デザイナーを評価する仕組みをデザインする コンセントの人事評価制度

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    大岡旨成取締役/プロデューサー/ウェブディレクター

メインビジュアル。人事評価をおこなう様子がイラストレーションで描かれている。

人事担当役員の大岡です。今回はコンセントで開発し運用している評価制度についてご紹介したいと思います。デザイナーを含めたクリエイティブ人材の評価方法として参考にしていただけるとうれしいです。

評価制度の前提として

本稿では「デザインする人」ということで、サービスデザイナーやコミュニケーションデザイナーだけでなく、ディレクターやエンジニア、リサーチャーなどのロール(職種)も含めて「デザイナー」と表記します。コンセントの社員・従業員と同義だと捉えてください。

デザイナーの仕事は、かける時間や量が最終的な成果に比例しないこともあり、定性的なことに比重を置いた評価をしなくてはならない側面があります。だからこそ、どう評価するか?ということに各社が頭を悩ますのだと思います。

また、デザインが果たす成果には

  • 測れるもの
  • 測れないもの(測らない方がいいもの)

があります。後者を測れるようにする工夫もありますが、組織や事業の規模・フェーズによってやり方や考え方が異なるので今回はその点について多くは触れず、評価制度のコンセプトや狙いを中心にお伝えします。

人事制度の目的

評価制度は就業規則や給与規程、福利厚生などの各種制度と併せて人事制度に内包されるものですが、この人事制度の目的をコンセントでは以下のように定義しています。

  • 社員の能力を引き出し、モチベーションを高める施策となること
  • 社員の成長を促すものであること
  • 優秀な人材を得るための採用支援になること
  • コンセントが追求するビジョンを人事制度の面から支えていくこと
コンセントでの人事制度の位置付けを示した図。評価制度、就業規則、給与規定、福利厚生各種制度を束ねる概念として「人事制度」がある。

評価制度の上位概念として人事制度がある。

従って、評価制度についても上記の原則に沿って設計されています。コンセントには現在200名を超えるデザイナーが在籍していますが、会社の成果は全て一人ひとりの手によって創造されるものなので、この原則を実現することが経営上も制度設計上も重要です。

デザインという業態は社会の環境や要請によって変化するものであり、この変化が激しい時代においてはその影響を色濃く受けます。同じことを繰り返すだけではコモディティの波に押しやられ、主流であった技術が使われなくなることも往々にしてあります。コンセントは創業から50年以上の歴史の中でその波に直面してきたからこそ、いかなる社会変化にも通用するデザイナーを育て、活躍の可能性を広げたいと考えています。

企業文化を自らデザインする

前置きが長くなって恐縮ですが、もう一つ重要なポイントとしてコンセントの人事部門もまた「デザイナー」の集団だということが挙げられます。そのため、どんな施策もデザインプロセスに則って試行錯誤を繰り返し、伝わり方を重視し、労使双方の視点で制度企画や運用を行っています。

コンセントではこの人事部門をHuman & Culture Groupと称しています。一般的にはHuman Resources(HR)と呼ばれることが多いですが、「会社の成果はすべて一人ひとりの手によって創造される」としている上で、“Resources”=資源として人を捉える(言外に消費するイメージがちらつく)ことに強い違和感を抱くようになり、部門がコミットする対象をHumanとCultureに定義し直した経緯があります。「名は体を表す」とも言いますが、Culture=企業文化を形成することをターゲットにして一つひとつの仕事の目的を捉えることを重視しています。

評価制度もその一つで、単純に給与を決めるためのものではなく、企業文化を形成する中核要素として、人事部門がまとめ役となり事業部門との共創によってデザインしています。

デザインするものである以上、観察と検証を経て改善を図ることが重要です。どんなに優れたシステムであってもそれを使う人や環境の変化・成長に応じてアップデートを行う必要があります。

  • 意図した通りに運用されているか
  • 迷ったり、つまずいてしまうポイントがないか
  • 評価者・被評価者ともに納得のいく答えが導けているか
  • もっと「こう評価してほしい」というポイントはどこか
  • デザイナーのモチベーションを高められているか
  • デザイナーの成長を促せているか

