地域医療振興協会   施設サイトリニューアル(レスポンシブ・ウェブデザイン)

医療者と利用者の相互視点で
協会の施設サイト群を再構築

公益社団法人 地域医療振興協会が運営する医療施設のホームページを対象に、これまで各施設が独自に構築してきたこともあり、更新頻度やコンテンツの構成など、施設間でのバラツキが目立つ状態だったため、地域医療振興協会のブランド施設でありながらも、一見して認識できないサイト群となっている課題がありました。

また、CMS も既存の物がありましたが、使い勝手の悪さと自由度の低さから、運用・更新面での課題を抱えていました。

さまざまなステークホルダーのニーズを集約したウェブサイトの構築を行うことをミッションとして、リニューアルのプロジェクトがスタートしました。

  • ウェブサイト・サービス
  • デザインガバナンス構築支援
  • メディア・コンテンツ開発
  • クリエイティブ開発

問題解決までのアプローチ

ユーザー(患者さま)に伝えるべき情報が伝わるウェブサイトであることが第一ですが、それだけではなく、各施設の運用担当者が通常業務の傍らで簡単に更新できる仕組みをもち、地域医療振興協会のブランドを継承する一定のガバナンスを維持できることを最低限の目標として、コンテンツの再編成・サイト構造の刷新から検討をはじめました。

ユーザー(患者さま)に伝えるべき情報が伝わるウェブサイトであるために、各施設の独自性とブランドとしてのサービス品質をキープすべく、各施設へのアンケートおよびヒヤリングを行いながら、ともすると医療従事者目線で構築されがちなサイト構造を、利用者目線で整理し、施設の形態や規模に合わせたコンテンツの設計へ落とし込みました。

昨今のスマートフォン普及率から、スマートフォン環境での閲覧対応は必須と考え、限られた予算の中でかつ、運営担当者がPCとスマートフォンを意識することなく更新を行えることを重視し、レスポンシブ・ウェブデザインを取り入れました。レスポンシブ・ウェブデザインを行なうことでの工数的なオーバーヘッドは、画面設計の工程をディレクターにて担うアプローチから、AD・コーダーを中心に取りまとめて行くアプローチを取ることで、開発工程のリスクを軽減し吸収しています。

CMSの設計では、運営担当者もユーザーの一人として考え、CMS標準の管理画面を利用するのではなく、画面および追加で必要な機能をゼロから設計・開発することで、利用者のリテラシーに依存しない UI の開発を行いました。

また、各施設の独自性を活かしながら、一定のガバナンスを維持できる仕組みとして、協会本部が一元管理できるコンテンツと、施設個別に管理できるコンテンツの権限を分け、さらに、ページ内のレイアウトをパズルを組み立てるような感覚で編集できる WYSIWYG エディタの開発までも行いつつ、協会本部のウェブサイトで策定したトーン&マナーを踏襲した施設サイト用のガイドラインを定め、ビジュアル面でも一貫性をもったサイト群に仕上げました。

お客様インタビュー

公益社団法人 地域医療振興協会様は、病院や診療所、保健医療福祉複合施設など、さまざまな施設を運営しています。そのうち一部の施設サイトを2012年にリニューアルしました。

「協会の」施設であることを伝えるのは、地域の方々に安心を届けること。そのためには運営する各施設のサイトに、「協会の」施設としての統一性を出すことが必要でした。一方、施設によって規模もさまざまで伝える情報も異なるため、各施設の状況に合わせてカスタマイズしながら運用できるしくみも不可欠でした。

こうした背景の中、どのようにリニューアルを進めていったのか、プロジェクトのご担当者である地域医療振興協会の幕田様、川合様にお話をうかがいました。

公益社団法人 地域医療振興協会の幕田輝明様<写真右>と川合直人様。<写真左>

■全ては医療に恵まれない地域の医療諸問題を解決するために設立

—まず、地域医療振興協会様について、設立の目的やどのような活動をされているのか、お教えいただけますでしょうか?

