仕事と育児のバランスデザイン

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    関本あやか広報

写真:出演者の集合写真

2019年4月に働き方改革関連法案の一部が施行され、より一層注目を集めている「働き方改革」。時代に合わせて新しいことにチャレンジし続けているコンセントには、このような注目が集まる以前から働き方を従業員が工夫し、会社もそれを柔軟にサポートする風土がありました。今回は仕事と育児のバランスデザインに目を向け、自分らしく仕事と子育てを両立している男性従業員4人による座談会を、同じく子育て中の女性従業員によるナビゲートのもとお届けします。

出演者プロフィール

写真:出演者4名の写真

(写真左から)

川原田 大地

サービスデザイナー
2014年より株式会社コンセントでクライアントワークとして新規事業開発や調査業務、サービスコンセプト開発など多様なプロジェクトを手掛ける。

  • 男児(2019年4月生)のパパ
  • 2019年5〜7月に有休と育休を取得
  • 最近子どもがハマっている遊び・おもちゃ
    網状のボール、ガラガラ的なオモチャ

石野 博一

プロジェクトマネージャー/部門マネージャー
コミュニケーションデザイン事業、サービスデザイン事業、自社マーケティング活動、中間管理職の間を自在に行き来する越境型社員。

  • 双子の女児(2018年8月生)のパパ
  • 2019年1〜3月に有休と育休を取得
  • 最近子どもがハマっている遊び・おもちゃ
    長女:歩く練習、紙オムツを噛むこと
    次女:歩き回ること、絵本を読んでもらうこと

千々和 淳

プロジェクトマネージャー/プロデューサー
コンセントが運営するamuでのイベント企画をしながら、主にディープテック領域のべンチャー企業のビジョン策定からブランディングなど、革新的なテクノロジーの社会実装をデザインの観点で支援するプロジェクトなどを担当。

  • 女児(2016年11月生)のパパ
  • 産前産後でリモートワークを実施(1ヵ月)
  • 最近子どもがハマっている遊び・おもちゃ
    消防車や重機系、パプリカなどで踊ること

山本 耕太郎

プロデューサー/部門マネージャー
事業開発や組織変革、コミュニケーションデザインなどのプロジェクトで顧客企業との折衝をしたり、自社内の組織運営にまつわるあれこれを担当。

  • 女児(2016年7月生)と男児(2019年4月生)のパパ
  • 2016年8月と2019年4月にリフレッシュ休暇を取得
  • 最近子どもがハマっている遊び・おもちゃ
    長女:プリンセスごっこ、弟へのスキンシップ
    長男:後追い、紙・紐・革を噛むこと

性別に関係なく子育てと仕事を両立させやすい

赤ちゃんとの生活

みなさんお子さんが生まれるにあたって休暇や休業を取得していますが、「赤ちゃんとの生活」はどうでしたか?

川原田僕の場合、育休を取得したのは子どもと一緒にいる時間をつくるというより、奥さんを支える意味合いが大きかったですね。産前の1ヵ月ほど前から入院していたりしたので。息子が生まれて半年になりますが、まだ新しい家族が増えた実感はあまりなくて。赤ちゃんっていうかわいい生き物が側にいる感じ。そんなレベルです。

千々和そうなんだ。僕は赤ちゃんとの生活がすごく楽しくて。生まれた日は「人生でこんなに嬉しいことってあるんだ!」というくらい嬉しくて、1人で寿司屋に行って限界まで飲んで食べてお祝いしたほどでした。
うちの奥さんは里帰り出産だったけど産後2週間くらいで帰ってきて、そこから親子3人の生活が始まったんですけど。奥さんはしばらくは動けないので、自分が率先して家事をするようにしていましたね。

石野あぁ。確かに。まずは家事に慣れるっていう修行期間が必要ですよね。

千々和育児に関してはお互い初めてでまったく分からないから、「ミルクってどうやってつくるの?!」ってところから始まって、育児に慣れるのに1ヵ月。その翌月からは日々の生活のオペレーションを組みはじめる予定だったんですけど、奥さんの体がまだ回復していない時期にガチガチのオペレーション組んでもあんまり意味がなかったですね。
奥さんはいろいろ勉強して考えた上で育児をしているのに、自分は無邪気に嬉しくて、楽しいだけでやっていた。今思えば軽率でした。落ち着いて、手際よく無駄なく育児をこなせるようになるのに3、4ヵ月かかりましたね。
石野さんのところは双子ですよね?大変じゃないですか?

石野双子育児の大変さについては生まれる前からいろいろ聞いていたし、そういうものだと割り切れたからメンタルは大丈夫なんですけど。肉体的にはきついですよね。オムツを換えまくっていたら、だんだん指の脂がなくなって……生まれて初めて手が荒れました(笑)。

千々和同時に「抱っこ、抱っこ」みたいなのもあるんじゃないですか?