これらの観点でシステムの観察と検証を行い、改善点を抽出し、改定すべきかを毎年検討しています。

このように、コンセントの評価制度は企業文化を形成するドライバーとして機能するように意図されており、役員と社員の手によってつくられ運用されています。企業文化の形成については他にも語りたいことが山ほどあるのですが、今回はぐっと我慢します。

評価制度の構成

ようやくですが、本題の評価制度についてご紹介します。コンセントでは通期評価を原則としており(著しい成果が認められる場合は半期のタイミングで評価を行います)、1年の活動の中で「成果と取り組みへの評価を通じて、一人ひとりの成長を支援・促進する」ことを目的としています。

評価項目の構成はこのようになっています。

評価項目の構成を示した図。内訳は、目標評価40%、活動評価25%、粗利貢献評価30%、働き方コンプラ評価5%、その他組織貢献評価10%。

評価項目の構成

目標評価:個人と組織双方の視点で統合的に目標設定し、その成果によって評価する。

活動評価:デザイン会社に求められる人材像をもとに定義。組織特性・ミッションに沿うようにパターン分けされている。

粗利貢献評価:個人ごとに設定される粗利貢献目標の達成状況によって評価する。

働き方コンプラ評価:勤務時間、有給休暇取得など、働き方に対する法令順守の観点で評価する。

この4つの観点を合計して100%となり、それに加えて、

その他組織貢献評価:期初に目標設定されない組織貢献活動に関して追加して評価する。

を+10%する形で構成しています。従って初めから上ブレする設計としています。

直接プロフィットを獲得しないバックオフィスのメンバーは粗利貢献評価がなく、目標評価と活動評価にその分が配分されているといった違いはあるのですが、この評価項目と評価フローについては全社・全員・全ロールで統一されています。

コンセントは紙、ウェブ、映像、事業、組織、経営、社会システムなどあらゆることをデザインする対象としており、例えばコミュニケーションデザイナーがサービスデザインに取り組んだり、コンテンツプランニングやプロジェクトマネジメントに関与したりすることが日常的に行われています。そのため、ロールや肩書によって「ここからここまでが自分の仕事」と閉じてしまうのではなく、クライアント業務であっても社内業務であっても「できることや挑戦したいことに越境して取り組む」ことが標榜されています。

また、組織改編により所属組織が変わったり、市場の移り変わりや本人のキャリアの志向性からロールが変化したりすることを前提とする必要があり、評価システムも共通のものである方がサステナブルなのです。

続いて、各評価項目について具体的に説明します。

目標評価

目標評価は個人と組織の成長のために、一人ひとりがそれぞれ固有の目標を設定し、その活動内容と成果をもとに評価するものです。目標設定は、個人の「やりたいこと」と組織の「やってほしいこと」の一致をもって完了します。組織都合もしくは個人都合に寄り過ぎない、また「評価のための目標」や予定調和な目標にならないように期初に面談を行い決定しており、コンセントの評価制度における最重要点となっています。

その決め方ですが、下図のシートを記入することから始まります。

目標設定を記載するためのテンプレートシート。

左側に個人の大目標と個人として“今年”やりたいこと、右側に組織の大目標と組織が“今年”やってほしいことが明記され、可視化されます。「何がしたいか」「どうありたいか」「どうなりたいか」を一人ひとりが組織に伝え、同様に「何をしてほしいか」「どうあってほしいか」「どうなってほしいか」を一人ひとりに対して組織が伝える双方向性のあるプロセスです。

この両者の接触点・重なり部分をその年度の目標に落とし込んでいきます。

目標詳細を記載するためのテンプレートシート。

こちらのシートに一人ひとりがその年度の個人目標を「ゴール」「プロセス」「ウェイト」に分解して設定します。特にプロセスについては評価時に各アクションの振り返りができるように、可能な限り定量的・具体的に記述するように求めており、評価不能にならないように他者依存的な(自分でコントロールし切れない)記述は避けるようにしています。設計のポイントとしては以下が挙げられます。