【幕田 様】
現在、日本では病院が大都市や地方都市に集中しており、山間や離島などのいわゆる“へき地”では医師がいなくて困っている地域がたくさんあります。そのような地域に医療の確保の質の向上を目的として、昭和61年に地域医療振興協会が設立しました。

へき地の医療を充実させるための手段の1つとして、総合医の育成に取り組んでいます。なぜならば、山間や離島などにある診療所では、たとえば世界で指折りの優れた心臓外科医といった心臓を専門とする医師が一人いました、というのはあまり意味がないわけです。へき地で要求されるのは、どんな病気でも対応し、どんな患者でも受け入れる医師、つまり総合医なんです。

我々は日本全国、山間や離島に病院や診療所を運営しているのですが、同時に大都市でも大きな病院をいくつか運営しています。経営という観点もありますが、地域医療を推進するためのしくみの一つと考えています。
たとえば、ある山の診療所には医師が一人しかいないという場合があります。そうすると、その医師は休みもなかなかとれず、用事があってもどこにも行けず、負担がかかってしまう状況になってしまう。ところが、その診療所に協会から医師を送ることにすれば休みもとれるじゃないですか。そうするとその診療所の医師だってまた戻ってがんばろうという気持ちになり、長く勤務していただけるわけですよ。都会にも病院をもち、地方にも診療所などをもつことで、こうしたシステムを実現しているんです。その中でも総合医というものに、一番力を発揮してもらっています。

公益社団法人 地域医療振興協会 総務部 部長 幕田輝明様。

—医師派遣もされているということですよね。

【幕田 様】
協会の病院の他、協会外部の病院にも医師派遣を行っています。

—外部の病院から直接依頼があるのですか?

【幕田 様】
はい。多くの依頼をいただいています。医師を派遣してくださいという他に、病院を経営してくださいという依頼もあります。「経営が厳しい、医師が集まらない。だから我々協会に経営を引き受けてくれないか」といった依頼です。 医師を派遣する、もしくは病院ごと経営を引き受けるという感じで、様々な手段を通じて医療過疎地域の医療をご支援しています。

—あらゆる角度から地域医療を推進されているわけですね。

【幕田 様】
そうなんです。また、その他には、いろんな地方自治体からご要望をいただいて「病気にならないためにはこんなふうにしましょう」といった公衆衛生の講演会も行っています。たとえば中学校で性教育の話をしたり、市役所に行って地方の健康促進のためにはこういうことをしましょうといった話をしたり。病気の予防と治療と、全部をやっているんですね。

■ウェブサイトは重要な「外部との窓口」

—今回、コンセントがリニューアルをお手伝いさせていただいた施設サイトですが、リニューアルの背景を教えていただけますでしょうか?

【幕田 様】
施設サイトの前に、昨年2011年、協会本体のウェブサイトをリニューアルしたんです。コンセントさんとのお付き合いはそこから始まりました。 昨年は協会が設立されて25年、つまり四半世紀が経っていたわけですが、今後の成長を考えると、ウェブサイトというのは、我々が外部に情報を伝える手段として非常に重要な位置づけになっていました。ところが当時の本体サイトは、誰も更新しておらずニュースはいつも古いまま、サイト全体の統一感もなく、理想にはほど遠い状況でした。そこで、ニュースが常に更新され誰でも見やすいウェブサイトを目指して、まず本体サイトをリニューアルしました。

2011年にリニューアルした地域医療振興協会様の本体サイト。

そして次のステップとして施設サイトをリニューアルしようと。我々は今現在(2012年9月)、大きな病院から小さな診療所まで57施設を運営しています。施設も個別にウェブサイトをもっているのですが、よく機能している施設サイトもあれば、全く更新できていないサイトもあるという状況で。さらに、協会本体のサイトから各施設サイトへのリンクをはっているのですが、両者のサイトに統一性がなく「なんか違う画面が出てきた」という印象になってしまっていました。「協会としての統一性を考えると、これでいいのかな。」と課題を認識したことが、今回のリニューアルのきっかけですね。

