アクセシビリティ初心者の私が行った社内情報整理のコツ バックオフィスの悩みをアクセシブルに解決!

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メインビジュアル。情報の山の上で作業する様子が、イラストで描かれている

こんにちは、コンセントで経理を担当している杉中です。

私は、経理・法務・労務・庶務などを担当するバックオフィス組織(Culture Design group)に所属しており、普段は、経費精算や請求書発行業務などを行っています。

経費精算で記載してほしい事項の連絡や、インボイス制度への対応方法など、業務に関連する情報を社内に発信する機会が多いのですが、発信した情報をなかなか見てもらえなかったり、逆に社内からは「必要な情報をうまく探せない」という指摘が上がったりするなどの悩みがありました。

そんなときに、「社内文書みつけ隊」のメンバーとして声が掛かり、現在はみつけ隊の活動を通じて社内文書の管理や情報発信に関する問題解決に取り組んでいます。今回はこの活動について紹介します。

「社内文書みつけ隊」とは?

視覚障害当事者の事業部メンバーから上がった「社内文書が見つけにくい、読みにくい」という課題をきっかけに、2021年に発足しました。バックオフィスメンバーと、アクセシビリティに知見のある事業部メンバーとの混合チームで構成され、バックオフィスから社内に提供する文書や情報自体のアクセシビリティと見つけやすさの向上を目的として活動しています。

アクセシビリティとは、情報やサービスへのアクセスのしやすさのことです。どのような人・環境でも提供された情報やサービスにアクセスし、利用できることを指します。

私自身はアクセシビリティとは何なのか、よくわからない状態から活動に参加しました。そのため、今ある問題をどのようにアクセシビリティにひも付けて改善していくのか全く見当がつきませんでした。

課題把握のためのアンケート実施

前提として、コンセントでは社内のコミュニケーションツールとしてMicrosoft365を利用しています。Teamsで情報発信したり、SharePointで情報を集約したりしています。

事業部メンバーは会社生活において何を知りたいのか、どんな情報にたどり着けないのか。情報を発信するバックオフィスメンバーはどのような悩みを抱えているのか。双方の現状を知るためにアンケートを実施した結果、以下のような課題があることが見えてきました。

現状を知るためのアンケート結果。事業部の課題は「誰に聞いたらいいかわからない」「どこに何の情報があるかわからない」など。
現状を知るためのアンケート結果。バックオフィスメンバーの課題は「情報を発信しても見てもらえない」「わかりやすいドキュメントの作成や発信ができない」など

アンケートの回答から、情報を受け取る事業部メンバーの意見や、他のバックオフィスメンバーも私と同じ悩みを抱えていることがわかり良かったです。社内情報に関する課題と背景を、以下のように整理できました。

社内情報に関する課題をまとめた図
  • 資料に辿り着けない
    • マニュアルや勉強会資料の種類が多く、わからないことがあった場合に、自分だけで必要な情報を探すことが難しい
    • コロナ禍を契機にリモート勤務する人が増えた。オフィス勤務では対面でバックオフィスメンバーに質問すれば適切な担当者を案内してもらえたが、リモート勤務時のチャットでは誰にどの質問をすればよいかがわからない
    • SharePointにどのような情報が掲載されているのか把握できない
  • 情報発信量が多すぎる
    • 伝えたい内容が多いため、バックオフィスからのアナウンスが長くなってしまう。その結果、見逃されてしまう
  • 社内文書のアクセシビリティが低い
    • 文書が見えにくい社員にとって、記載された情報が理解しづらい。
    • 社内文書を作成する機会の多いバックオフィスメンバーにアクセシビリティの知見がない。

課題解決のために行った3つのこと

1.バックオフィス管轄マップ作成とSharePointの整理

バックオフィス管轄マップの作成

「バックオフィスのどの部署がどんな業務を担当しているか」について、事業部視点で相談先をまとめたマップを作成しました。バックオフィスに所属している私自身も全てを把握しているわけではなかったため、事業部メンバーにとってはさらに判断が難しかったと思います。これにより、社内の不明点について「誰に」「何を」相談すべきかの判断ができるようになりました。

バックオフィス管轄マップ。管轄しているチームごとに業務内容が記載されている

相談先がバックオフィスではない、間違えやすいものについては「別途相談先リスト」を作成することでカバー。

SharePointの整理

さまざまな部署がそれぞれに管理していたマニュアルや資料、ナレッジをまとめたリンク集をみつけ隊のSharePointに集約し、「会社生活を送る上で知っているとよい情報」として一括管理を行いました。また、掲載してほしい情報を社員から随時募集して更新し続けています。

SharePointにまとめられた社内情報の様子。前述の管轄マップや会社生活に必要な基本情報のリスト、各所に散らばっていたナレッジをまとめたリンク集など

情報を見つけやすく、わかりやすく整理できれば、情報を発信する側も受け取る側も困らず快適になる。それがアクセシビリティなのだと少しずつわかってきました。

2.「社内情報発信のコツ」の作成

バックオフィスからの情報発信力向上を目指し、情報を正しく、簡潔に伝えるための方法をまとめた資料「社内情報発信のコツ」をみつけ隊で作成しました。

社内情報発信のコツを記載した資料の一部

文章の構成や表現で工夫すべき点や、アクセシブルな文書をつくるためのポイントについてまとめた「社内情報発信のコツ」。バックオフィスが投稿しているアナウンスの改善例を示すことで、業務にすぐ生かせる内容になっている。

私自身、今までアナウンスを作成する際はどうしても文章が長くなりがちで、これでよいのだろうか……?と、不安と苦手意識をもっていました。しかし「社内情報発信のコツ」作成に参加し、自分でも実践することで、情報の受け取り手に寄り添ったアナウンスができるようになりました。

3.アクセシビリティ知識向上研修の実施

みつけ隊メンバーのアクセシビリティ知識向上のために、インクルーシブデザインを担当している事業部メンバーに講師を依頼し、アクセシビリティ向上に必要な文書構造や代替テキストの書き方、マークダウン記法などを学ぶ研修を実施しました。

今まで深く考えずに使用していたインデントや見出し機能等の文書構造の仕組みやマークダウン記法を理解することで、アクセシビリティに則った情報発信や文章作成をスムーズにできるようになりました。

学んだことはみつけ隊の活動だけでなく、担当する経理のSharePointの改修やアナウンス文の作成等の実務で実践することができた点も良かったです。

活動の成果

これらの活動を通じて、「わからないことがあったらまずはSharePointを見る」意識が浸透し、バックオフィスメンバーへの問い合わせ数が減少するという成果を上げられました。また、事業部メンバーから「『社内情報発信のコツ』を新入社員にも共有したところ、社内コミュニケーションの基礎力アップに役立った」という、うれしいコメントも得られました。

みつけ隊の活動を始めた当初の私は、バックオフィス目線で物事を考えていたのですが、活動を通してアクセシビリティを学ぶにつれて、社員が情報を見つけやすくなるにはどうすればよいか、どうすれば伝わりやすい内容になるか……と、情報の受け手側のことを考えて行動するようになりました。現在は経理チーム内でアクセシビリティ観点での意見を求められることもあり、自分自身の成長にもつながったと思います。

アクセシビリティの知識は業務のさまざまなシーンで活用できます。バックオフィス全体のアクセシビリティの知見が高まることで、社員の働きやすさを促進させ、組織としての底上げにつながります。

今後も必要なときに必要な情報を得ることができる環境をつくり、バックオフィスと事業部双方の作業負担を軽減する取り組みを進めていきたいと思います。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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