1. 活動観点は3つ設定する
設定する目標に対してウェイトで重み付けをし、合計が100%になるようにするのですが、【90%:10%】のような極端な設定だと、もしうまくいかなかった場合のリスクが大きくなります。そのため、原則3つを設定するようにしています。

2. 技術向上に関する目標はプロセスに組み込む
コンセントの人材育成ツール「技術マトリクス」で示される技術指標はここで使われますが、技術習得そのものを目的にするのではなく、成果発揮のための技術習得とすることを意識付けしています。例えば「プロジェクトリードのレベル3に到達する」ということをゴールに書くのではなく、ゴールに向かうための手段としてプロセスに記述する形です。

目標詳細の活動観点の記載例。ゴールには「UIの検討スピードが上がる」、そのプロセスとして「デザインの引き出しを増やす」などが記載されている。

3. 活動観点に加えて、特にコミットする場合のみ技術向上に関する目標をプラスオンで設定する
ただし、技術向上にフォーカスして取り組みたい、コミットしたいというシーンも存在するため、その場合は活動目標に加えて設定できるようにもしています。

目標詳細の技術向上に関する目標の記載例。ゴールには「コミュニケーション戦略立案のレベル4相当を身につける」そのプロセスには「関連書籍を読む」「セミナーに参加する」などを記載。

このように、「個人目標」は個人がその1年で成したいことをある程度柔軟に設定できるようにしており、1人のデザイナーを成長させるための手段として位置付けています。そのため、評価者となる上長と個人で目標を設定する取り組みが期初に時間をかけて行われるのですが、評価者側の視点として以下のことに留意することが明示されています。

  • 適切な挑戦を促す活動計画であるか
  • 達成可能な難易度であるか
  • 本人の主体性につながっているか
  • 本人の成長につながっているか
  • 組織の成長につながっているか
  • 活動を正しく評価できる設計であるか

評価者側から見たとき、目標設定は「スキルアップやキャリアアップの指針を示す」ものであり、期末に結果に対して行う評価は「取り組みに対してのポジティブな成功体験の付与」となります。評価者が被評価者であるデザイナー一人ひとりと向き合うこのプロセスにこそ最大の価値があると認識しています。

目標設定の考え方

このように目標設定に結構なパワーをかけるのですが、目標設定は「自立心をもっている人の自己成長を支援する」ものとして定義しており、コンセントをコンセントたらしめている要因だと考えています。

また、期初に行う目標設定面談を通して上長とメンバーがお互いを深く理解し合うことは組織運営上重要なプロセスで、対話を重ねて「共に考える」ことが肝要です。この「共に考える」ことは、MBO(Management by Objectivesの略称。目標による管理)として捉えた際に最もハードな「葛藤克服型MBO」を志向するためにも必要で、管理者(評価者)の姿勢と関与が強く意識されるべく設計しており、研修の実施や支援も行っています。

MBOの4タイプ説明図。縦軸に「会社の幸福の追求」、横軸に「働く人々の幸福の追求」が設定されており、それぞれに強い・弱いの2段階がある。葛藤克服型MBOはどちらも強いタイプ。

MBOの4タイプ(出典:『個人、チーム、組織を伸ばす 目標管理の教科書』五十嵐英憲、ダイヤモンド社)

活動評価

活動評価は、コンセントメンバーの日々の活動や振る舞いを評価します。目標評価で拾い切れないプロジェクト内行動を評価する目的もあり、仕事や周囲に対してどう臨むべきかを示しています。

活動評価を記載するテンプレートシートの一部。

活動評価の項目は行動指針をベースに、所属組織とキャリアに合わせて計10パターン作成している。この例では「リーダーシップ」「仕事の遂行」「仕事の深化」「責任の完遂」「挑戦と実行」「他社の支援」「組織への貢献」という7項目がある。

他の評価項目と違って、この活動評価は個人の姿勢によるところが大きく、成長を後押しする基本材料となります。成功体験の振り返りや内省を促す要素としやすく、デザイナーのパフォーマンスを高く保つために重要な項目と位置付けています。姿勢や具体的な活動を求めるものなので大きく変わることはあまりないのですが、社会変化や組織変化、わかりやすさに対する現場の声から更新が加えられています。