石野そうですね。それもありますけど、ご飯を食べさせるのが一番きついです。今日も奥さんが出張だから僕が面倒を見るんですけど、とにかく時間がかかります。

山本子どもたちは1人で食べられるんですか?

石野まだまだ。食べさせないといけないです。子どもにご飯を食べさせるときって、自分も「あーん」って口開けませんか?あれ、死ぬほど顎疲れるんですよね。

一同

写真:インタビュイースナップ(その1)

川原田僕も離乳食を食べさせたり、土日はお風呂に一緒に入ったりしていますが、なんの概念も持たずにこの世にきた生物がどうやって僕たちを認識していくのか観察しているのはすごくおもしろいですね。最近になってようやく意思を表明できるようになってきて、好き嫌いとか、誰かを見て笑うとか、そういう神経がいろいろできてきたんだなというのを見るのはおもしろいです。

出産に向けた仕事の調整・嬉しかったサポートや制度

山本さんは2人お子さんがいらっしゃって2度休暇を取っていますが、どうでしたか?

山本僕はどちらもリフレッシュ休暇*を育休にあてました。2人目のときは奥さんが産後すぐに戻ってきたので、実家から来てもらった僕の母親に上の子をみてもらって、下の子は夫婦で世話するという体制でした。僕がやったことといえば、掃除とお風呂に入れることぐらいだったかなぁ。

*リフレッシュ休暇
勤続年数が5年を超えるごとに付与される10日間の休暇。

休暇・休業を取得するとき、事前の調整などはどんなことをしましたか?

川原田出産予定日が5月中旬だったので6月から休む予定にしていて、3月くらいから徐々に新規プロジェクトへの入り方を制限するようにしたり、関わっているプロジェクトの引き継ぎをはじめましたね。入院が早まったこともあって実際は3月末からリモートワークをしていたのですが、当時の上司から「遠隔で進めるのは限界では。育休を早めないと厳しいんじゃないか」という話があって。確かに病院に通いながら仕事をするのは時間の調整も難しくて、どうせならと予定より1ヵ月前倒しして5月から休みました。

石野僕は休みたい期間を決めて、それに向けて仕事をどう調整するか決めていきましたね。具体的には里帰り出産から自宅に帰ってくる2019年1月から3ヵ月休むことを想定して、2018年7月くらいから準備をはじめて、一旦12月いっぱいで全部引き継ぎました。プロジェクトワークは引き継ぎ先を決めて、マネジメントワークはサブマネージャーに引き継いで、チームメンバーからサブマネージャーを新しく任命して、自部門の当期目標を達成できる見込みをつけてから渡しました。

千々和僕は立ち会い出産希望であることを伝えて、予定日の少し前からリモートワークに切り替えましたね。産後もその働き方を1ヵ月続けました。

石野休業じゃなかったんですか?

千々和はい。リモートワークで仕事を続けました。その間はイベントを入れないとか、仕事量とかを自分で調整していました。家が会社と近いから、はずせないミーティングだけは顔をだして、作業的なことは家でしていましたね。

山本僕の場合は帝王切開での出産が決まっていたので、仕事の調整はしやすかったですね。だいたいの予定日を上司にはあらかじめ話しておいて、具体的に出産の日程が決まったのが出産日の1ヵ月前くらいだったので、そこからプロジェクトメンバーに休暇を取ることを伝えていきました。

写真:インタビュイースナップ(その2)

休暇・休業〜今に到るまでで、周囲からのサポートで嬉しかったことはありますか?

山本会社として、男女問わず育休を取ることが当たり前に許容されている空気があって、それはすごいな、嬉しいなって思いました。奥さんの友だち曰く、「産前産後で旦那さんが休みを取るなんてありえない」って。だから、すごくありがたかったですね。

石野男性が育休を取れないっていうのはよく聞きますよね。育休中はよく子育て支援センターに行っていましたが、ほかの育休中のお父さんに会ったことはありませんでした。育休中のお父さんというのは珍しいみたいで、平日の昼に支援センターに行くとセンターの人からいろんな人に紹介されました。

男性が育休を取れない理由に周りへの配慮というのがあるそうです。切り出しにくいというか。

石野それでいうとコンセントはそもそも言い出しやすいですよね。性別関係なく、産休や育休後に復帰する従業員が多いから「自分も取ろう」って自然に考えられる環境があると思います。なんで男が取るんだっていう雰囲気もないし、逆に「男こそ育休を取るべし」みたいな堅苦しさもないですしね。

