横浜市立大学   コンテンツ開発による研究開発支援

記事のメインビジュアル。資料のページが並んでいる。

若者の「生きづらさ」への認知と共感を促進させるコンテンツ開発

横浜市立大学様(以下、横浜市立大学)が主体で運営する「Minds 1020Lab」では、さまざまな専門機関や企業、自治体と共に、若者の「生きづらさ」に関する課題の解決に取り組んでいます。

コンセントは、対象者に対するインタビューのサポート、インタビュー内容の整理・分析、分析結果をもとにしたコンテンツ制作などを通して、組織全体で共有する対象者像の可視化および組織全体への浸透を支援しました。

  • ドキュメント・スライド
  • メディア・コンテンツ開発
  • クリエイティブ開発

[ プロジェクトのポイント ]

  • 「生きづらさ」という概念的な課題に対する整理・分析
  • 「生きづらさ」への理解・共感を促すライティングとビジュアライズ
  • 組織へのユーザー像の浸透を狙いとしたコンテンツ制作

プロジェクトの背景

「Minds 1020Lab」は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が公募する「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)※1」の「本格型」に採用されている事業で、若者の社会的な生きづらさに対し、プラットフォームやコンテンツなどを通したさまざまなアプローチでその解決を試みています。

※1 JSTが実施している大学などを中心とした、国レベル・グローバルレベルの社会課題を捉え、未来のありたい社会像の実現を目指す産学連携プログラム。産学官共創拠点の形成や社会像の実現に向けた研究開発の推進を目指している。

当時のMinds1020Labでは、サービスを提供していく上で、「生きづらさを感じている若者」という、抽象的かつ人によるイメージが大きく変わり得る対象に対し、共通認識が組織内で持ちづらく議論の土台となるような情報がない、という課題があり、その解決が求められていました。

本プロジェクトでは、上記の課題解決に向け、若者が実際に感じている生きづらさや直面している問題を調査し整理すること、それらを共感できるコンテンツに落とし込むこと、組織への浸透策につなげることを目的とし、実行に移しました。

問題解決までのアプローチ

5ステップの図。左から順に「インタビュー調査」「調査結果の整理・分析」「セグメントの整理・選定」「コンテンツ制作」「組織内への浸透策検討」とステップが続いている。

本プロジェクトは大まかに、上記のステップで進めていきました。

1. インタビュー調査

本プロジェクトのリサーチフェーズでは、横浜市立大学を中心に、対象者へのインタビューが実施されました。対象者は過去につらい出来事を経験している方が多いため、普段から対象者とコミュニケーションをとっている方にインタビュアーを務めていただき、できるだけ対象者に負担をかけない形でリサーチを行いました。

コンセントは、これらのインタビュー結果(当事者計20名)を確認することから本プロジェクトに参画しました。

miroボードのスクリーンショット。見出し「当事者インタビュー」。

インタビューの書き起こし資料

2. 調査結果の整理・分析

組織全体で、生きづらさを抱える若者像を共有し、さらに共感性が高いコンテンツに落とし込むためには、リサーチから知り得た若者が抱える多種多様な生きづらさをどのように理解・解釈するべきかが重要になります。

専門的な知見提供やインタビュー結果をもとにプロジェクトメンバー内での対話を重ねていくことで、生きづらさに対するメンバー間での解釈のズレを明確化し、合意形成を行うことができました。

miroボードのスクリーンショット。見出し「エピソード・セグメント要素の抽出」。
miroボードのスクリーンショット。見出し「生きづらさの整理」。

生きづらさに関するスタディ:生きづらさに関する研究結果や臨床における知見をインプットしつつ、リサーチ結果で得た肌感をもとに、どのように生きづらさを整理できるかを検討した。

3. セグメントの整理・選定

インタビュー対象者である20名の若者のインタビュー結果を簡易的なインタビューシートにまとめ、セグメント分けを行いました。

セグメント分けを行う際は、対象者の生きづらさを第三者(プロジェクトメンバー)が主観的に定義してしまうことを避けたいと考えたため、対象者の当時の周辺環境や生きづらさを生む原因など、主観に寄らない要素を軸に、できるだけ客観的な分類を行うように心がけました。