トラッキングと自己評価が何より重要

運用上のポイントとしては、「期初の目標面談時に、活動評価の項目を確認し通年での活動イメージがつくようにする」ことが挙げられます。これは活動評価に限ったことではありませんが、1年たった期末に一度だけで評価しようとしてもうまくいきません。改善を指導しようにもすでに手遅れですし、ともするとお互いに何にコミットすべきだったかを忘れています。

そのため、期初に活動イメージを共有することや、期中に連続性のあるフィードバックを行うことが重要です。コンセントでは四半期ごとに進捗状況を確認する面談を必須事項として設定することで、日常的な1on1に加えてオフィシャルに軌道修正やエンカレッジする機会を設けるようにしています。

マネジメントにより、期初の状態から一年かけて目標を達成することを示した図。上長との日常的な1on1では「客観的採点(評価)」「自己評価」「振り返り」をおこなう。

メンバーの目標達成に向けたマネジメントの指針

また、こちらの活動評価も前項の目標評価も、自己評価を文章として記述する形を取っています。これは「社員の成長を促すものであること」という目的があることから、自身の振り返りとそれに対しての評価=フィードバックをセットで重要視しているためで、この評価制度が形骸化しないための大きなポイントとなります。

粗利貢献評価

コンセントでは全てのデザイナー(バックオフィスを除く全ロール)が利益数値の目標をもちます。1つのプロジェクトで得られる利益(粗利。コンセントでは売り上げから外注費と材料費を除いた金額を指す)を、担当したプロジェクトメンバーの貢献度合いによって案分し、その年間合計が実績となります。期初に目標値が一人ひとりに設定されます。

粗利貢献評価はこの数値目標に対する通期の達成状況によって評価します。定性的に評価する対象が多い中、活動の結果として定量的に測られるもので、結果に対して厳密に(自動的に)A評価やB評価といった評語が割り当てられます。粗利貢献評価は、評価全体の30%ほどの影響力がありますが、目標に達しなかったからといって即座に30%分の配点がなくなるわけではありません。数値の達成率に基づいて30%分が段階的に変化するような設定になっており、無配点になることはありません。加えて、なんらか特別な事情で粗利貢献に支障を来した場合には、その旨を加味して評価しています。

粗利貢献評価を記載するテンプレートシートの一部と記載例。目標額、達成額、達成率と自己評価を記載する。

デザイナーに利益目標をもたせることの是非

デザイナーが利益目標を担うことに疑問をもたれる方も多いのではないでしょうか。実際にクリエイティブチームをコストセンターとしている企業も存在します。コンセントもかつてはプロデューサーやディレクターだけが利益獲得にコミットしていた時代もあったのですが、現在は全員が担っています。

これは、コンセントの業務領域の多くが課題解決のためのプロジェクトであり、アサインメンバー全員でプロジェクトの全体工程を推進することからQCDへの責任はどの立場であっても生じることや、デザインが社会からの要請に基づくものである以上、市場での価値を意識し更新していくことは全てのデザイナーに求めたいと考えているからです。この傾向はデザイナーが社会で活躍していく上で今後一層重要になっていくでしょう。

また、コンセントではクライアントからのプロジェクト相談が発生した際には全社員に情報が共有され、挙手制でプロジェクトに加わる形が取られています。このことから、利益の獲得やコストの責任を他者に委ね担ってもらうのではなく、自発的に行動し責任を担っていくことが、ビジネスの中で価値発揮できるデザイナーとして成長するために必要なことだと考えています。

働き方コンプライアンス評価

勤務時間、有給休暇取得など、働き方に関する法令順守の観点で評価するものです。評価全体の5%に相当するものです。

言わずもがな、継続して健全に働き、生産性を向上していくことが事業を持続的に成長させるためには必要です。デザインの仕事はどこまでもできてしまうこともあり、「もっとやりたい」と思うことも多々ありますが、クオリティを上げようとするあまりのオーバーワークは一時的にはできても持続しません。

