東京大学未来ビジョン研究センター   産・学・公の共創を支えるビジョン策定

最終成果物のビジョンステートメントをまとめた資料一覧。資料タイトルはコ・エンジン ビジョンステートメント。

組織のあり方を個人視点で語り合い、
新たな強いビジョンを紡ぎ出す

東京大学を代表機関とする「ビヨンド・"ゼロカーボン"を目指す“Co-JUNKAN”プラットフォーム研究拠点」(以下、研究拠点)のビジョン策定を支援するプロジェクトにおいて、コンセントは、複数の大学や企業、団体からのメンバーが参加するワークショップの設計・運営と、その結果をビジョンステートメントとして言語化する役割を担いました。

  • ドキュメント・スライド
  • デザイン思考組織化支援
  • クリエイティブ開発

[ プロジェクトのポイント ]

  • 研究拠点メンバー個人の課題感や問題意識を起点としたビジョン策定プロセス
  • 具体的な活動につなげるためのビジョンステートメント作成

プロジェクトの背景

研究拠点は、地域資源が高度に循環利用されるシステムの社会実装を目指し、複数の大学・企業・団体の連携による共創活動を行っている組織です。2021年当時、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が公募する「共創の場形成支援プログラム」(以下、COI-NEXT)の共創分野における育成型に採択されていた研究拠点は、本格型への昇格に向けて、COI-NEXTが推進する「ビジョン主導・バックキャスト型研究開発」を目指していました。そのためには、トップダウンでビジョン(未来のありたい社会像)を策定するのではなく、研究拠点メンバーとの対話による共創プロセスを通して、ビジョンの策定と共有を行う必要がありました。

本プロジェクト終了後、研究拠点は本格型への申請を行い、2022年度より本格型に昇格しました。2022年度以降もコンセントは研究拠点の取り組みに伴走。30以上の研究拠点参画機関が一堂に会する全体研究会の運営、および議論結果の分析・考察を行い、研究拠点に必要なコミュニケーション施策を提案しました。

※ 共創分野は、大学等を中心とした、国レベル・グローバルレベルの社会課題を捉えた未来のありたい社会像の実現を目指す、国際的な水準の自立的・持続的な産学官共創拠点の形成に取り組む研究開発分野のこと。育成型と本格型が設定されており、委託費や実施期間が異なる。

問題解決までのアプローチ

コンセントは、本格型への昇格に向けて研究拠点メンバー(20名程度)との計4回のオンラインワークショップの設計と運営、ビジョンの策定支援を担当しました。参加者同士の対話の場を通して、ビジョンを策定するために必要な個々人の考えや想いを抽出し、その内容を編集してビジョンステートメントとして取りまとめました。

プロジェクトのプロセス図

個人ワークとグループワークを織り交ぜた共創型のビジョン策定プロセス

各ワークショップの実施概要

【第1回】
オンラインでの議論がスムーズに進むよう、オンラインワークショップツールMiroの操作練習を兼ねたアイスブレイクからスタート。初顔合わせの参加者が多いため、まずは「お互いを知ること」を目的に、研究拠点の活動に対する課題感や問題意識を共有した。

【第2回】
事前宿題として、第1回で共有された課題感や問題意識に関連する社会トピックを各自で調査。グループごとに調べてきた社会トピックを共有し、未来洞察のためのヒントとして参照した。その後、研究拠点および研究拠点が関わる地域やステークホルダーにおける「10年後のあるべき状態」を話し合った。

【第3回】
事前宿題として、第2回の議論を踏まえて各自が思うビジョンを言語化。グループごとにビジョン案を共有する際は、自分たちが立てたビジョンの中で特にチャレンジングだと思う点を併せて共有。ビジョンのキャッチコピーの良しあしを評価するのではなく、「ビジョン案の何が重要だと思っているのか」「なぜそれが重要だと言えるのか」といった背景や根底にある考え方について議論することを重視した。その後、議論の末に、グループごとにビジョン策定に当たり重要だと思う観点を抽出し、全体に共有した。