コンテンツ化する対象の選定に関しては、「若者特有の生きづらさ(SNSによるいじめ、学校への不信感など)」があるかどうか、という観点を考慮しました。

miroボードのスクリーンショット。見出し「各インタビュー対象者に関するまとめ」。
miroボードのスクリーンショット。見出し「生きづらさに関する整理」。パターンの分類と特性と反応の関係性がまとめられている。
miroボードのスクリーンショット。見出し「セグメント分類」。

生きづらさやセグメント分類に関する整理結果

4. コンテンツ制作

選定した対象に対して、さらにインタビュー結果の深掘りを行いました。対象者の生きづらさの原因となった環境、環境にひも付くエピソード、エピソードが起こった際の対象者の行動や感情、それぞれのエピソードの時系列やつながりを分析し、ライティング・ビジュアライズしました。

制作過程では、リサーチ結果の見直しを行い、制作者以外の目線でフィードバックを受けることで、対象者へのリサーチ結果を最大限生かしつつ、「生きづらさ」に共感できるコンテンツへと昇華することができました。

miroボードのスクリーンショット。資料の制作過程が一覧されている。

ライティング・ビジュアライズの検討過程:フィードバックとリライトを繰り返し表現の確からしさを追求した。

5. 組織内への浸透策検討

開発したコンテンツを活用し、組織内でどのように「現代の若者が抱える生きづらさ」に対する共感と認知を促進できるかについて、提言を行いました。

資料内の1ページ。「ペルソナ共有ワークショップ」について提言している。
資料内の1ページ。「有効なタッチポイントやサービスの利用フローを示すカスタマージャーニーマップ」について提言している。

浸透策の提言資料

クリエイティブのポイント

コンテンツ内の1ページ。人物像についてイラストとテキストで紹介している。
コンテンツ内の1ページ。生きづらさを感じる状況について、イラストとテキストで紹介している。
コンテンツ内の1ページ。人物像についてイラストとテキストで紹介している。
コンテンツ内の1ページ。生きづらさを感じる状況について、イラストとテキストで紹介している。

制作したコンテンツの一部。対象者の「生きづらさ」を等身大で伝えられるように検討を重ねた。人物像やエピソードはプライバシーに配慮した形で編集している。

本プロジェクトで重要視した点は、どうすれば他者がリアリティのある状況理解や共感性をもって「生きづらさ」を抱える若者を立体的に捉えられるようになるか、という点でした。

そのため、対象者の生きづらさをコンテンツに落とし込む際には、インタビューで話された言葉・エピソードに関して、単純に言葉の上をなぞった表現を行うのではなく、当時どんな環境や状況があってその言葉を紡いだのか、その裏に抱えていた想いはどのようなものだったのかなど、対象者の心に共感することを意識し、対象者が感じていた生きづらさの輪郭をありのままに捉えたうえで表現することを心がけました。

また、ビジュアライズによって「生きづらさ」を感じている状況を視覚的に補完すること、文字情報だけでは伝わらない繊細な感情や細かいニュアンスを表現することで、対象者への共感のしやすさを格段に向上させることができました。

本プロジェクトでは、生きづらさをコンテンツ化する際に、リサーチ結果から得られた情報に対し誤った解釈をすることを防ぐために、プロジェクトメンバー内での認識を擦り合わせる時間を特に大事にし、実行していきました。

お客様の声

「ユーザー視点が足りない」という問題意識から発足した私たちのチームを、リサーチとビジュアライズの専門家として強力にサポートしていただきました。

一連のプロセスでは、私たちの要望やイメージを柔軟にくみ取りながらも、それを上回るような提案をいただくことも多く、共創的で充実した関係を築くことができました。主な成果物であるペルソナは、組織内外のコミュニケーションにおいて非常に活躍してくれています。

[ プロジェクト概要 ]

クライアント名 横浜市立大学 様
URL https://www.yokohama-cu.ac.jp/
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