地域医療振興協会のブランド価値を高めるにあたって、協会本体だけではなく運営する施設のことも一緒に伝えていく必要があるんです。施設は単なる「○○病院」ではなくて「協会の」病院なんです。そこをもっと明確に伝えなければ、協会の名前が日本全国に広まることもないだろうし、ブランドの価値が高まることはないだろうと。ウェブサイトも本体と各施設のものとで統一感を出せれば、「協会にはこんなにたくさんの施設があるんだ」ということがわかる。同じようなつくりにしておけば見やすくもなるでしょうし。一体感を出したい、見やすくしたいと思ったことが、今回施設サイトをリニューアルしたきっかけなんです。

【川合 様】
それまで一部の施設サイトで導入していたシステムは、それなりに統一感もありすごく簡単にウェブサイトを運用できるんだけれども、各施設の個性が出せないとか、機能的な面でいろいろな課題があり、システム全体のリニューアルを図りたいというご意見が結構多く出てたんですね。

—ご意見というのは、各施設サイトの運用担当の方からでしょうか?

【川合 様】
そうです。ご意見の中にはシステムには無い機能を希望すると、それなりの費用が機能の追加をするたびにかかってしまうという内容もあり、次にリニューアルするのなら、自由度の高い施設サイトを実現できないかというご相談があったんですね。

公益社団法人 地域医療振興協会 総務部 広報室 主任 川合直人様。

—施設ごとによって伝えたい情報の量や種類が違うという。

【川合 様】
そうなんです。且つ、協会の施設は規模がそれぞれ違うんですね。ベッド数が違ったり、老人保健施設を持たれていたり、ベッドを持たない診療所さんもいらっしゃったりと、施設の規模がさまざまなんです。そのような状況で1つのシステムに統一してしまうと表現上の制限が出てしまい、ある施設にとっては情報が足りなくなり、別の施設にとっては多過ぎるサイトになってしまう。こうした課題を解決できるような施設サイトのリニューアルが必要ではないかといったところから、コンセントさんと二人三脚でつくっていきました。

—協会としての統一性を持たせつつも、各施設様に合わせてカスタマイズできるようなシステムが必要だったということですね。

■医療者側からの視点だけではなく、利用者側の視点も大切

今回リニューアルした施設サイトの1つ、台東区立台東病院 台東区立老人保健施設「千束」様のウェブサイト。

—今年(2012年)8月に13施設のサイトリニューアルが完了しましたが、完成したサイトはいかがでしょうか?

【川合 様】
ビジュアル面での評判が良く、各施設サイトの担当者の方からは、なかなかいいのではというご意見を多くいただいています。あと、なによりもコンセントさんもすごくいろいろ親身になって関わってくださって。こちらの無理な注文も受けていただき、現状でできる限りのことはしていただいていますので、そこの部分にはすごく満足しています。

—お褒めの言葉をいただきありがとうございます。

【川合 様】
今回コンセントさんとお付き合いして特に感じたのが、自分も医療者側から広報室にきたので、「医療者側の意見はこの見せ方だと思う」というのはあるんですよね。一方、コンセントさんからいただいたのは、「その施設を全く知らない人が見た時にはこういった見せ方をした方がいい」という、サイトの利用者視点の意見で。こうした意見をいただいたのは今回大きかったと思っています。おかげで、我々が一方的に情報を伝えるだけのサイトにならなかったのではという気持ちはあります。ただ、患者さんをはじめとする実際のサイト利用者の方からのご意見はまだ回収できていないので、実際の声が聞こえてきたらそれが実現したのかなとは思うんですが。つくっている段階ではある程度、利用者視点での使いやすさは表現できているのかなと思っています。

—利用者側の視点をもつと見えてくることがありますよね。

【川合 様】
たとえば、病院の電話番号や住所ってどこに載ってるのかが実はわかりにくい場合があると思うのですが、それをサイトのメインの場所に置いて見つけやすくしたりとか。また、以前は地域医療振興協会の施設なのに協会についての説明がないサイトがほとんどだったのですが、今回のリニューアルで「協会の施設である」ということをサイトの随所に入れたので、協会の一施設であるということ、つまりただ統一性があるのではなくて、「協会の施設」としての統一性というか、ブランドとしての見せ方はできたのかなという思いはあります。

