読書バリアフリー法が目指す
“誰もが読書をできる社会”を体現
障害の有無にかかわらず、すべての人が読書による文字・活字文化の恩恵を受けられるようにするための法律である「読書バリアフリー法」の啓発用リーフレットを制作しました。
本リーフレットでは、使用する色や書体、文章、情報構造を工夫し、通常の活字に対して見えにくさや読みにくさのある人にも配慮しています。また、視覚障害などで紙のリーフレットが読めない方に対して、スクリーンリーダーで音声読み上げができるアクセシブルPDFも併せて制作しました。
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[ プロジェクトのポイント ]
- 視覚障害や色覚特性、ディスレクシアなど、文字を読むことに問題を抱える方に配慮した表現
- スクリーンリーダーでの音声読み上げに対応したアクセシブルPDFの制作
- 日本語の読み書きに問題を抱える方に対し、内容理解を助ける「やさしい日本語」を参考にした文章
プロジェクトの背景
「読書バリアフリー法」は、視覚障害者や読字に困難がある発達障害者、寝たきりや上肢に障害があるなどの理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難な身体障害者が自分に合った方法で読書できる社会の実現に向けて、本をさまざまな形式で提供することを推進するために制定された法律です。
本リーフレットは、障害当事者やその家族に向けて、図書館やインターネットで利用できるさまざまな形式の本やサービスを具体的に紹介し、それらの認知度を高めるために企画されました。
リーフレットのタイトルでもある「誰もが読書をできる社会を目指して」というメッセージを体現できるよう、実際にリーフレットを読む障害当事者にもわかりやすい表現の工夫など、リーフレット自体のアクセシビリティ向上も必要でした。
問題解決までのアプローチ
リーフレットの最終的なアウトプットは、ウェブサイトに掲載するPDF版と、図書館や市役所などで配布する印刷版の2種類と決まっていました。
そこで、PDF版ではスクリーンリーダー(※1)での音声読み上げに対応することを最初から視野に入れて制作を進めました。
冊子のデザインが出来上がってから音声読み上げ対応を付け足すことは困難です。なぜなら、音声読み上げ対応には、視覚情報を省いた上で、「どの順序で読み上げれば内容が正しく伝わるのか」という情報構造の整理が必要不可欠だからです。
後付けの機能としてではなく、制作初期から情報構造と見た目の表現を併せて検討したため、多くの人に伝わる工夫を盛り込んだデザインにすることができました。
※1 スクリーンリーダーとは、画面に表示されるテキスト情報を音声で読み上げたり、点字として出力したりできるソフトウェア。
クリエイティブのポイント
ロービジョン(※2)などの目の見えにくい人、ディスレクシア(※3)の人、色覚特性(※4)のある人にも読みやすいよう、色や書体を工夫しました。
※2 ロービジョン(Low Vision)とは、視力の低下や視野狭窄などの見えにくさがあり、日常生活に不自由さをきたしている状態のこと。
※3 ディスレクシアとは、知的能力や理解能力が原因ではない、文字の読み書きに著しい困難を抱える障害のこと。失読症、難読症、識字障害などとも呼ばれる。
※4 色覚特性とは、目の特性のひとつで、P型・D型・T型・A型の4つの色覚タイプを指す。一般色覚(C型)とは色の見え方が異なる。
リーフレット全体のメインカラーは濃いブルーです。ブルーの色を濃くすることで、色の上に白文字を乗せたときにも、4.5:1以上のコントラスト比を担保できます。これはウェブアクセシビリティのガイドラインである
でも定められている、文字の視認性を担保できるコントラスト比です。また、アクセントカラーのオレンジは、ブルーとオレンジの組み合わせが色覚特性の人にも比較的見分けやすいという理由で選定しました。色の見え方によって情報取得に差が出ることがないよう、情報の強弱は色味ではなく明度差や文字の太さ・サイズで表現しています。
表紙と裏表紙
書体はUD書体(ユニバーサルデザイン書体)を採用。UD書体は、視認性、可読性を重視して作られており、発達障害や視覚障害のある人にも読みやすいことが多いとされています。
また、日本語が母語ではない人も内容をしっかり把握・理解できるよう、文章は「やさしい日本語」(※5)を参考にできるだけ平易・簡潔に表現しています。
※5 「やさしい日本語」とは、難しい熟語や言い回しを使わない、わかりやすい日本語のことです。
ひとつの情報の中に、異なる種類の書体や文字サイズを混在させないよう注意。「やさしい日本語」を意識することで、すべての人に対しての文章理解を促進する
ダイバーシティ&インクルージョンの考えに基づき、イラストには性別・年齢・人種・障害の有無にかかわらず、さまざまな人が登場します。本の形式も紙の本だけでなく、電子書籍や点字図書、音声図書、拡大図書などを紹介し、私たち一人ひとりが自分にとって利用しやすい形式の本で自由に読書を楽しめる社会を表現しました。
藤田翔さんによるイラスト。読書バリアフリー法が目指す社会を表現
スクリーンリーダーで読み上げ可能なアクセシブルPDFは、見た目は普通のPDFと変わりませんが、裏側でデータとして見出しなどの情報構造や画像の代替テキストが設定されているのが特徴です。スクリーンリーダーユーザーである全盲のエンジニアと共に、PDFの内容が問題なく読めるかを確認しながら制作を進めました。
アクセシブルPDFでは、見出しなどの情報構造、「画像が何を表すのか」を示す代替テキスト、読み上げ順序の3つを設定する必要がある
[ プロジェクト概要 ]
クライアント名 | 文部科学省 様 |
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URL | |
公開日/発行日 | 2021/03/31 |
[ 関連リンク ]
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