全社員が参加する社内イベントのデザイン 高い満足度を得る企画術

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    前田瑞穂コンテンツストラテジスト/PR

写真:トップ。コンセントの全社集会(コンセントカンファレンス)の会場の様子。

「コロナ禍入社なので、会社=TeamsのUIの中にあるもののような印象があった」
「みんな実在してるんだな〜と」

コンセントカンファレンス2022参加者アンケートより一部抜粋編集。

全社員参加型社内イベント「コンセントカンファレンス」を初めて開催したのは、コロナ禍を受けてのリモートワーク常態化という大きなインパクトが、会社と社員の関係性変化に拍車をかけていた2022年のことでした。

この記事では、参加者満足度95%以上*を獲得したコンセントカンファレンスの運営経験から得た、イベントの企画術をご紹介します。ご挨拶が遅れましたが、企画運営を担当した前田瑞穂と申します。お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いします。

* コンセントカンファレンス2023参加者アンケート 総合満足度「とてもよかった」「まあまあよかった」「どちらでもない」「あまりよくなかった」「よくなかった」のうち「とてもよかった」「まあまあよかった」の回答者の割合。

コンセントカンファレンスとは

コロナ禍、コンセントはオフィス規模を縮小し、リモートワークへの最適化を行いました。時を同じくして地方移住社員が増えたこともあり、社員が物理的に一堂に会する機会はなくなっていました。そうした背景から、コンセントカンファレンスは「全社員が参加」する「オフライン」のイベントとして企画されました。2023年9月時点で2回の開催実績があり、どちらもオフラインで開催しましたが、固定的なものではありません。また、定期的な開催が決まっているわけでもありません。「今、必要なコミュニケーション」を設計することだけがアイデンティティです。

コンセントカンファレンス2022(CC2022)

新型コロナの流行が落ち着きを見せ始めたタイミングで、「会うこと、集まること」をしてみよう。それがコンセントカンファレンスの最も大きな開催動機でした。そのため「全社員が物理的に同じ場所に集合し、交流を深める」が2022年の要件になりました。

画像:2022年コンセントカンファレンスの当日のプログラム。
写真:登壇者が話している様子。
写真:各部署のマネージャーによるトークセッション。
写真:歓談する社員の様子。
写真:歓談する社員の様子。

2022年度に発表した中期経営方針、各グループの所信表明を経営・マネジメント層から直接語ってもらうコンテンツと、軽食を取りながら社員同士がたっぷりと交流・歓談する自由時間を設計した。

コロナ禍以前から実験的にリモートワークを一部導入していたコンセントでは、リモートワーク中心のワークスタイルに変化してからも大きな混乱は生じていなかったように思います。しかし、会うことや集まることができない状態が長く続く中で、コンセントに所属しているという実感の薄れは少なからず皆が感じていました。

それでも冒頭でご紹介した参加者アンケートのコメントには驚きました。コロナ禍入社の社員にとって、リアリティの欠如具合がそこまでだったとは。まだ新型コロナの感染者数増減も激しく、開催自体や開催方法についてたくさんの調整が必要な時期ではあったものの、オフラインで開催したことの意義を感じたコメントでした。

コンセントカンファレンス2023(CC2023)

CC2022から1年を待たず、また開催の機運が高まってきました。新型コロナ流行への対応・対処の変更めどが立ってきたこと、社員同士のコミュニケーションへの渇望、会社の成長やそのために社員のコミットを高めたいという企画運営側の思いが、CC2022とはまったく異なる形のコンセントカンファレンスを生み出しました。

写真:2022年コンセントカンファレンスのプログラム。1stsession 自分を知る、 2ndsession 他者を知る、3rdsession やりたいことを共有する。という内容のワークショップで構成されている。
写真:当日の会場の様子。
写真:チームで話し合っている様子。

CC2022が聴講中心のスタイルであったのに対し、CC2023は丸一日ワークショップ形式に。普段接点の少ないメンバー4〜5名で組成したチームでワークに取り組んだ。