—リニューアルの背景にあった、協会のブランドを高めるというところですね。

【川合 様】
はい。コンセントさんとの打ち合わせでも、協会の「CMEDマーク」というのがあるのですが、そのマークを見ることによって、「この協会が運営している診療所、病院なら安心だ」と利用者が感じられるところまでもっていきたいっていう話を常にしながら進めさせていただいたので、そういった部分では実現できているのかなと。

地域医療振興協会様の運営施設であることを示す「CMEDマーク」を、目につきやすい位置に配置。ブランド感を出してサイト利用者に安心を与える。

—コンセントとの仕事の進め方はいかがでしたでしょうか?

【川合 様】
広報室自体がまだできて間もない部署で、私ももともとは医療者で、ウェブサイトのつくり方とかあまり考えたこともなかったんです。ですからなにかとわからない専門用語やシステムの仕組みが多いため、会話の中でもう少し配慮が欲しかったというのが正直ありますね。もう少し、コミュニケーションを多くいただけたらもっとスムーズだったのではないかと。「以前の定例会議中に説明したことが実は重要だったんです。」ということを後から知らされても、そんなことを今さら言われてもっていうのがあったのは残念だったかなというところでしたかね。

—知らないことについては、何がわからないのかがわからないですよね。

【川合 様】
そうなんですよね。当初の反省点としては、会議は行っていても電話や書面・メールが中心といったやりとりだけになってしまって、私たちもどこが重要だったかがわからなかったし、コンセントさんも私たちがこれを一番伝えたいところだというのがわからなかった部分もあったのかなと思います。
ただ、今年4月に、リニューアル第一弾の施設サイトができ上がってからは、お互い言いたいことも言って定例会議も重ねながら、コミュニケーションはかなり頻繁にとれてきたかなと思っています。施設サイトも実際に使われ始めてから、ようやく問題点が出てきたというのがあって。

—実際に使ってみないと、こういう情報を入れたい時にはどうしたらいいんだろうとか、細かなところは見えてこないですものね。

【川合 様】
そうなんです。正直言って4月まではとりあえずリリースすることが最優先で、なかなか細かいところまでは行き届かなかったんですよね。でき上がってみてから、いろんな不都合や不具合を発見して、そこから徐々に良くしていくことができました。

■窓口の一本化と共通CMSの導入で、運用しやすいサイトに

—施設サイトを運営される方にとっての使いやすさという点ではいかがでしょうか?

【川合 様】
そうですね。今回のリニューアルでは私が以前所属していた病院のウェブサイトもつくったんですけども、そこの担当者から本当に見やすく使いやすくなったという評価はいただいていますし、自分としても使いやすいなと。

【幕田 様】
以前は、サイトはあってもつくった人が別にいたために、その施設の運用担当者がどうやって情報を変えたらいいかがわからないという状況もありました。今回のリニューアルでは統一的につくっていることと、問い合わせ窓口を一本化したことで、「わからなかったらここに聞けばいい」というのが明確になったので、そういうふうに言ってもらえるのかもしれないですね。

—窓口を一本化されたというのは?

【幕田 様】
実は広報室は昨年の7月にできたばかりで、それまでは、ウェブサイトに関することをどこに聞けばいいのかが、施設サイトの担当者側ではわからなかったんですよね。それに当時の施設サイトは施設ごとに別々につくっているから、質問されても広報室でお答えできないものもありました。
広報室内に窓口をつくり、各施設で共通のシステムを導入したことで、質問がきてもすぐに答えられるようになりました。そうすると無駄な時間もなくなるし、施設担当者の皆さんも更新しようと思えばすぐに更新できる。そういう意味でも、同じ協会の施設で同じシステムっていうのは利点ですよね。

■どれだけ使っていただけるかがポイント

—問い合わせを受ける川合様の立場からしても、同じ画面を見ているから回答しやすいというのはあるのでしょうか?

