出会いを次につなげるイベントブースのデザイン Designship 2023出展レポート
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2023年9月30日、10月1日に開催された国内最大級のデザインカンファレンス「Designship 2023」に、コンセントはPLATINUMスポンサーとしてブースを出展し、200名以上の方にお越しいただきました。足を運んでいただいた皆さま、誠にありがとうございました。
今回の出展で目指したのは、コンセントのミッション「デザインでひらく、デザインをひらく」をキーワードに多くの来場者とつながること。この記事では、出展当日までにブース運営チームが歩んだプロセスをなぞりながら、企画する際に意識したことを紹介します。執筆を担当するのはチームメンバーの内田です。どうぞお付き合いください。
コンセントのブースができるまで
1-1:「どんなコミュニケーションを生みたいか?」から始める
「イベント当日のブースの様子」を想像してみてください。さまざまなイメージが浮かぶと思いますが、きっと人と人が何らかのやりとりをしている点は共通しているのではないでしょうか。たとえスタッフがいないブースだったとしても、そこでは展示物や配布物を通した発信がなされているはずです。つまり、ブースは「コミュニケーションの場」であるといえます。
ブースでは、アクティビティやチラシ、パンフレットなど、さまざまな要素を活用してコミュニケーションを行います。また、対応するスタッフ自身がメディアやコンテンツそのものになる側面もあるでしょう。そこで届けられるものに一貫性が感じられないと、来場者が受け取る印象が散漫になってしまう可能性があります。そこで、ブース全体をまとめ上げるための軸になるのが「どんなコミュニケーションを生みたいか?」というコンセプトです。ブースを企画するに当たって、私たちはまず以下の5つの観点で目的を整理・検討し、その後の全てのプロセスにおける意思決定に活用しました。
- 1.【何のために】
(ア)デザイン文化の振興を支援するために
(イ)デザイン人材との接点を獲得するために
(ウ)コンセントのケイパビリティをアピールするために - 2.【誰に】
今までコンセントをあまり知らなかった人、デザインで世の中を良くしていきたいという志のある人に - 3.【どうなってほしいか】
「次の接点でまた会いたい」と感じてもらいたい - 4.【(1〜3のために)どんな体験を生むか】
コンセントのミッションである「デザインでひらく、デザインをひらく」と自身とのつながりを見つけてもらう、納得とともに理解してもらう - 5.【1〜4を表現したコピー】
あなたもわたしも「デザインでひらく、デザインをひらく」
1-2:ブースを支える要素に役割を与える
1-1で「あなたもわたしも『デザインでひらく、デザインをひらく』」というコンセプトコピーを生み出しましたが、配布物やアクティビティの内容といった詳細を詰めていくための判断材料としては少々具体性が足りませんでした。そこで次に検討したのが、ブースを構成する要素の「役割」です。今回は計5つの配布物・アクティビティを準備し、それぞれに以下のような役割を与えました。
- A4チラシ
役割:コンセントの会社概要とDesignship2023での協賛・出展内容を広める。 - プロモーションムービー
役割:「デザインでひらく、デザインをひらく」というミッションのうち、特に「ひらく」にフォーカスし、コンセントの認知醸成・興味喚起を行う。 - アクティビティ
役割:来場者がご自身と「デザインでひらく、デザインをひらく」とのつながりを見つけるきっかけをつくる。 - B5二つ折りチラシ
役割:次の接点としてコンセントの既存の活動・メディアを簡単に紹介する。 - B6ノート
役割:アクティビティ参加者にお礼の気持ちを伝え、今回の出会いと「デザインでひらく、デザインをひらく」を想起させる。
これらの役割は、多くの来場者が会場でたどる流れを想定して検討しました。コンセントを認知し、ブースに来て、アクティビティを経て、また出会える場を知る。その流れのどこで各要素が機能するかを踏まえることで、内容を並行して検討しやすくなりました。
A4チラシ
Designship 2023の運営者に配布してもらう想定で作成した。コンセントに関する興味喚起を目的に、表面にはアイキャッチとしてのキーワードとグラフィックを、裏面にはアクティビティ内容、CM放映情報、登壇情報、会社概要を掲載した。
プロモーションムービー
メインステージの幕間で放映された。コンセントの頭文字「C」をモチーフに、「ひらく」に焦点を絞ったメッセージングを行った。解釈に余白のあるストーリーで、さまざまな「ひらく」を受容しながら、社会やデザインの可能性をひらいていくコンセントの姿勢を示した。
アクティビティシートとボード
来場者にご自身と「デザインでひらく、デザインをひらく」とのつながりを感じてもらうため、「ひらく」から連想される体験・思いをシートに記入し、ボードに貼り付けていただくアクティビティを実施した。