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ワークショップのグラフィックレコーディング(ファシリテーションを担当したグラグリッド社作成)。「自分を知る」「他者を知る」「やりたいことを共有する」の3部構成とした。

「今、必要なコミュニケーション」の企画術

コンセントカンファレンスで一貫しているのは「今、必要なコミュニケーション」は何かを起点に企画していることです。経営層からの一方的な要請によるものではなく、会社を構成する社員自身にとって必要なものという、ボトムアップの観点を重んじます。私の場合は、自分自身が一社員であることもあり、「健やかに働きたい」「働く自分をポジティブに捉えたい」「そのための弊害があるとすれば何なのか」「実現の後押しになることは何か」に思いを巡らせることから検討をスタートしました。

企画術1/ 参加者自身も気付いていない感覚やニーズを拾う

同じ会社内であっても、社内イベントを企画運営する側と参加者側で普段の業務が大きく異なり、ニーズがくみ取りにくいケースもあるでしょう。その場合には、参加者となる人の中から任意のターゲットを設定してインタビューするなどのリサーチから始めるとよいです。ただ「何かお困りごとはありますか」「どんなイベントをしたいですか」と問い掛けるだけでは、なかなかイベントテーマは見つからないかもしれません。「そういえばちょっと心理的なハードルを感じる」「問題ではないけど気になったことはある」といったふとした思い付きや些細な気付きを拾いながら、参加者を自分に「憑依」させて考えられるくらい普段の業務やコミュニケーションを丁寧に聞き出し、観察してみてください。

もっと手軽な解決法として、参加者属性の多様性を企画運営チームにもたせるという方法もあります。コンセントカンファレンスは、役職・職種、価値観、生活習慣などの振れ幅があるメンバーで企画運営チームを構成しました。

企画術2/ 欲張らない!(一番大事かもしれない)

いざ社内イベントを具体的に企画する段階になると、せっかくだからこんなこともやってはというアイデアがたくさん集まります。アイデアを広げるフェーズも非常に大切ですが、畳んでいくフェーズはそれ以上です。

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CC2022で用意したロゴ入り特大パネル。登壇者の話を聞くインプット中心のプログラム構成としていたが、それだけでは退屈ではないかと参加者からのアウトプット企画として設置。しかし、実際には参加者間の会話というアウトプットでおなかいっぱい。パネル企画は不発だった。企画運営からの呼び掛けに応えて仕方なく書いてくれている優しい参加者たち。

まずは、社内イベントの目的を絞り込むこと。企画運営チームなどでプログラムを企画する際、しっかりと話し合い、目的を共有することが必要です。同じ言葉を使っていても、解釈が異なっていることは多々あります。目的設計にはウェイトをかけて取り組みましょう。また、チームの中で広げる役と畳む役を明示することも機能します。準備期間のうち、どの段階で畳むモードに変えるかをチーム内で決めておくのもおすすめです。

企画術3/ 参加者が主役になるイベントにする

社員に「自分が主役のイベント=自分が主体的に参加するイベント」と認知してもらうことは意外なほど難しく、準備序盤に待ち構えるハードルです。目的設定や企画はもちろん、お知らせや質問への回答、当日の運営、進行台本に至るまで「社員が主役」という一貫性をもたせて参加者の気持ちを盛り上げることが大切です。「自分のために開催されているイベント」という認知は、参加率を上げるだけでなく、参加意欲や満足度に影響してきます。

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開催約2カ月前に初回告知。1カ月前、2週間前、1週間前、3日前、2日前、1日前と必要な案内のほか、参加者の気持ちを盛り上げる呼び掛けを行った。2日前のお知らせでは当日のお弁当メニューを写真付きで紹介。

企画術4/ 企画運営側も楽しむ。でも内輪ウケは絶対回避

企画運営はそれなりに大変です。せっかくなので大変だし嫌なものでなく、大変だけどやりがいがあって楽しいものにしたいわけです。だから企画運営の際には、自分だったらどうかを判断軸にします。コンセントカンファレンスではノベルティを制作しましたが、「自分も欲しいもの」をつくりました(笑)。またこの企画運営側のテンションは、参加者に伝わるものだと思います。企画運営側が自信をもってイベントをつくっている、楽しみにしている、ワクワクしていることはイベントの成功に不可欠です。

