サービス開発の走り始めに効果アリ

「コンセプトインプレッションシート」の活用

  • 大崎 優取締役/サービスデザイナー

サービスデザイナーの大崎です。企業のサービス開発支援に長年携わっております。今回は、サービス開発においてコンセントがよく用いる手法「コンセプトインプレッションシート」について紹介します。

「コンセプトインプレッションシート(以下、CIS)」は、サービス概要を表現した仮想パンフレットのようなもの。主にサービス開発の初期段階において作成します。利用者目線でサービス概要を、その印象とともに理解・体感でき、ユーザーテストやサービス説明資料として活用します。基本的には、事業開発プロジェクトのごく一部のタスクとして制作しますが、最近はCISだけ単独で制作してもらえないか、というオーダーも多くいただくようになりました。

では、この場を借りて伝えたいCISの効果とは何なのか? 以下、4点ご紹介します。

1:まず前に進む

事業やサービス、ビジネスモデルの構想はできているが、価値をどう届けるかの具体像がどうも可視化できない。
サービス開発の初期段階ではこのような現象がたびたび起こります。
戦略からサービス具体化への橋渡しができない。机上の戦略がサービス利用のナマの現場に結像しない、というつまづきが多くのプロジェクトで発生します。
このような状況においては、その時の有力仮説をもとに、まずCISとしてカタチにします。仮説なので「上書きされる」前提で、どのような体験をつくりたいのかをまず具体化します。具体化することで、ビジネスモデルの詰めの甘いポイントや、その場での「知らないこと」、つまり追加調査が必要な箇所が明確になっていきます。

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スマホアプリ『ぴあ』コンセプト開発(ぴあ株式会社様)におけるCIS。最初期に作成されたものから何度も中身が書き換えられた。ユーザーテストや、アプリ内の記事作成者への執筆依頼など多方面に活用された。

2:論点が浮かび上がる

CISを作成するにあたっては、クリアしないといけない論点が多く出てきます。
サービスの提案価値が見えていないとCISのキャッチコピーは書けません。サービス全体の価値の流れがどんなもので、どんなユーザーがどう介在するかといった構造が整理されないと、説明図も文章もつくれません。サービスを構成する諸要素が粗くとも検討できていないとCISはつくれないのです。
裏を返せば、CISを作成することでサービス開発の主要検討項目をざっくりと反芻しながら押さえていくことができるとも言えます。
CISは初期仮説をもとに作成することが多いので、ユーザーテスト等で内容がくつがえされます。ただ、どう間違っていたかがわかるだけでも最初のカイゼンのループが回り始めるのです。

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日本ユニシス株式会社様が構想する価値交換プラットフォーム「doreca」に関するCIS。「doreca」の情報を広く発信する際に、CISの構成をベースに必要なメッセージやブランドイメージが検討された。

3:試せる

サービス開発において、初期段階に顧客ニーズを把握するために、インタビュー調査やWeb調査を行うことが多いと思います。そのような調査の際に、調査対象者にCISを見てもらうようにします。イメージとしては、通常のニーズ・価値調査を行い、その後の「オマケ」として、CISを見てもらうような形です。
そうすると、何もない段階でのインタビュー調査とはまた違った角度で、ユーザーニーズや価値観が見えてくることも多くあります。
また、なにより、初期段階で戦略の確かさをユーザー視点でテストできる点は大きく、調査対象者のフィードバックはプロジェクトメンバーの手応え・活力にもなります。

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第一生命保険株式会社様の保険サービス「Snap Insurance」のCIS。ユーザーテストの際に、このCISとスマホで保険加入が体験できる動的モックが活用された。

4:話を通せる、話が流通する

新規事業の起案からローンチまで、通常は複数の予算承認や投資判断、契約締結など、話を「通す」場面が多く登場します。CISはそのような場面でも効果を発揮します。事業計画書にCISを添えることで、決裁者がユーザーとしてサービスを体験でき、事業のアウトプットや成果をイメージできるので、意思決定の精度が上がります。
また、人数規模の大きな企業では、CISがあることで社内で企画が話題になり、社内協力者を多く獲得できたというようなこともあるそうです。カタチがあることで話が流通しやすくなる効果があるのです。

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介護業界向け新サービス開発(カシオ計算機株式会社様)のCIS。このCISからプロモーションのストーリーが描かれ、Webサイト、新聞広告、パンフレット、イベント用ツールなどが展開された。

CISの構成

では、CISはどのようにつくるのでしょうか。
コンセントでは、プロジェクト初動時に、サービスデザイナーとコンテンツデザイナーがクライアントにヒアリングし、1日~7日程度で仕上げることが多いです。サービスデザイナーが提案価値の具体化やサービススキームの言語化などを行い、コンテンツデザイナーがそれをカタチにしていく、という流れです。

あまりに重厚長大な構成ですと、印象や疑似体験よりも「理解のハードル」が先立ちますので、経験則的にA4で4~6ページがベスト。だいたい1、2分くらいで全部を読めるボリュームが目安です。

また、複数のユーザーが介在し、その提案価値が大きく異なる場合では、複数のCISを作成することもあります。例えば、医師と患者が利用するサービス開発の際には、医師用CISと患者用CISを作成し、双方のユーザーテストに活かすような工夫をしたこともありました。

構成は下記のようにパターン化されます。

表紙サービス名称とキャッチコピー、UIなど、1枚で印象を得られる構成を目指します。
サービスビジョンなぜ、社会にこのサービスが必要なのかを短い文章とビジュアルで。
サービス概要図価値の流れ、情報の流れなどを可視化します
サービス価値を3つコアな提案価値を3つほど絞って明示します。言葉だけでなくイラストや写真なども添えると、ユーザーがどのような文脈で価値を享受できるかが腑に落ちるようになります。
サービス利用の流れ顧客体験、利用者体験のイメージができていればカタチにします。
FAQサービスの補足説明として情報に厚みを持たせます。
価格表プライシング検討のため、提案価値とプライスの相関を複数回のユーザーテストの中で試していき、収支計画の精度を上げていきます。

CISは検討の「出口」づくり

以上、CISの効果効能とつくり方について説明しました。
CISは端的に言うと、サービス検討の「出口」を利用者目線でつくるということ。出口から考えることで思考のロードマップができ、より生産的・創造的にプロジェクトが進みます。そして、サービスの出口を最速でつくるツールが今回紹介したCISである、と言えると思います。

[ 執筆者 ]

コンセントは、企業と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
事業開発やコーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発を、戦略から実行まで一貫してお手伝いします。

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