【川合 様】
そうですね。今回CMSを導入させてもらって、施設の担当者の方も私も共通の画面を見ながらお話ができるので、そこはいいなと。それに課題であった施設ごとのカスタマイズという面でもかなり高い自由度が実現できていると思うので、そこはすごく満足してますね。

あとは施設担当者の方にどれだけ使っていただくかというのがポイントで。我々もやっていかなければいけないし、さらにわかりやすくつくり込んでいく必要があるかなと。コンセントさんの方でもマニュアル的なものをよりわかりやすくしてもらえるといいかなって思います。一つ苦言といった部分なんですけども、ちょっと現在のマニュアルがわかりにくいなと。マニュアルの内容を単語だけで伝えられてしまうと、全くCMSを触ったことのない人は、「この単語って何?」ってところで既にわからなくなってしまう。

—使い方を調べているはずなのに、わからない単語でつまづいてしまう。

【川合 様】
「このボタンを押したらこうなります」とか「①このボタンを押す」とか、そのくらい易しいマニュアルにしてもらわないと、施設担当者側にはなかなか難しいかなと。文字だけだったり用語が難しかったりと運用マニュアル自体のレベルがちょっと高く、実際に施設サイトの担当者の方に聞いてみても、マニュアルを見て動かすというよりも、やはり広報室に聞いて操作した方が早いという感じになってしまって。もちろん、コンセントさんもマニュアルを納めてそれでおしまい、ということは考えられてなかったので不満はないんですけども。

—お問い合わせが多く入ってしまったのでは……。

【川合 様】
いえ。CMSを導入したのが7月で、それまでは担当者が自分で修正や更新の作業ができなかったのでお問い合わせは多かったのですが、実際にCMSを導入してみたら意外に少ないなという印象です。CMS自体をかなりわかりやすくつくっていただいているので、皆さんそこまで困ったことはないかなっていう。逆に、リニューアルに向けて今年3月までに話し合って決まったことに関する不満の方が多いかなと。もっとその当時に、施設側のご意見をより多く吸収しておけばよかったという反省点の方が多いですね。

—たとえばどのようなご意見があるのでしょうか?

【川合 様】
小さいことですけど、施設サイトのトップページにある「お知らせ」の文字が小さいからもっと大きくしてほしいとか。あとコンテンツの設計段階当初は、「在宅サービス」「外来」「入院」といったサービスごとにメニューを分けたいんですが、実際に運用してみるとそのサービスに当てはまらない施設が出てきてしまったりとか。

—なかなか難易度が高かったですね。サービス区切りで患者さんに情報提供をしたいのだけれども、診療所、老人介護保険施設、介護福祉事務所という医療/福祉関連の複合施設様の場合、組織体制の関係上、運用上の都合を考えると、どうしてもサービス視点ではコンテンツを構成できないと。最終的には施設様のご要望と摺り合わせるかたちで、グロナビから変更して対応させていただきました。

【川合 様】
我々も施設によってニーズが違うんだということを理解していなければいけなかったし、リニューアル前のヒアリングの必要性がもっとあったのかなと。事前ヒアリングを行った上でリニューアルをしたのですが、それでもどうしても吸収できなかった部分があって。文章の一部をボールドにしたいとか色を変えたいとか、いろんな細かい要望が多いですね。

—施設様ごとにご要望がさまざまなんですね。

【川合 様】
全然違います。もっと外来を見せたいという施設もあれば、違う部分をもっと見せたいというところもありますし。今いただいている問い合わせの大部分がCMSから外れたところですね。