川原田みなさんが取っているから、育休を取りやすいという空気はありますね。

石野育休中の従業員が復職面談などの機会に子どもを会社に連れてくることが多いのも、子どもや子育てに対する理解を深めるのに効いていると思います。

千々和そうだね、効いていると思います。

石野子育てしている従業員が多いし、やむにやまれずではあっても会社に子どもを連れてくることが許容されている。それに対してネガティブな対応をされることがないし、そういう社風というか環境から恩恵を受けている感じがします。

リモートワークについてはどうですか?セキュリティ面での対策と併せて制度化が進んでいますが。

石野リモートワークに関しては社内に浸透し過ぎていて、育休にあたって特別に恩恵を感じられないというか……。

クライアントともオンラインでのミーティングが増えつつありますもんね。

石野そうですね。僕がありがたかったのは、マネジメントワークをチームメンバーが引き継いでくれたことですね。代理でマネージャー、サブマネージャーをお願いした2人は働き方に対していろいろトライしている従業員で、1人は週2日程度テレワークを取り入れていて、1人は週4勤務だったんですけど、「マネージャーが不在でもチームがまわるようにするには」というのをチャレンジと捉えておもしろがってくれました。
あと、勤務形態の変更に伴う給与シミュレーションや出産・休暇に関わる申請手続きは、総務の人たちが親身になってサポートしてくれて助かりましたね。

川原田僕も育休中は申請の手続きとか、何かと総務と連絡をとっていました。

石野それから、ベビーシッター半額制度*もありがたかったです。

*ベビーシッター半額制度(正式名称「緊急時の保育費用補助制度」)
緊急時対応として、小学校6年生までの子どもについてベビーシッター・病児保育の利用が必要なとき、所属部署のマネージャーによる承認のもと認められる、会社が費用の半額を負担する制度。

山本実際に使う機会があったんですね。

石野はい。うちの場合はベビーシッターの費用が倍になるからすごく助かりました。

写真:インタビュイースナップ(その3)

子育てしながら働くということ

働き方のバランスの変化と工夫

お子さんが生まれてから働き方は変わりましたか?

石野子どもが熱を出して会社に行けないということが起こり得るから、常に自宅でも業務ができるように準備していますね。それから、自分がいないと成立しないことや無駄を極力なくすようになりました。要不要を精査してから資料をつくるようになりましたね。

千々和わかります。僕はとにかくプロジェクトの管理コストを極力減らせるように心がけていますね。メンバー間では進捗確認できていないことを中心に共有するようにしたり、必要な時はもちろんサポートしたりして、効率化を図っています。プロジェクトに突発的なトラブルはつきものなので、設計段階では極力メンバーの負荷を調整したり、全員が余裕をもって取り組めるように配慮していますね。

石野社内共通のスケジュールにミーティングだけでなく作業時間も登録して見える化することで、業務の組み立てがしやすくなるようにしていますね。

千々和余白の取り方ですよね。そういう意味では僕はミーティングを入れる日は集中していれるようにしています。予定が分散しているとすごくリスキーだから、曜日ごとに決めるなどして1日単位で設定していますね。

石野それはリモートワークに関係なくですか?

千々和うん。関係なく。企画書書くときとか提案するときって、集中して作業する時間が必要ですよね。まとめて3時間と、分刻みで合計3時間では進み具合や質が全然違いますから。仕事って「こなす」じゃないじゃないですか。

石野本当にそうですね!

仕事と育児、これからどうバランスをとっていきたいと思っていますか?

石野子どもが生まれてからも裁量労働で働いていますが、実際に仕事ができる時間は9時から18時。8時間しかない労働時間の中で、子育てもしながらちゃんと会社への貢献度も上げていくために、時間あたりのパフォーマンスを上げなきゃいけないなと常々思っています。

一同そうだよね。

石野仮に子育てが落ち着くのが10年後だとして、当然自分も年を重ねているはずで。子どもから手が離れたからといって、働く時間を延ばしたくないですよね(笑)。だからこそ時間当たりの生産量を維持向上したいですね。

千々和そのためには、自分が勉強する時間が欲しいですよね。今は一定の自由な時間を確保するっていうのが結構難しい。

川原田僕は通勤に1時間30分くらいかかるので、意識してその時間は勉強にあてていますね。

写真:インタビュイースナップ(その4)

石野完全に自分の時間というと、多分22時30分から0時くらいですよね。その時間は漫画読んで息抜きしたり、インプットしたりする時間というか。その時間がないと僕死ぬと思います(笑)。

千々和それは奥さんも同じなんですよね。2人でその時間を確保しようと思うとなかなか難しいですよね。

川原田子どもが生まれるともともとの生活と比較して明らかに家庭でのタスクが増えるじゃないですか。それをこれまでと同じ時間の中でうまくまわすにはどうすればいいのかは考えますね。

山本僕は、どんなふうにバランスをとっていきたいかというのとは違うかもしれないですけど、あわよくば長女を戦力化したいとは常に感じていますね。だんだんお手伝いをしたい年頃になってきたので…。
お母さんの真似をして服をたたんだりとか、そういう彼女の成長したいという意欲と、家事・育児の時短をうまくつなげられないかと常に気にしています。それは仕事とのバランスというよりは、単純にラクしたいだけなんですけど(笑)。

一同

育児経験が仕事にもたらしたもの

育児経験を経て価値観や世の中の見方は変わりましたか?