画像:コンセントカンファレンスのメインビジュアル。さまざまな書体のCが並べられ、カラフルな配色でまとめられている。さまざまな経歴をもつ社員が話し合いつながり合うイメージが著されている。
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CC2022のノベルティバッグ。さまざまな「C」が集合したコンセントカンファレンスロゴをモチーフに12種類制作したバッグから、好みの「C」を選んでもらった。

一方で、企画運営側だけで盛り上がって見えることのないようにも注意しています。例えば「スタッフTシャツをつくろう」という話が出たのですが、当日に企画運営側だけおそろいのTシャツを身に着けている社内イベントでは、参加者から見たときにテンションの違いや疎外感すら生むのではという懸念があり、つくりませんでした。

企画術5/ 専門家や外部リソースとうまく連携する

企画運営側と参加者側が対立しない構図にすることも重要なポイントです。CC2022では、これまでの社内イベントでバックオフィスメンバーが担ってくれた受付やクロークなどの参加者応対業務を外部に委託し、純粋な参加者として参加できる社員を増やしました。参加対象者は240名ほどですが、当日裏方に回った社員は3名でした。ほぼ全社員が同一条件で参加できる状態は、プログラム設計や外部リソースの活用などで実現可能です。

CC2023では、ワークショップの要件と構成、ワーク内容の具体案作成まで企画運営チームで行いましたが、ワーク内容のブラッシュアップと当日のファシリテーションは外部のグラグリッド社に委託しました。コンセントの本業部分ですが、ワーク自体の意外性などの演出ジャンプや、社員が社員に対してファシリテーションすることで生じ得るバイアスがなくワークに集中できる環境の創出を期待しました。

画像:当日のワークで活用した資料。ワークの目的が書かれている。
画像:当日のワークで活用した資料。各セッションのワークの内容を説明している。
画像:当日のワークで活用した資料。セッションの狙いが書かれている。
画像:当日のワークで活用した資料。ワークの問いが書かれている。

Session1の「自分を知る」で企画運営チームが考えていたワーク案は、「これまでの人生における大きな決断」を書き出して共有するというもの。グラグリッド社に推敲してもらい、結果的に「ゾンビに囲まれたときにどうするか」に変身。このワークはかなり盛り上がり好評だった。

非言語コミュニケーションの底力

CC2022のコンテンツの中には、すでにドキュメントで共有されていたり、オンライン会議で説明されていたりする内容も含まれていました。それでも、目の前で身振り手振りを交えながら一生懸命にプレゼンする姿は、心に訴えるものがあり、非言語コミュニケーションの底力を見た気がしました。久しぶりの全社集合が実現したこともあって感動的ですらありました。

写真:各グループのメンバーやリーダー、マネージャー、役員が今期の目標を発表している。
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だからといって、オフラインイベント万歳ということでもありません。コンセントでは月に1回の全社ミーティングをオンラインで実施しており、有益な情報共有の場として機能しています。オフラインかオンラインかは目的に合わせて使い分けたり、掛け合わせたりするのがよいということに尽きます。

感動と感銘とやりがい、そしてそのバトンを渡す

2回のカンファレンス運営企画を担当できたことは役得でした。中でも参加した先輩からイベント後にもらったコメントには感銘を受けました。

「40年以上前からコンセント(当時 集合デン)は憧れのかっこいい会社だったし、かっこいい会社であってほしい。今もこれからも」

長年保ち続ける会社や仕事に対する気概に羨望を覚えましたし、コンセントが「実際、かっこいい会社であること」と「自分を含めた社員がそれを実感して誇りに思えること」の両方に寄与していきたい! と、とても励みになりました。

社内イベントの企画運営は、感動と感銘とやりがいとを得られる役です。独り占めしているわけにはいかないので、次のカンファレンスからはまた体制を替えて、これから先、この役得を多くの人が享受できるようにバトンを渡していきます。

写真:全社員が集まった記念写真。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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