「書くのが苦手」の意識を変える 初心者向けライティングスキル向上プログラム

  • 小山 純

    ⼩⼭ 純コンテンツストラテジスト

こんにちは。コンテンツストラテジストの小山純です。コンテンツを戦略的に活用し事業成果に貢献することをミッションとした部署「Content Design group」のグループマネージャーを務めています。

今回は、ライティングスキルの話題です。文章を通して相手に何かを伝えようとする際、要点をうまく整理できない、「何を伝えたいの?」と言われてしまう、何から書き出したらいいかわからない、こんなお悩みはないでしょうか。今回はライティングスキルを例に、コンセントの技術向上の取り組みをご紹介します。

メインビジュアル。良い文章を書くシチュエーションを表現したイラストレーション。

ベーシックなはずなのに、学びづらいライティングスキル

コンセント社内で運用しているデザイン人材育成のスキルマップ「技術マトリクス」では、ライティングスキルを「コミュニケーションや体験に最適なライティングを行う力。時に社外ライターとも協力し、必要なQCDでコンテンツのディレクションまたは実装をすることができる。ブランディング・プロトタイピング・デジタルプロダクト・メディア開発など、あらゆるプロジェクトにおいて、ライティングの技術で貢献することができる」と定義しています。

文章という手段を用いて、物事を誤解なく伝えたり、魅力を引き出したり、さまざまなコミュニケーションの場面で求められるスキルです。しかし、ベーシックであるが故に意識されにくいスキルでもありました。そこで今回、社内研修プログラムの一環として、ビジネスの場で汎用的に活用できるライティング初学者のためのプログラムを構築しました。

※技術マトリクスについては、「コンセントの人材育成ツール「技術マトリクス」とは? デザイン経営に役立つ人材育成スキルマップ」の記事をご参照ください。

「書く」その前に。忘れてはいけない重要ステップ

プログラムの内容を、肝要な点を中心にご紹介します。

ライティングというと表現の巧拙のみを意識してしまいがちですが、文章の良しあしは文章力、センスのみで決まるものではありません。では、「伝えたいことが伝わる」文章を書くには何が必要か。コンセントでは、それらを「書き上げるステップ」として整理。実際に「書く」ことに着手する前に、「目的を定める」「必要な情報を洗いだす」「情報を収集する」「構成をつくる」というステップが必要であることを明示しました。

伝わる文章を書き上げる手順を6つのステップにまとめた資料。本文で言及される「構成をつくる」の後に「清書する」「確認する:目的再確認・推敲」の2ステップが存在する。

伝わるように書くためには、必要な準備がある。「書き上げるステップ」として整理しました。

この前段をおろそかにしてしまうと、言葉の表現だけの工夫にとどまり、「文章を書くことに時間をかけているのに伝わらない」という状況に陥り、問題の本質的な改善につながりません。そのため、本プログラムでは、目的は何か・誰にどうなってほしいのかをしっかり定め、集めた情報を構造化することに重点を置き、その上で文章表現上つまずきがちなポイントの改善に取り組みました。

誰にどうなって欲しいか、そのためにどんな情報を伝えるのか、検討する際のフレームワークを示した資料。

ライティングは目的達成のための手段。文章の目的は何か?「誰」に「どうなってほしい」のかを定めることが重要。

情報を構造化する一手段を記載した資料。細分化された情報を1伝えたい内容、2理由・具体例、3結論・まとめでグルーピングして構造化する。

書く前のもう一つの重要なポイントは「構造化」。情報を整理し、グルーピングし、文章に織り込む内容を決める。

意欲と気付きを生むフィードバックの工夫

参加者にライティングスキルを身に付けるための基礎動作を習得してもらうために、プログラムにはワークとフィードバックを取り入れました。

ワークでは、参加者が「書き上げるステップ」に沿って、実際に400〜600文字程度の原稿を書きます。与えられたテーマをもとに、各ステップを一つひとつ確認しながら進めました。各自の取り組みに対して、構成を立てる(構造化する)段階、構成をもとにライティングした段階、計2回のフィードバックを行いました。

フィードバックには、いくつかの工夫を施しました。添削者が表現を適切なものに変えるだけの「修正指示」になってしまうと、当人にとって改善すべき点の気付きにならないばかりか、せっかく芽生えた学習意欲を削いでしまうことになるかもしれません。そこで修正点に対し、添削者がなぜ良いと考えるか、なぜ改善すべきだと考えるかの「背景」と「改善方針」をセットで伝えるようにしました。この一歩踏み込んだフィードバックを通して、参加者に自発的な気付きと学びの機会を提供できたように思います。

参加者が実際に作成した原稿とフィードバックの一部抜粋。

フィードバックの一部抜粋。赤字は参加者が書いた原稿と感想。青字は講師からのフィードバック内容

学びを楽しむための世界観づくり

プログラム構築に当たって、もう一つ工夫した点。それは世界観です。ライティングへの漠然とした苦手意識をもつ初学者向けのプログラムということもあり、できるだけ心理的ハードルを下げたいと考えました。そこで、プログラムを「ライティング・サマー・キャンプ」と命名し、スライドもそのコンセプトを意識した世界観で作成。講座はコンテンツストラテジスト2名の掛け合い形式で具体的なエピソードや解説を交えながらテンポよく展開し、内容はしっかり伝えつつも楽しんで参加してもらえるように心掛けました。

概要他、キャンプ用ライトの写真を用いて世界観を醸成したスライドの表紙と、心理的ハードルを下げるために登場させたキャラクターの紹介スライド。

研修で用いたスライド。「書き上げる」だけにかき揚げをモチーフにしたキャラクターを登場させました。

スライドと講師の映ったオンライン研修のキャプチャ画面。

研修はオンラインで開催。講師の背景画像もキャンプ場風に。しっかり取り組みつつ、気軽に質問できる空気をつくりました。

見えてきた成果

基礎的なライティングスキルの向上を目指す「ライティング・サマー・キャンプ」。参加者はコンセント社員のほか、ご招待枠のクライアントを合わせて約70名、そのうち20名ほどがワークに参加し、添削を受ける形となりました。

プログラムを通して見えてきたつまずきポイントの傾向としては、構成段階でつまずくケースと、表現段階でつまずくケースの2つに大別できました。構成段階でのつまずきには、書く前に箇条書きで構成を立てレビューを受けることが有効です。表現段階でのつまずきには、表現の引き出しを増やすこと、また、遠回りのようですが、目的に立ち返り伝えるべきことに合わせた表現を用いることで乗り越えられます。

いずれも、つまずきポイントを見極めさえすれば、スキル向上に向けての適切なトレーニングに取り組むことができます。本プログラムは、「当人のつまずきポイントがどこにあるのか」のあぶり出しにも有効に機能しました。

参加者アンケートでは、下記のような声が寄せられました。

  • わかっているつもりで実践できていない点についての学びがありました。
  • これまではすぐに書き始めていたので、「準備」の重要性を感じました。「文章を書く」ことにのみ焦点を当てていた状態から、「文章を書く前後」に目を向けられたことは学びとなりました。
  • お客様に出す文章はもちろん、社内での説明資料の作成時にも生かすことができそうです。

自分の考えが伝わるように書くこと。日々のいたるところでライティングスキルは求められます。そしてそのスキルは、センスに左右されるものではなく十分にトレーニング可能なものです。コンセントでは、このような取り組みをはじめ、目的に応じた「伝える・伝わる力」の向上を目的とした人材育成・コンテンツ開発の支援を行っています。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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