B5二つ折りチラシ
アクティビティにご参加いただいた方に次の接点を紹介するために渡した。再び出会えることへの期待を込めた「See you Next time!」という言葉からスタートし、コンセントのナレッジ展開・採用活動・事業領域について簡単に知ることのできる媒体とした。
B6ノート
出会いへの感謝を伝えるために「企業のノベルティ」を感じさせるデザインは避け、もつこと・使うことに価値が感じられるものを目指した。「『ひらく』の解釈は多様であってよい」というメッセージを込め、イエロー部分はスタッフが全て異なる位置にステッカーを貼り付けて制作した。
1-3:現実の空間を思い浮かべる
ここで忘れてはならないのが、ブースは現実空間であるということです。そこにはどうしても物理的な制約が存在します。例えば、利用可能なスペースの広さ、電源が使えるかどうか、貸与品の有無、もち込んでよい什器の大きさ、搬入出のルールなど。それらはイベントや会場によって異なります。今回の出展に当たってはDesignship 2023の運営者からいただいたスポンサーマニュアルを踏まえ、現実空間としてのブースを設計していきました。
以下が実際に作成したブースのラフスケッチ・模式図です。来場者視点と俯瞰視点で、ブースに展示するアイテムを簡単にまとめています。
ブースのラフスケッチ・模式図。
これらはチームの中でブースのイメージをそろえる助けになりました。アクティビティ検討の際には、模式図から想定したアクティビティ用エリアの広さをオフィスの机で再現し、使用するアイテムの仕様を本番に近い形で確認しました。
アクティビティ用エリアをテストした様子。
1-4:手引きと対話でチームの安心をつくる
事前準備の仕上げとして、ブースの目的から具体的なオペレーションに至るまでをマニュアルとして明文化しました。出展当日のブース運営スタッフは、2日間で計7名。そのうち3名が企画には参加していない「当日のみ」のスタッフでした。つまりはチームの中でも、これまでの企画にどれくらいコミットしてきたか、出展についてどの程度理解していたかにギャップがあったのです。配布物やアクティビティ、ブースのレイアウトが大切なのはもちろんですが、会場ではそこに立つスタッフも企業の印象を大きく左右します。そのため、スタッフ全員が安心してイベントに臨めるよう、必要となる情報を網羅したマニュアルを作成しました。
スタッフ用マニュアル。Designshipの概要説明から始まり、目的やオペレーションの詳細、シフト表などの必要情報を取りまとめた。
出展1週間前には、マニュアルを読み合わせた上でスタッフ役と来場者役に分かれての模擬アクティビティを行いました。
「こんなお声掛けをしよう」
「説明の流れはこんな順序がいいね」
ロールプレイによって会場で行いたいコミュニケーションについての対話や気付きも生まれ、スタッフ同士の距離を近づけることができました。
顔を合わせてのコミュニケーションから生まれたつながり
Designship2023当日、準備したアクティビティ用のボードは百人百様の「ひらく」に彩られ、スタッフ一同感無量でした。コンセントの「デザインでひらく、デザインをひらく」には、デザインを通して社会を切り拓く、知識を啓く、デザインの可能性を拓く……といった意味が込められています。
しかし、会場では私たちが思ってもいなかった解釈にも多く触れることができました。組織や社会を引っ張るような「ひらく」。はたまた、個人の生活にひっそりと息づいた「ひらく」。
私たち一人ひとりにできることが限られている中では、緩やかにつながりつつも、それぞれがそれぞれの思いを実践することに価値があると思います。バラバラな声・体験・思いが「ひらく」や「デザイン」という言葉を中心に集まっていく様子は、ささやかな、しかし確かな希望を感じられる光景でした。
正直に明かすと、ここまで多くの方々と出会い、お話しすることがかなうとは予想していませんでした。さまざまな領域の方とデザインについて語らえたこと、お悩みをもった方のご相談を直接伺えたこと、そして、ブースやコンセントそのものに対して「面白い」というお声をいただけたこと。それらの全てがうれしく、励みになりました。実際にその後のお付き合いが生まれた例もあります。あの場でご縁を結んでくださった皆さまに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。ありがとうございました。
冒頭でもお伝えした通り、ブースはコミュニケーションの場です。どんな形であれ、そこでは情報やメッセージのやりとりが生まれます。だからこそ私たちは「どんなコミュニケーションを生みたいか?」から出発し、まとまりのあるブースの「デザイン」を目指しました。その思いがあったからこそ、想像を超える対話・つながりの数々と出会えたのだと、私は信じています。
コロナ禍が始まった2019年12月から4年がたつ今、ブースを含むオフラインコミュニケーションの場は徐々にその熱を取り戻しつつあるように見えます。この記事がそのような場を企画する際の一助になればうれしい限りです。