石野いやらしい話、双子を連れているとチヤホヤされるんですよ。毎日保育園に行って帰るだけで「かわいいですね」って声かけられるし、困っているときに手伝ってくれる人も多くて、周囲から支援を受けている感じがすごくします。

山本本当にそうですよね。僕も実際子どもがいなかったら近所の人とのコミュニケーションってなかったなって思います。

石野街に知り合いができる感じはすごいですよね。知らない人が普通に話しかけてきますもんね。

川原田こっちも周りを見る目が優しくなりますよね。

一同なるなる。

川原田僕が主に担当しているサービスデザインの仕事でいえば、これから子どもやその両親をターゲットに新規事業開発をすることはあり得るので、そこに対しての視界がクリアになりましたね。今、何かにすごく活かされているかというとまだこれからですが、確実にそういう視点での解像度が上がったなって気がしています。

山本仕事と育児はお互いに学びを活かしやすいと感じるようになりました。仕事で読んでいた本の中に書かれていたことが育児にも通じていたり、共通で活かせる心構えがあったり。特にコミュニケーションの取り方についてはそう思います。

川原田確かにコミュニケーションの話でいうと、育児って自分で動けなかったり、話せなかったりする子どもを相手にするじゃないですか。そういう意味で相手が今何を欲しているのか、すごく想像するようになりました。

千々和僕は物事に対する許容力が上がりました。子どもの不条理さ、不道理さに比べたら、大抵のことはなんとかなるというか(笑)。

写真:インタビュイースナップ(その5)

わかります。大人相手のコミュニケーションは話が通じるだけいいですよね。

千々和育児をする前は、トラブルが起きたときは自分の説明の仕方やドキュメントのつくり方がよくなかったんじゃないかと過ぎたことをくよくよと考えていたけど、今はその先のパフォーマンスを上げることに注力するようになりましたね。いい意味で割り切れるようになりました。

石野僕は今まで正直、子どものいる従業員の気持ちがわからなかったんです。例えば「子どもが熱出たので今日は休みます」って言われても、「それで休めるんだ、いいなぁ」って思っていました。でも、今はその裏にある申し訳なさとか、子どもを心配する気持ちが良くわかります。それがわかるようになったのは、マネジメントする立場の人間としていいことだと思っています。

そういう理解がある人が上司や役員、プロジェクトメンバーの中にいてくれると働きやすさにつながりますよね。

石野僕は育児経験者が育児を尊いものとして語っているのが嫌だったんですね。育児に比べたら仕事なんて大したことないよとか、そういう話がすごく嫌だったんです。でも、いざ自分が育児をする側になってみると、子どもができたことによって、一個人としてできなくなったことが増えるから育児を尊いものだと思おうとしている感があるなって思っていて。それは気をつけなきゃなって思っています。

千々和社会全体を見ると、周囲の人たちの理解と支えによって自分の環境はとても恵まれているなと思うし、そのことはいつも意識していますね。感謝の気持ちはいつも心の中にもっていたいです。

写真:インタビュイースナップ(その6)

座談会を終えて

一口に仕事と育児のバランスといっても、休暇・休業の期間もスタイルも、仕事の工夫の仕方もそれぞれの4人。自分の仕事やライフスタイルに合わせて働き方をデザインし、自律して自分らしく仕事と子育てに取り組んでいる姿が印象的でした。

これからは従業員一人ひとりのライフステージの変化や社会制度の改革に伴う働き方の多様化によって、家族の介護が必要になったり、勉強のための留学を考えたりする人などが増えていくことが考えられます。制度がないからどちらかを選ぶしかない、不満や不安をもちながら働く、というのではなく、長期休暇や休業を含めて柔軟に働き方を工夫することができると知っていれば、安心して働き続けることができるのではないでしょうか。今回は仕事と育児のバランスというテーマでしたが、新しいことにチャレンジしたいとき、迷ったり悩んだりしたときなど、自分のこれからを考える機会に、この座談会の話が何か少しでも参考になれば幸いです。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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