しかし、休まずに働くことの自己肯定感は薄れてきたとはいえいまだ存在します。コンセントでは、決められた予算とスケジュールの中で最大限の成果を導くのがプロフェッショナルとしての仕事であり、適切に休みながら勤務時のパフォーマンスクオリティを最大化するのが合理的であり望む姿であると考え、この項目を評価対象に入れています。

働き方コンプライアンス評価を記載するテンプレートシートと記載例。規定の残業時間を超過しなかったかどうか、有給取得日数などの結果を記載する。

働き方コンプライアンス評価はその期の結果に対して行われるものですが、当然ながら勤務時間や有給休暇の取得状況などの労務管理は常時行われており、問題が表面化する前にアラートが出て上長を含めた面談がセットされます。そこではプロジェクトやその他避けられない事情により一時的に勤務時間超過が生じているのか、あるいは当人に意識が足りないのかが確認されます。そして改善や調整行動が必要な場合は即時対処が検討されます。

残業状況の社内連絡と、連絡を受けて働き方のリカバリーを考える社員のイメージ図。

勤務状況は定期的に全社員に対して共有され、マネジメント層だけでなく、メンバー間でも「◯◯さん働き過ぎでは」「フォローが必要では」という働きかけが行われている。

従って、デザイナー本人の責によるところは、勤務時間の記録をしていない場合や意図的に働き方を改善しない場合などで、上長側の適切な対処と本人を含めた改善・調整行動の結果が強く問われます。

なお、この評価項目を評価内容に組み込んだのは比較的最近ですが、結果として休むことに気を使う状態から「休まなくてはならない」「働き過ぎない」ことを正しいこととして全員が意識するようになり、労働生産性が大きく改善しました。そして、一人ひとりが長い時間軸で安全に安心して働け、豊かなキャリアを築くための福利厚生制度の拡張として還元することができています。

その他組織貢献評価

その他組織貢献評価は、これまでに挙げた評価項目で拾い切れない組織貢献について特別評価するものです。目標設定していない、また評価項目にはない行動を評価することで組織課題に対する自分ごと化を促し、組織活動に柔軟性をもたせることを目的としています。

他の評価項目で合計100%になるところにプラス10%分で評価される加点要素で、個人活動ではなく組織への貢献が認められる活動について評価するもので、自由記述でアピールします。目安としての評価基準はありますが、誰の目から見ても明らかな場合は積極的に評価して良いとしてあります。そのため、上長から「この活動のことを書いておきなよ」と促すこともあるようです。

その他組織貢献評価を記載するテンプレートシートと記載例。一例として、社外での講師活動と、講師活動をしたことによる会社への貢献内容を記載。

評価プロセス

期末に行われる通期評価は以下のプロセスで決定されます。例外はなく全社員同じです。

  1. 1. 自己評価記入
  2. 2. 評価面談
  3. 3. 一次評価
  4. 4. 二次評価
  5. 5. 役員評価
  6. 6. 役員会評価
  7. 7. 評価最終決定
  8. 8. 辞令交付(フィードバック面談)

自己評価を行った後、直属上長による一次評価、所属部門長による二次評価、さらに管掌役員による役員評価を経て、最終的に役員会で全対象者(2023年12月現在では約230名)の評価について議論し決定されます。これだけの段階を経るのは属人性のバイアスを正すことや、違う視点・視座からの追加評価を行って甘辛の是正や評価すべきことの見落としを防ぐためです。

なお、コンセントでは組織の最小単位が5名程度のチームなのですが、そのチームを預かるチームマネージャーが所属メンバーの一次評価者となります。このチームマネージャーが目標設定も含めてメンバーのことを最もよく見ているので一次評価が尊重されますし、主観によるバイアスを防ぐための研修やチーム横断での検討などが毎シーズンなされています。

加えて、チームマネージャーは組織の状況に合わせて、年度ごとに適任者の見直しを行います。従って、従来評価者だった人が被評価者になることが発生することもコンセントの特徴かもしれません。