【第4回】
第3回までの対話の結果を参考に、研究拠点における10年後のビジョンとその実現のための行動指針をまとめたビジョンステートメントをコンセントが作成。ビジョンに至った経緯や内容に関する解釈について認識をそろえることを目的に意見交換を行った。

作成したビジョンステートメントは、以下の4つの要素から構成した。

  • Mission(社会的使命):社会的視点から見た際に研究拠点の存在理由を表現したもの
  • Vision(ビジョン):研究拠点がどのような状態になりたいかの理想像を表現したもの
  • Statement(声明):研究拠点が行うことを声明として表現したもの
  • Value(共通価値):研究拠点のメンバーがもつべき共通の価値観

クリエイティブのポイント

ワークショップのプログラムは限られた時間内でもスムーズに進行でき、最大限にディスカッションが行えるものとしました。多数の研究拠点メンバーが一堂に会することができる日時は限られていたため、事前に「宿題」を提示し、ワークショップ当日は各自の意見を持ち寄ったディスカッションに時間をかけられるよう工夫しました。また、研究拠点のコアメンバーとは定期的にミーティングを実施し、各回のワークショップ結果を受けて、次回のプログラム内容を調整し、ファシリテーション方法の改善など、認識合わせを丁寧に行いました。

ビジョンステートメント資料の一覧

対話結果から考えや想いを抽出し、編集したビジョンステートメント資料

最終成果物であるビジョンステートメントは、各研究拠点メンバーの課題や想いを統合し抽象化した内容をもとに、研究拠点の方向性を踏まえて編集、ライティングを行ったものです。抽象化の度合いが強いと全員が完全に同意できる内容になりますが、当たり障りがない内容になってしまい活動を推進する訴求力が下がってしまいます。そのため「発話」というファクトに基づきつつ、しっかりとライティングディレクションを行うことでオリジナリティのある言葉を紡ぎ出しました。

具体的には、ワークショップ中の発話を記録し定性分析を行い、似た意味合いの発言をグループ化することで、参加者の考えの全体像を整理しました。そして、グループそれぞれに見出しを付けビジョンステートメントの構成要素を抽出しました。その上で、研究拠点の果たすべき目的やあるべき方向性を踏まえ、より伝わるようコピーライティングの要素を加えました。

例えば、ビジョンステートメントの最後には、「名ばかりのイノベーションを打破する」という一文があります。「ビジョンも重要だが、具体化も重要。『想い』がないと現状を変えていけないが、『想い』だけでは現状を変えていけない」「空中戦だけ続けていてもビジョンの深化にはつながらない。手を動かし、失敗も共有することでビジョンは深化していく」といった実際の研究拠点メンバーによる発話をもとに、現状に対する強い課題意識を「名ばかりのイノベーション」という言葉に集約させています。そして、言葉が紡ぎ出された背景がわかるように、ビジョンステートメントの解題として「Voices from discussions」というコラムを作成しました。ワークショップでの実際の発話とビジョンステートメントをひも付け、研究拠点メンバーの納得感の醸成を促進しました。

資料の一部。「名ばかりのイノベーション」と対になる解題が1枚にまとめられている

ビジョンステートメントの解題。ワークショップでの実際の発話とビジョンステートメントをひも付けた

また、ビジュアルランゲージを活用して伝わる資料作成を行いました。例えば、赤と黒の明快な色使いやボールド(太字)のフォントを基調とし、力強く前進する組織のあり方を表現しました。また、アカデミックな知見を重視する研究拠点の空気(雰囲気)をビジョンステートメント全体で表現するために、句読点は論文等で利用されることの多いカンマとピリオドスタイルとしました。

[ プロジェクト概要 ]

クライアント名 東京大学未来ビジョン研究センター 様

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