住友化学社インタビュー ビジネスに益する「共創」を生む空間づくり

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    渡邊 徹渡邊課 課長

住友化学株式会社様(以下、住友化学)が新本社移転に伴い新設した「SYNERGYCA(シナジカ)共創ラウンジ」。コンセントは、本施設のプロデュースや空間設計などを手掛けたコクヨ株式会社様のプロジェクトパートナーの1社として、体験設計からコンテンツの企画・制作までを包括的に支援しました。

住友化学が社会との交流の場としてオープンした本スペースで、体験の一つの目玉となっているのがVRによる映像体験です。2021年に1本目の映像を公開後、継続して好評を博し、2023年に2本目の追加コンテンツを制作しています。

VR映像は視野が360度展開することで2D映像よりリアリティのある体験ができるため、研修やトレーニングへの有効活用が期待されています。SYNERGYCAでの活用はその力を存分に発揮している一例といえます。

今回、SYNERGYCA共創空間プロジェクトの住友化学 SYNERGYCA共創ラウンジ ダイレクター クナップ カルロスさんへ、共創空間というスペースの在り方、その場においてのVRの活用についてお伺いしました。

クナップ カルロスさんとコンセント・渡邊のインタビューの様子。

VR映像制作を統括した渡邊(左)がクナップ カルロスさん(右)にインタビューを行いました。

共創空間SYNERGYCAの目的

渡邊:まずはSYNERGYCAの概要についてお伺いします。何を目的とした、どんな場所なのでしょうか。

クナップさん:SYNERGYCAは東京日本橋の住友化学本社内にある社外との交流を目的とした施設です。2021年末に住友化学が本社を移転した折にオープンしました。

渡邊:社外との交流が目的とのことですが、どんな方々がSYNERGYCAに来られますか?

クナップさん:交流は社会全体、さまざまな方を対象としていますが、多くお越しいただくのは企業の方々です。住友化学と同業界、化学関連企業の方々もいらっしゃいますし、これまでは直接取引のなかった企業や全く異なった業界の方も来られます。例えば、カーボンニュートラルといった社会全体で対応しなければいけない新しい課題に取り組むに当たって、パートナーとなり得る企業など。あとは大学、学校や、政府団体の方がいらっしゃることもあります。

渡邊:さまざまな方がいらしているんですね。体験されるのは社外の方だけなんでしょうか?

クナップさん:社外だけでなく社内にも、自分の会社をより深く知るため、SYNERGYCAへの見学を勧めています。最近、社員の家族に住友化学のことを楽しく知ってもらうイベントをSYNERGYCAで開催しました。社内でのインナーブランディングにも寄与できていると思います。

開設から2年になりますが、稼働率は70%を超えています。ほぼ毎日、いろいろな方との交流を行っています。

良い議論を行うために必要なこと

渡邊:SYNERGYCAは有機的な内装が魅力的なスペースですよね。

クナップさん:オフィスとは異なった、一風変わった雰囲気の中で新しい観点の議論ができるようスペースをつくっています。この空間の中に入ると、初めは皆さんびっくりされます(笑)。

私たちはできるだけ交流しやすい施設と運用を心掛けています。来訪者はだんだん慣れてきて、リラックスされますよ。互いに打ち解けた状態で、気付きやアイデアを生み出すことを目指しています。

ラウンジの様子。何名かの訪問者が壁面ディスプレイを操作したり、椅子に座って談笑したりしている。

渡邊:SYNERGYCAでは具体的にどのようなことができるのでしょう?

クナップさん:SYNERGYCAでできることは大きく2つあります。一つは議論、そしてもう一つは住友化学を知ってもらうことです。議論については、プロジェクターやデジタルホワイトボード、オンライン会議用のマイクやスピーカーなど必要な設備は一通りそろっています。加えて、短時間で楽しく深い議論を行うために、外部のプロのファシリテーターを活用しています。

さらに、楽しくよい交流ができるように、議論に入る前に「できるだけお互いをよく知る」ようにしています。そのために、SYNERGYCAでは住友化学のことをできるだけわかりやすく伝える体験型の展示を行っています。

デジタルホワイトボードを使用して会議を行っている様子。

渡邊:なるほど、議論をより深く行うためにはお互いを知ることが必要だと。体験型の展示にはどういったものがありますか?

クナップさん:例えば、会社案内の動画やプロジェクションによる社史の紹介、それからタッチパネルを用いた住友化学の有する技術についての紹介も行っています。中でも体験の目玉となっているのが、VRを利用した展示です。VR展示では、日本をはじめ世界中にある私たち住友化学の工場や研究所をまるでその場に行ったかのような視点で短時間で体験できます。

VRを介した共通体験が、その場の全員の共通言語となる

渡邊:来訪された方がVRゴーグルで体験しているときの様子をお伺いできますか?

クナップさん:SYNERGYCAにはVR体験用のエリアにVRゴーグルが数台あります。そこで来訪された皆さんにVRゴーグルを装着して同時に同じ映像を見ていただきます。そうすると、全員が同じ体験をしているので「右を見て!」「なにかある!」といったリアクション、声かけを相互にするところが面白いです。一緒に旅に行っているような感じです。

それと、興味深いのは見る方のポジション(職種)による視点の違いです。例えば、エンジニアがバックグラウンドの方は工場内部のシーンで、周りにある配管や工場の構造を見ているのが頭の動きからわかります。工員の作業や製品に関心のある方は頭を少しずつ動かしながらその部分を注視されていますね。360度見回すことのできるVRだからこそ、その方特有の体験の視点があることが伝わってきて面白いです。

来場者3名がVRゴーグルを装着し、同じ映像を体験している様子。

渡邊:VR動画を見る前後で来訪者の方に変化はあるのでしょうか?

クナップさん:ありますね、大きなインパクトがあります。VR体験が初めての方も多いので。VR動画をつくる方は結構大変ですが(笑)、見る方はゴーグルを付けるだけで驚きの体験をすることができます。たった数分間で遠くに行って、知らない景色を見ることができるんですよね。見た方からは「住友化学の工場のスケールや取り扱っている製品、研究分野の幅広さをまるでその現場に行ったような感覚で知ることができた」とコメントをいただいています。写真や2D映像より圧倒的に情報量が多く、その場の雰囲気が伝わりやすいと思いますね。

渡邊:「議論をより深めるために、住友化学を知ってもらう」ためのVR展示だとおうかがいしましたが、議論に対する影響はいかがでしょうか。

クナップさん:VR体験をしてから議論を始める際に「VRでいい刺激を受けて“頭がひろがった”、リフレッシュもできてこれから議論をより楽しくできると思います」と言っていただいたことがあります。それは一番心に響きましたね。そして議論に入ると、実際には行ったわけではない場所や見たことのない製品についても「さっき見たあれですね」というように共通の前提をもって話ができるようになっています。SYNERGYCAから一歩も出ずに、数分で共通体験を形づくり、一体感を醸成できていますね。時間や距離という制限を超えて、同じ空間で同じものを一緒に体験することの価値を実感しています。

写真左:笑顔のクナップ・カルロスさん 写真右:インタビューの様子

[ 執筆者 ]

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