■実際に操作性を試せる準備期間は必要

—実際にCMSを運用されてみて川合様ご自身はいかがでしょうか? 先ほど使いやすいとはおっしゃっていただいていますが。

【川合 様】
今回の施設サイトのリニューアルの前に、協会本体のサイトのCMSをリニューアルしてるんですが。以前の協会サイトでは、最新情報をアップすると他の大事な情報がどんどん下に下がってしまうというご意見があり、今の協会サイトのようにカテゴリー分けにして大事な情報を抽出できるようなCMSを入れさせていただいたんです。ただ、そのCMSを実際にいじってみると使いづらいところもあって。「もっと簡単に、これをクリックすればこう出るみたいな感じにしてほしい」と、コンセントさんとも話し合いながら、今の施設サイトのCMSをつくっていったんです。だからこそ、今回の施設サイトのCMSがうまくいったという部分もあるのかなと思います。

今回導入したCMSの管理画面。各施設サイトの管理画面トップでは「お知らせ」などのページ構成要素単位で編集できるよう階層構造になっている。感覚的に操作できるWYSIWYGエディタも開発。運用担当者のリテラシーに依存しないわかりやすいUIになっている。

広報室様の管理画面。協会本部が一元管理できるコンテンツと、施設個別に管理できるコンテンツの権限を分け、各施設の独自性を活かしながら、一定のガバナンスを維持できるしくみを可能にしている。

—今回、実装した後に実際に施設担当者の方にCMSを使っていただき、意見を反映するという方法をとらせていただきましたが。

【川合 様】
CMSができ上がってから、施設担当者の方に事前に触ってはいただけたんですけども、実際の操作感を試せる期間はもう少し欲しかったです。それまでに我々もいろいろ注文をしていたので、時期が遅れてしまったのはしょうがない部分だとは思うんですが。

—準備期間が短かったことによって、実際に完成したCMSが使いにくい部分というのは?

【川合 様】
おかげさまでかなり使いやすいので、正直言ってCMS導入の段階ではあまり不満がなかったので、それが良かったんですけど。そこで全然だめだったらちょっと恐かったなというのは思いますね。
CMSが完成するまで、施設担当者の方から「こういうこともできるんですか?」といったご質問をいただくたびに「できます」と言って理解していただいていたのですが。ただ実際のCMSがまだない段階なので、こちらも「できます」とは言ったものの「ほんとにできるのか」と不安だったんです。ただ、かなりイメージと近いものができたと思うのでそれはよかったのですが。

—だいぶご心配をおかけしてしまい申し訳ございません。今回、CMSの初期設定画面を全部捨てて管理機能のUIもゼロからつくり直すという発想にしたため、制作途中で成果物をお見せできるタイミングがなかなかなく、川合様にかなり気を揉ませてしまい反省しております。

■自身の経験と事前ヒアリングで大切なポイントを認識

—施設様ごとにご要望がさまざまという状況の中で、CMSのクオリティは重要ですよね。

【川合 様】
そうですね。やはり今回、CMSはメインとなるところで、施設に対して自由度の高さがウリなんですよというのを前面にお伝えしていたので。更新性と自由度の高さはポイントでした。たとえば、前のシステムだと「写真はここにこのサイズで1枚」とか決まってしまっていたんですよね。今回リニューアルした施設サイトでは、写真を2枚置けたりサイズを大きくできたりとかなり自由度が高いし、良いのではないかと思います。施設ごとにオリジナリティが出せるというか。

—そのあたりは、施設サイト担当者の方への事前ヒアリングで出てきた意見なのでしょうか?

【川合 様】
私が以前のシステムを使っていたということもあり、自由度の面が課題だというのを実感としてわかってたので。あと、事前ヒアリングの結果も聞いて、やはり記事の更新性や自由度が今回の大きいポイントだと意識していました。

■今回はある意味スタート。今後より良くしていきたい

—最後に今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか? 今回の施設サイトのリニューアルでは、協会のブランド価値を高めることが背景にありましたが。

【幕田 様】
そうですね。統一性を出し、協会っていうのはこんなにたくさんあるんだというところをまずお伝えして、協会を知っていただくというのが目的でしたから。

【川合 様】
やっぱり地域医療に興味のある方を集めたいっていうのは根底にあるんですよね。求人としてもそうですし。「地域医療=地域医療振興協会」とすぐにイメージできるように。地域の方には安心していただき、医師の方には面白い協会だなというところから仲間になっていただき、医療関係者の方には協会に入ってみたいと思っていただけるような。