「評価」で大切にしていること

コンセントの評価制度は以上のように設計・運用されています。冒頭にお伝えした人事制度の目的を果たすために大切にしていることを最後にご紹介します。

能力を引き出しモチベーションを高める

お伝えしてきたように、コンセントの評価制度では「自分がどうしたいか」が色濃く反映されます。
自分の得意なところを伸ばす場合もあれば、まだできないことにチャレンジする場合もあります。上長が1on1を通して「こんなこともできるんじゃない?」と引き出したり、「これはあなたの目標として低過ぎない?」と是正したりもしますが、原則的には個々人が自分で目標を定めます。

その目標に対してどのように行動し、結果に導いたかを評価するわけですが、成果が表れた場合は遠慮なくプラス評価を付けるようにしています。つまり、コンセントでは絶対評価を徹底しており、評価結果としての評語出現率をコントロールすることなく、一人ひとりを純粋に評価しています。これは経営陣の覚悟として一貫しており、どんなに業績が思わしくなくても曲げずに実行し続けてきています。

成長を促す

成長には、できなかった(やったことがなかった)ことができるようになる水平方向と、できることがもっとできるようになる垂直方向があり、目指したい方向は一人ひとり違います。その違いを認めることで組織は多様な強みを持った集団となりますが、無為に放任して良いものではありません。

コンセントの評価システムでは、「どうするか」はデザイナー一人ひとりの個性を尊重しますが、「どうあってほしいか」については明確に提示するとともに、「自己の成長のために評価システムを自分のものにする」ことを目指して制度理解の方策をしつこく繰り返してきました。

その結果、デザイナーとしての個性や強みは各々特徴として持ちつつも、「自立/自律性」「内発性」「共創意識」「本質志向」「変化への順応性」といったことが共通してコンセントの人材には備わっています。それが成長のための強力なドライバーになるとともに集団としての優位性になっていると考えており、技術マトリクスで示す技術レベルと併せて、これらデザイナーの特性ともいえるスタンスやマインドを磨くことで「コンセントの優位性」を伸ばし成長させていくことを私の立場からは意識しています。

優秀な人材を得るための採用支援になる

採用面接を行っていると、評価制度のことを質問されることがよくあります。その際に制度の仕組みや考え方をお伝えすると公正さを理解してもらえ、納得感を得ていただけます。同時に期待や意欲を付与できることからコンセントの魅力として表現できています。

また、コンセントでは遠方地勤務や短日/短時間勤務などさまざまな働き方を認めていますが、どのような働き方を選択しても同じ評価制度が適用されます。週3日の短日勤務であっても目標をもって働けるようにしており、状況や環境によって不本意に成長の道筋が閉じられることがないようにしています。介護やパートナーの転勤など「仕事は続けたいのに事情がある」ケースや「仕事も続けたいが他にやりたいこともある」というケースは今後も増えていくと思われ、それらの多様さを束ねる芯としてもこの評価制度は機能しています。

ビジョンを支える

コンセントは紙、ウェブ、映像、事業、組織、経営、社会システムなどあらゆることをデザインしたい人が集まっており、守備範囲の広いデザイン会社です。非常に広範囲で多様な職能の集団であり「デザインでひらく、デザインをひらく」ことをミッションとしています。

デザインを「ひらく」ために、一人ひとりの可能性を限定したり制約したりすることがあってはならず、各々が今いる地点から「ひらいて」いくことを積極的に支援しています。そのことを体現するために各種制度が存在し、評価制度もその一つです。

思い返すと私は2011年につくられた数世代前の評価システムの設計にも関与していたので、足かけ13年「コンセントにとって最適な評価の仕組み」を考え続けてきたことになります。その立場から思うことは、ベストは変化するが根幹となる思想は一貫していることが重要であり、誰のためのデザインなのかを見失ってはならないということです。

社会全体にデザイン人材が広がり活躍できるようになることは、私たちの使命であると同時に願いでもあります。私たちがゼロからデザインした評価制度を知っていただくことで、その一助となれば幸いです。

[ 執筆者 ]

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コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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