつことができました。

Day3/問題解決のアイデアとプロトタイピング

  • WORK10:解決すべき問題の発見
  • WORK11:アイデアの発散
  • WORK12:アイデアの共有・選出
  • WORK13:アイデアの具体化(プロトタイピング)

3日目はいよいよ解決すべき問題を定義します。その問題に対しチームメンバーの力を結集して「どうすれば、私たちは〇〇できるだろうか?(How Might We ?)」という問いを多角的な視点で繰り返し、ベストなアイデアを絞りこみ、他者に説明できる形にまで落とし込みました。

写真左:参加者のアイデアがホワイトボードに貼り出されている様子/写真右:まとめたアイデアをみながら議論する参加者

Day4/フィードバックとアイデアのブラッシュアップ

  • WORK14:フィードバックの検証・分析見
  • WORK15:アイデアのブラッシュアップ
  • WORK16:全体発表
  • Lecture:デザイン思考レクチャー

最終日となる4日目は、具体化したアイデアをブラッシュアップしていきます。発散を経て収束したアイデアに対し、さらにさまざまな視座からのフィードバックを受けることで、よりよい解決への道筋を探りました。

最終ワークである全体発表を終えたタイミングで、はじめて種明かし的にデザイン思考のプロセスについて解説。参加者が「デザイン思考のプロセス=自分たちの行ってきたワークの内容」という気づきを得たところでワークショップは幕を閉じました。

現状への気づきと経験値が、主体性を生む

本研修では「従業員満足度の向上」というバックオフィス業務に結びつきの深いテーマを設定したことで、メンバーが主体的に取り組むための動機づけを促すことができました。また、ワークを通して問題発見から解決法の提示までを一通り体験した後に、「一連のプロセスは実はデザイン思考のプロセスそのものだった」という種明かしをするという流れで展開したため、即実践に結びつく知識を学べる機会として機能しました。とかく「デザイン」は難しいものと捉えられ、自分ごと化に向かわないこともありますが、実際の体験を通すとその有用性に気づくことも多くあります。

実際の参加者からは、次のような意見が寄せられています。

問題発見と解決の重要性への気づき

「問題を発見する」「問題を解決する」ということは、どのような業務を行う上でも必要となってくると感じた。

対象者の声を聞くことの重要性への気づき

母数が少なくとも、時間が短くとも、インタビューしてみると何かしらの重要な発見があるということをあらためて感じた。

普段の業務の振り返り

普段の業務内でもプロセスの部分は自然と周囲のデザインプロフェッショナルから教わっているかもしれないなと思った。

主体性の引き出し

ほどよく自由度の高い研修で、制限に悩まされることなく取り組めたのはありがたかった。

自分のスキルアップ

チームメンバーと共に考える時間、議論する時間が身になっている感覚を得られた。さらに時間をかけられたら、より高いレベルの業務遂行が望めるのではないかと思った。

主催者側としては、デザイン思考のプロセスを活用することで、参加者が自然と視野の広さを獲得し、自らの業務に対する視点の引き上げが達成できたという手応えを得られました。コンセントでは、従業員全員がデザイン思考をベースとした共創を行える環境を築けるよう、受講層に応じて内容をカスタマイズしたワークショップを今後も開催していく予定です。

本ワークショップについて興味のある方、導入を検討される企業様は、お問い合わせページよりご連絡ください。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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