【幕田 様】
だからわかりやすいウェブサイトというのは必要かなって思いますよね。協会ってどんなところかなのかというのが一目でわかるようなウェブサイトが。それが最終的に皆さんがハッピーになるということじゃないかなと思うんですよ。我々も従業員もサイトを見る人もハッピーになる。協会のウェブサイトを見て良かったなと思えば仲間も増えるし。だからこそ常に協会の今を伝えるようにしていかないといけない。最初に申し上げたように、やはりウェブサイトは「外部の方との窓口」という位置づけで非常に大事なものなんです。
今回のリニューアルはある意味スタートです。これで終わりじゃないんですよね。より良くしていかなきゃいけないというのは、まだまだ課題だと思っています。今回リニューアルできた施設サイトも一部ですから。最終的には、全ての施設サイトのリニューアルを行って、協会として統一性のあるものになればいいなと。理想ではありますが。

【川合 様】
ただ実際に要望もあるので、なんとか吸収していくために費用面でもうまく調整していければと。

—要望というのは?

【川合 様】
やはりどうしてもこの金額しか出せないっていう施設もあるんですよね。もともと経営が難しい病院だったのをお引き受けしているような背景もありますので、協会のブランドのためだからといってなかなかお願いできないところなんです。ただ今回リニューアルして、せっかくこんなにいいものができたので、使っていただけないのは残念だなというのがあって。なんとかこうした問題の解決策をコンセントさんと一緒に見つけて、広めて行きたいというのはあるんですけどね。

—今、リニューアルしたいと手を挙げてくださってる施設様はいらっしゃるんでしょうか?

【川合 様】
手を挙げませんかっていうことまでは、今はまだこちらから言えていないんです。一旦ひと区切りさせていただいて、これぐらいのメリットがありますってところをしっかりまとめる必要があります。

—今回の費用対効果を検証してから、ということですね。

【幕田 様】
そうですね、検証はきちんと行いたいです。あと、今回リニューアルしたシステムを使っている施設からあがっている声を抽出していったりとか。

【川合 様】
今はその段階ですね。今の反省点、変える部分などをコンセントさんともよくご相談して、次に活かしていきたいと思っています。

【幕田 様】
あとやらなきゃいけないと思っているのが、協会の本体サイトの英語版をつくることです。というのも、医療ってどんどん進んでいくわけで。地域医療は国内だけの医療じゃなくて、イギリスはイギリスでの地域医療が、アメリカはアメリカでの地域医療があるわけです。国内という狭い社会にだけ目を向けていては、今後の発展というのは当然伸び悩んでいくでしょうし。これだけ世界と壁がなくなっている中で、世界との交流ということを今後やっていかなきゃいけない。国外の方に協会のことを伝えるためには、英語版のウェブサイトをつくる必要があると。

—今、実際に海外からのお問い合わせもあるんでしょうか?

【幕田 様】
問い合わせはいただくのですが、英語版のウェブサイトはないとしかお答えできないんです。だから自分でつくった英語版のパワポ資料を渡したりはしてるんですけど。我々も海外のいろんな大学や機関と、留学生を交換したり医者を交換したり、大学の先生を呼んで講義してもらったりとかいろいろやっているんです。実際、協会にも海外から来ている看護師もいますし。

これまでは国内で地域医療の推進をやってきましたが、次のステップとして国際標準の医療を目指すことを考えています。地域医療というのは医療水準が低くていいってことは決してないんです。さらに医療水準を上げるためにも、海外との交流というのはやっていかなきゃいけない。その中で、やっぱり窓口はウェブサイトですから英語版をつくっていきたいと思っています。

—本日はお時間をいただきありがとうございました。

(取材・文 株式会社コンセント)

[ プロジェクト概要 ]

クライアント名 公益社団法人 地域医療振興協会 様
URL

http://taito.jadecom.or.jp/

http://hikarigaoka.jadecom.or.jp/

http://kenritsushima.jadecom.or.jp/

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