ネタがない、伝わらない!迷走するコンテンツづくりの突破口

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    小田恭子コンテンツディレクター


様々な図形を持つ手のイラストが、カード状に並んでいる。

2021年6月にコンセントデザインスクールにて、『ターゲットの心を動かすコンテンツ戦略』というテーマで登壇しました。

当日は130名を超える方にご参加いただき、コンテンツをつくる過程や思考を落とし込んだフレームワークを用いて、「どのような課題を解決するためにコンテンツをつくるのか」「誰に、どのような変化を促すためにコンテンツをつくるのか」などを受講者の皆さまと一緒に考えていきました。

プログラムの中でお話しした内容のうち、特に多くの方に共感いただいたのが、

  • 「自分自身が面白い! と感じたちょっぴりの主観」がコンテンツの隠し味になる
  • つくり手自身がコンテンツづくりを楽しまないと、人が楽しめるものをつくることができない
という言葉でした。

「自社の広報戦略に則った情報発信を考える必要があるものの、ネタが思いつかない」「つくったメディアをより充実させるために、次に何をしたらいいのかわからない」など、情報を発信する立場の方は、やらなければいけないことに対して使命感があるがゆえにコンテンツづくりがどんどん責務化することに悩みがちのようです。

3つの視点の切り替えにプラスして、ちょっぴりの主観を取り入れる

コンテンツづくりにあたっては、コンテンツをより充実した魅力的なものにするために、次の3つの視点を切り替えてジャッジすることが必要です。

  • 編集者やデザイナーとしての「つくり手の視点」
  • 届ける対象を意識した「読み手の視点」
  • 情報発信の主体としての「発信者の視点」
「読み手の視点」「作り手の視点」「発信側の視点」を行き来するフローを表す図。それぞれの観点として、「読み手の視点」では、<おもしろい?><役に立つ?><魅力的に見える?>。「作り手の視点」では<予算におさまる?><納期に間に合う?>。「発信側の視点」では<目的に合ってる?><効果ある?>。

これらの視点を繰り返し行ったり来たりすることで、「本当に面白いのか? 役に立つのか?」「予算内で、スケジュール内で制作することができるのか?」「コンテンツを通じて目的を達成できるのか?」と問いを繰り返し、コンテンツを磨き上げていきます。

さて、この視点の切り替えの中に、もう一つ自分の「生活者の視点」を隠し味として取り入れてみましょう。つくり手でも読み手でも発信者でもない、生活者としてのあなた個人の視点や主観を、ちょっぴり入れてみてください。私は、ほかでもないこの第四の視点が情報に人格や体温を与え、「人を動かすコンテンツ」へとアップグレードする決め手だと考えています。

SNSが情報伝達の主軸になっている現代において、読み手は瞬時に目の前の情報が自分に関係あるのかどうか、有益かどうかをジャッジしています。情報を読み手に自分ごととして捉えてもらうためには、発信者が主体性をもった情報を提供することが不可欠なのです。

ネタがない!伝わらない!ときに試したい2つのこと

とはいってもネタがないし、アイデアが浮かばない、伝えたいことが伝わらない……とお悩みの方もたくさんいらっしゃいますよね。それでは「主体性のあるコンテンツをつくるための方法」について、具体的に見ていきましょう。

なぜ面白いのか、なぜ役に立つのか分析する

普段、自分が生活者としてコンテンツに接したときの「面白い!」「役に立つ!」という直感を大切にしましょう。一方でコンテンツの発信者であるからには、「なぜこのコンテンツを面白い、役に立つと感じたのだろう?」と分析することを習慣づけてください。すると、「面白い」や「役に立つ」を構成しているコンテンツの仕掛けが見えてくるはず。そのヒントを、自分がつくるコンテンツに取り入れてみましょう。

例えば、私が徳島県三好市の関係人口創出プロジェクトに取り組んだときには、プロジェクトメンバーそれぞれが「自分にとって魅力的なコンテンツ」を持ち寄って、なぜそのコンテンツが魅力的に見えるのかを考えるワークショップを実施しました。

徳島県三好市役所関係人口創出プロジェクトを説明するスライド。制作したコンテンツや、プロジェクト時の写真の一覧。

このワークショップに取り組んだ結果、「好きなことを夢中で語っている人っていとおしい」「発信したいテーマは対象そのものではなく、対象の背景にある歴史や文化」「新聞の隅っこに掲載されている人生相談コーナーってつい読んでしまう」などのヒントが得られ、それをもとにインタビューや人生相談のコンテンツを実際に制作しました。

“たった1人”にフォーカスして観察する

「多くの人に届けたい!」という一心でコンテンツをつくろうとした結果、ターゲットを見失ってしまう……なんてことも起こりがちです。そんなときは定義したターゲット像に近い人物「1人」にフォーカスして、その人を観察してみましょう。焦点を絞ることで、多数を対象としたときには見失いがちなリアルな生活や感情を具体的に捉えることができるようになります。身近に対象がいない場合は、知らない人のInstagramのアカウントをフォローする、といった手段も有効です。

イメージ:調査から市外・市民の人をモデル化した資料

三好市のプロジェクトでは、ターゲット像に近いコンセントメンバーを観察してコンテンツのヒントを得た。

ターゲット像に近い人物に話し掛けるように、その人物に届く言葉でコンテンツをつくることによって情報に体温が宿ります。たった1人のために紡いだオリジナルな言葉が、結果、多くの人の心に届くことになるのです。

発信者のリアルな視点や主観が不可欠。オリジナリティは当事者に宿る

コンセントが多くのクライアントと伴走しながらコンテンツをつくるに当たっては、私たちつくり手としての視点はもちろん、発信者であるクライアントの視点や主観も不可欠です。プロジェクトの現場で実際に起こった出来事や利用者の声など、皆さまが普段触れている具体的な体験やエピソードが起点になったアイデアは、読み手の自分ごと化を促すコンテンツをつくるための大切な大切な隠し味。そこにコンテンツのオリジナリティが宿ります。

コンセントの携わるプロジェクトでは、具体的な企画をご提案する前に、クライアントがもっている優位性や強みを洗い出すワークショップを実施して、コンテンツが発信すべき方向性を擦り合わせることからスタートすることもあります。

本来の目的を達成できる、人を動かすコンテンツをつくりたいと考えている方は、ぜひご自身の体験やエピソード、それからちょっぴりの主観も合わせて、私たちにご相談ください。伝えたいことがしっかり伝わるコンテンツを発信するために、私たちと一緒にコンテンツづくりを楽しんでいただけたらうれしいです。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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